“倘(も)” の例文
然れども倘(も)し夫れ、彼にありて極めて高潔、極めて荘重なる事業と認むべき者あらば、吾人は邦と邦との隔離を遺忘するに躊躇(ちうちよ)せざるなり。
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
倘(も)し并せて返納せば、益々(ますます)不恭に渉(わた)らん。因って今、領受し、薄く土宜(どぎ)数種を晋(すす)め、以て報謝を表す。具(つぶ)さに別幅に録す。却(しりぞ)くるなくんば幸甚なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
倘(も)し、この危機に処して、一家の女房たるものが、少しく怜悧(れいり)であつたならば、狂瀾(きやうらん)を既に倒るゝに翻(ひるがへ)し、危難を未(いま)だ来らざるに拒(ふせ)ぐは、さして難い事では無いのである。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
倘(も)し強(し)ひてシバルリイを我が平民界の理想に応用せんとせば、侠と粋(侠客の恋愛に限りて)とを合せ含ましめざる可からず、侠客の妻(さい)を取りて研究せば、得るところあらむ。
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
倘(も)し伯が貴族の家に産(うま)れたる身を以て、自(みづか)ら降(くだ)りて平民の友となり、其一生を唯だ農民の為に尽すところあらんとするの精神を読み得なば、誰れか伯の資性の天真爛熳たるを疑ふものゝあるべき。
トルストイ伯 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)