“す”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ス
語句割合
直7.0%
据7.0%
透6.1%
摺5.4%
棲4.9%
過4.8%
棄4.8%
擦4.7%
住4.0%
好3.9%
空3.0%
澄3.0%
捨2.8%
巣2.7%
酸2.2%
拗2.2%
吸2.1%
磨1.9%
梳1.9%
済1.5%
為1.5%
喫1.5%
素1.5%
洲1.2%
酢1.1%
濟1.1%
掏1.0%
饐1.0%
統0.9%
隙0.9%
摩0.8%
助0.8%
簀0.6%
総0.5%
爲0.5%
栖0.5%
清0.4%
漉0.4%
捐0.4%
刷0.4%
鋤0.4%
剃0.3%
腐0.3%
擂0.2%
荒0.2%
醋0.2%
簾0.2%
凡0.2%
坐0.2%
賺0.2%
嗜0.2%
辷0.2%
退0.2%
滑0.2%
数0.1%
舎0.1%
終0.1%
居0.1%
耗0.1%
綜0.1%
吮0.1%
少0.1%
渚0.1%
減0.1%
網0.1%
州0.1%
廃0.1%
演0.1%
鬆0.1%
都0.1%
掬0.1%
縋0.1%
座0.0%
而0.0%
損0.0%
啜0.0%
潜0.0%
耡0.0%
釈0.0%
已0.0%
主0.0%
冷0.0%
掠0.0%
數0.0%
窠0.0%
全0.0%
去0.0%
弃0.0%
掏摸0.0%
撤0.0%
渾0.0%
点0.0%
然0.0%
犁0.0%
犂0.0%
真0.0%
總0.0%
衆0.0%
置0.0%
結0.0%
縮0.0%
し0.0%
仕0.0%
先0.0%
冴0.0%
凄0.0%
凝0.0%
勝0.0%
厭0.0%
吃0.0%
吹0.0%
吻0.0%
喫煙0.0%
嗜好0.0%
囲0.0%
壽0.0%
委0.0%
子0.0%
家0.0%
寿0.0%
強0.0%
往0.0%
急0.0%
成0.0%
抄0.0%
拆0.0%
挲0.0%
接0.0%
掻0.0%
摠0.0%
摸0.0%
敏0.0%
敗0.0%
斬0.0%
施0.0%
既0.0%
条0.0%
櫛0.0%
欲0.0%
止0.0%
潰0.0%
炭0.0%
炷0.0%
煤0.0%
狡0.0%
着0.0%
知0.0%
磋0.0%
礎0.0%
移0.0%
竦0.0%
箝0.0%
管0.0%
綰0.0%
編0.0%
者0.0%
臼0.0%
萎0.0%
虚0.0%
行0.0%
裾0.0%
褄0.0%
触0.0%
謄0.0%
費0.0%
跣0.0%
軼0.0%
速0.0%
過了0.0%
酸敗0.0%
釋0.0%
鉏0.0%
鋭0.0%
鍬0.0%
間0.0%
頓0.0%
餒0.0%
餧0.0%
𧋬0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
出(で)て來(こ)られる都合(つがふ)ならば又(また)今(いま)までのやうにお世話(せわ)に成(な)りに來(き)まする、成(な)るべくは鳥渡(ちよつと)たち歸(かへ)りに直(す)ぐも出京(しゆつけう)したきものと輕(かる)くいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どうせ文鳥を飼うなら、こんな暖かい季節に、この縁側へ鳥籠を据(す)えてやったら、文鳥も定めし鳴き善(よ)かろうと思うくらいであった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
逆光線になったM子さんの姿は耳だけ真紅(しんく)に透(す)いて見えます。僕は何か義務に近いものを感じ、M子さんの隣に立つことにしました。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
摺(す)れちがう事が出来ないくらいな狭い道で、五六歩行くごとに曲っているが、両側とも割合に小綺麗な耳門(くぐりもん)のある借家が並んでいて
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鱶の棲(す)む恐しい海。南洋に近いとはいえ、夜の波はつめたい。……いやないやな死神の手が、わが清君をつかむのではないだろうか?
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
二郎(じろう)は、そのおじいさんを見(み)ていますと、おじいさんは、二郎(じろう)のわきへ近(ちか)づいて、ゆき過(す)ぎようとして二郎(じろう)の頭(あたま)をなでてくれました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼はその後も彼の異様な恋情を棄(す)てなかったばかりか、それは月日がたつに従って、愈々(いよいよ)濃(こまや)かに、愈々深くなりまさるかと思われた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんな事を云い合っているうちに一人がマッチを擦(す)って葉巻に火を点(つ)けたようなの。間もなく美(い)い匂いがプンプンして来たから……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「わたしは新羅(しらぎ)の国(くに)からはるばる渡(わた)って来(き)た天日矛命(あまのひぼこのみこと)というものです。どうぞこの国(くに)の中で、わたしの住(す)む土地(とち)を貸(か)して頂(いただ)きたい。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それでも夏はそれほどひどくは気にならないけれど冬羽織着物、下着、半衿とあんまり違(ちが)う色を用(つか)うのは千世子は好(す)いて居なかった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ある時家族じゅうで北国のさびしい田舎(いなか)のほうに避暑に出かけた事があったが、ある晩がらんと客の空(す)いた大きな旅籠屋(はたごや)に宿(とま)った時
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
(いゝえ誰(たれ)も見(み)て居(を)りはしませんよ。)と澄(す)まして言(い)ふ、婦人(をんな)も何時(いつ)の間(ま)にか衣服(きもの)を脱(ぬ)いで全身(ぜんしん)を練絹(ねりぎぬ)のやうに露(あら)はして居(ゐ)たのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「おかあさんを捨(す)てたのはやはりわたくしが悪(わる)うございました。こんどはどんなにしてもおそばについてお世話(せわ)をいたしますから。」
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうだ、これを弟(おとうと)に見(み)せてやろう。そして、りこうなはちが、どうして巣(す)を造(つく)り、また子供(こども)を育(そだ)てるのに苦心(くしん)するかを教(おし)えてやろう。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
林檎のように種類の多いものは皮の色を見て味を判定することが出来ぬが、ただ緑色の交っている林檎は酸(す)いという事だけはたしかだ。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
と先例(しきたり)のごとく言い放ちて光代は拗(す)ね返りぬ。善平はさらに関せざるもののごとく、二言めには炭山がと、心はほとんど身に添わず。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
世界大地震(せかいだいぢしん)の記事(きじ)に於(おい)て、人畜(じんちく)を吸(す)ひ込(こ)むほどの地割(ぢわ)れの開閉現象(かいへいげんしよう)が起(おこ)つたのは、著者(ちよしや)の鋭意(えいい)調(しら)べた結果(けつか)、以上(いじよう)の三回(さんかい)のみである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
女が心づいて、水指の中へ墨を磨(す)って入れておいた、平中はそうとは知らず、その墨の水で眼を濡らしたので、女が平中に鏡を示して
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お婆さんはまずブラシで、メリーの頭から、頸、肩、背、腰、肢(あし)という順に丹念にマッサージをして、それから金櫛(かなぐし)で丁寧に梳(す)いた。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
『ええ只今(ただいま)、足下(そっか)に御関係(ごかんけい)のある事柄(ことがら)で、申上(もうしあ)げたいと思(おも)うのですが。』と、市役所員(しやくしょいん)は居並(いなら)ぶ人々(ひとびと)の挨拶(あいさつ)が済(す)むとこう切(き)り出(だ)した。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『前後の思慮もなく、御在庫の現金を、みな払い出すのが、殿のお心をもて為(す)る事だなどとは、頭が、ちと何うかして居られはせぬか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は忙しく煙草を詰めて二三服立て續けに喫(す)ふと、夕立の後で庭へ出て來る蟇蛙のやうに、後ろ手を突いて大きく息をしました。
やがて、瘤(こぶ)ヶ峰(みね)のてッぺんにある、天狗(てんぐ)の腰掛松(こしかけまつ)の下にたった竹童(ちくどう)は、素(す)ッ頓狂(とんきょう)な声をだしてキョロキョロあたりを見まわしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮川と汐合川(しおあいがわ)の流れ出したところが長く洲(す)になっていました。大湊の町の町並は点(とも)しつらねた人家の灯(ひ)で丁字形(ていじがた)になっていました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
籾(もみ)を搗(つ)くきねが二三本床に転がっているばかりで柱ももはや朽ち始めていた。酢(す)に似た匂いがうっすらと四辺に立ちこめていた。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
『えゝ只今(たゞいま)、足下(そくか)に御關係(ごくわんけい)の有(あ)る事柄(ことがら)で、申上(まをしあ)げたいと思(おも)ふのですが。』と、市役所員(しやくしよゐん)は居並(ゐなら)ぶ人々(ひと/″\)の挨拶(あいさつ)が濟(す)むと恁(か)う切(き)り出(だ)した。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
が、いずれも同じことで、中味は綺麗に掏(す)り替えられ、砂利と金物の屑を詰めて、巧みに看貫(かんかん)(重量)を誤魔化(ごまか)しただけの事です。
いわゆる貸間長屋(デネメントハウス)というやつで、一様に同じ作りの、汚点(しみ)だらけの古い煉瓦(れんが)建てが、四六時中細民(さいみん)街に特有な、あの、物の饐(す)えたような
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかし、駆黴剤(くばいざい)の浸染(しみ)はかくし了(おお)せぬ素姓をいう……、いまこの暗黒街を統(す)べる大顔役(ボス)二人が、折竹になに事を切りだすのだろう。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
帰りはもう自由だからみんなで手をつながなくてもいいんだ。気の合った友達と二人三人ずつ向うの隙(す)き次第出掛(でか)けるだろう。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「どこへ行くのです」と云うと、「じきそこの柔術の先生の所へ行くのだよ。例のはいずれそのうち」と云って摩(す)り抜けて行った。
雁 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
助(す)けて働く面々も、すぐり抜きたる連中(れんじゅう)が腕に縒(より)否襷(たすき)を懸けて、車輪になりて立廻るは、ここ二番目の世話舞台、三階総出(そうで)大出来なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……掬(すく)い残りの小(ちゃっ)こい鰯子(いわしこ)が、チ、チ、チ、(笑う。)……青い鰭(ひれ)の行列で、巌竃(いわかまど)の簀(す)の中を、きらきらきらきら、日南(ひなた)ぼっこ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外国人に関する条規は総(す)べてこれを削除すること、また皇室に対する罪はこれを設くることを上奏を経て決定したる旨を宣告した。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
然(さ)うして、何(な)んだツて馬鹿(ばか)な、土方(どかた)の眞似(まね)見(み)たいな事(こと)を爲(す)るんだらうと言(い)ふ侮辱的(ぶぢよくてき)の顏(かほ)が、あり/\と焚火(たきび)の煙(けむり)の間(あひだ)から見(み)えるのである。
見れば、夜鴉の栖(す)を根から海へ蹴落(けおと)す役目があるわ。日の永い国へ渡ったら主の顔色が善くなろうと思うての親切からじゃ。ワハハハハ
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
春は俗を狂せしむるに宜(よけ)れど、秋の士を高うするに如(し)かず。花の人を酔はしむると月の人を清(す)ましむるとは、自(おのづ)から味(あじはひ)を異にするものあり。
秋窓雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
さすがに、そのあたりからは家もなく、荒地や刈田がひろびろと展開し、あちらこちらに海苔(のり)漉(す)き小屋が建っているだけ、という風景になった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
右は故鷲津毅堂の所蔵なりし趣、過(すぐ)る御通信中斎藤君の大金を捐(す)てゝ加納屋より得られたる画帖(がじょう)も本は毅堂の所有品なりしとの事。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おまえには、新(あたら)しい問題(もんだい)をやらない。」と、いって宿題(しゅくだい)の刷(す)ってある紙(かみ)をお渡(わた)しになりませんでした。そのうちに、暑中休暇(しょちゅうきゅうか)となりました。
宿題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
百坪足らずの前庭はいちめん茶色に枯れ縮んだ芝生におおわれているが、その一部にひとところ新しく土の鋤(す)き返された所がある。
花咲かぬリラ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
長江の鼻毛を剃(す)った剃刀(かみそり)で鼻毛を剃られたら危険である、ということで、われわれは長江の行きつけの床屋を調べたりしたことがあった。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
摺鉢(すりばち)に箒が立っていたり、小丼(こどんぶり)に肌着がかぶせてあったり、そして、腐(す)えたような塵埃のにおいが柱から畳と部屋じゅうにしみわたって
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私は塩たれたメリンスの帯の結びめに、庖丁(ほうちょう)や金火箸(かなひばし)や、大根擂(す)り、露杓子(つゆじゃくし)のような、非遊離的(ひゆうりてき)な諸道具の一切(いっさい)を挟(はさ)んだ。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
一酌すれば明りの燭光を増したごとく周圍に清新を加へて來るが、荒(す)さびた心にならうとは思はない。微醺を尊ぶこと、ペンにインキを濡らす程度。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
「醤ニ清濃ノ分アリ、油ニ葷素(くんそ)ノ別アリ、酒ニ酸甜(さんてん)ノ異アリ、醋(す)ニ陳新ノ殊アリ、糸毫(しごう)モ錯誤スベカラズ……」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母子(おやこ)はとうに部屋の簾(す)を垂れて、その声にも姿をみせず、また返辞の要もないので、去り行く足音だけを黙って聞いていたのであった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凡(す)べて神聖(しんせい)な物(もの)の終(はて)は悦(よろこび)に在(あ)る。われらが主(しゆ)の君(きみ)はこの紅(あか)い茨(いばら)の上(うへ)に、このわが口(くち)に、わが貧(まづ)しい言葉(ことば)にも宿(やど)つていらせられる。
主人の仁太郎氏は丁度留守で大振りの欅(けやき)の長火鉢の前にはお寿賀さんばかりが坐(す)わっていたが私を見ると頷いて見せた。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
両刑事は彼をどうかして自白させようと、或いは脅し、或いは誑(だま)し賺(す)かして妻子を枷(かせ)に彼を釣ったかも知れない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
僕も矢張、牛肉党に非ず、馬鈴薯党にあらずですなア、然し近藤君のように牛肉が嗜(す)きとも決っていないんです。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ちょいと、あなた、眠ってんのッ? てな事を云ッて、いきなりベッドの中に、辷(す)べり込んで、死人を抱きしめて、夢中で接吻したんでさア。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
いらざるおせッかいといわぬばかりに、愍笑(びんしょう)をくれたので、新田の老臣は、顔あからめて、あの時は退(す)ッこみおった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、間遠い魚の影が、ひらりと尾鰭(ひれ)を翻(ひるがえ)して、滑(す)べらかな鏡の上には、泡一筋だけが残り、それが花瓣のような優(しと)やかさで崩れゆくのだった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
平常(いつも)のように平気の顔で五六人の教師の上に立ち数(す)百の児童を導びいていたが、暗愁の影は何処(どこ)となく彼に伴うている。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
曰く、犂牛(りぎゅう)の子(し)、騂(あか)くして且つ角よくば、用うること勿(な)からんと欲すといえども、山川其れ諸(これ)を舎(す)てんやと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
行儀作法(ぎゃうぎさはふ)の生粹(きっすゐ)ぢゃありやせん、でも眞(ほん)の事(こと)、仔羊(こひつじ)のやうに、温和(おとな)しい人(ひと)ぢゃ。さァ/\/\、小女(いと)よ、信心(しんじん)さっしゃれ。……え、もう終(す)みましたかえ、お晝(ひる)の食事(しょくじ)は?
取調べられ三次が白状の趣(おもむ)きを申聞らるゝに長庵心中に是はと仰天(ぎやうてん)なせしかども急度(きつと)腹(はら)を居(す)ゑ是(これ)とても更に知らずとの申立によりて又もや三次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はそのとき二人の間に漂うた涙のない、耗(す)り切れたような悲哀と、また理解と厳粛とをあなたに味わわせたいと思う。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
劉秉忠は学(がく)内外を兼ね、識(しき)三才を綜(す)ぶ、釈氏(しゃくし)より起(おこ)って元主を助け、九州を混一(こんいつ)し、四海を併合す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
貫一は唯胸も張裂けぬ可く覚えて、言(ことば)は出(い)でず、抱(いだ)き緊(し)めたる宮が顔をば紛(はふ)り下つる熱湯の涙に浸して、その冷たき唇(くちびる)を貪(むさぼ)り吮(す)ひぬ。宮は男の唾(つばき)を口移(くちうつし)に辛(から)くも喉(のど)を潤(うるほ)して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
偽(うそ)が少(す)くないとか、親切なとか、云はば普通の女の普通の取なしの外に何(なに)が男をひきつけるものがあつたであらうか。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
夏麻引(なつそび)く海上潟(うなかみがた)の沖つ渚(す)に船はとゞめむさ夜ふけにけり
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この一年程以前からあの傳造の賽(さい)の目の出が急にわるくなつて、瞬く間に財産の大半をば減(す)つてしまつたとかいふことで
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
こは大なる古刹(ふるでら)にして、今は住む人もなきにや、床(ゆか)は落ち柱斜めに、破れたる壁は蔓蘿(つたかずら)に縫はれ、朽ちたる軒は蜘蛛(くも)の網(す)に張られて、物凄(ものすご)きまでに荒れたるが。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
河原のいちばん下流の方へ州(す)のようになって出たところに人の集りがくっきりまっ黒に立っていました。ジョバンニはどんどんそっちへ走りました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
予が選び挙げておいた人々をよく用い、一短あり一部欠点はある人物とてみだりに廃(す)てるようなことはせぬがいい。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
姉娘を演(す)る優(ひと)のないには困りました。源之助で不可(いけず)、門之助で不可、何分にも適当の優(ひと)が見当らないので、結局寿美蔵(すみぞう)に廻りましたが、本来は宗之助か秀調(しゅうちょう)という所でしょう。
青や赤の縞になつたのをこつきり噛み折つて吸つてみると鬆(す)のなかから甘い風が出る。いちばん好きなのは肉桂棒といふのだつた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
一鴉鳴き過ぎて、何心ぞ、我を攪破(かうは)する。忽(たちま)ち悟る人間十年の事、都(す)べて非なるを。指を屈すれば友輩幾個白骨に化し、壮歳久しく停まらざらんとす。逝(ゆ)く者は逐ふ可からず。来る者は未だ頼み難し。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
将軍の佩刀(はかせ)、——東照宮伝来という由緒のある品が、偽物と掬(す)り替った上、そのために世上の口に上る騒ぎまで起しては、係の役人の面目が立たないことになるのです。
どうして何時迄(いつまで)も過去を夢見て——あった日の貧弱な全盛に縋(す)がって、獅噛(しが)みついてなんかいるのだろう?
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右の八幡の神楽組かつて附馬牛村に行きて日暮(ひぐ)れ宿を取り兼ねしに、ある貧しき者の家にて快(こころよ)くこれを泊(と)めて、五升桝(ます)を伏せてその上にゴンゲサマを座(す)え置き、人々は臥(ふ)したりしに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「一體俺は何んだえ?」といふ疑も出て來る……而(す)ると熱(ほて)りきツてゐた頭が急に冷めたやうな心地もする。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「——その上この十日ばかり、張って張って張り捲(まく)ったそうだから、三文博奕(ばくち)にしても、五両や十両は損(す)っているそうですよ」
それが恐ろしい顎(あぎと)を海にぺたりと漬けて、音も立てずに油のやうに凝(こ)つた水を啜(す)つてゐるかと思はれる。
センツアマニ (新字旧仮名) / マクシム・ゴーリキー(著)
潜(す)んだと思ふたらちよいと消えた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこは田に挾(はさ)まれた村道で、向うに古い神社の森があり、周囲は青々と麦の伸びた畑や、林や、土を耡(す)き返した田などが続き、遠く土を打っている農夫の姿が、二三見えるほかには
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
民も又戦国の民なれば、一三六耒(すき)を釈(す)てて矛(ほこ)に易(か)へ、一三七農事(なりはひ)をこととせず。士たるもの枕を高くして眠(ねむ)るべからず。今の体(さま)にては長く不朽(きう)の政(まつりごと)にもあらじ。
我は已(す)でに冬の寒さに慣れたり、慣れしと云ふにはあらねど、我はこれに怖るゝ心を失ひたり、夏の熱さにも我は我が膓(はらわた)を沸かす如きことは無くなれり、唯だ我九膓を裂きて又(ま)た裂くものは
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
天台大師ハ能化(のうけ)ノ主(す)
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
タダの奉公人でも追出すような了簡(りょうけん)で葉書一枚で解職を通知したぎりで冷(す)ましているというは天下の国士を任ずる沼南にあるまじき不信であるというので
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
実は喜撰を掠(す)られたので俺もひどく悄気(しょげ)たものさ。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兩岸の人家低く高く、山に據(よ)り水に臨む其數(かず)數(す)百戸。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『本草綱目』に越地(えつち)深山に治鳥(じちょう)あり、大きさ鳩のごとく青色で樹を穿(うが)って窠(す)を作る、大きさ五、六升の器のごとく口径数寸餝(かざ)るに土堊(どあ)を以てす、赤白相間(あいまじ)わり状射候(まと)のごとし。
眼のさきの全(す)べてをふさぎ、生きる希望を根こそぎさらい去るたった二百円の決定的な力、夢の中にまで二百円に首をしめられ、うなされ、まだ二十七の青春のあらゆる情熱が漂白されて
白痴 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
湖水の碧(みどり)なるを見るより、四一現(うつつ)なき心に浴(あ)びて遊びなんとて、そこに衣を脱(ぬ)ぎ去(す)てて、身を跳(をど)らして深きに四二飛び入りつも、彼此(をちこち)に游(およ)ぎめぐるに、幼(わかき)より水に狎(な)れたるにもあらぬが
若敖卒してのち母と共に䢵に畜(やしな)わるる間䢵子の女に淫し令尹(れいいん)子文を生んだ、䢵の夫人これを夢中に弃(す)てしむると、虎が自分の乳で子文を育った、䢵子田(かり)して見付け惧れ帰ると夫人実を以て告げ
それは先刻彼から財布と時計とを掏摸(す)られた中年の紳士であった。恰(あたか)も狂気した様にポケットからポケットへ手を突込んでは、大変だ大変だを繰返して躍る様な恰好をしていた。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
その可否のごときは吾輩賤人の議すべきでないが、社会の上層既にかかる因襲を廃せぬに、下層凡俗それ相応に鬼門の忌を墨守するを、吾輩何と雑言したりとて破り撤(す)てしめ得らりょうぞ。
過了(す)ギテ残雨朦(けむ)リ/江上九月尚風多シ/縄枢我ハ擬ス今ノ原子ニ/屋漏誰カ思ハン古ノ魯公ヲ/暮歳期有リテ床下ニ蟋アリ/故人信(たより)無シ水辺ノ鴻/一家渾(す)ベテ抱(いだ)ク悲秋ノ感/貧病相依ル風雨ノ中(うち)〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それ、利くであしょ、ここで点(す)えるは施行(せぎょう)じゃいの。艾(もぐさ)入(い)らずであす。熱うもあすまいがの。それ利くであしょ。利いたりゃ、利いたら、しょなしょなと消しておいて、また使うであすソ。それ利くであしょ。」と嘗(な)め廻す体(てい)に
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「然(す)ぢやで云(い)ふわい。これ、田舍𢌞(ゐなかまは)りの畫師(ゑかき)と、もの貰(もら)ひと、どれだけの相違(さうゐ)がある。はツ/\。」
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
荒彫のでろの葉かげの白い家田には女が犁(す)いてる春だ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼等は日ねもす小径(こみち)を掃いて砂を撒(ま)いたり、自分たちの手で犂(す)き起こした花壇や、胡瓜(キュウリ)や西瓜(スイカ)や甜瓜(メロン)の苗床の草むしりをしたり、水をやったりしていた。
おせんちゃんはおいらのお上(かみ)さんだよと、度重(たびかさ)なる文句(もんく)はいつか遊(あそ)び仲間(なかま)に知(し)れ渡(わた)って、自分(じぶん)の口(くち)からいわずとも、二人(ふたり)は真(す)ぐさま夫婦(ふうふ)にならべられるのが却(かえっ)てきまり悪(わる)く
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
足の形(かたち)でも腰(こし)の肉付(にくつき)でも、または胴(どう)なら乳(ちゝ)なら胸なら肩なら、總(す)べて何處(どこ)でもむツちりとして、骨格(こつかく)でも筋肉(きんにく)でも姿勢(しせい)でも好(よ)く整(とゝの)ツて發育(はついく)してゐた。加之(それに)肌(はだ)が眞(ま)ツ白(しろ)で滑々(すべ/″\)してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「お武家衆(す)様、泊るなら、こっちへ」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「地」というも勿論当時の地文学(ちもんがく)に循(したが)っての語であって、地球を意味せず、地を扁平(へんぺい)なものと見ての言(ことば)である。故に「地の基を我が置(す)えたりし時」というのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
地の基(もとい)を我が置(す)えたりし時なんじいずこにありしや、汝もし穎悟(さとり)あらば言え、汝もし知らんには誰が度量(どりょう)を定めたりしや、誰が準縄(はかりなわ)を地の上に張りたりしや、その基は何の上に置かれしや
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
広間に網を結(す)いて居た父も堪りかねたやうに「えへん。」と咳払した。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
平七は黙つて網を結(す)いて居た。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
目賀田さんと云うのと、のゝ字三つに念を入れて推されたので、恥しくもないことにぽっとし、お立ですよと婢が高く呼ぶと、ばた/\と男女二三人送りに出たのでまた縮(す)くみ
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
貞之進は重ね/″\の不首尾を他(ひと)は知らぬが自分が咎めて、もうちっと早く此芸妓が来てくれゝばと、縮(す)くみながらふと見るに、歳は十七八細面の色白、余は貞之進に見えて見えなかったが
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
きぎし(す)なく高円(たかまと)のへに桜花散り流らふる(て流らふ)見む(る)人もがも (巻十、春雑)
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
京子の来るまでの三日は何にも仕(す)る事が無い様な顔をしてやたらに待ちあぐんだ。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
時々、此の青っぽい白眼も奇麗に見える事があるけれ共、此頃の様なまとまらない様子をして居ると、眼ばっかりが生きて居る様な——何だか先(す)ぐ物にでも飛び掛りそうに見える。
秋毛 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その冴(す)みきったよく磨(みが)かれた青ぞらで、まっ白なけむりがパッとたち、それから黄いろな長いけむりがうねうね下って来ました。それはたしかに、日本でやる下り竜(りゅう)の仕掛(しか)け花火です。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
畳の飛散った坐板の上をそろそろ歩いて行くと、向うから凄(す)さまじい勢で妹が駈(か)けつけて来た。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
歯を噛(く)い緊(し)めてのけざまに顛覆(うちかえ)りたるが、血塗(ちまぶ)れの額越(ひたいご)しに、半ば閉じたる眼(まなこ)を睨(にら)むがごとく凝(す)えて、折もあらばむくと立たんずる勢いなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
八宗九宗の碩徳(せきとく)たち虎豹鶴鷺(こひょうかくろ)と勝(す)ぐれたまえる中にも絶類抜群にて、譬(たと)えば獅子王(ししおう)孔雀王(くじゃくおう)、我らが頼むこの寺の塔も絶類抜群にて、奈良や京都はいざ知らず上野浅草芝山内
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
子、南子(なんし)を見る。子路説(よろこ)ばず。夫子(ふうし)之(これ)に矢(ちか)いて曰く、予(われ)否(よからぬ)ところあらば、天之を厭(す)てん、天之を厭(す)てんと。(雍也、二八)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
佐「蒲田(かまだ)、君は好い莨(たばこ)を吃(す)つてゐるぢやないか、一本頂戴(ちようだい)」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
博士はほつと一息突いて、埃及烟草(エヂプトたばこ)に一本火を附けた。一吹(すひ)吹(す)うて、灰皿の上に置いて、今一息だといふので勇を鼓して、カラアやカフスやハンカチイフなどを革包に入れた。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
何ぞてしひりいないるを取り自ら己が身を打つて懺悔礼拝(ざんげらいはい)せざる。何ぞさんた、くるすを吻(す)ひて、偏(ひとへ)におらつしよを唱へざる。波羅葦増雲近づけり。祈りを上げよ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「うん」と出してやる、そして自分も煙草を出して、甲乙共(ふたりとも)、のどかに喫煙(す)いだした。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
先天的のビフテキ党だ、ちょうど僕のようなんだ。女は芋(いも)が嗜好(す)きなんていうのは嘘(うそ)サ!
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なぜか見苦しいほど慌(あわただ)しげで、蜘蛛(くも)の囲(す)をかけるように煩(うるさ)く夫人の居まわりを立ちつ居つ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へエ、竹の皮包にして、お壽(す)もじか何か持つて來た樣子です。お晝少し前でしたよ」
此処が槍の直下だろうとて、荷物を委(す)てて行こうとすると、もう一つ小峰があるとの事、で早々纏(まと)めてまた動き出す。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
×、××××××××××××××××××××××××××××××。××××××子(す)をじっと瞶(みつ)めながら、まだかまだか××××××××××。
『類函』四二九巻に陳氏義興山中に家(す)む、夜虎門に当って大いに吼(ほ)ゆるを聞き
「ヘエ、竹の皮包にして、お寿(す)もじか何か持って来た様子です。お昼少し前でしたよ」
なぜと云うに、縦(よ)しや強(す)ねてことわって見たい情はあるとしても、卑怯(ひきょう)らしく退嬰(たいえい)の態度を見せることが、残念になるに極(き)まっているからである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
子曰く、賜(し)や始めて与(とも)に詩をいうべきなり、これに往(す)ぎにしことをつぐれば来たらんことをも知るものなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「きょうも急(す)ぐには入らっしゃらなかったことから考えても、そう思われますもの。」
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お勢が笑らいながら「そんなに真面目(まじめ)にお成(なん)なさるとこう成(す)るからいい」とくすぐりに懸ッたその手頭(てさき)を払らい除けて文三が熱気(やっき)となり
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
足もと目掛けて飛び付く奴を、抄(す)くって刎(は)ねる棒の冴えに、空中高く刎ね上げられ、落ちるところをまた一刎ね! 脳天を砕かれて死んで行く。横一文字。岩石落し。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
須(すべから)く一死を拆(す)つべし
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼は襦袢(じゆばん)の袖(そで)の端(はし)に窃(そ)と眶(まぶた)を挲(す)りて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いま山中(さんちゆう)に接(す)む熊とは違つて、北海道産(ほつかいだうさん)で、何(ど)うしても多く魚類(ぎよるゐ)を食(しよく)するから、毛が赤いて。甚「へえー、緋縅(ひをどし)の鎧(よろひ)でも喰(く)ひますか。真「鎧(よろひ)ぢやアない、魚類(ぎよるゐ)、さかなだ。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
晴れた外気を映した明るい室(へや)には、メリンスの長襦袢(ながじゅばん)になった娘のお鶴が、前方(むこう)向きになって鏡台に向って髪を掻(す)いていた。母親似の額(ひたい)の出た赧(あか)ら顔が鏡に映っていた。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
歳(ほし)は大糜に次(やど)り、月は夾鐘に踵(あた)り三、清原の大宮にして、昇りて天位に即(つ)きたまひき。道は軒后に軼(す)ぎ、徳は周王に跨(こ)えたまへり。乾符を握(と)りて六合を摠(す)べ、天統を得て八荒を包(か)ねたまひき。
やって、こっそり摸(す)りかえさせたんです
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それはまったく、電光のような敏(す)ばやさで、ハッと感じた小保内も、剣を引く隙がなく、余勢が孔雀の心臓を貫いてしまった。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
座敷のすみには夜をふかして楽しんだらしい酒肴(しゅこう)の残りが敗(す)えたようにかためて置いてあった。例のシナ鞄(かばん)だけはちゃんと錠(じょう)がおりて床の間のすみに片づけられていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「どうする? ……諦めるなら綺麗(きれい)がいいし、四ツに斬(す)る気なら、つい川下流(かわしも)だ、舟でも、駕(かご)でも、出してやるが」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝夕の食膳のこまかい注意から、帝がもっとも嫌いな灸(やいと)でさえ、月々の七日灸(きゅう)は、いやおうなしに施(す)えてしまうなど、そんな芸は、廉子でなくばなしえない妙術だった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから人間は元始時代から既(す)でに、何か人外の異常なる恐ろしきものを恐れる本能を持ち、同時にそれを想像する事も一つの本能となったように思う。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
彼は、右の片足をしっかり捕えて居る繩の条(す)じ目を、ぼんやり痛く感じながら、静かに目を瞑って仰向きになって居るのである。
一条の縄 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お岩は体をふるわしながら鉄漿を付け、それから髪を櫛(す)きにかかったが、櫛(くし)を入れるたびに毛が脱けて、其の後から血がたらたらと流れた。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三に曰く、詔(みことのり)を承はりては必ず謹め、君(きみ)をば則ち天(あめ)とす。臣(やつこら)をば則ち地(つち)とす。天覆(おほ)ひ地載せて、四時(よつのとき)順(めぐ)り行き、万気(よろづのしるし)通ふことを得。地、天を覆はむと欲(す)るときは、則ち壊(やぶ)るることを致さむのみ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
先ずこのがやがやが一頻(ひとしきり)止(す)むとお徳は急に何か思い出したように起(たっ)て勝手口を出たが暫時(しばらく)して返って来て、妙に真面目(まじめ)な顔をして眼を円(まる)くして
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
親譲りの財産をすっかり潰(す)ってしまい、その上親類中に大迷惑をかけ、長い間行方を晦ましていましたが、何十年目かで再び皆の前に姿を見せました時は
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
と、美しく艶(えん)なお局(つぼね)が、白く嫋(しなや)かな手で、炭(す)びつを取つて引寄せた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五月どきの蕭(しめ)やかさのなかで、あの層のふかい、漆黒の闇の肌ざはりがしたしまれる。いはく、闇中孤坐。……そのなかへ、いつぽんの蝋燭を樹てる。蝋燭の炷(す)がけぶる。
雪 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
難波人(なにはびと)葦火(あしび)焚(た)く屋(や)の煤(す)してあれど己(おの)が妻こそ常(とこ)めづらしき 〔巻十一・二六五一〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
悪く狡(す)れた眼附の車夫が先づ車を引いて来て、夫人が思つたとは反対の方角を指(ゆびさ)して見せて、その病院も、夫人がこれから行つて先づ宿を取らうとする蔦屋(つたや)も、松林の彼方(かなた)にあたると言つて聞かせた。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
紛擾(ふんじょう)の事、一(ひと)つ所(ところ)に長く留(とま)つてゐられぬ事、学科以外に柔術の教師をした事、ある教師は、下駄の台(だい)を買つて、鼻緒は古(ふる)いのを、着(す)げ更(か)へて、用ひられる丈用ひる位にしてゐる事
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「知(す)らない。——」
防雪林 (旧字旧仮名) / 小林多喜二(著)
「景義。あとはもはや石を礎(す)え、屋(おく)を建てるばかりだの」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「国乱れて乱臣出ず、なかと言うてな」と老人は妙な古言を一つ引いてから、「箱根(はこね)から彼方(むこう)の化物が、大かたこっちへ移(す)みかえたものじゃろうて」
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
甲板の下にある船室は、上から降りて来るものを立ち竦(す)くませる。足の踏みばも見当らぬほど、不意に視界が暗くなる。間もなく仄白(ほのじろ)い光りが見えて来た。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
男の人が品物を吟味(ぎんみ)して相談を掛ける度に女の人は横を向いた。参考のために僕が回数を勘定し始めた頃には婦人殿下は首をあべこべに箝(す)げたお雛様のようになっていた。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その中には繩屑拾ひの伊藤、井戸渫への石野夫婦——之は夫婦に子供を連れて来た『羅宇(らを)管(す)げ換へ屋』の老爺さん、それにも一人の紙屑拾ひの年寄が有つた。
「親分、わたしが綰(す)げてあげましょう」
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「これのう、健のお母さんが編(す)いたんで。ジバンも、パンツも、洋服も、みなお母さんが編(す)いたんで。」
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
虎の子や虎、犬の児や犬、食与(ものくゐ)ゆ者(す)ど我(わが)御主(おしゅう)、内間(うちま)御鎖(おざす)ど我御主
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
こよい摺(す)る臼(す)はもう知れたもの
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此の姿も年経(ふ)るに従って老い衰えてしまう事のあまり口惜(くや)しさに、あの時悪魔魔神に祈って、どうぞこの絵姿をおのが身の代りに老い萎(す)たれさせ、変化させ
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それに大阪鮨六片でやっと空腹を凌いでいるようなわけで、今度何か食おうにも持合せはもう五厘しかない。むやみに歩き廻って腹ばかり虚(す)かせるのも考えものだ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
花里の言うことゝ行(す)ることゝ些(ちっ)とも合わないから、ハテ訝(おか)しいぞ、口では身請を喜びながら心では嬉しがらぬのだな、情夫でもあるのではないか知らん、左(さ)もなきときは
蛇(くちなは)の料理(れうり)鹽梅(あんばい)を潛(ひそ)かに見(み)たる人(ひと)の語(かた)りけるは、(應(おう))が常住(じやうぢう)の居所(ゐどころ)なる、屋根(やね)なき褥(しとね)なき郷(がう)屋敷田畝(やしきたんぼ)の眞中(まんなか)に、銅(あかゞね)にて鑄(い)たる鼎(かなへ)(に類(るゐ)す)を裾(す)ゑ、先(ま)づ河水(かはみづ)を汲(く)み入(い)るゝこと八分目(はちぶんめ)餘(よ)
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
あすこには、気の好(い)い老夫婦が褄(す)んでいるということ。そこならば、充分、明日(あす)の昼は休むことができる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袖(そで)が触(す)れ違って、膝(ひざ)を突き合せていながらも、魂だけはまるで縁も由緒(ゆかり)もない、他界から迷い込んだ幽霊のような気持であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は十六七の頃にはもう濃く礬水(どうさ)をひいた薄美濃紙を宛(あ)てがって絵巻物の断片を謄(す)き写しすることも出来たし、残存の兜(かぶと)の錣(しころ)を、比較を間違えず写生することも出来た。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ところが、山っ気のあった男とみえて、いろいろのことに手を出してすっかり費(す)ってしまったんだが、西村陽吉、死んだ社長だね、あの西村の仲介で土地を抵当に入れて銀行から金を借りたのだね。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
透(す)きわたりたる宇宙は、水を打つたるより静かなり、東に伊豆の大島、箱根の外輪山、仙窟(せんくつ)に醸(かも)されたる冷氷の如き蘆(あし)の湖、氷上を跣(す)べりて僵(たふ)れむとする駒ヶ嶽、神山、冠ヶ嶽
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
歳(ほし)は大糜に次(やど)り、月は夾鐘に踵(あた)り三、清原の大宮にして、昇りて天位に即(つ)きたまひき。道は軒后に軼(す)ぎ、徳は周王に跨(こ)えたまへり。乾符を握(と)りて六合を摠(す)べ、天統を得て八荒を包(か)ねたまひき。
そんなにして養育(そだて)て貰ッても露程も有難いと思ッてないそうで、この頃じゃ一口いう二口目にゃ速(す)ぐ悪たれ口だ。マなんたら因果でこんな邪見な子を持ッたかと思うとシミジミ悲しくなりますワ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
過了(す)ギテ残雨朦(けむ)リ/江上九月尚風多シ/縄枢我ハ擬ス今ノ原子ニ/屋漏誰カ思ハン古ノ魯公ヲ/暮歳期有リテ床下ニ蟋アリ/故人信(たより)無シ水辺ノ鴻/一家渾(す)ベテ抱(いだ)ク悲秋ノ感/貧病相依ル風雨ノ中(うち)〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
酸敗(す)えかかつた橡(とち)の葉の繊維(せんゐ)に蛞蝓(なめくじ)の銀線(ぎんせん)を曳き
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
君(きみ)、兵(へい)を引(ひ)いて疾(と)く大梁(たいりやう)に走(おもむ)き・(三九)其街路(そのがいろ)に據(よ)り・其方(そのまさ)に虚(きよ)なるを衝(つ)くに若(し)かず。彼(かれ)必(かなら)ず趙(てう)を釋(す)てて自(みづか)ら救(すく)はん。是(こ)れ我(われ)一擧(きよ)して趙(てう)の圍(かこ)みを解(と)きて、(四〇)弊(へい)を魏(ぎ)に收(をさ)むる也(なり)
鉏(す)き撥(は)ぬるもの。 (歌謠番號一〇〇)
ある時はツァラツストラと山に行き眼(まなこ)鋭(す)るどの鷲と遊びき
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
敷地に杭を打たれたところへは、麦を刈り取ったあとで、鍬(す)きも、耕しも、植付けもしなかった。夏は、青々とした雑草が、勝手きまゝにそこに繁茂した。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
木立(こだち)わづかに間(す)きたる所に、土(つち)墩(たか)く積(つ)みたるが上に、石を三かさねに畳(たた)みなしたるが、二三荊蕀(うばら)薜蘿(かづら)にうづもれてうらがなしきを、これならん御墓(みはか)にやと心もかきくらまされて
車轔々(りんりん)馬蕭々(しょうしょう)。行人(こうじん)の弓箭(きゅうせん)各腰にあり。爺嬢(やじょう)妻子走って相送り、塵埃(じんあい)見えず咸陽橋(かんようきょう)。衣を牽(ひ)き足を頓(す)り道を攔(さえぎ)り哭(こく)す。哭声ただちに上って雲霄(うんしょう)を干(おか)す。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
気が餒(す)えると云うような事を思(おもっ)たものと見えます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
食滯(もた)るる底に、肉(しし)の蒸(む)れ餧(す)えゆく匂ひ、——
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
数寸ずつ切り棄(す)てて、𧋬(す)との結びめを新にし、疲れたる綸𧋬(いとす)を用いず、言わば、一尾を釣る毎に、釣具を全く新にするなり。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)