“我(わ)” の例文
うつくしき顏(かほ)に似合(にあは)ぬは心(こゝろ)小學校通(せうがくかうがよ)ひに紫袱紗(むらさきふくさ)對(つゐ)にせし頃(ころ)年上(としうへ)の生徒(せいと)に喧嘩(いさかひ)まけて無念(むねん)の拳(こぶし)を我(わ)れ握(にぎ)る時(とき)同(おな)じやうに涙(なみだ)を目(め)に持(も)ちて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我(わ)が獲(え)ものとを見較(みくら)べながら、かたまけると云(い)ふ笑方(ゑみかた)の、半面(はんめん)大(おほ)ニヤリにニヤリとして、岩魚(いはな)を一振(ひとふり)、ひらめかして、また、すた/\。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「ああそうだったよ。」と、お母(かあ)さまは、よくお姉(ねえ)さんを思(おも)い出(だ)したといわぬばかりに、我(わ)が子(こ)の顔(かお)を見(み)て、にっこりと笑(わら)われました。
青い花の香り (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さすがは運慶だな。眼中に我々なしだ。天下の英雄はただ仁王と我(わ)れとあるのみと云う態度だ。天晴(あっぱ)れだ」と云って賞(ほ)め出した。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これらの真景(しんけい)をも其座(そのざ)にうつしとりたるを添(そへ)て贈(おく)りしに、玉山翁が返書(へんしよ)に、北越(ほくゑつ)の雪我(わ)が机上(きしやう)にふりかゝるがごとく目をおどろかし候
夫の腹の中いいましたら、あないに我(わ)が儘(まま)やった私がまるで生れ変ったみたいに態度改めましたのんが、どない嬉(うれ)しいか分れしません。
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
讀者(どくしや)諸君(しよくん)は未(ま)だ御記臆(ごきおく)だらう。我(わ)が弦月丸(げんげつまる)が將(まさ)に子ープルス港(かう)を出發(しゆつぱつ)せんとした時(とき)、何故(なにゆゑ)ともなく深(ふか)く私(わたくし)の眼(まなこ)に留(とゞま)つた一隻(いつさう)の怪(あやし)の船(ふね)を。
ハッと思った途端に、私はこの時初めて、我(わ)れと我心(わがこころ)に帰って、気が付いてみると、そんな砂利(じゃり)の上に、横ざまに倒されている。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
「さあ、はやく覆面をとってください。しかし帆村探偵よ。この覆面の下にある我(わ)が輩(はい)の素顔を見て、腰をぬかさぬように!」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
又(また)なんじら我(わ)が名(な)のために凡(すべ)ての人(ひと)に憎(にく)まれん。されど終(おわり)まで耐(た)え忍(しの)ぶものは救(すく)わるべし。この町(まち)にて、責(せ)めらるる時(とき)は、かの町(まち)に逃(のが)れよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ちょうどそのとき、ラジオのニュースで、きょうも我(わ)が荒鷲(あらわし)が敵(てき)の○○飛行場(ひこうじょう)を猛爆(もうばく)して多大(ただい)の戦果(せんか)を収(おさ)めたことを報(ほう)じた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さりとて打ち捨ておかば清吉の乱暴も我(わ)が命令(いいつ)けてさせしかのよう疑がわれて、何も知らぬ身に心地快(よ)からぬ濡衣(ぬれぎぬ)被(き)せられんことの口惜しく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「俺(お)れが我(わ)が身(み)というたとて、自由自儘(じいうじまゝ)に成(な)るならば、今日(けふ)の巫女(あづさ)も要(い)るまいにい……」婆(ばあ)さんは同(おな)じやうな句(く)を反覆(くりかへ)した。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
我(わ)が所謂(いはゆる)文学者(ぶんがくしや)とはフィヒテが“Ueber(ユーバル) das(ダス) Wesen(ウエーゼン) des(デス) Gelehrten(ゲレールテン)”に述(の)べたてし、七むづかしきものにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
オーケストラが日本一、そうして、小生(しょうせい)の私の我(わ)が輩(はい)の僕(ぼく)が、エヘン、日本一のいい男の一寸法師、チョンチョンチョン。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
が今(いま)の我(わ)が身(み)の小(ちひ)さいことに氣(き)がつくと共(とも)に、それが矢張(やつぱり)自分(じぶん)のやうに滑(すべ)り落(お)ちた一疋(ぴき)の鼠(ねずみ)に過(す)ぎないことを知(し)りました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
譜代宿老を鼻にかけておるような人物に我(わ)が大志を託すよりは、むしろいちかばちか、彼に会って、その器量(きりょう)をこころみ、恃(たの)むべき男であれば
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また是と前後して生まれたかと思う風土記の物語の中にも「子(こ)らに恋ひ朝戸(あさど)を開き我(わ)が居(お)ればとこ世の浜の浪(なみ)の音きこゆ」
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
銀子も我(わ)が曾(かつ)ての実験と思ひ較(くら)べて、そぞろに同情の涙堪(た)へ難く「梅子さん貴嬢(あなた)の御心中は私能(よ)く知ることが出来ますの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
然(しか)るに醫學博士(いがくはかせ)にして、外科(げくわ)專門家(せんもんか)なる彼(かれ)が父(ちゝ)は、斷乎(だんこ)として彼(かれ)が志望(しばう)を拒(こば)み、若(も)し彼(かれ)にして司祭(しさい)となつた曉(あかつき)は、我(わ)が子(こ)とは認(みと)めぬと迄(まで)云張(いひは)つた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上総周淮(すえ)郡、上丁物部竜(もののべのたつ)の作。下の句は、「我(わ)に取り着きて言ひし子ろはも」というのだが、それが訛(なま)ったのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
勝子は婉曲(えんきょく)に意地悪されているのだな。——そう思うのには、一つは勝子が我(わ)が儘(まま)で、よその子と遊ぶのにも決していい子にならないからでもあった。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
早暁臥床を出でゝ、心は寤寐(ごび)の間に醒め、意(おも)ひは意無意(いむい)の際にある時、一鳥の弄声を聴けば、忽(こつ)として我(わ)れ天涯に遊び、忽として我塵界に落るの感あり。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
すでに為(な)すべからざるを知るといえども、我(わ)が事(つか)うるところの存(そん)せん限(かぎ)りは一日も政府の任を尽(つ)くさざるべからずとて極力(きょくりょく)計画(けいかく)したるところ少なからず
三五郎は否々(いや/\)何にしても此度は是非共(ぜひとも)貸(かし)くれよ翌日(あす)にも仕合(しあはせ)が好(よけ)れば返すべしとて何分承知せざれば段右衞門も心中に思ふやう彼奴(かやつ)我(わ)が身に惡事のあるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
陸(りく)の方(はう)を見(み)ると、いつしか我(わ)が船(ふね)は港(みなと)目近(まぢか)に進(すゝ)んで、桑港(さうかう)の町々(まち/\)はつい鼻(はな)の先(さき)に見(み)える。我等(われら)の泊(とま)るべきフェアモント・ホテルは高(たか)い丘(をか)の上(うへ)に突(つ)ツ立(た)つて居(ゐ)る。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
これいはゆる負惜(まけおし)みの痩(やせ)我慢なり。しかして痩我慢より割り出したる俳句は毫(ごう)も文学に非るなり。我(わ)れ其角派の系統を継げり、故に其角派の俳句をものせんと。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
〔譯〕我(わ)れ無ければ則ち其身を獲(え)ず、即ち是れ義(ぎ)なり。物無ければ則ち其人を見ず、即ち是れ勇(ゆう)なり。
私は彼等を軽蔑(けいべつ)し、しかも全身的に彼等に凭(よ)りかかっている。我(わ)が儘(まま)息子と、無知で寛容な其の父親?
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
鮑叔(はうしゆく)、我(われ)を以(もつ)て貪(たん)と爲(な)さず、我(わ)が貧(まづ)しきを知(し)れば也(なり)。吾(われ)嘗(かつ)て鮑叔(はうしゆく)の爲(た)めに事(こと)を謀(はか)り、而(しかう)して更(さら)に窮困(きうこん)す。鮑叔(はうしゆく)、我(われ)を以(もつ)て愚(ぐ)と爲(な)さず、時(とき)に利(り)と不利(ふり)と有(あ)るを知(し)れば也(なり)。
血を出して、血が出てもまだ我と我(わ)が頸をなぐりながら、絶命してしまったのです。旅人は刀を取返した上に、大猿一匹お土産(みやげ)が出来たというお話ですよ。ハハハ……
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
向(むか)うの岸(きし)に往(ゆ)かんとし給(たま)ひしに、ある学者(がくしや)来(きた)りて云(い)ひけるは師(し)よ。何処(いづこ)へ行(ゆ)き給(たま)ふとも我(わ)れ従(したが)はん。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おせんを首尾(しゅび)よく逃(にが)してやった雨(あめ)の中(なか)で、桐油(とうゆ)から半分(はんぶん)顔(かお)を出(だ)した松(まつ)五郎(ろう)は、徳太郎(とくたろう)をからかうようにこういうと、我(わ)れとわが鼻(はな)の頭(あたま)を、二三度(ど)平手(ひらて)で引(ひ)ッこすった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
我(わ)が朝日新聞社員(あさひしんぶんしやゐん)横川勇次氏(よこかはゆうじし)を送らんと、朝(あさ)未明(まだき)に起(おき)出(いで)て、顔(かほ)洗(あら)ふ間(ま)も心せはしく車を急(いそが)せて向島(むかふじま)へと向(むか)ふ、常(つね)にはあらぬ市中(しちう)の賑(にぎ)はひ、三々五々勇(いさ)ましげに語(かた)り合(あ)ふて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「さすらい人」「魔王」「鱒(ます)」「死と乙女」「汝(なれ)こそ我(わ)が憩(いこ)い」「連祷(れんとう)」——等、限りもない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
「にあり」「てあり」「といふ」が、「なり」「たり」「とふ」となるのも同様の現象である。「我(わ)は思(も)ふ」「我(われ)はや餓(ゑ)ぬ」など連語においても、これと同種の現象がある。
国語音韻の変遷 (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
いつも見慣(みな)れてゐる藪(やぶ)の竹(たけ)の中(なか)にゐる人(ひと)ですから、きっと、天(てん)が我(わ)が子(こ)として與(あた)へてくれたものであらうと考(かんが)へて、その子(こ)を手(て)の上(うへ)に載(の)せて持(も)ち歸(かへ)り、妻(つま)のお婆(ばあ)さんに渡(わた)して
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
されども遠(とほ)い東方(ひんがし)の、曙姫(あけぼのひめ)の寢所(ねどころ)から、あの活々(いき/\)した太陽(たいやう)が小昏(をぐら)い帳(とばり)を開(あ)けかくれば、重(おも)い心(こゝろ)の倅(せがれ)めは其(その)明(あか)るさから迯戻(にげもど)り、窓(まど)を閉(と)ぢ、日(ひ)を嫌(きら)うて、我(わ)れから夜(よる)をば製(つく)りをる。
「我(わ)がままだからよ。貴公は我がままだ」「おれの心は誰にもわからない。おれは気の毒な人間だ」「そうだとも気の毒な人間だとも」「この地にもあきた。江戸へ行きたい」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我(わ)れ主(しゆ)に倚(よ)り、主(しゆ)我(わ)れに宿(やど)る時(とき)は我は勉(つと)めずして光を放(はな)つなり、而して世(よ)は我(われ)より出る主(しゆ)の光(ひかり)を見(み)て我(われ)を信(しん)ぜずして主(しゆ)を信(しん)ずるに至(いた)る、是(こ)れ余(よ)の信(しん)ずる基督教的(きりすとけうてき)伝道(でんだう)なる者なり。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
天照らす大神のお言葉で、「葦原(あしはら)の水穗(みずほ)の國(くに)は我(わ)が御子(みこ)のマサカアカツカチハヤヒアメノオシホミミの命のお治め遊(あそ)ばすべき國である」と仰せられて、天からお降(くだ)しになりました。
我(わ)が品川(しながは)の住居(じうきよ)から遠(とほ)くもあらぬ桐(きり)ヶ谷(や)の村(むら)、其所(そこ)に在(あ)る氷川神社(ひがはじんじや)の境内(けいだい)に、瀧(たき)と名(な)に呼(よ)ぶも如何(いかゞ)であるが、一日(にち)の暑(しよ)を避(さ)けるに適(てき)して居(ゐ)る靜地(せいち)に、清水(しみづ)の人造瀧(じんざうたき)が懸(かゝ)つて居(ゐ)るので
シロクシナスを牢舎(らうや)に入(い)れたのは、我(わ)が誤(あやま)り、第一国内(こくない)で一等(とう)の学者(がくしや)といふ立派(りつぱ)の人物を押込(おしこ)めて置くといふは悪かつた、とお心附(こゝろづ)きになりましたから、早速(さつそく)シロクシナスを許(ゆる)して
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
二三分立つと、二人は我(わ)が家(や)に這入(はい)って戸口の戸を締めた。窓の戸は開けてある。寝台(ねだい)の傍(そば)に据えてある小卓(こづくえ)の上には、常の花瓶(かびん)に赤い薔薇(ばら)の花が活(い)けてある。その匂(におい)が部屋に満ちている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
東叡山(とうえいざん)南の草堂に隠退して「時事懶聞非我分。」〔時事ハ聞クニ懶(ものう)ク我(わ)ガ分(ぶん)ニ非ズ〕といい、また「門外紛紛属少年。」〔門外ノ紛紛タルハ少年ニ属ス〕というが如き歎声を漏すに過ぎなかった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
予は又其(またその)空模様を永く見て居るに堪えないで家に入った。妻も入って来た。三人の児の姉等二人も入って来た。又々互に不安心な事を云い合って、我(わ)れと我(わ)が不安の思いを増す様な話を暫(しばら)く喃々(なんなん)した。
大雨の前日 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
我(わ)が日本という国は山・谷・川・平野・湖沼・港湾・長い海岸線等が、狭い日本国というところに納(おさま)っておって、しかも暑からず寒からず、つまり酷暑酷寒というような自然の虐待を受けることなく
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
我(わ)れにかえる。兎のような我れにかえる。心持は夜のように暗い。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
我(わ)が夫子(せこ)は假廬(かりほ)作(つく)らす。かやなくば、小松(こまつ)が下(した)のかやを刈(か)らさね
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
寝返りして目の開(ひら)きし瞬間に我(わ)が思ひしは之(こ)れにて候(さふら)ひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)