“刷(す)” の例文
ふところから刷(す)り物の紙をだして、仲(なか)よくひとりへ一枚ずつくばってあたえる。見ると、なるほど、子供が欲(ほ)しがりそうな美しい刷り物。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまえには、新(あたら)しい問題(もんだい)をやらない。」と、いって宿題(しゅくだい)の刷(す)ってある紙(かみ)をお渡(わた)しになりませんでした。そのうちに、暑中休暇(しょちゅうきゅうか)となりました。
宿題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
表紙にはビアズリイのタンホイゼルの画が刷(す)ってあって、その上に l'art pour l'art と、細い朱文字(しゅもじ)で入れた銘があった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
文選も植字も印刷も主(あるじ)がみな一人でやった。日曜日などにはその弟が汚れた筒袖(つつそで)を着て、手刷り台の前に立って、刷(す)れた紙を翻(ひるがえ)しているのをつねに見かけた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
番頭や親類が集まつて、——こんな噂がパツと立つて、萬一呼賣の瓦版(かはらばん)にでも刷(す)られたら、伊丹屋の暖簾(のれん)に疵(きず)が付く、それよりは金で濟むことなら、十三屋へ金を
毎号(まいがう)三千(さんぜん)づゝも刷(す)るやうな訳(わけ)で、未(いま)だ勉(つと)めて拡張(かくちやう)すれば非常(ひじやう)なものであつたのを、無勘定(むかんじやう)の面白半分(おもしろはんぶん)で遣(や)つて居(ゐ)た為(ため)に、竟(つひ)に大事(だいじ)を去(さ)らせたとは後(のち)にぞ思合(おもひあは)されたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
逸作の手の端(はし)ではじけている息子の手紙のドームという仏蘭西(フランス)文字の刷(す)ってあるレターペーパーをかの女はちらと眼にすると、それがモンパルナッスの大きなキャフェで
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
素晴らしい變化が、この細かく刷(す)られた頁には漲(みなぎ)つてゐるやうに思へなかつた。私は本を彼女に返した。彼女は靜かに受取つて、何も云はず元通りに只管讀み耽らうとした。
階下の工場で、一分間に数千枚の新聞紙を刷(す)りだす、アルバート会社製の高速度輪転機が、附近二十余軒の住民を、不眠性神経衰弱に陥(おとしい)れながら、轟々(ごうごう)と廻転をし続けていた。
橋 (新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
私の方は千二百刷(す)つて居て、外に官衙や銀行會社などの印刷物を一手に引受けてやつて居るので、少し宛積立の出來る月もあると、目の凹んだ謹直家(つゝましや)の事務長が話して居たが。……
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今度(こんど)は其上(そのうへ)に小(ちひ)さな瓶(びん)が一本(ぽん)ありました、(『確(たし)かに前(まへ)には此處(こゝ)に無(な)かつた』と愛(あい)ちやんが云(い)ひました)瓶(びん)の頸(くび)には、『召上(めしあが)れ』と美事(みごと)に大(だい)字で刷(す)つた貼紙(はりがみ)が結(むす)びつけてありました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
半紙程の大きさの紙に、昔の人の眼に映った幻影(まぼろし)が極く粗(あら)い木版で刷(す)ってある。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
で、そのお母さんが自分の息子のためにうたってくだすった、そうしたありがたいお唄を刷(す)って、自分の息子ばかりでなく、ほかのたくさんの子供たちをよろこばしてやりたいと思ったのでした。
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
今日中に区劃割の地図だけでも刷(す)つとく方がいゝと思ふんですが……。
浅間山 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すると小宮君が歌麿(うたまろ)の錦絵(にしきえ)を葉書に刷(す)ったのを送ってくれた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
新(あた)らしき紙の刷(す)られの香(か)も消(き)ゆる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……“銭(ぜに)五百文(もん)也(なり)、記録所ノ頭人(とうじん)、造楮幣使(ぞうちょへいし)、中御門(なかみかど)ノ宰相宣明(のぶあき)”と、お花判(かきはん)まで刷(す)ってあるのが読めないか
「眞新しい竹刀(しなひ)があり、弓矢があり、隣りのお部屋には、近頃刷(す)り立ての青表紙や、机の上には——」
其の学者と謂(い)ふのは、本文(ほんもん)を十六万部も刷(す)つて、六シルリングの廉価本(れんかぼん)より五十ギニイの高価本まで売り尽した男である。又或出版業者は「五百部がよい」と云つた。
広告の引(ひ)き札や名刺が主(おも)で、時には郡役所警察署の簡単な報告などを頼まれて刷(す)ることもあるが、それはきわめてまれであった、棚に並べたケースの活字も少なかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
額の汗を拭き/\謄寫版で刷(す)つてゐた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、そういわれてよく見ると、まっ黒な黒と白い筋(すじ)のあいだに二行(ぎょう)の文字が刷(す)りだされてある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は半紙一枚に刷(す)つた、粗末な木版の盲暦を出して、見せました。
斯う刷(す)つてある。