“も”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:モ
語句割合
揉14.0%
若13.4%
持13.0%
洩11.5%
有6.9%
漏3.7%
燃3.7%
最3.5%
萌2.4%
守2.4%
盛2.3%
藻2.0%
保2.0%
以1.8%
裳1.8%
面1.6%
捥1.4%
既1.3%
喪1.2%
思0.7%
素0.5%
挘0.5%
泄0.5%
装0.5%
炎0.5%
萠0.5%
元0.4%
凭0.4%
本0.4%
毮0.3%
模0.3%
将0.2%
貰0.2%
摸0.2%
捩0.2%
焔0.2%
如0.2%
靠0.2%
原0.2%
携0.2%
今0.1%
焚0.1%
倘0.1%
倚0.1%
用0.1%
所有0.1%
念0.1%
護0.1%
傅0.1%
摹0.1%
物0.1%
舞0.1%
者0.1%
裝0.1%
設0.1%
帯0.1%
旧0.1%
申0.1%
固0.1%
娶0.1%
茂0.1%
踠0.1%
潜0.0%
儲0.0%
所持0.0%
掙0.0%
搓0.0%
熾0.0%
縺0.0%
𢪸0.0%
擦0.0%
脱0.0%
將0.0%
把0.0%
あって0.0%
假0.0%
傳0.0%
剥0.0%
啄0.0%
堆0.0%
妹0.0%
守護0.0%
式0.0%
忌0.0%
悶0.0%
想0.0%
戻0.0%
扛0.0%
把持0.0%
担0.0%
持参0.0%
持參0.0%
按0.0%
捫0.0%
掌0.0%
搬0.0%
摩0.0%
擡0.0%
木0.0%
柔0.0%
欺0.0%
火0.0%
炳0.0%
焼0.0%
眩0.0%
瞻0.0%
籠0.0%
脆0.0%
賷0.0%
齎0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
その故に或る時は、二人の間に死ぬの生きるのというほど揉(も)め出すかと思えば、或る時は水も洩らさぬほどの親しみが見えるのです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
若(も)し地球が熱病を患ったのだとすれば、その熱病の病源菌は、喜多川治良右衛門とその周囲の悪友共であったとも云い得たであろう。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
片手(かたて)にブリキかんをぶらさげて、片手(かたて)にはさおを持(も)ち、いつも帽子(ぼうし)を目深(まぶか)にかぶって、よくこの洋服屋(ようふくや)の前(まえ)を通(とお)ったのでありました。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どんな些細(ささい)なことでも見逃さないで、例えば、兄は手拭(てぬぐい)を絞る時、右に捩(ねじ)るか左に捩るかという様なことまで、洩(も)れなく調べました。
かかる世界において個物が客観界において自己を有(も)つ、即ち物において自己を有つということが我々が財産を有つということである。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
年の暮(く)れに軍功のあった侍(さむらい)に加増があって、甚五郎もその数に漏(も)れなんだが、藤十郎と甚五郎との二人には賞美のことばがなかった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
烈々(れつ/\)と燃(も)える暖炉(だんろ)のほてりで、赤(あか)い顔(かほ)の、小刀(ナイフ)を持(も)つたまゝ頤杖(あごづゑ)をついて、仰向(あふむ)いて、ひよいと此方(こちら)を向(む)いた父(ちゝ)の顔(かほ)が真蒼(まつさを)に成(な)つた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
男(をとこ)は女蕩(をんなた)らしの浮氣(うはき)もの、近頃(ちかごろ)は嫂(あによめ)の年増振(としまぶり)に目(め)を着(つ)けて、多日(しばらく)遠々(とほ/″\)しくなつて居(ゐ)たが、最(も)う一二年(いちにねん)、深(ふか)く馴染(なじ)んで居(ゐ)たのであつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
辰男の明け方の夢には、薇(わらび)の萌(も)える學校裏の山が現れて、其處には可愛らしい山家乙女(やまがをとめ)が眞白な手を露出(むきだ)して草を刈りなどしてゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
野田山に墓は多けれど詣来(もうでく)る者いと少なく墓守(も)る法師もあらざれば、雑草生茂(おいしげ)りて卒塔婆(そとば)倒れ断塚壊墳(だんちょうかいふん)算を乱して、満目転(うた)た荒涼たり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしの光は、古いプラタナスの葉が、ちょうどカメの甲(こう)のように盛(も)りあがって、茂(しげ)っている生垣(いけがき)の中に、さしこもうとしていました。
刃(やいば)で止(とど)めを刺したのではないが、とにかく、海の藻(も)くずになったことは分りきっておる。かたがたお墨付をいただいたから、それを
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだかなり長く保(も)ちそうで、手広く居心地よくできていた。いろんな物置きだの納戸だの、思いもかけない階段だのがたくさんあった。
始終私どもの講義を聞いて、茲(ここ)にはじめて神の正しく儼存(げんぞん)し玉(たま)ううえは、至誠(しせい)を以(も)ってこれを信じその道を尽し、その法を修めんには
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黒の頬冠(ほおかぶ)り、黒の肩掛けで、後ろの裳(も)はぼろぼろにきれかかっている。欄干から恐ろしい怪物の形がいくつもパリを見おろしている。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
縁に近く、ちょうど蓮の葉でかこいをされたぐあいの一坪ばかりの水の面(も)には、背に色彩りあざやかな紋のある水鳥が游いでいた。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
麻酔剤によって仮死の状態に置かれてある人体は、首を切断されたまま、恰(あだか)も泥人形の首が捥(も)げたように、何うしてももう附着しなかった。
秋も既(も)う末——十月下旬の短い日が、何時しかトツプリと暮れて了つて、霜も降るべく鋼鉄色(はがねいろ)に冴えた空には白々と天の河が横(よこた)はつた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この時阿遲志貴高日子根(あぢしきたかひこね)の神到(き)まして、天若日子が喪(も)を弔ひたまふ時に、天より降(お)り到れる天若日子が父、またその妻みな哭きて
爺(をぢ)が張る四つ手の網に、月さしていろくづ二つ。その魚のくちびる紅(あか)き、この魚の背の鰭青き、現(うつつ)とも思(も)へばつめたく、幻と見れば霧(き)らひつ。
篁 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
素(も)と人間には儼然として侵すべからざる権利が存在するもので、これは万人に渉(わた)って等しく固有なるべきはずのものである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
何しろ太刀山(たちやま)みたいな強力(ごうりき)に押えられているんでゲスから子供に捕まったバッタみてえなもんで……ウッカリすると手足が挘(も)げそうになるんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
千登世は思ひ餘つて度々制(おさ)へきれない嗟(なげ)きを泄(も)らした。と忽ち、幾年の後に成人した子供が訪ねて來る日のことが思はれた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
庫裡の炉の周囲(まわり)は筵(むしろ)である。ここだけ畳を三畳ほどに、賽銭(さいせん)の箱が小さく据(すわ)って、花瓶(はながめ)に雪を装(も)った一束の卯(う)の花が露を含んで清々(すがすが)しい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そつと眺めると砂からは湯気のやうな陽炎が炎(も)えたつてゐた。それが忽ち乾いて、ジリ/\と反りかへつてゆくかのやうな白い砂原だつた。
熱い砂の上 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
四月の陽は縁から雨落に這つて、江戸の櫻ももうお仕舞ひ、狹い庭に草の芽が萠(も)えて、蟻はもう春の營みに、忙しい活動を續けて居ります。
元(も)と劒岳の尊称であったものが、いつの間にか転移して其前面に続く二千七百七十六米の峰名となったものであろう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
この体(てい)を見ていたストーン氏は、やがて駄目だという風に椅子に背を凭(も)たして、残り惜しそうに女を見つつ、そっと眼を閉じて眉を寄せた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
当時の東京商業学校というは本(も)と商法講習所と称し、主として商家の子弟を収容した今の乙種商業学校程度の頗る低級な学校だったから
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
金三は良平の、耳朶(みみたぶ)を掴(つか)んだ。が、まだ仕合せと引張らない内に、怖い顔をした惣吉の母は楽々(らくらく)とその手を毮 (も)ぎ離した。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
男女服裝の別 土偶の用未だ詳ならざれば、其模(も)したる物は男子のみの形か女子のみの形か、男女兩樣か明かに云ふ能はず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
僅(わづか)に原詩「牀前」の「前」字を将(も)つて一個「頭」字に易へ、而かも用ひ来つて直ちに天衣無縫の如し、云々」。
「酒(さけ)そつちの方(はう)へたんと掛(か)けねえで貰(も)れえてえな」兼(かね)博勞(ばくらう)はけろりとした容子(ようす)をして戯談(じやうだん)をいつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われは心ともなく手を伸べて身邊を摸(も)し、何物とも知られぬながら、竪き物の手に觸るゝを覺えて、しかとこれに取り付きたり。
すぐ表の坂を轟々(ごうごう)と戦車が通りすぎて行った。すると、かぼそい彼の声は騒音と生徒の喚(わめ)きで、すっかり捩(も)ぎとられてしまうのであった。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
非常に冷たきものにふれた時熱き感触を味わうように、探偵小説の運ぶものは冷たい熱情、焔(も)ゆる冷厳であるであろう。
季氏、閔子騫(びんしけん)をして費の宰たらしめんとす。閔子騫曰く。善く我が為めに辞せよ。如(も)し我を復びする者あらば、則わち吾必ず汶(ぶん)の上(ほとり)に在らんと。——雍也篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すると生みの母親は冷淡に、「いけませんよ」といって、その手から木下を靠(も)ぎ去った。堺屋の主人は始め不快に思ったが、生みの母のすることだから誰も苦情はいえなかった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一八九八年版ハーチングの『熟兎篇(ゼ・ラビット)』に拠ると原(も)と熟兎はスペイン辺に産しギリシアやイタリアやその東方になかった。
童子は、手に携(も)った笛を腰のあたりに差した。そして童子自身が困りぬいたかおをして見せた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
今(も)一度口に出して見た。をとゝひまで手写しとほした称讃浄土摂受経(しようさんじやうどせふじゆきやう)の文(もん)である。郎女は、昨日までは一度も、寺道場を覗いたこともなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
空を眺むる宮が目の中(うち)には焚(も)ゆらんやうに一種の表情力充満(みちみ)ちて、物憂さの支へかねたる姿もわざとならず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
倘(も)し并せて返納せば、益々(ますます)不恭に渉(わた)らん。因って今、領受し、薄く土宜(どぎ)数種を晋(すす)め、以て報謝を表す。具(つぶ)さに別幅に録す。却(しりぞ)くるなくんば幸甚なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
幼なき方は床(とこ)に腰をかけて、寝台の柱に半(なか)ば身を倚(も)たせ、力なき両足をぶらりと下げている。右の肱(ひじ)を、傾けたる顔と共に前に出して年嵩(としかさ)なる人の肩に懸ける。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「琴書(きんしょ)ハ須(すべか)ラク自(みずか)ラ随(したが)ウベシ、禄位(ろくい)用(も)ッテ何カセン——こういう境遇でございます」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は私の思想として、ユダの無神論と虚無思想とを、自分の心に所有(も)っていた。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
越え 千年(ちとせ)経(ふ)る 宮居が址に なづさへば 念(も)ひのことごと よろづ代に 念(も)ひ告(の)らすごと 仄暗(ほのくら)の 高どのぬちに 霊(くす)しくも 光りいませる 救世(くせ)のみほとけ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
このまま死んでは後世(ごせ)の障(さわ)りになると思いましてね、今でもお護(も)りしています
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「叔父上には、お年もお年、戦陣へお出向きあるよりは、ここにござあって、和子や女子たちの、後顧(こうこ)の者をお傅(も)り下されたほうがありがたい。大殿にも私からそう申しあげておきましょう」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独り天保に至りては元禄を摹(も)したるつもりにて元禄にも何にもならぬ者、即ち工夫を凝(こ)らさぬふりしてその実工夫を凝らしたる者、何の取所(とりどころ)もなきことなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「藪(やぶ)や河原に、喰える物(も)ンの芽がでるくらいならよ、おらたちゃあ、太陽(てんとう)さまに腹あ干して、笛ふいて暮らすがよ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおそれ。いつぞや手に入れた般若(はんにゃ)の仮面(めん)、ありゃ、出目洞白(でめどうはく)の名作じゃ、奥庭の石神堂に納めてあるが、あれを取りよせて仮面披露(めんひろう)に一さし舞(も)うたらどうじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうせ、おめえ等(ら)やうに紺屋(こんや)の弟子(でし)見(み)てえな手足(てあし)の者(も)な牛蒡(ごばう)でも檐(かつ)いで歩(ある)くのにや丁度(ちやうど)よかんべ」復讎(ふくしう)でも仕得(しえ)たやうな容子(ようす)で爺(ぢい)さんはいつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蒲鉾(かまぼこ)の事(こと)をはべん、はべんをふかしと言(い)ふ。即(すなは)ち紅白(こうはく)のはべんなり。皆(みな)板(いた)についたまゝを半月(はんげつ)に揃(そろ)へて鉢肴(はちざかな)に裝(も)る。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もしこれ方術なれば、その跡自ずから現わる。設(も)し鬼魅の入るならば、必ずその跡無からん。人なれば兵もて除くべく、鬼なればまさに祝(いの)りて除くべしと。
こうは言うものの、山本さん自身も、何処(どこ)かこう支那人臭いところを帯(も)って帰って来た。大陸風な、ゆったりとした、大股(おおまた)に運んで行くような歩き方からして……
船 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
旧(も)と峡田領に属し、浅草寺地及寺領地に係る。其間頗る錯綜し、容易に弁じ難きを以て、旧幕時代は伊呂波(いろは)番号を附し、世、呼(よん)で、伊呂波長屋と云へり。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「物申(も)う、案内(あない)申う。あるじの御坊おわすか。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これ固(も)と種々なる原因の存するものなるべしといえども、製作品の不斉一(ふせいいつ)なると、品質の粗悪なるとは、けだしその主なるものなるべきなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
人間にできないことを人間がやっている顔つきしているんだから無理もないわさ! 俺は、前(さき)の少僧都(しょうそうず)範宴——今は吉水の綽空(しゃっくう)が、公々然と、妻を娶(も)つということを聞いて、こいつはいいと思った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
營(いとな)みけり扨平吉支配人五兵衞村役人同道にて江戸小傳馬町旅人宿幸手屋(さつてや)茂(も)八方へ到着(たうちやく)し早速此段郡代屋敷へ屆け出けるに直樣(すぐさま)差紙(さしがみ)に付き幸手屋茂八附添(つきそひ)郡代の白洲(しらす)へ出でければ正面には伊奈半左衞門殿左方には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
庭の隅の鷹小屋から、時折、苦しげな太い呻(うめ)きがながれてくる。それは、お市と兵庫の、六年間の苦しみを、一時に踠(も)がき苦んでいるような呻きだった。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一度、じろりと眺めて、見つけた天水桶——黒く、太ぶりなのが、二ツ並んだ間に、犬のように潜(も)ぐり込んだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
他の村人が、あまり値段(ねだん)が高いじゃないかと注意したら、売り主の曰く、そりゃ些(ちった)ア高いかも知(し)んねえが、何某(なにがし)さんは金持(かねもち)だもの、此様な時にでも些(ちった)ア儲(も)うけさして貰(もら)わにゃ、と。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
永く外国の生活をしている程の伯父であるから、或は拳銃(ピストル)の一挺位は所持(も)っていたかも知れないが、それにしてもついぞ伯父の拳銃を見た事はない。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
お録、一番責めなきゃ埒(らち)が明くめえ。お客の前で掙(も)き廻ると見苦しい、ちょいと手を貸してくれ。老婆はチョッと舌打して、「ても強情なお嬢(こ)だねえ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
温い家庭の内に育つて、それほど生活の方の苦痛(くるしみ)も知らずに済(す)む人もあれば、又、貴方のやうに、若い時から艱難(かんなん)して、其風波(なみかぜ)に搓(も)まれて居るなかで、自然と性質を鍛(きた)へる人もある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
明敏な知力と精鋭な感受性と豊富な生活力とが、彼のうちに熾(も)えたっていた。万人の魂をして、同じ力に、同じ生命の火に、燃えたたしむること、それが彼の理想であった。
竜馬(りうめ)の羽うらにほひ透き、揺れて縺(も)つれし
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これが引摺(ひきず)って、足を見ながら情なそうな顔をする。蟋蟀(きりぎりす)が𢪸(も)がれた脚(あし)を口に銜(くわ)えて泣くのを見るよう、目もあてられたものではない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『奈何(どう)なりとも、そこは貴方の御意見通りに。』と白髯の議員は手を擦(も)み乍ら言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と言はれて、叔父は百姓らしい大な手を擦(も)み乍(なが)ら
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
腕を脱(も)ぎ取られた裸人形の、あの切り口を想わせるような、白布で捲かれた短い腕が、その先をヒョロヒョロ動かしているのを発見したに相違ない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
乳房の脱(も)げた女であった。その人影は女の頸(くび)を、じっと上から見下ろした。と、斜に身が捻(ねじ)られた。と、右手が動いたようであった。何やらピカリと光ったようであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かれ多遲摩毛理(たぢまもり)、遂にその國に到りて、その木の實を採りて、縵八縵矛八矛(かげやかげほこやほこ)四を、將(も)ち來つる間に、天皇既に崩(かむあが)りましき。
唾き入れつ。これえ離たざれば、入れしまにま將(も)ち來て獻る
三四郎は握り(ハンドル)を把(も)つた儘、——顔(かほ)を戸の影(かげ)から半分部屋の中(なか)に差し出した儘、此刹那の感に自己(みづから)を放下(げ)し去つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
後(うし)ろから看護婦が草履の音(おと)を立てゝ近付(ちかづ)いて来た。三四郎は思ひ切つて戸を半分程開(あ)けた。さうして中(なか)にゐる女と顔を見合せた。(片手(かたて)に握り(ハンドル)を把(も)つた儘)
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからいろいろ珍しい物や何かを遣ったりして頼んだですけれども誰あって(も)行こうという者が一人もないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
假(も)し其をして耄(ばう)を踰(こ)え期(き)に至らしめば、則ち其の神明測(はか)られざること、想(おも)ふに當に何如たるべきぞや。凡そ孔子を學ぶ者は、宜しく孔子の志を以て志と爲すべし。
『音(おと)?。』と私(わたくし)も思(おも)はず立止(たちどま)つて耳(みゝ)を濟(すま)すと、風(かぜ)が傳(も)て來(く)る一種(いつしゆ)の響(ひゞき)。全(まつた)く無人島(むじんたう)と思(おも)ひきや、何處(いづく)ともなく、トン、トン、カン、カン、と恰(あだか)も谷(たに)の底(そこ)の底(そこ)で、鐵(てつ)と鐵(てつ)とが戞合(かちあ)つて居(を)るやうな響(ひゞき)。
彼はときどき腮(あご)をあけては、舌で、自分の呼吸で濕つた草を剥(も)ぎ取る。そして一度、彼は自分の足を知らずに食べてしまふ。——そしてこの怪物くらゐ、僕になつかしく思はれるものはなかつたのだ。
不器用な天使 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
そして海霧(ガス)の霽(は)れた夕方など、択捉(えとろふ)島の沖あたりで、夥しい海豚(いるか)の群に啄(も)まれながら浮流(うきなが)されて行く仔鯨の屍体を、うっかり発見(みつ)けたりする千島帰りの漁船があった。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
塚は土饅頭(どまんじゅう)に堆(も)れ上がって、四方に大きな榛(はん)の木がそびえ、秋となると、鶏血草(けいけつそう)が血を流したように咲き出るので、薬園奉行や黒鍬(くろくわ)の小者は、そこを、江戸城の血塚(ちづか)とよんで
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いづくより 来ませし仏か 敷島の 大和の国に 廬(いほり)して 千年(ちとせ)へにける けふ日まで 微笑(ゑみ)たまふなり 床しくも 立ちたまふなり ほのぼのと 見とれてあれば 長き日に 思ひ積みこし 憂(うれひ)さり 安けくなりぬ 草枕(くさまくら) 旅のおもひぞ ふるさとの わぎ妹(も)に告げむ 青によし 奈良の都ゆ 玉づさの 文しおくらむ 朝戸出の 旅の門出に 送りこし わがみどり児(ご)も 花咲ける 乙女とならば 友禅の 振袖(ふりそで)着せて 率ゐ行かむぞ このみ仏に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
市(いち)の夢(ゆめ)守護(も)る町々(まち/\)の
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この歌の左に、「春日遅遅として、鶬鶊(ひばり)正に啼(な)く。悽惆(せいちう)の意、歌に非(あら)ずば、撥(はら)ひ難し。仍(よ)りて此の歌を作り、式(も)ちて締緒(ていしよ)を展(の)ぶ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼は、後醍醐のために、七々(四十九日)の忌(も)に服し、さらにその百ヵ日には、等持院へのぞんで、盛大な仏事をいとなんだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老妻お百と媳(よめ)のお道との三角葛藤はしばしば問題となるが、馬琴に後暗い弱点がなくとも一家の主人が些細な家事にまでアア七(しち)むずかしい理窟をこねるようでは家が悶(も)める。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
思(おも)ふまじ/\他(あだ)し心(こゝろ)なく兄様(あにさま)と親(した)しまんによも憎(にく)みはし給(たま)はじよそながらも優(やさ)しきお詞(ことば)きくばかりがせめてもぞといさぎよく断念(あきら)めながら聞(き)かず顔(がほ)の涙(なみだ)頬(ほゝ)につたひて思案(しあん)のより糸(いと)あとに戻(も)どりぬさりとては其(そ)のおやさしきが恨(うら)みぞかし一向(ひたすら)につらからばさてもやまんを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
捕卒は銀錠を扛(も)って臨安府の堂上へ搬(はこ)んで来た。許宣はそこで盗賊の嫌疑は晴れたが、素性の判らない者から、私(ひそか)に金をもらったと云うかどで、蘇州(そしゅう)へ配流(ついほう)せられることになった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
哀(あわれ)むべし文三は竟(つい)に世にも怖(おそ)ろしい悪棍(わるもの)と成り切ッた所へ、お勢は手に一部の女学雑誌を把持(も)ち、立(たち)ながら読み読み坐舗(ざしき)へ這入て来て、チョイト昇に一礼したのみで嫣然(にっこり)ともせず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此墓の魂(たま)が、河内安宿部(あすかべ)から石担(も)ちに来て居た男に憑いた時はなう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
中食後(ちゅうじきご)ミハイル、アウエリヤヌイチは茶(ちゃ)を四半斤(はんぎん)と、マルメラドを一斤(きん)持参(も)って、彼(かれ)の所(ところ)に見舞(みまい)に来(き)た。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
中食後(ちゆうじきご)ミハイル、アウエリヤヌヰチは茶(ちや)を四半斤(はんぎん)と、マルメラドを一斤(きん)持參(も)つて、彼(かれ)の所(ところ)に見舞(みまひ)に來(き)た。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
大異の体はまた石床の上へ引擦り倒されて、縮めるように頭と足を捺されたり、また麪(めん)をこしらえるように按(も)まれたりした。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
でも細君があると知れてから、随分捫(も)んで苛(いじ)めてやった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
その手は、黒髪長き人を、横抱きにし、掌(も)か紐(ひも)か、ヒラと曳いていた色も、眼にとまらなかったほどである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして、其処から、頻(しき)りに人が繋っては出て来て、石を曳(ひ)く。木を搬(も)つ。土を搬(はこ)び入れる。重苦しい石城(しき)。懐しい昔構え。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その折れ口に鹽をつけて食ふと、一種の酸味と新鮮のにほひとが有る。柄の太い嫩葉(どんえふ)は鹽を振りまぜて兩掌の間に摩(も)んで食ふのである。緑色に染まつた手をば川の水で洗ふ。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
予(かね)てから、顔は充分見知っている仲、自然にその事が、談話(はなし)の皮切りとなり、私が頭を擡(も)ち上げると、きまり悪そうに其所(そこ)を去ったことなども笑い話の中に出て
おのれらは心しても、子の生まれ侍るには困じぬれど、上(かみ)にはそれに事かわりて、御子生まれさせ給うべきも木(も)っ根(こ)この座さねば、如何にかはせん。なさけの道おくれたる婦女共なればさるおふけなき事を
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
勘次(かんじ)は怪我人(けがにん)の後(うしろ)に隱(かく)れるやうにして自分(じぶん)の番(ばん)になるのを待(ま)ちながら周邊(あたり)が何(なん)となく藥臭(くすりくさ)くて恐(おそ)ろしいやうな感(かん)じに囚(とら)はれた。醫者(いしや)は一人(ひとり)の患部(くわんぶ)を軟(やはら)かに柔(も)んでやつて居(ゐ)たが勘次(かんじ)をちらと見(み)た。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
年は四十五六、繊細(きしや)な手にすら欺(も)う小皺(こしわ)が見えてゐた
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
極熱(ごくねつ)の日(ひ)に火(も)ゆる
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
波邇賦(はにふ)坂九に到りまして、難波の宮を見放(さ)けたまひしかば、その火なほ炳(も)えたり。ここにまた歌よみしたまひしく
「やい、六平、吐(ぬ)かさねえと、この屋台へ火をつけて焼(も)やしてしまうからそう思え」
北枕なぞを喰うた後で、外へ出て太陽光(ひなた)に当ると、眼が眩(も)うてフラフラと足が止まらぬ位シビレます。その気持の良(え)え事というものは……。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
晴(はれ)けふを暗きかもやとうちなげきひたと瞻(も)り居りわが太刀靖光(やすみつ)
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「はて、返事が無(ね)えの、可(よ)し可し。」と籃(かご)に籠(も)りたる菓子を掴(つま)めば、堪(こら)えかねて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
斯(か)く思(おも)ふは我(わ)れに定操(ていさう)の無(な)ければにや、脆(も)ろき情(こゝろ)のやる方(かた)もなし、扨(さて)も松野(まつの)が今日(けふ)の詞(ことば)、おどろきしは我(われ)のみならず竹村(たけむら)の御使者(おししや)もいかばかりなりけん、立歸(たちかへ)りて斯(か)く斯(か)くなりしとも申さんに
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朕聞かくは、諸家の賷(も)たる帝紀と本辭四と既に正實に違ひ、多く虚僞を加ふといへり。
璧を齎(も)ちて河を渡りける時、河の神の、璧を得まくおもふより波を起し、蛟(みづち)をして舟を夾(はさ)ましめ其(そ)を脅(おど)し求むるに遇ひしが、吾は義を以て求むべし、威を以て劫(おびやか)すべからずとて
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)