“ゆ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ユ
語句割合
行27.4%
結14.9%
往11.3%
揺11.1%
逝6.8%
湯5.5%
搖2.4%
茹2.3%
温泉2.1%
嫁2.0%
征1.5%
之1.2%
赴1.0%
緩0.8%
悠0.8%
去0.5%
油0.4%
免0.4%
許0.4%
輸0.4%
適0.4%
柚0.3%
言0.3%
善0.3%
震0.3%
煠0.3%
徂0.3%
云0.2%
茄0.2%
赦0.2%
浴0.1%
湯泉0.1%
瑜0.1%
動0.1%
遊0.1%
徃0.1%
弓0.1%
温湯0.1%
喩0.1%
好0.1%
如0.1%
容0.1%
寛0.1%
弛0.1%
洗湯0.1%
浴湯0.1%
淘0.1%
由0.1%
白湯0.1%
航0.1%
趨0.1%
帰0.0%
熔金0.0%
左0.0%
い0.0%
動搖0.0%
呼0.0%
就0.0%
床0.0%
振0.0%
斉0.0%
曲0.0%
来0.0%
楰0.0%
歩0.0%
汰0.0%
漾0.0%
癒0.0%
皆行0.0%
盪0.0%
着0.0%
縛0.0%
聴0.0%
腴0.0%
諭0.0%
貐0.0%
走0.0%
過0.0%
邁0.0%
酌0.0%
雪0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ですから何日(いつか)の何時頃、此処(ここ)で見たから、もう一度見たいといっても、そうは行(ゆ)かぬ。川の流(ながれ)は同じでも、今のは前刻(さっき)の水ではない。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五十年前(ぜん)の日本人は「神」といふ言葉を聞いた時、大抵(たいてい)髪をみづらに結(ゆ)ひ、首のまはりに勾玉(まがたま)をかけた男女の姿を感じたものである。
文章と言葉と (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
文「御重役でもなんでも、今はずう/″\しいのなんて、米屋でも薪屋(まきや)でも、魚屋でも何でも、物を持って往(ゆ)く気づかいありません」
と裳(もすそ)を揺(ゆ)って拗(す)ねたように云いながら、ふと、床の間の桜を見た時、酔った肩はぐたりとしながら、キリリと腰帯が、端正(しゃん)と緊(しま)る。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
信長は父逝(ゆ)く日まで、父にひとかたならぬ心案(こころあん)じをかけていた不孝の子であったが、今日、その父へも、大孝の子となったのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清淨(しやうじやう)な水(みづ)でも好(よ)ければ、不潔(ふけつ)な水(みづ)でも好(い)い、湯(ゆ)でも茶(ちや)でも好(い)いのである。不潔(ふけつ)な水(みづ)でなかつたのは、閭(りよ)がためには勿怪(もつけ)の幸(さいはひ)であつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
夜中頃(よなかごろ)には武生(たけふ)の町(まち)を笠(かさ)のやうに押被(おつかぶ)せた、御嶽(おんたけ)といふ一座(いちざ)の峰(みね)、根(ね)こそぎ一搖(ひとゆ)れ、搖(ゆ)れたかと思(おも)ふ氣勢(けはひ)がして、風(かぜ)さへ颯(さつ)と吹(ふ)き添(そ)つた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
菜(な)が洗(あら)ひ畢(をは)つた時(とき)枯葉(かれは)の多(おほ)いやうなのは皆(みな)釜(かま)で茹(ゆ)でゝ後(うしろ)の林(はやし)の楢(なら)の幹(みき)へ繩(なは)を渡(わた)して干菜(ほしな)に掛(か)けた。自分等(じぶんら)の晝餐(ひる)の菜(さい)にも一釜(ひとかま)茹(ゆ)でた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今回両方に温泉(ゆ)が涌いたのは天が東西引佐を結合させる為めだろうと思うけれど、却って両村繁栄を競って益〻醜態を演じる虞(おそ)れがある。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分では奈何(どう)しても嫁(ゆ)く氣になれない、此心をよく諒察(くみと)つて、好く其間に斡旋してくれるのは、信吾の外にないと信じてゐるのだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああ思ひきや、西土(せいど)はるかに征(ゆ)くべかりし身の、こゝに病躯(びやうく)を故山にとゞめて山河の契りをはたさむとは。奇(く)しくもあざなはれたるわが運命(うんめい)かな。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
延陵(えんりょう)の季子(きし)、その長子を葬(ほうむ)りて、『骨肉は上に帰復す命(さだめ)なり。魂気の若きは、すなわち之(ゆ)かざるなし、之(ゆ)かざるなし』と曰(のたま)いし、云云(うんぬん)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
なお彼の筑紫(つくし)落ちには、あまたな武士が、付き従うなど——尊氏が赴(ゆ)くところ、何せい、衆和と士気の高さがうかがわれまする
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折を見て此方(こつち)から持ち掛けると、まあ緩(ゆ)つくり話すとか何とか云つて、中々(なか/\)埒(らち)を開(あ)けない。代助は仕方(しかた)なしに、仕舞に
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
広間の中央、床柱を背にして、銀燭(ぎんしょく)の光を真向に浴びながら、どんすの鏡蒲団(かがみぶとん)の上に、悠(ゆ)ったりと坐り、心持脇息(きょうそく)に身を靠(もた)せているのは、坂田藤十郎であった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「左様なら、又た明日(あした)。お寝みなさい、源ちゃん御大事に。」お富はしとやかに辞儀して去(ゆ)こうとした。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それで周三は、毎日(まいにち)畫架(ぐわか)に向ツて歎息ばかりしてゐながら、定期(ていき)の時間だけ丁(ちやん)と畫室に入ツて、バレツトにテレビン油(ゆ)に繪具(ゑのぐ)を捏返(ねりかへ)してゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
包みを下(おろ)し、賽銭を上げ、頻(しき)りに心の内に弁天を祈念して、何卒(なにとぞ)粟田口國綱の刀一刻も早く手に入りまして、親父の百日間の謹しみの速(すみや)かに免(ゆ)れるように
梅鉢屋の女將(おかみ)が赤毛氈(あかまうせん)を敷いた店頭(みせさき)に立つて、「御門内はお腰の物が許(ゆ)りまへん。……息(やす)んでおいでやす。……お腰の物を預けておいでやす。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
奇抜という点からいえば、一茶に一籌(いっちゅう)を輸(ゆ)せねばならぬけれども、食われ残りの鴨よりは、食い残されて春に逢う菜の花の方に真のあわれはあるのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
五百は潔くこの家を去って渋江氏に適(ゆ)き、しかもその渋江氏の力を藉(か)りて、この家の上に監督を加えようとするのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
と、有り合はせの楢(なら)と橡(とち)と桐と樒(しきみ)と柿と椎と松と杉と柚(ゆ)と桑とを詠み込んで見せたものだ。すると、大名はぜんまい仕掛の玩具(おもちや)でも見せられたやうに首を捻(ひね)つて感心してしまつたといふことだ。
器用な言葉の洒落 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「やっぱり、そうでっか。どうも、そやないか思てましてん。なんや、戸がたがた言(ゆ)わしたはりましたな。ぼく隣りの部屋にいまんねん。退屈でっしゃろ。ちと遊びに来とくなはれ」
秋深き (新字新仮名) / 織田作之助(著)
よかよか、俺が善(ゆ)うしてやるち、うんと恩着せて置きましたたい。そしたら喜んで進上しますといっとりますばい。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
戸(こ)ごとの燈火(ともしび)へ赤く霞(かす)んでいたが——そのうちに乾(いぬい)の方からぐわっと地鳴りが聞えて来たかと思うと——もう大地は発狂したかの如く震(ゆ)れに震れ洛中の人家九万余戸
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私が前に書いた薩摩芋を洗う男は、薩摩芋を煠(ゆ)でる店に属していることに気がついた。子供達はこの店に集って来て、薩摩芋一つを熱い昼飯とする。
(三六)暴(ばう)を以(もつ)て暴(ばう)に易(か)へ、其(そ)の非(ひ)なるを知(し)らず。神農(しんのう)・虞(ぐ)(舜 )・夏(か)(禹 )(三七)忽焉(こつえん)として沒(ぼつ)しぬ、(三八)我(われ)安(いづ)くにか適歸(てきき)せん。吁嗟(ああ)(三九)徂(ゆ)かん。(四〇)命(めい)の衰(おとろ)へたるかな
「ばさん。かう云(ゆ)にしてガアガアコーコーど鳴るものぁ何だべ。」
十月の末 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
琵琶湖では、あゆの稚魚を茄(ゆ)でてひうおと呼んでいる。このひうおの大ぶりなのが飴煮にされて来るもので、琵琶湖にはほとんど無限といってよいほど発生する。
若鮎について (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
なまじひに眼(まなこ)ふたぎて、赦(ゆ)るされて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
只、身すがらにと出(いで)立ち侍(はべ)るを、紙子(かみこ)一衣(ひとへ)は夜の防ぎ、浴(ゆ)かた、雨具、墨、筆のたぐひ、あるはさりがたきはなむけなどしたるは、さすがに打捨てがたく、路次の煩(わづら)ひとなるこそわりなけれ
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手拭(てぬぐい)を下げて風呂に行く。一町ばかり原の中を歩かなければならない。四方を石で畳上(たたみあ)げた中へ段々を三つほど床(ゆか)から下へ降りると湯泉(ゆ)に足が届く。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それからその真珠(しんじゅ)の紐の真中には大真珠あるいは瑜(ゆ)(緑玉)を入れて飾りにしてある。で頭の頂には高価な瑜(ゆ)、珊瑚珠(さんごじゅ)、真珠等で飾られてある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「生意気ねえ。」とお節は笑つて、抱いて居る子供の身体(からだ)を動(ゆ)するやうにした。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
吾か勢子(せこ)はいつく遊(ゆ)くらんおき津ものなはりのやまを気布(けふ)か古ゆらん
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あかつき露(づゆ)に髮(かみ)ぬれて、徃(ゆ)きこそかよへ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
……巣車(つりせいろう)の縄をなえ! 弓(ゆ)がけ、弓(ゆ)ごての縫い目をしめろ! ああ忙しい忙しい! これでは狂人(きちがい)になりそうだ! さすまた、もじり、棒、まさかり、こういうものだって馬鹿には出来ねえ
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
事露見して十一月五日却って赤兄のために捉(とら)えられ、九日紀の温湯(ゆ)の行宮(あんぐう)に送られて其処で皇太子中大兄の訊問(じんもん)があった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
大伴家持(やかもち)が、一族の子弟に与えるため作ったものという「族(やから)に喩(ゆ)す歌」だった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うん。又好(ゆ)ぐなるさ。あ、雨漏って来た。草少し屋根さかぶせろ。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
龐涓(はうけん)其(そ)の己(おのれ)に賢(まさ)るを恐(おそ)れて之(これ)を(一六)疾(ねた)み、則(すなは)ち法刑(はふけい)を以(もつ)て其兩足(そのりやうそく)を斷(た)ちて之(これ)を(一七)黥(げい)し、(一八)隱(かく)れて・見(み)る勿(な)からんことを欲(ほつ)す。齊(せい)の使者(ししや)、(一九)梁(りやう)に如(ゆ)く。
或は聖情と称(い)ふ、何を以て劣と聖との別をなす、何が故に一は劣にして、一は聖なる、若し人間の細小なる眼界を離れて、造化の広濶なる妙機を窺(うかゞ)えば、孰(いづれ)を聖と呼び、孰(いづ)れを劣と称(よ)ぶを容(ゆ)るさむ。
白いノーネクタイのシャツを着て、パナマ帽を冠ったその男も気がついたらしく、そのがっしりした顔にやや苦み走った微笑を泛(うか)べながら、寛(ゆ)るやかに足を運んで来た。男は座敷の椽(えん)で靴を脱いだ。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鳥屋で鳥類を買っても悪くすると十日も十五日も過ぎた鳥を売っています。腹から尻の方へ手を当ててみて非常に弛(ゆ)るんでいるような鳥は決して新らしいものでありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それから今一つの難渋は洗湯(ゆ)の高い事で、入浴料が日本の貨(かね)で一円二三十銭。
『六番さんのお浴湯(ゆ)がすんだら七番のお客さんをご案内申しな!』
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
淘去淘来海噬山(淘(ゆ)り去り淘り来(きた)り海、山を噬(か)む)
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
譬えばスナワチという詞(ことば)にも即(そく)の字があり、乃(ない)の字があり、則(そく)の字があり、便(べん)の字があり、ヨルという詞にも因(いん)の字があり、由(ゆ)の字があり、縁(えん)の字があり、凴(ひょう)の字があり、拠(きょ)の字があり
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
黒木はやっと決心したらしく、窮屈そうにこう云いながら、火鉢の横に転がっている大きな湯呑を取り上げて白湯(ゆ)を注いだ。すると健策もそれに倣(なら)って、長椅子の下から硝子コップを取り上げた。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雲の海に我はひびかふエンヂンの命なるなり航(ゆ)くとありつつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
どう考へても、嫁に帰(ゆ)くべき必用の無いものが、無理に算段をして嫁に帰(ゆ)かうと為るには、必ず何ぞ事情が無ければ成らない。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ええ、狼狽(うろた)へてくだらんことを言ふな。食ふに窮(こま)つて身を売らなければならんのぢやなし、何を苦んで嫁に帰(ゆ)くのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
君の熔金(ゆ)の廻りがどんなところで足る足らぬが出来るのも同じことである。万一異(い)なところから木理がハネて、釣合(つりあい)を失えば、全体が失敗になる。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
醜(みにく)いものだが、雅はあるものだ。あれなら熔金(ゆ)の断(き)れるおそれなどは少しも無くて済む。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
左(ゆ)ん手(で)の嶂壁の下に沿うて登る、この雪が終ると、峡谷が四岐する、向って左から二番目がよい、午前十時五十分、約二千八百四十米突の山脊つく。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
左(ゆ)ん手(で)で妹子の蝶ヶ岳を擁している、近くは千人岳とて、多くの羅漢が如鬼如鬼(にょきにょき)並んでいるようだ。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
勢語の〽桜花ちりかひくもれおい(ゆ)らくのこむといふなる道まがふがに 等の歌をみてもわかる。
用言の発展 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
二人はウ※トクロスからの動搖(ゆ)れ通しの長い馬車に、筋ばつてゐた、寒い夜氣(やき)に冷えきつてゐた。しかし二人の樂しげな面差は、明るい火に照らされて、輝かしさを増した。
さと そツてちや、起(お)けても起きらんとだもね。二へんも三べんも呼(ゆ)うだつなるばツ、そツでん目ば覚さんと……。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
抑又(はたまた)塩土老翁(しほつちのをぢ)に聞きしに曰く、東に美地(よきくに)有り、青山四周(よもにめぐれり)、……余(われ)謂(おも)ふに、彼地(そのくに)は必ず当(まさ)に以て天業(あまつひつぎのわざ)を恢弘(ひろめのべ)て天下(あめのした)に光宅(みちを)るに足りぬべし、蓋(けだ)し六合(くに)の中心(もなか)か。……何ぞ就(ゆ)きて都(みやこつく)らざらむや。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
西南(にしみなみ)だろう黒い雲を掠(かす)めて赤い金色(きんいろ)の星が光る、流石(さすが)は昔から床(ゆ)かしい大和国を吹く四月の夜の風だ、障子を開けて坐っていると、何時(いつ)のまにか心地よく
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
三郎は飛びつくように振(ゆ)り動かしましたが、麻酔剤を呑まされたのか、急病を起したのか、容易のことでは覚めそうもありません。
九つの鍵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
言われる。……では、お話し申すことにいたす。……しかし、これは斉(ゆ)々しい国の秘事でござるによって、人に聞かれてはならぬ。近くに人がおらぬか、ちょっと見て下され
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
新生寺さんは私の顔を見ると、無言で口を曲(ゆ)がめ、笑おうとしたらしかったのですが、その表情はまるで泣いているようでした。
むかでの跫音 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
汝(われ)より前(さき)にお嬢さまも若旦那さまもおいでが有って、婆(ばあ)やお前(めえ)と違って丈助はこれ/\の悪党だが、廓を出て来(ゆ)たのだから少しの間匿れて居るんだと仰しゃって、おいでなすって
此問題は頗(すこぶる)困難である。説文に拠れば楸は梓(し)である。爾雅を検すれば、槄(たう)、楰(ゆ)、櫰(くわい)、槐(くわい)、榎(か)、楸(しう)、椅(い)、梓(し)等が皆相類したものらしく、此数者は専門家でなくては辨識し難い。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
僕の五六間さきを歩(ゆ)く少年がある、身に古ぼけたトンビを着て、手に古ぼけた手提(てさげ)カバンを持って、静かに坂を登りつつある、その姿がどうも桂正作に似ているので
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
これを通してきらきらと濡れたような日の光、豊かなる水とその水に汰(ゆ)り平らげられた土の質までが、まことによく似た肌ざわりを、いく百年ともなく両国の民族に与えていたのである。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あはれ あるなしのかぜにしも 漾(ゆ)らぐや
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
古(いにしえ)より忠は宦成に怠(おこた)り病いは小癒(ゆ)に加わり、禍(わざわ)いは懈惰(けだ)に生じ孝は妻子に衰うという、また礼記(らいき)にも、狎(な)れてしかしてこれを愛すといえり
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夫人を先に、亀姫、薄と女(め)の童(わらわ)等、皆行(ゆ)く。五人の侍女と朱の盤あり。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乗り合いは再び地上の瀾(なみ)に盪(ゆ)られて、浮沈の憂(う)き目に遭(あ)いぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其(その)方法(てだて)ぢゃが……おゝ、害心(がいしん)よ、ても速(はや)う入(はひ)って來(き)をるなア、絶望(ぜつばう)した者(もの)の胸(むね)へは!……思(おも)ひ出(だ)すは彼(あの)藥種屋(やくしゅや)……たしか此邊(このあたり)に住(す)んでゐる筈(はず)……いつぞや見(み)た折(をり)は、身(み)に襤褸(つゞれ)を着(ゆ)て
今しも庭前に刑せられんとする犠牲(いけにえ)の男を眺めて居る妃の風情(ふぜい)と云い、鉄の鎖で四肢を銅柱へ縛(ゆ)いつけられ、最後の運命を待ち構えつゝ、妃の前に頭をうなだれ、眼を閉じた男の顔色と云い
刺青 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
己れ不埒の奴、然らば汝上手に書き見せよと、筆紙を取りて迫れば、下僕深く己が失礼を謝して、赦されんことを乞ふも、予更に聴(ゆ)るさず、剛情殆ど度に過ぎたり。
臨終の田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ココに一つの説あり、全く自家の腴(ゆ)を欲し富貴逸楽を希(こいねが)わんとて賄賂を行うもあり、また恬憺(てんたん)無為(むい)にせば終身聞(きこ)ゆる無(な)きのみならず、上(かみ)のために心力を尽すこともなし得ず
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
帝猶(なお)孝孺を用いんと欲し、一日に諭(ゆ)を下すこと再三に及ぶ。然(しか)も終(つい)に従わず。帝即位の詔(みことのり)を草せんと欲す、衆臣皆孝孺を挙ぐ。乃(すなわ)ち召して獄より出(い)でしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
〈貐(ゆ)変じて猨と為る〉、『荘子』、〈獱狙(ひんそ)猨を以て雌と為る〉と雌雄を異種に見立てたのだ。
「鎮年走道途。無暇奉祭祀。地下若有知。豈謂克家子。惟有詩癖同。家声誓不墜。」〔鎮年道途ヲ走(ゆ)キ/祭祀ヲ奉ズル暇無シ/地下若(も)シ知有ラバ/豈謂(おも)ハンヤ克家ノ子ト/惟(た)ダ詩癖ノ同ジキ有ルノミ/家声誓ツテ墜トサズ〕枕山はこの誓言にたがわず家声(かせい)を
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
杜(もり)を越え、田を横ぎり、また林を越えて、しのびやかに通り過(ゆ)く時雨の音のいかにも幽(しず)かで、また鷹揚(おうよう)な趣きがあって、優(やさ)しく懐(ゆか)しいのは、じつに武蔵野の時雨の特色であろう。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かの鰲背(ごうはい)を聚(あつ)めて丘の如く、その勢(いきほひ)を拒(ふせ)がんと為れど、触るれば払ひ、当れば飜(ひるがへ)り、長波の邁(ゆ)くところ滔々(とうとう)として破らざる為(な)き奮迅(ふんじん)の力は、両岸も為に震ひ、坤軸(こんじく)も為に轟(とどろ)き
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「土岐(とき)。一つ酌(ゆ)こう」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いんえ、串戯(じょうだん)ではない、嘘ではない。余所(よそ)に面白いことが十分あると見えて、それ、たまたまで、顔を見せても、雪の雪(ゆ)の字も言いなさらぬ。な、あの児も、あんたには大きに苦労をしたもんじゃが。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)