“ひ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒ
語句割合
日11.9%
惹9.8%
曳7.7%
引7.3%
灯7.0%
退6.4%
陽5.1%
火4.3%
弾4.0%
一3.9%
牽3.6%
緋3.3%
挽2.6%
冷2.3%
燈2.3%
轢1.9%
乾1.2%
延1.1%
干1.0%
非0.7%
抽0.7%
秘0.6%
負0.6%
太陽0.5%
梭0.5%
彈0.4%
碑0.4%
樋0.4%
燭0.4%
比0.3%
婢0.3%
率0.2%
怯0.2%
妃0.2%
杼0.2%
祕0.2%
燈火0.2%
檜0.2%
氷0.2%
日光0.2%
碾0.2%
輓0.2%
放0.1%
索0.1%
簸0.1%
脾0.1%
開0.1%
費0.1%
援0.1%
肥0.1%
彎0.1%
曵0.1%
浸0.1%
緊0.1%
旭0.1%
減0.1%
鋸0.1%
奏0.1%
被0.1%
飢0.1%
魅0.1%
低0.1%
批0.1%
秀0.1%
誘0.1%
拉0.1%
否0.1%
捻0.1%
落籍0.1%
発0.0%
酷0.0%
光0.0%
冒0.0%
吐0.0%
塗0.0%
平0.0%
拖0.0%
拾0.0%
炎0.0%
炬0.0%
磨0.0%
罅0.0%
羆0.0%
痙0.0%
寂0.0%
廂0.0%
灯火0.0%
陽光0.0%
寒0.0%
展0.0%
広0.0%
彼0.0%
悲0.0%
惑0.0%
扉0.0%
扯0.0%
攣0.0%
旱0.0%
晝0.0%
湿0.0%
犇0.0%
皮0.0%
紡0.0%
褪0.0%
拽0.0%
控0.0%
毘0.0%
罷0.0%
丕0.0%
人0.0%
何一0.0%
光線0.0%
冐0.0%
冲0.0%
剕0.0%
匪0.0%
卑0.0%
南陽0.0%
吸0.0%
夕陽0.0%
外燈0.0%
妣0.0%
姫0.0%
孤0.0%
寛0.0%
射0.0%
布0.0%
帥0.0%
年0.0%
廃0.0%
彀0.0%
感0.0%
扶0.0%
披0.0%
抱0.0%
拈0.0%
拓0.0%
拗0.0%
挫0.0%
捍0.0%
描0.0%
提0.0%
撥0.0%
攬0.0%
敗0.0%
散0.0%
斐0.0%
施0.0%
春陽0.0%
昼0.0%
晷0.0%
暉0.0%
朏0.0%
朝0.0%
来0.0%
桧0.0%
桶0.0%
楲0.0%
段0.0%
涸0.0%
渠槽0.0%
漬0.0%
濡0.0%
火光0.0%
炭火0.0%
烈0.0%
焔0.0%
燧0.0%
甚0.0%
画0.0%
痺0.0%
直0.0%
研0.0%
移0.0%
笑申0.0%
篝0.0%
紙一0.0%
腓0.0%
臂0.0%
蜚0.0%
衍0.0%
裨0.0%
豼0.0%
跛0.0%
輾0.0%
轉0.0%
鄙0.0%
鈹0.0%
飛0.0%
髀0.0%
𨫤0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
將(しやう)、命(めい)を受(う)くるの日(ひ)には則(すなは)ち其家(そのいへ)を忘(わす)れ、軍(ぐん)に臨(のぞ)んで約束(やくそく)すれば則(すなは)ち其親(そのしん)を忘(わす)れ、(一六)枹鼓(ふこ)を援(と)ること急(きふ)なれば則(すなは)ち其身(そのみ)を忘(わす)る。
こちらの姫君に心をお惹(ひ)かれすることになって、今ではもう世間の噂(うわさ)にも上っているだろうと思われるまでになっているのですから
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
朦朧(もうろう)と見えなくなって、国中、町中にただ一条(ひとすじ)、その桃の古小路ばかりが、漫々として波の静(しずか)な蒼海(そうかい)に、船脚を曳(ひ)いたように見える。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其(その)忘(わす)れ難(がた)き味(あぢ)に引(ひ)かされて、行(ゆ)く事(こと)は行(ゆ)くが——行(ゆ)く度(たび)に思出(おもひだ)しては、歸途(かへりがけ)に、つい、泣(な)かされる。——いつも歸(かへ)る時(とき)は日暮(ひぐれ)になる。
殊に歳暮(さいぼ)の夜景の如き橋上(けうじやう)を往来する車の灯(ひ)は沿岸の燈火(とうくわ)と相乱れて徹宵(てつせう)水の上に揺(ゆらめ)き動く有様(ありさま)銀座街頭の燈火(とうくわ)より遥(はるか)に美麗である。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そしてその組の者は、みんなで相談して、その「週間」の間に四度だけ、学校が退(ひ)けるとすぐ、みんなでイナゴとりに行くのでした。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
今(いま)まで流(なが)し元(もと)で頻(しき)りに鳴(な)いていた虫(むし)の音(ね)が、絶(た)えがちに細(ほそ)ったのは、雨戸(あまど)から差(さ)す陽(ひ)の光(ひか)りに、おのずと怯(おび)えてしまったに相違(そうい)ない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
したふか板倉のひえ炬燵(こたつ)とは少しも火(ひ)がないといふ事なり非(ひ)と火と同音(どうおん)なればなり夫より後世(こうせい)の奉行(ぶぎやう)いつれも堅理(けんり)なりといへども日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そう言われるのは決して平凡なお手並みでない芸に違いない。一所懸命に法皇の所へ来てお弾(ひ)きになるのを自分も聞きたいものだ」
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
ルンペンどもは前もって明智の逃げ道を察し、そこの出口に一(ひ)とかたまりになって、手に手に得物(えもの)を持って待ち構えていたのである。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
清逸が学問をするために牽(ひ)き起される近親の不幸(父も母もそのためにたしかに老後の安楽から少なからぬものを奪われてはいるが)
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すると、突然、緋(ひ)の緞帳の裾から、桃色のルイザが、吹きつけた花のように転がり出した。裳裾(もすそ)が宙空で花開いた。緞帳は鎮まった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ある日、中庭へ数台の荷馬車を挽(ひ)き込んで、それに家財道具や衣裳類を山のように積んであるのを見て、ガブリエルはびっくりした。
そしてガラス球(だま)のような、冷(ひ)ややかに光(ひか)る目(め)でじっとそれを見(み)ていましたが、やがて舌打(したう)ちをして、いまいましそうにいいました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は深い心に泣き乍ら幻想の燈(ひ)かげに弱つた身体(からだ)を労つてゆく、潤(しめ)つた霧がそこにもここにも重い層をなして私の身辺を圧へつける。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
他の一人(ひとり)は帽子が飛ぶと同時に飛んだ帽子の事だけ考へて、夢中になつてその後(あと)を追ふ。自転車にぶつかる。自動車に轢(ひ)かれかかる。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「峠の者こそ、抜かるなといってくれ」乾(ひ)からびた笑い声をながして、下の者は、すたすたと胸突坂(むなつき)を登って行った。すると、不意に
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家庭の平和と純潔とを乱せば一身の破滅ばかりでなく、延(ひ)いては一家の協同生活を危くし、社会の幸福をも害(そこな)う結果が予想せられる。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
どれ、紙がないから干(ひ)ダラにでも、ひとこと書いてあげようか。それを持って、わしの知ってるフィンランドの女のとこへ行くがいい。
それを是(ぜ)とするか非(ひ)とするか、自分の唇(くちびる)をでる、ただ一句(く)で、どんな兇刃(きょうじん)がものの弾(はず)みで御岳(みたけ)の神前(しんぜん)を血(ち)の海としないかぎりもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この互いに絡(から)み合っている二匹の白猫は私をして肆(ほしいまま)な男女の痴態を幻想させる。それから涯(はて)しのない快楽を私は抽(ひ)き出すことが出来る。……
交尾 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
共に眺めんキトウスの月、翁は久しくキトウスの月を共に眺むる人を求めて居る。若い者さえ見ると、胸中(きょうちゅう)の秘(ひ)をほのめかす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
じきにタキシイに飛びのって、行きつけの家(うち)へ走らせたが、部屋へ納まっても、何か仮り着をしているようで、庸三は気が負(ひ)けた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
樹々は暗くなる程繁り、生籬(いけがき)や森は、葉が繁り、色が濃くなつて、間にある刈り取つたあとの牧場の太陽(ひ)に映(は)えた色と、いゝ對照をしてゐた。
山と雲との影が綾(あや)に織り出されたり消されたりして、其(その)間を縫って銀光沢を帯びた青緑色のヤンマの一種が梭(ひ)のように飛び交うている。
日本アルプスの五仙境 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
淋(さび)しきまゝに琴(こと)取出(とりいだ)し獨(ひと)り好(この)みの曲(きよく)を奏(かな)でるに、我(わ)れと我(わ)が調(てう)哀(あは)れに成(な)りて、いかにするとも彈(ひ)くに得(え)堪(た)えず、涙(なみだ)ふりこぼして押(おし)やりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それですから、北上川の岸(きし)からこの高原の方へ行く旅人(たびびと)は、高原に近づくに従(したが)って、だんだんあちこちに雷神(らいじん)の碑(ひ)を見るようになります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一所(ひとつところ)に土橋がかかっていた。その下に枯蘆(かれあし)が茂っていた。また一所に樋(ひ)の口があった。枯れた苔(こけ)が食(く)っ付(つ)いていた。
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その往っている方向に当って、月の陰になったように暗い所があって、そこから燭(ひ)の光がきらきらと光っているのを見た。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これは世に謂(い)ふ捕物ではないかも知れませんが、危險を孕(はら)むことに於ては、冷たい詭計(きけい)に終始した捕物などの比(ひ)ではないと言へるでせう。
聟どのの家から大事に消えぬように持って来た脂燭(ししょく)の灯(ともし)を、すぐ婚家の婢(ひ)が、その家の脂燭に移し灯(とも)して、奥へかけこんでゆく。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かく攷(かんが)えるとどうも馬琴の説が当り居るようだ。すなわち斉の宣王が堂上に坐すと牛を率(ひ)いて過ぐる者あり。
又八は、この男の話を、全部がほんととは信じなかったが、それでも、何か圧倒されたような怯(ひ)け目(め)を感じ、自分も、法螺(ほら)をふき返してやろうと思った。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
変りはてた先帝の影を獄中のほの暗い所に見いだしたとき、三人の妃(ひ)は、しぜんにみなそれぞれちがった悲しみようをその姿にみだし合った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は流れの中に既に我を喉まで引入れ、今己が後(うしろ)より我を曳きつゝ、杼(ひ)のごとく輕く水の上を歩めるなりき 九四—九六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
起(おこ)しけるは怖(おそ)ろしとも又類(たぐ)ひなし寶澤は此事を心中に深く祕(ひ)し其時は然氣(さりげ)なく感應院へぞ歸りける偖(さて)翌(よく)年は寶澤十二歳なり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日はとっぷり暮れたが月はまだ登らない、時田は燈火(ひ)も点(つ)けないで片足を敷居の上に延ばし、柱に倚(よ)りかかりながら、茫然(ぼんやり)外面(そと)をながめている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
好い松の樹檜(ひ)の樹も兎角に何かの縁で心(しん)が折られたり止められたりして、そして十二分の発達をせずに異様なものになって終うのが世の常である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今しがたまで自分の語り耽(ふけ)っていた修羅黒縄(しゅらこくじょう)の世界と、この薄ら氷(ひ)のようにすき透った光の世界との間には、どういう関わりがあるのかと思ってみる。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
来客(らいかく)の目覚しさ、それにもこれにも、気臆(きおく)れがして、思わず花壇の前に立留まると、頸(うなじ)から爪(つま)さきまで、木(こ)の葉も遮らず赫(かっ)として日光(ひ)が射(さ)した。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
穀物を碾(ひ)く臼は手で廻すのだが、余程の腕力を必要とする。一端を臼石の中心の真上の桷(たるき)に結びつけた棒が上から来ていて、その下端は臼の端に着いている。
而して會〻(たま/\)その街を過ぐる一行ありしがために、此一寰區(くわんく)は特に明かなる印象を我心裡に留むることを得たり。角極(きはめ)て長き二頭の白牛一車を輓(ひ)けり。
父も兄も鍬を荷ひ駒を引いて歸つてきた例の兄の愛馬が鼻放(ひ)る聲も聞える。身内へ用にゆかれた母も歸つたらしい、生垣近くで人々の話聲である。
古代之少女 (旧字旧仮名) / 伊藤左千夫(著)
犁は非常に軽くて一頭の馬が索(ひ)き、木の株の間を耕す際には、それが低ければ、一般にはその上を持上げて越すのである。
是即ち評價の源(みなもと)なり、是が善惡二の愛をあつめ且つ簸(ひ)るの如何によりて汝等の價値(かち)定まるにいたる 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こんなわけで、狸は支那の代表的料理の主役を勤め、第一その肉は人の肺気を強くし、脾(ひ)胃を補ひ、皮は裘(かわごろも)を製し、骨は邪気を除くと本草に見えてゐる。
たぬき汁 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
押(を)せば開(ひ)らく片折戸(かたをりど)に香月(かうづき)そのと女名(をんなヽ)まへの表札(ひようさつ)かけて折々(をり/\)もるヽ琴(こと)のしのび音(ね)、軒端(のきば)の梅(うめ)に鶯(うぐひす)はづかしき美音(びおん)をば春(はる)の月夜(つきよ)のおぼろげに聞(き)くばかり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〔評〕南洲、顯職(けんしよく)に居り勳功(くんこう)を負(お)ふと雖、身極めて質素(しつそ)なり。朝廷賜(たま)ふ所の賞典(しやうてん)二千石は、悉(こと/″\)く私學校の費(ひ)に充(あ)つ。貧困(ひんこん)なる者あれば、嚢(のう)を傾(かたぶ)けて之を賑(すく)ふ。
シカモ兵乱ノ余(よ)仍(なお)飢饉(ききん)ヲ以テス。県務ニ鞅掌(おうしょう)シイマダ及ブニ暇(いとま)アラズ。幸ニシテ子重ガコノ挙アリ。故ニ辞スルニ多事ヲ以テセズ。筆ヲ援(ひ)イテ巻首ニ叙ストイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
須佐之男命(すさのおのみこと)は、大空から追いおろされて、出雲(いずも)の国の、肥(ひ)の河(かわ)の河上(かわかみ)の、鳥髪(とりかみ)というところへおくだりになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
『ラマヤナム』にミチラ王ジャナカ婿を定めんとて諸王子を招き競技せしめた時、ラマ強弓を彎(ひ)いたので王の娘シタがこれを夫と撰定したとある
襞(ひだ)と云ふ襞(ひだ)を白く曵(ひ)いたアルプス連山の姿は予(かね)て想像して居た様な雄大な趣(おもむき)で無く、白い盛装をした欧洲婦人の群(むれ)を望む様に優美であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
母と子とまどろみ深き夜のくだち雨に浸(ひ)て沁む蟋蟀のこゑ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼らの顔は、一様に、彼らの美しき不弥の女を守り得る力を、彼女に示さんとする努力のために緊(ひ)き締(しま)っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
朝靄(あさもや)山の腰をめぐりて高くあがらず淺間が嶽に殘る雪旭(ひ)の光にきらめきたり滊車の走るに兩側を眺むる目いそがはし丘を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
近きも遠きもかしこにては加へじ減(ひ)かじ、神の親しくしろしめし給ふ處にては自然の法(のり)さらに行はれざればなり 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
天の探女姫を縄にて縛りたり、夫婦驚きてこれを援け天の探女を縛り、此女(こやつ)薄(すすき)の葉にて鋸(ひ)かんとて薄の葉にて鋸きて切り殺しぬ
七歳のとき、ワイセンフェルス公爵の御前でオルガンを奏(ひ)き、公の御感(ぎょかん)に入って、公爵自身ヘンデルの父に、息子の音楽修業を承諾させたという話もある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
誰(だれ)があんな自我の無い手合いと一しょになるものか、自分にはあんな中途半端(ちゅうとはんぱ)な交際振りは出来ない。征服(せいふく)か被(ひ)征服かだ。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お母あちゃまは、どうしたろうな。おまえも母をさがして泣くか。おお、よしよし。飢(ひ)もじいか。いまに久助が、何か買って来よう。泣くな。泣くな」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは老人への好奇心ばかりではなく、あの木美子という美少女が助手である、ということに魅(ひ)かされたのであることが、もっと大きな原因でもあった。
白金神経の少女 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ももしきの美濃に往(い)かさば、山をおり国低(ひ)きかれば、かくばかり遠くは見えじ。しかあらばここの御憩(みいこ)ひ、恒(つね)よりも長くいまさな。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その手前でさえ、先生の八犬伝には、なんとも批(ひ)の打ちようがございません。いや全く恐れ入りました。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は機智(きち)があるというよりも滑稽に秀(ひ)いで、にぎやかで快活というよりはのんびりと上機嫌であり、気むずかしく陰気というよりは物思わしげで憂鬱(ゆううつ)である。
偶然は友を誘(ひ)くものであった。一月も立たぬ中の事である。早く、此都に移って居た飛鳥寺(あすかでら)—元興寺(がんこうじ)—から巻数(かんず)が届けられた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この三の段をわが導者は我を拉(ひ)きてよろこびて登らしめ、汝うやうやしく彼に扃(とざし)をあけんことを請へといふ 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
否(ひ)と云う返事を待つ必要は無論ない。ないが、決行する間際になると気掛りになる。頭で拵(こしら)え上げた計画を人情が崩(くず)しにかかる。想像力が実行させぬように引き戻す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
モデルに石膏(せっこう)の彫像を据えて息子は研究所の夏休みの間、自宅で美術学校の受験準備の実技の練習を継続しているのであった。電灯を捻(ひ)ねって
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
叔父は沼津の芸者を落籍(ひ)いて、又三月程経った、乗合に乗ってぽかぽかと、この山の宿へやって来た。
忠僕 (新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
茫々乎たる空際は歴史の醇(じゆん)の醇なるもの、ホーマーありし時、プレトーありし時、彼の北斗は今と同じき光芒を放てり。同じく彼を燭(て)らせり、同じく彼れを発(ひ)らけり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
盲目(めくら)も有繋(まさか)お袋(ふくろ)だから畸形(かたわ)に成(な)つちや他人(ひと)の處(とこ)なんぞよりやえゝと思(おも)つたんでがせうね、さうしたらお内儀(かみ)さん盲目(めくら)が錢(ぜに)叩(はた)いつちやつたら又(また)打棄(うつちや)つて、聞(き)いて見(み)ちや酷(ひ)でえ噺(はなし)なのせ本當(ほんたう)に
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あら多々良さんの頭は御母(おかあ)さまのように光(ひ)かってよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まるで生きているようなものだ、風邪を冒(ひ)いた女の子がちょっと快くなって、外の空気にふれただけでまた冒き返すことに似ている、この人は風邪を冒いたようなものである。
陶古の女人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ツバ吐(ひ)っかけてやりたい。
廃墟(一幕) (新字新仮名) / 三好十郎(著)
自分はかくあまりに顕著な例を挙げてみると、同じチビキの石でも引っ張るほうの千曳きと生き物の血を塗(ひ)いたほうのチビキとの二つの区別があり、また起原があることがあいわかる。
東奥異聞 (新字新仮名) / 佐々木喜善(著)
吊るされた真鍮板に、読まれることはなかったし、平(ひ)れふす群衆が
河を隔てて木(こ)の間(ま)隠れに白く拖(ひ)く筋の、一縷(いちる)の糸となって烟(けむり)に入るは、立ち上(のぼ)る朝日影に蹄(ひづめ)の塵(ちり)を揚げて、けさアーサーが円卓の騎士と共に北の方(かた)へと飛ばせたる本道である。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「雲雀の卵を拾(ひ)らえに行(い)んべや」
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
わが持てる提灯の炎(ひ)はとどかずて桜はただに闇(やみ)に真白し
桜 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
陽明園(はこやのやま)に炬(ひ)入(い)りては
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
「はい。ありがたい事に達者で——針も持ちます、苧(お)もうみます、御団子(おだんご)の粉(こ)も磨(ひ)きます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冬の田の深田(ふけだ)の氷罅(ひ)びわれて月の夜頃はよく光るなり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「非(あら)ず、私(わし)が欲する処はの、熊(ゆう)にあらず、羆(ひ)にあらず、牛豚(ぎゅうとん)、軍鶏にあらず、鰻にあらず。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
痙(ひ)き攣(つ)ッて、今はもう、一あしも進めなくなるのを、やッとのことで、町家の並んだ、夜更けの巷路(こうじ)まで出ると
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかも、古びた家の寂(ひ)っそりとした中で、そのような物音を聴いたとすれば、誰しも堪えがたい恐怖の念に駆られるのが当然であろう。かえって滝人には、それが残虐な快感をもたらした。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その廂(ひ)あわいの、おんどりと暗い闇の中にしゃがんでいるのが、顎十郎とひょろ松。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「命令するのだ! 灯火(ひ)をつけろ!」ツト一足進んだが、「……年頃闇には慣れておれど久々で見るこの部屋がこう暗くては面白くない。さあすぐに灯火(ひ)をつけろ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しばらく顔を見詰め合っている二人を、紙帳は、昼の陽光(ひ)を浴びて、琥珀(こはく)色に、明るく、蔽うていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さるを骨肉(こつにく)の愛をわすれ給ひ、八五あまさへ八六一院崩御(かみがく)れ給ひて、八七殯(もがり)の宮に肌膚(みはだへ)もいまだ寒(ひ)えさせたまはぬに、御旗(みはた)なびかせ弓末(ゆずゑ)ふり立て宝祚(みくらゐ)をあらそひ給ふは
思いがけない静かな内省が何処ともなく展(ひ)らけてくるような冷たさを覚えて自分でも呆(あき)れるほど妙にしんみりしてしまった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
我が読まんとする書は彼にあり。漠々たる大空は思想の広(ひ)ろき歴史の紙に似たり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いずれにしろ稚純な心には非情有情の界を越え、彼(ひ)と此(し)の区別を無(な)みする単直なものが残っているであろう。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
可憐(かれん)新管、清(せい)にして且(かつ)悲(ひ)なることを
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「何にも心を惑(ひ)かれるものはない、描(か)きたい風景さへもない。」などゝ云ひながら——「あゝ、つまらないところだ、俺には故郷などいふものに囚はれる気持は始めからないのだ。」
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
倉庫の扉(ひ)打ち開きあり寒雀(かんすずめ)
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この負擔だに我方にあらば、その報酬も受けらるべし。羅馬の裁判所に公平なる沙汰なからんや。かく云ひつゝ、強ひて我を扯(ひ)きて戸を出でたるに、こゝには襤褸(ぼろ)着たる童(わらべ)ありて、一頭の驢(うさぎうま)を牽(ひ)けり。
胸膈(きょうかく)を前へ出して、右の肘(ひじ)を後(うし)ろへ張って、左り手を真直に伸(の)して、ううんと欠伸(のび)をするついでに、弓を攣(ひ)く真似をして見せる。女はホホホと笑う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「きつともて、こいづあ大きな蝸牛(なめくづら)の旱(ひ)からびだのだな。」
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かゝなへて、夜(よ)には こゝの夜(よ)。晝(ひ)には とをかを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
一一四簀垣(すがき)朽頽(くちくづ)れたる間(ひま)より、荻(をぎ)薄(すすき)高く生(おひ)出でて、朝露うちこぼるるに、袖一一五湿(ひ)ぢてしぼるばかりなり。壁には蔦(つた)葛(くず)延(は)ひかかり、庭は葎(むぐら)に埋(うづ)もれて一一六秋ならねども野らなる宿なりけり。
武芸にも心を犇(ひ)かれる方ではありませんが、母の形見の振袖を着て、乏しいお小遣で手に入れた、能装束の袴を着け、浅ましい薄化粧までして、妖怪変化の心持で通った私がお気に召して
物の表面だけをみて、その裏にかくれている、ほんとうの相(すがた)を見ないことを、「皮(ひ)相の見」と申しますが、それはいまだ、真に「まなこ」の「まなこ」たる所以(ゆえん)を知らざるものといわねばなりません。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
糸紡(ひ)き車で
女王 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
顔の紅味がいつか褪(ひ)いて蒼(あお)くなっていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
竜さては狐と共謀して、吾輩(われら)を食うつもりと合点し、急ぎ奔(はし)ると、拽(ひ)きずられた狐は途上の石で微塵(みじん)に砕けた。
風なくして浪高きこと数丈、常に水上紅光見(あら)われ日のごとし、舟人あえて近づかず、いわくこれ竜王宮なり、而して西北塞外人跡到らざるの処、不時数千人樹を□木を拽(ひ)くの声を聞く
かれ教へしが如して、旦時(あした)に見れば、針をつけたる麻(を)は、戸の鉤穴(かぎあな)より控(ひ)き通りて出で、ただ遺(のこ)れる麻(を)一二は、三勾(みわ)のみなりき。
「その御子を取らむ時に、その母王(ははみこ)をも掠(かそ)ひ取れ五。御髮にもあれ、御手にもあれ、取り獲むまにまに、掬(つか)みて控(ひ)き出でよ」
蕭々(しょうしょう)、吹く風は晦(くら)い。で、誰ともわからない、そこの十騎ほどの群は、旗を立てて四方を望んでいる。白地の旗には「毘(ひ)」の一字が大きく見られた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鬼小島弥太郎が、毘(ひ)の字(じ)の旗と、日の旗の二旒(りゅう)を高々掲げていると、謙信はまた螺手(らしゅ)の宇野左馬介に命じて
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
総罷(ひ)業のため、専門の運転手や車掌は居らず、電気局の事務員や、技手、応援の青年団などが、臨時で、代りを勤めていることを知った。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「明八月二十三日、午前三時を期して、総罷(ひ)業を決行する」ことが、決定された。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「丕(ひ)よ、丕よ。ちょっと、妾のはなしを聞いておくれ。後生、一生のおねがいだから」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔その唐(から)の都の大道を、一時(あるとき)、その何でござりまして、怪しげな道人が、髪を捌(さば)いて、何と、骨だらけな蒼(あお)い胸を岸破々々(がばがば)と開けました真中(まんなか)へ、人(ひ)
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今の耳にも替(かわ)らずして、直(すぐ)其傍(そのそば)なる荒屋(あばらや)に住(すま)いぬるが、さても下駄(げた)の歯(は)と人の気風は一度ゆがみて一代なおらぬもの、何一(ひ)トつ満足なる者なき中にも盃(さかずき)のみ欠かけず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
惜しい事に真向(まむき)に座(すわ)った小野さんには分からない。詩人は感覚美を好む。これほどの肉の上げ具合、これほどの肉の退(ひ)き具合、これほどの光線(ひ)に、これほどの色の付き具合は滅多(めった)に見られない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
処(ところ)へ風(かぜ)を冐(ひ)いた人が常磐津(ときはづ)を語るやうな声(こゑ)でオー/\といひますから、何(なん)だかと思(おも)つて側(そば)の人に聞きましたら、彼(あ)れは泣車(なきぐるま)といつて御車(みくるま)の軌(きし)る音(おと)だ、と仰(おつ)しやいましたが、随分(ずゐぶん)陰気(いんき)な物(もの)でございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
火光閃めき炎々と冲(ひ)いりて天に映る時
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
支那(しな)で昔から行なわれた肉刑(にくけい)の主(おも)なるものとして、黥(けい)、劓(ぎ)(はなきる)、剕(ひ)(あしきる)、宮(きゅう)、の四つがある。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
黄巾(こうきん)の匪(ひ)、諸州に蜂起してより、年々の害、鬼畜の毒、惨として蒼生(そうせい)に青田(せいでん)なし。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文壇(ぶんだん)の論陣(ろんぢん)今や輕(けい)佻亂雜(らんざつ)卑(ひ)小に流(なが)れて、飽(あく)までも所信(しよしん)に邁進(まいしん)する堂(どう)々たる論客(きやく)なきを思(おも)ふ時、泡鳴(ほうめい)さんのさうした追憶(ついおく)も私(わたし)には深(ふか)い懷しさである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
平次の立つたのは俵屋の母屋(おもや)の奧、凹(くぼ)んだやうな建物の袖の下ですが、この邊はよく南陽(ひ)が當るので、曲者がお百度詣りをしたところで、足跡のつく心配はありません。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
多少人間らしい了簡(りょうけん)になって、宿の中へ顔を出したばかりであるから、魂が吸(ひ)く息につれて、やっと胎内に舞い戻っただけで、まだふわふわしている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこしうつむいた発田の青ぐろい横顔に、夕陽(ひ)がななめに射していて、発田の頬は玩具の色の反射で緑色に染っていた。
黄色い日日 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
あかるい 外燈(ひ)なぞは なほの ことだ。
年二十。考(こう)既ニ亡シ。マサニ遺命ヲ奉ジテ遊学セントスルヤ、妣(ひ)コレヲ戒メテ曰クワガ門中(なか)ゴロ𡉏(やぶ)ル。汝(なんじ)当(まさ)ニ勉学シテ再興スベシ。然ラザレバワレ汝ヲ子視セジト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「またあんなこというて騙(だま)すのや。……千代さんとこのお時さんは、天神さんのお姫(ひ)さんになつて、齋世親王(ときよしんわう)と牛車の中でな、……ほゝゝゝゝ。」と、京子は若い娘のするやうに、科(しな)を作つて
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ばやと思(おも)ふ事(こと)久(ひさ)しけれど、孤(ひ)
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「結構だ、しかし隊長はもうよそう」来太は吉村家で借りて着た背広の前を寛(ひ)ろげながらそう云った
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もしあの時、西八条へ一筋の矢でも射(ひ)いてから法皇が、その軍勢のうしろにおいでになると分ったら、清盛の手は、院中にまでのびて、勢い、法皇のおん身にまで、どんな禍(わざわい)を及ぼしたか分らない。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現在百貨店が配達網を八方に布(ひ)き、また遠方には配給所を設けて、専らその合理化につとめていても、なおその費用の莫大なのに当惑しているときくが、まことにさようであろうと案ぜられる。
すると曹操は、自ら法を出して、自ら之を犯す、何を以て、兵を帥(ひ)きいんやと、自分の髪を切って地に置いたという。……重治、これはいつか其方から聞いた話だったな
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともすぽつんとたつ塔は遠く、風の力は一片の帆におさまる、海は平らかにといしのごとく、旅客の心はしばし鴎にも似る、いつの年(ひ)かかならずやあいたすけるべく、みだりに欧州のことは説うまい。
欧米各国 政教日記 (新字新仮名) / 井上円了(著)
花里さんの廃(ひ)くのは瀬川さんたア一緒にならないわ、あんなに血道をあげてる伊之さんてえ情人(ひと)があるんだから、海上さんは踏台にされるに違いないのよ
極力噛み付いたので虎大いに驚き吼え走ってその人脱(のが)るるを得た、またいわく胡人虎を射るにただ二壮士を以て弓を彀(ひ)き両頭より射る、虎を射るに毛に逆らえば入り毛に順(したが)えば入らず
余所(よそ)の子供の世話を焼く隙(ひま)に、自分の児(こ)に風邪を感(ひ)かせないように、外国の奴隷に同情をする心で、御自分お使いになる女中を勦(いたわ)ってやって欲しいんですが、これじゃ大掴(おおづか)みのお話です
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
明神下の畦徑(あぜみち)を提籃さげた敏雄の手を扶(ひ)いて歩いてゐると、お隣の金さん夫婦がよち/\歩む子供を中にして川邊(かはべ)りの往還を通つてゐるのが見えました。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
さりとて無情(つれなく)は投(なげ)かへしもせねど、披(ひ)らきて讀(よ)みしや否(いな)や甚(じん)之助(すけ)が答(こた)へぶりの果敢(はか)なさに、此度(このたび)こそと書(かき)たるは、長(なが)さ尋(ひろ)にあまり思(おも)ひ筆(ふで)にあふれて、我(わ)れながら斯(か)くまでも迷(まよ)ふ物(もの)かと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼は振り返えって言うには「水生(シュイション)や旦那さまに頭を下げないかい」そこで後(うしろ)に身をかくしていた幼子を抱(ひ)き出した。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
しかし「さあ、七銭からとお銭、飛んで十と五銭——」と弾(はず)んで、競(せ)り声を立てゝいる酒問屋の息子の手に品物が拈(ひ)ねられる度びに、本能的に、きらりと光る注意の眼が品物に注がれました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あるいは欧洲において、同志を糾合(きゅうごう)して、「少年欧羅巴(ヨーロッパ)」党を組織し、あるいは本国において、蜂起者(ほうきしゃ)を募り、以て恢復の途を拓(ひ)らき、その画策(かくさく)の神秘、大胆、危険、雄放なる
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
疳(かん)、僻(ひが)み、意地、利(き)かぬ気、疑惑、あらゆる弱点が、穏かな眼鼻をさんざんに弄(もてあそ)んだ結果、こう拗(ひ)ねくれた人相になったのではあるまいかと自分は考えた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大王にしては少々言葉が卑(いや)しいと思ったが何しろその声の底に犬をも挫(ひ)しぐべき力が籠(こも)っているので吾輩は少なからず恐れを抱(いだ)いた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
河原乞児(かはらこじき)の尤も幼稚なりし時に、其好趣(かうしゆ)は戦国的の勇壮なるローマンス風のものにて、例せば盗賊を取りて主人公となし、之れに慈憐の志を深うせしめ、彊(きやう)を捍(ひ)しぎ、弱を助くる義気に富ましめ
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
メーテルリンクの「沈黙」は何だか怖ろしくて厭やですね、——そんなことを云ひながら、机の上の鏡台をのけて、私は彼女の眉を描(ひ)いた、注意深く。
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
「鹿角(かづの)打ったる冑(かぶと)を冠り紺糸縅(こんいとおどし)の鎧(よろい)を着、十文字の鎗(やり)提(ひ)っさげて、鹿毛なる駒(こま)に打ち跨(また)がり悠々と歩ませるその人こそ甚五衛門殿でございました」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小翠は戸を閉めて、また元豊を扮装(ふんそう)さして項羽(こうう)にしたて、呼韓耶単于(こかんやぜんう)をこしらえ、自分はきれいな着物を着て虞(ぐ)美人に扮装して帳下の舞を舞った。またある時は王昭君(おうしょうくん)に扮装して琵琶を撥(ひ)いた。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
五三仏菩薩の教(をしへ)の広大なるをもしらず、愚かなるまま、五四慳(かだま)しきままに世を終るものは、其の五五愛慾邪念の五六業障(ごふしやう)に攬(ひ)かれて、或は五七故(もと)の形(かたち)をあらはして恚(いかり)を報(むく)い
それから一座の友達どもも決して敗(ひ)けは取らないで、どっと閧の声を上げて笑い崩れた。
秋の蜻蛉(とんぼ)が盛んに町の空を飛んだ。塩瀬の店では一日の玉高(ぎょくだか)の計算を終った。後場(ごば)は疾(と)うに散(ひ)けた。幹部を始め、その他の店員はいずれも帰りを急ぎつつあった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すると棕隠は即座に「斐(ひ)たる君子と誰か見るべき」とつけたというのである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それが爲に佛教に反對し施(ひ)いて聖徳太子にも反對する所の儒者でさへも、聖徳太子の作者たるの點に於ては異議が無いので
聖徳太子 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
この離座敷へも、午後の春陽(ひ)は射して来ていて、柱の影を、畳へ長く引いていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其で、この山陰の一つ家に居ても、溜(た)め息(いき)一つ洩(もら)すのではなかった。昼(ひ)の内此処へ送りこまれた時、一人の姥(うば)のついて来たことは、知って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
門々(かどかど)の松は除かれて七八日(ななやうか)も過ぎぬれど、なほ正月機嫌(きげん)の失せぬ富山唯継は、今日も明日(あす)もと行処(ゆきどころ)を求めては、夜を晷(ひ)に継ぎて打廻(うちめぐ)るなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
月毛の馬は 暉(ひ)にむかひ
短歌集 日まはり (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
『唐代叢書』五冊に収めた『開元天宝遺事』に、〈楊国忠(ようこくちゅう)出でて江浙に使し、その妻思念至って深し、荏苒(じんぜん)疾くなり、たちまち昼夢国忠と○、因って孕むあり、後に男を生み朏(ひ)と名づく
次の朝(ひ)下婢(はしため)あはて告げぬ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
八重「半治はん誠にほ前(めえ)は悪(はり)いよう、ほれじゃア済(ふ)まねえよ、私(ふァたい)も此家(ほゝ)へ来(ひ)ているに、ほ前(めえ)がほんな事(ほと)をひてや親分(ほやぶん)に済(ふ)まねえよ、小兼(ほはね)はんに今(ひま)になって帰(へえ)れってえ、ほれじゃア可愛(ははひ)ほうだアへえ」
桧(ひ)の梭(さお)の飛び交うひまに
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
竹垣や桶(ひ)の尻干(かわく)くりの花 可吟
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ここを以ちて大殿破(や)れ壞(こぼ)れて、悉に雨漏れども、かつて修理(をさ)めたまはず、楲(ひ)一〇をもちてその漏る雨を受けて、漏らざる處に遷り避(さ)りましき。後に國中(くぬち)を見たまへば、國に烟滿ちたり。
凄(すご)い、美しいお方のことをおききなすって、これが時々人目にも触れるというので、自然、代官婆の目にもとまっていて、自分の容色(きりょう)の見劣りがする段(ひ)には、美しさで勝つことはできない
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まるで胸の中も涸(ひ)あがってしまいました、あれの小さい着物を見ては泣き、シャツや靴を見ては泣くのでございます。
『書紀』の一書の素盞嗚尊(すさのおのみこと)の悪業を列挙した条に「春はすなわち渠槽(ひ)を廃し及び溝を埋め畔(あぜ)を毀(こぼ)ちまた種子を重播す、秋はすなわち籤(くじ)を挿し馬を伏す、およそこの悪事かつて息(やす)む時なし」
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
浸しては晒(さら)し、晒しては水に漬(ひ)でた幾日の後、筵(むしろ)の上で槌(つち)の音高く、こもごも、交々(こもごも)と叩き柔らげた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
藻の花のしろきを摘むと山みづに文がら濡(ひ)ぢぬうすものの袖
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「今までにない尺二寸の大玉へ、色も、今までに誰も出したことのない、赤と紫の火光(ひ)を仕込んで、三河の者を、驚かしてやるんだといって、それはもう、お気の毒なくらい懸命になっております」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各自(めいめい)に出されてある火桶に、炭火(ひ)は充分にいけられていたが、広い部屋は、それだけでは暖まらないのであろう。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああ烈(ひ)で風だ。今度はすっかりやらへる。一郎。ぬれる、入れ。」
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二、三秒、暗黒に慣れた瞳が眩(くら)んだ。やがてのこと、青白い耀(ひか)りに照らし出された井戸の底に、水はなくても焔(ひ)が燃え、人の形のかすかに動いているのが、八丁堀三人の視線を捉えた。
そこへ蹲(うずくま)って、カチカチと燧(ひ)を切りはじめました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然(しか)しあの時分はそうでなかった。不孝の子であるように言われてみると甚(ひ)どくそれが気にかかる。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
平田は上を仰(む)き眼を合(ねむ)り、後眥(めじり)からは涙が頬へ線(すじ)を画(ひ)き、下唇(したくちびる)は噛まれ、上唇は戦(ふる)えて、帯を引くだけの勇気もないのである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
林氣𤸇(りう)多く、木氣傴(く)多く、岸下の氣腫(しゆ)多く、石氣力多く、嶮岨の氣癭(えい)多く、谷氣痺(ひ)多く、丘氣狂多く、陵氣貪(たん)多く、衍氣仁多く、暑氣夭(えう)多く、寒氣壽多くなどと説いて居る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
馬の背のような尾根を直(ひ)た上りに登って行く、登るに随うて大樹が次第に稀疎となって、熊笹がだんだん勢を逞(たくましゅ)うして来る、案内の人夫連は間断なく熊笹や灌木を切り明けて進む
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
でも食卓の周囲なぞは楽しくした方で、よくその食堂の隅(すみ)のところに珈琲を研(ひ)く道具を持出して、自分で煎(い)ったやつをガリガリと研いたものだ。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
尤(もっと)も、大門通りは名のごとく万治の昔、新吉原へ廓(くるわ)が移(ひ)けない前の、遊女町への道筋の名であるゆえか、大伝馬町、油町、田所町、長谷川町、富沢町と横筋にも大問屋を持つ五
夫(それ)ハ三日路も外遠き所に居候より其まゝニおき候所、ふと蔵ハ外の用事ニて私しのやどへまいり、たがいに手お(を)うち候て、天なる哉/\、きみよふ(奇妙)/\と笑申(ひ)候。
どこをどのように歩いたものか、ほのぼのと四辺が明るいのでハッと驚いて前方を見ると、何んということだ、眼の前に土人部落の例の広場が篝(ひ)に照らされて拡がっている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その顔は死相と紙一(ひ)ト重(え)の白さだ。生き物の必死がしめす或る凄気(せいき)さえおびている。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その列国を往来するや、駒を牽(ひ)き鷹を臂(ひ)し、従者おおかた一百人、まことに堂々たるものであり、その権式に至っては武将大名と等しかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
所謂流言蜚(ひ)言は、横浜の山口正憲と云う壮士が云い始めた由。されど、その流言を信じるあれだけの暗示、先入主が、市民、国民にあったことの悲しむべき恐るべきことは、誰も強調するものはない。
支那やインドで竜王を拝して雨を乞うたは主(おも)にこれに因ったので、それより衍(ひ)いて諸般の天象を竜の所為(しわざ)としたのは、例せば『武江年表』に、元文二年四月二十五日外山(とやま)の辺より竜出て
行参軍裨(ひ)将軍 杜義(とぎ)
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとたちまち、あたりは暗くなり、雲のごとき気流のうちから、数千の豼貅(ひきゅう)(大昔、中国で飼い馴らして戦場で使ったという猛獣のこと、豼(ひ)は雄(おす)、貅(きゅう)は牝(めす))
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れて跛(ひ)なりしかば、悪(にく)む者チムールレンク(Timurlenk)と呼ぶ。レンクは跛(ひ)の義の波斯(ペルシヤ)語なり。タメルランの称これによって起る。人となり雄毅(ゆうき)、兵を用い政(まつりごと)を為(な)すを善(よ)くす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
車を宙に輾(ひ)くごとし。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛(あい)ちやんは其處(そこ)に彼等(かれら)の這(は)ひ廻(まは)るのを見(み)て、偶々(たま/\)自分(じぶん)が以前(まへ)の週(しう)に、數多(あまた)の金魚鉢(きんぎよばち)を轉(ひ)ッ覆(くりか)へした時(とき)の態(ざま)を想(おも)ひ起(おこ)しました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
子磬(けい)を衞に撃つ、簣(き)を荷いて孔子の門を過ぐる者あり。曰く、心あるかな磬を撃つやと。既にして曰く、鄙(ひ)なるかな硜硜乎(こうこうこ)硜たり。己を知るなくんば、斯れ已まんのみ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
不純酸化コバルトを王水(アクア・リージア)に浸し、その四倍の重量の水に薄めたものが、ときどき用いられる。すると緑色が出る。コバルトの鈹(ひ)(11)を粗製硝酸に溶かしたものだと、赤色が出る。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
「やよ、各〻、飛(ひ)ン騨(だ)踊りじゃ。——藤次どの、唄たのむ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内に眠っている事業に圧迫せられるような心持である。潜勢力の苦痛である。三国時代の英雄は髀(ひ)に肉を生じたのを見て歎(たん)じた。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「噂ほどのものはありゃしない。𨫤(ひ)のうちなんて、てんで見えやしねえ」と萩野は、濡れた草履を叢にバタバタさせながら言った。
恨なき殺人 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)