“讀(よ)” の例文
新字:読
私は有島武郎さんの作品を讀(よ)んで、作品のうちに滲(にじ)んでゐる作者の心の世界(せかい)といふものゝ大きさや、強さといふものを深く感(かん)じます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
先哲(せんてつ)いはく……君子(くんし)はあやふきに近(ちか)よらず、いや頬杖(ほゝづゑ)で讀(よ)むに限(かぎ)る。……垣(かき)の卯(う)の花(はな)、さみだれの、ふる屋(や)の軒(のき)におとづれて……か。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
能登(のと)の「ワゲシ」は最(もつと)もこれに近(ちか)い音(おん)を有(いう)する鳳(フング)至(シ)の二字(じ)によつて示(しめ)されたのが、今(いま)は「ホーシ」と讀(よ)む者(もの)がある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
學校(がくかう)を中途(ちゆうと)で已(や)めたなり、本(ほん)は殆(ほと)んど讀(よ)まないのだから、學問(がくもん)は人並(ひとなみ)に出來(でき)ないが、役所(やくしよ)でやる仕事(しごと)に差支(さしつか)へる程(ほど)の頭腦(づなう)ではなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もしこの評眼(ひようがん)をもちて財主の妹を財主と共に虐殺したる一節を讀(よ)まば、作者(さくしや)の用意(ようい)の如何に非凡(ひぼん)なるかを見(み)るに惑(まど)はぬなるべし。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
伯父(をぢ)さんも、吉(きち)さんも、友伯父(ともをぢ)さんも、みんなお猿(さる)さんの側(わき)へ來(き)まして、崖(がけ)の下(した)にある古(ふる)い石碑(せきひ)の文字(もじ)を讀(よ)みました。それには
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『猫(ねこ)だとて王樣(わうさま)を拜(はい)して差支(さしつか)へない』と愛(あい)ちやんが云(い)ひました。『私(わたし)は或(あ)る書物(しよもつ)でそれを讀(よ)みました、何處(どこ)であつたか憶(おぼ)えて居(ゐ)ませんが』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
多分(たぶん)廣告(くわうこく)に、修養(しうやう)のために讀(よ)むべき書(しよ)だと云(い)ふやうな事(こと)が書(か)いてあつたので、子供(こども)が熱心(ねつしん)に内容(ないよう)を知(し)りたく思(おも)つたのであらう。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
きつと、おぢさんの子供(こども)やおぢさんを好(す)いてくれる子供(こども)たちと同(おな)じやうに、よろこんで讀(よ)んでくれ、よろこんで歌(うた)つてくれるにちがひない。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
その證據(しようこ)には、婦人雜誌(ふじんざつし)に出(で)て居(ゐ)る女學校(ぢよがくかう)の校長(かうちやう)の説(せつ)などを讀(よ)むと、色々(いろ/\)の本(ほん)の名前(なまへ)を擧(あ)げてゐても、ことごとく尤(もつと)もらしい出鱈目(でたらめ)である。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
但(たゞ)し此斥候(このせつこう)の報告書(ほうこくしよ)とも名(な)づくべきものは、單(たん)に地震波(ぢしんぱ)の種々(しゆ/″\)の形式(けいしき)のみであるから、これを書取(かきと)り其上(そのうへ)にそれを讀(よ)み取(と)ることを必要(ひつよう)とする。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
新聞(しんぶん)は今朝(けさ)出(で)る前(まへ)に讀(よ)み盡(つく)して了(しま)つたし、本(ほん)を讀(よ)む元氣(げんき)もなし、眠(ねむ)くもなし、喋舌(しやべ)る對手(あひて)もなし、あくびも出(で)ないし、さて斯(か)うなると空々然(くう/\ぜん)
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
私(わたくし)は端(はし)なくも、昨夜(ゆふべ)ローマ府(ふ)からの滊車(きしや)の中(なか)で讀(よ)んだ『小公子(リツトルロー、トフオントルローイ)』といふ小説(せうせつ)中(ちう)の、あの愛(あい)らしい/\小主人公(せうしゆじんこう)を聯想(れんさう)した。
下人 はて、その樣(やう)な事(こと)は書(ほん)が無(な)くても知(し)れましょ。いや、眼(まなこ)で讀(よ)むものをば讀(よ)まッしゃりますかと聞(き)きますのぢゃ。
かういつたところで、味(あぢは)ひは、あなた方(がた)がめい/\に、幾度(いくど)もくり返(かへ)し讀(よ)んで見(み)なければ起(おこ)つて來(こ)ないとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それを讀(よ)むと、日本人(につぽんじん)が朝鮮(ちようせん)へ攻(せ)めて行(い)つたことが記(しる)されてありますが、多分(たぶん)神功皇后(じんぐうこう/″\)の三韓征伐(さんかんせいばつ)のときのことなどが書(か)いてあるように思(おも)はれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
この匡衡(まさひら)は漢文(かんぶん)や、詩(し)の方(ほう)は至極(しごく)の名人(めいじん)であつたが、その上(うへ)に歌(うた)もこの通(とほ)り、うまく讀(よ)んだと語(かた)り傳(つた)へたそうです。
彼(か)れはかね/″\書物(しよもつ)を讀(よ)んで、磔刑(はりつけ)、獄門(ごくもん)、打首(うちくび)、それらの死刑(しけい)が決(けつ)して、刑罰(けいばつ)でないといふことを考(かんが)へてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
坪井博士(つぼゐはかせ)や八木氏等(やぎしとう)の著書(ちよしよ)、東京人類學會雜誌(とうきやうじんるゐがくくわいざつし)及(およ)び考古界等(かうこかいとう)を讀(よ)み、又(また)、水谷(みづたに)、谷(たに)、栗島(くりしま)諸氏(しよし)と各所(かくしよ)の遺跡(ゐせき)を發掘(はつくつ)するに至(いた)つて、益々(ます/\)趣味(しゆみ)を感(かん)じて來(き)た。
之(これ)だけ讀(よ)んだので此(こ)の言葉(ことば)の意義内容(いぎないよう)が私(わたし)の頭(あたま)の中(なか)にハツキリして來(き)た。大和魂(やまとだましい)を表象(へうしやう)する、朝日(あさひ)に匂(にほ)ふ山櫻(やまざくら)がコスモポリタン植物(しよくぶつ)でない事(こと)は無論(むろん)である。
「然うさ、五十歩(ぽ)百歩(ひやくぽ)さ」と、友は感慨(かんがい)に耐(た)へないといふ風(ふう)で、「少許(すこし)字(じ)が讀(よ)めて、少許知識(ちしき)が多(おほ)いといふばかり、大躰(だいたい)に於(おい)て餘り大(たい)した變りはありやしない。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼(かれ)の書見(しよけん)は、イワン、デミトリチのやうに神經的(しんけいてき)に、迅速(じんそく)に讀(よ)むのではなく、徐(しづか)に眼(め)を通(とほ)して、氣(き)に入(い)つた所(ところ)、了解(れうかい)し得(え)ぬ所(ところ)は、留(とゞま)り/\しながら讀(よ)んで行(ゆ)く。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
神官(しんくわん)は其處(そこ)に讀(よ)み至(いた)ると當日(たうじつ)の神社(じんじや)を只(たゞ)口(くち)の先(さき)でいふのである。有繋(さすが)に彼(かれ)は間違(まちが)ふことなしに讀(よ)み退(の)けた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしは今(いま)、此(こ)の本(ほん)を、小(ちひ)さい兄弟姉妹(けうだいしまい)達(たち)である日本(にほん)の子(こ)ども達(たち)に贈(おく)ります。また。その子(こ)ども達(たち)の親(おや)であり、先生(せんせい)である方々(かた/″\)にも是非(ぜひ)、讀(よ)んで戴(いたゞ)きたいのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
怪(あや)しき書風(しよふう)に正躰(しやうたい)得(え)しれぬ文字(もじ)を書(かき)ちらして、これが雪子(ゆきこ)の手跡(しゆせき)かと情(なさけ)なきやうなる中(なか)に、鮮(あざや)かに讀(よ)まれたる村(むら)といふ字(じ)、郎(らう)といふ字(じ)、あゝ植村(うゑむら)録郎(ろくらう)、植村(うゑむら)録郎(ろくらう)
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
太史公(たいしこう)曰(いは)く、余(よ)、司馬(しば)の兵法(へいはふ)を讀(よ)むに、(三六)閎廓(くわうくわく)深遠(しんゑん)にして、(三七)三代(だい)の征伐(せいばつ)と雖(いへど)も、未(いま)だ其義(そのぎ)を竟(つく)す※能(あた)はず、其文(そのぶん)の如(ごと)きは、亦(また)(三八)少(すこ)しく襃(はう)せり。
此度(このたび)の改暦(かいれき)にても其譯(そのわけ)を知(し)らずして十二月の三日が正月の元日(ぐわんじつ)になると計(ばか)りいふて、夢中(むちう)にこれを聞(き)き夢中(むちう)にこれを傳(つた)へなば實(じつ)に驚(おどろ)くべき事(こと)なれども、平生(へいぜい)より人(ひと)の讀(よ)むべき書物(しよもつ)を讀(よ)み
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
それはね、これの校了(かうれう)の校正刷(かうせいずり)を讀(よ)んでゐて誤植(ごしよく)を一(ひと)つ發見(はつけん)して直(なほ)して置(お)いた事(こと)だ。尤(もつと)もその手柄(てがら)と、こんなことを卷頭(くわんとう)に書(か)いて君(きみ)の美(うつく)しい本(ほん)をきたなくする罪(つみ)とでは、差引(さしひき)にならないかも知(し)れない。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
三馬(さんば)の浮世風呂(うきよぶろ)を讀(よ)むうちに、だしぬけに目白(めじろ)の方(はう)から、釣鐘(つりがね)が鳴(な)つて來(き)たやうに氣(き)がついた。湯屋(ゆや)の聞(き)いたのは(岡湯(をかゆ))なのである。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
私はとぢ上げた原稿を二度、三度と讀(よ)み返してみた。と、意に充たない處(ところ)、書き直さなければならない處(ところ)がまだまだ幾個所にもあつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
嘗(か)つてユーゴのミゼレハル、銀器(ぎんき)を盜(ぬす)む一條(いちでう)を讀(よ)みし時(とき)に其(その)精緻(せいち)に驚(おどろ)きし事(こと)ありしが、この書(しよ)載(の)するところ恐(おそ)らく彼(か)の倫(りん)にあらざるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
梯子(はしご)の樣(やう)な細長(ほそなが)い枠(わく)へ紙(かみ)を張(は)つたり、ペンキ塗(ぬり)の一枚板(まいいた)へ模樣畫(もやうぐわ)見(み)た樣(やう)な色彩(しきさい)を施(ほど)こしたりしてある。宗助(そうすけ)はそれを一々(いち/\)讀(よ)んだ。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんなうるさい蠅(はい)でも、道連(みちづ)れとなれば懐(なつ)かしく思(おも)はれたかして、木曾(きそ)の蠅(はい)のことを發句(ほつく)に讀(よ)んだ昔(むかし)の旅人(たびゞと)もありましたつけ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
元來(ぐわんらい)閭(りよ)は科擧(くわきよ)に應(おう)ずるために、經書(けいしよ)を讀(よ)んで、五言(ごん)の詩(し)を作(つく)ることを習(なら)つたばかりで、佛典(ぶつてん)を讀(よ)んだこともなく、老子(らうし)を研究(けんきう)したこともない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
私(わたくし)は一切(さい)がくだらなくなつて、讀(よ)みかけた夕刊(ゆふかん)を抛(はふ)り出(だ)すと、又(また)窓枠(まどわく)に頭(あたま)を靠(もた)せながら、死(し)んだやうに眼(め)をつぶつて、うつらうつらし始(はじ)めた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おぢさんは、みんなが大(たい)へん可愛(かあい)い。この本(ほん)は君(きみ)たちに讀(よ)んでもらひ、歌(うた)つてもらうために書(か)いたのだ。金持(かねもち)の子供(こども)なんか讀(よ)まなくたつていい。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
尤(もつと)も、古(いにしへ)の和名(わめい)に漢字(かんじ)を充當(じうたう)したのが、漢音(かんおん)の讀(よ)み方(かた)の變化(へんくわ)に伴(とも)なうて、和名(わめい)が改變(かいへん)せられた例(れい)は、古代(こだい)から澤山(たくさん)ある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
『私(わたし)はお茶(ちや)を濟(す)ませて了(しま)ひたう御座(ござ)います』と云(い)つて帽子屋(ばうしや)は氣遣(きづか)はしげに、女王樣(ぢよわうさま)の方(はう)を見(み)ました、女王樣(ぢよわうさま)は演奏者(えんそうしや)の名簿(めいぼ)を讀(よ)んで居(を)られました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
何故(なぜ)なら全然(まる)で他(ほか)の事(こと)を考(かんが)へて居(ゐ)るからである。昨日(きのふ)も君(きみ)の送(おく)つて呉(く)れたチエホフの短篇集(たんぺんしふ)を讀(よ)んで居(ゐ)ると、ツイ何時(いつ)の間(ま)にか「ボズ」さんの事(こと)を考(かんが)へ出(だ)した。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あのエヂプトの繪文字(えもんじ)を讀(よ)み始(はじ)める手(て)がゝりになつた『ロセッタ・ストーン』といふ石(いし)、ギリシヤの『パルテノン』といふ御堂(おどう)にあつた彫刻(ちようこく)もこゝにあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それはともかくとして、この歌(うた)は、あなた方(がた)がお讀(よ)みになつても、大體(だいたい)わかるほど、意味(いみ)がよく通(つう)じます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
此(こ)の理由(わけ)の解(わか)らぬ煩悶(はんもん)が怪(あや)しくも絶(た)えず彼(かれ)の心(こゝろ)を攪亂(かくらん)して、書物(しよもつ)を讀(よ)むにも、考(かんが)ふるにも、邪魔(じやま)をする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「どうしておめえ、此(こ)の秤(はかり)なんざあ檢査(けんさ)したばかりだもの一分(ぶ)でも此(こ)の通(とほ)り跳(は)ねたり垂(た)れたりして、どうして飛(と)んだ噺(はなし)だ」商人(あきんど)は分銅(ふんどう)の手(て)を抑(おさ)へて又(また)目(め)を讀(よ)んだ。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
といふ歌(うた)を讀(よ)みました。女官(じよかん)たちは、その返歌(へんか)が出來(でき)なかつたので、笑(わら)つて嫌(いや)がらせることもならず、默(だま)つて一人(ひとり)起(た)ち、二人(ふたり)起(た)ちして、みな奧(おく)へ逃(に)げてしまひました。
A 中(なか)には隨分(ずゐぶん)長文(ちやうぶん)の氣焔(きえん)を吐(は)いてよこしてる人(ひと)もあるぢやないか。誰(だれ)も讀(よ)みはしないだらうに。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
此方(こつち)にはちやんと證據物件(しようこぶつけん)が厶(ござ)る、そんなに八釜(やかま)しく言(い)ふなら、サア來(き)て見(み)なせいと云(い)つて、山奧(やまおく)へ連(つ)れて行(い)つて、其(その)紀念塔(きねんたふ)を見(み)せてやるのだ、どうだい此(この)字(じ)が讀(よ)めぬか
龐涓(はうけん)、果(はた)して夜(よる)、斫木(しやくぼく)の下(もと)に至(いた)り、白書(はくしよ)を見(み)、乃(すなは)ち(五五)火(ひ)を鑽(き)りて之(これ)を燭(てら)す。其書(そのしよ)を讀(よ)み未(いま)だ畢(をは)らざるに、齊(せい)の軍(ぐん)の萬弩(ばんど)倶(とも)に發(はつ)す。魏(ぎ)の軍(ぐん)大(おほひ)に亂(みだ)れ、(五六)相失(あひしつ)す。
微笑(びせう)を含(ふく)みて讀(よ)みもてゆく、心(こゝろ)は大瀧(おほだき)にあたりて濁世(じよくせ)の垢(あか)を流(なが)さんとせし、某(それ)の上人(しやうにん)がためしにも同(おな)じく、戀人(こひゞと)が涙(なみだ)の文字(もじ)は幾筋(いくすぢ)の瀧(たき)の迸(ほとばし)りにも似(に)て、失(うしな)はん心弱(こゝろよわ)き女子(をなご)ならば。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫人 どうぞいの、あのやうなお方(かた)を可愛(いと)しいと思(おも)はぬか? 今宵(こよひ)の宴會(えんくわい)には彼方(あのかた)も見(み)ゆる筈(はず)、パリス殿(どの)の顏(かほ)といふ一卷(ひとまき)の書(ふみ)を善(よ)う讀(よ)んで、美(び)の筆(ふで)で物(もの)してある懷(なつか)しい意味(いみ)をば味(あぢ)はや。
讀(よ)む人(ひと)、其(そ)の走(はし)るもの汽車(きしや)に似(に)ず、飛(と)ぶもの鳥(とり)に似(に)ず、泳(およ)ぐもの魚(うを)に似(に)ず、美(び)なるもの世(よ)の廂髮(ひさしがみ)に似(に)ざる故(ゆゑ)を以(も)て、ちくらが沖(をき)となす勿(なか)れ。
怪談会 序 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)