“買(か)” の例文
お花(はな)が、東京(とうきょう)へ奉公(ほうこう)にくるときに、姉(ねえ)さんはなにを妹(いもうと)に買(か)ってやろうかと考(かんが)えました。二人(ふたり)は遠(とお)く離(はな)れてしまわなければなりません。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
雪(ゆき)の中(なか)を此(こ)の紅鯛(べにだひ)綺麗(きれい)なり。此(こ)のお買初(かひぞ)めの、雪(ゆき)の眞夜中(まよなか)、うつくしき灯(ひ)に、新版(しんぱん)の繪草紙(ゑざうし)を母(はゝ)に買(か)つてもらひし嬉(うれ)しさ、忘(わす)れ難(がた)し。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若者(わかもの)は、近所(きんじょ)で布(ぬの)一反(たん)の代(か)わりに、手綱(たづな)とくつわを買(か)って馬(うま)につけますと、さっそくそれに乗(の)って、またずんずん歩(ある)いて行きました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
二億圓(おくゑん)の正貨(せいくわ)を買(か)ひ得(え)たことは、輸入超過(ゆにふてうくわ)の日本(にほん)に取(と)つては出來過(できす)ぎであると云(い)ふ批評(ひひやう)があるが、それは正(まさ)しく左樣(さやう)であらうと思(おも)ふ。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
彼(かれ)は憎惡(ぞうを)と嫉妬(しつと)とを村落(むら)の誰(たれ)からも買(か)はなかつた。憎惡(ぞうを)も嫉妬(しつと)もない其處(そこ)に故意(わざ)と惡評(あくひやう)を生(う)み出(だ)す程(ほど)百姓(ひやくしやう)は邪心(じやしん)を有(も)つて居(ゐ)なかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
エヘヽヽ此辺(このへん)では如何(いかゞ)さまで。書生「ヤー是(これ)は好(よ)いのー幾許(いくら)ぢや、うむ夫(それ)は安いの、買(か)うて置(お)かう。銭入(ぜにいれ)から代(だい)を払(はら)つて立帰(たちかへ)りました。 ...
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
これらの品(しな)は日本人(につぽんじん)が美術(びじゆつ)の價値(かち)を知(し)らない時代(じだい)に海外(かいがい)へ賣(う)つてしまつたものであつて、今(いま)では日本(につぽん)に買(か)ひ戻(もど)すことも出來(でき)ないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「厭(いや)だよ。御父(おと)つちやんべい。大(おほ)きい御馬(おむま)買(か)つて呉(く)れなくつちや、彼方(あつち)へ行(い)かないよ」と答(こた)へた。聲(こゑ)は小(ちひ)さい男(をとこ)の子(こ)の聲(こゑ)であつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それに、月末(つきずゑ)だつてもう近(ちか)いんだし、何(なに)もそんなあつてもなくつてもいい壁掛(かべかけ)なんかを今(いま)お買(か)ひになることないぢやありませんか
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
道子(みちこ)は一晩(ひとばん)稼(かせ)げば最低(さいてい)千(せん)五六百円(ぴやくゑん)になる身体(からだ)。墓石(ぼせき)の代金(だいきん)くらい更(さら)に驚(おどろ)くところではない。冬(ふゆ)の外套(ぐわいたう)を買(か)ふよりも訳(わけ)はない話(はなし)だと思(おも)つた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
祖母(おばあ)さんが朴(ほほ)の木(き)の葉(は)で包(つゝ)んで下(くだ)さる※(あつ)い握飯(おむすび)の香(にほひ)でも嗅(か)いだ方(はう)が、お錢(あし)を出(だ)して買(か)つたお菓子(くわし)より餘程(よほど)おいしく思(おも)ひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
店(みせ)の主人(しゅじん)がすすめたオランダ語(ご)と英語(えいご)との会話(かいわ)の本(ほん)など、二、三さつを買(か)うと、諭吉(ゆきち)は、おもい足(あし)をひきずって、江戸(えど)へかえってきました。
書画(しょが)骨董(こっとう)を買(か)うことが熱心(ねっしん)で、滝田(たきた)さん自身(じしん)話(はな)されたことですが、何(なに)も買(か)う気(き)がなくて日本橋(にほんばし)の中通(なかどお)りをぶらついていた時(とき)
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
端(は)ては半燒酎(なほし)を村(むら)の子(こ)に頼(たの)んで買(か)ひに遣(や)つて、それを飮(の)みながら大氣焔(だいきえん)を吐(は)く。留守居(るすゐ)の女中(ぢよちう)は烟(けむ)に卷(まか)れながら、茶(ちや)を入(い)れて出(だ)す。菓子(くわし)を出(だ)す。
この前の戦争で狡(ずる)い奴らに先を越されて損をしたが、今度はチャンと要領を覚えたから、今度戦争になってみろ、買(か)い溜(だ)め、売り惜しみ、闇屋(やみや)
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
お前(まへ)さん其(その)お酒(さけ)が買(か)へるほどなら嫌(い)やとお言(い)ひなさるを無理(むり)に仕事(しごと)に出(で)て下(くだ)されとは頼(たの)みませぬ、私(わたし)が内職(ないしよく)とて朝(あさ)から夜(よ)にかけて十五錢(せん)が關(せき)の山(やま)
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でげすから、あっしは浅草(おくやま)を出(で)る時(とき)に、そう申(もう)したじゃござんせんか。松(まつ)の位(くらい)の太夫(たゆう)でも、花魁(おいらん)ならば売(う)り物(もの)買(か)い物(もの)。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「こんなにならないうちに、なぜもっと安くして売ってしまわないんだろうなあ……安くさえすれば、もっとどしどし買(か)い手(て)があるだろうに……。」
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
僕(ぼく)は今日(けふ)まで女(をんな)を喜(よろこ)ばすべく半襟(はんえり)を買(か)はなかつたが、若(も)し彼(あ)の娘(むすめ)に此等(これら)の品(しな)を與(やつ)たら如何(どんな)に喜(よろ)こぶだらうと思(おも)ふと、僕(ぼく)もうれしくつて堪(たま)らなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「刈谷音吉(かりやおときち)は、最近(さいきん)のことだが、だいぶたくさんに金塊(きんかい)を買(か)いこんでいたそうですよ。古(ふる)い小判(こばん)などもあるそうで、これは地金屋(ぢがねや)からの聞込(ききこ)みですが」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
我れ三文字屋(さんもんじや)金平(きんぴら)夙(つと)に救世(ぐせい)の大本願(だいほんぐわん)を起(おこ)し、終(つひ)に一切(いつさい)の善男(ぜんなん)善女(ぜんによ)をして悉(ことごと)く文学者(ぶんがくしや)たらしめんと欲(ほつ)し、百で買(か)ツた馬(むま)の如くのたり/\として工風(くふう)を凝(こら)し
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
或(ある)ひは足下(おぬし)の目(め)の色(いろ)が榛色(はしばみいろ)ぢゃによって、そこで相手(あひて)が榛(はしばみ)の實(み)を噛割(かみわ)ったと言(い)ふだけの事(こと)で、鬪爭(けんくわ)を買(か)ひかねぬ。
蛾次郎、それをかき集(あつ)めては、毎日、卜斎の家を留守(るす)にして、野天(のてん)の芝居(しばい)をみたり買(か)い食(ぐ)いに日を暮(く)らしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『斯(か)うも云(い)へるさ』と云(い)つて三月兎(ぐわつうさぎ)が附加(つけくわ)へました、『「私(わたし)が買(か)ふところの物(もの)を好(この)む」と云(い)つても、「私(わたし)が好(この)むところの物(もの)を買(か)ふ」と云(い)つても同(おな)じ事(こと)だ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
山田にては土葬(どそう)するもの少く、多くは荼毘するゆえ、今も死人(しにん)あれば此竈を使(つか)うなり。村はずれの薬師堂の前にて、いわなの大なるを買(か)いて宿(やど)の婢に笑(わら)わる。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼は古めかしい寺町通りを、ぶら/\歩(ある)いてゐた。この前も甥と連れ立つてそこを歩いてゐたとき、帰るまでに買(か)はうと思(おも)つて見(み)てあるいたものが、二三品あつた。
閾 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
家の人たちは何度(なんど)も、雑貨屋(ざっかや)や小間物屋(こまものや)などの小さな店を買(か)ってやって、そこにおちつくようにすすめたことがあった。しかし彼(かれ)は腰(こし)をすえることが出来なかった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
彼(かれ)は前(まへ)のやうに八時(じ)に起(お)きて、茶(ちや)の後(のち)は直(すぐ)に書物(しよもつ)を樂(たの)しんで讀(よ)んでゐたが、此(こ)の頃(ごろ)は新(あたら)しい書物(しよもつ)も買(か)へぬので、古本計(ふるほんばか)り讀(よ)んでゐる爲(せゐ)か、以前程(いぜんほど)には興味(きようみ)を感(かん)ぜぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
第三番(だいさんばん)の阿倍(あべ)の右大臣(うだいじん)は財産家(ざいさんか)でしたから、あまり惡(わる)ごすくは巧(たく)まず、ちょうど、その年(とし)に日本(につぽん)に來(き)た唐船(とうせん)に誂(あつら)へて火鼠(ひねずみ)の皮衣(かはごろも)といふ物(もの)を買(か)つて來(く)るように頼(たの)みました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
大和武尊(やまとたけるのみこと)さまのような、あんな御立派(ごりっぱ)なお方(かた)が、何故(なぜ)なれば海神(かいじん)の怒(いか)りを買(か)われたか?——これは恐(おそ)らくどなたも御不審(ごふしん)の点(てん)かと存(ぞん)じまするが、実(じつ)は私(わたくし)もこれにつきて
表を『えびのひきたち(生きのよい)お買(か)いんか』『青物おかいんか』と売物屋の呼声が通る。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
海蔵(かいぞう)さんは、昨日(きのう)まではよく源(げん)さんと、それをやったものでした。二人(ふたり)で競争(きょうそう)をやって、受(う)けそこなった数(かず)のすくないものが、相手(あいて)に別(べつ)の菓子(かし)を買(か)わせたりしたものでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「当人は、今にセメントが値上(ねあが)りするから、買(か)いしめておくのだ、といっているそうです」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
叔母さんも、これからは買(か)い溜(だめ)などは、およしなさい。疑って失敗する事ほど醜い生きかたは、ありません。私たちは、信じているのです。一寸の虫にも五分の赤心がありました。
新郎 (新字新仮名) / 太宰治(著)
子分の顔を立てるためには自分に不利益なる喧嘩(けんか)を買(か)ったこともあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
先方(せんぱう)では大(おほい)に恐縮(きようしゆく)して、いろ/\相談(さうだん)の末(すゑ)、或(あ)る名高(なだか)い針醫(はりい)が亡(なくな)つて、其(そ)の藥箱(くすりばこ)の不用(ふよう)になつてゐたのを買(か)ひ取(と)り、それを療法(れうはふ)の禮(れい)として贈(おく)つて來(き)たのが、この藥箱(くすりばこ)で、見事(みごと)な彫刻(てうこく)がしてあつて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
破落々々(ばら/\)と投付ける故くずや長八大に驚き江戸と云所は恐ろしく子供等までも人氣(にんき)の惡(わる)い所なりと思ひ早々(そこ/\)に田町の方(かた)へ逃出(にげいだ)し此日もくづをば買(か)ひ得(え)ずして歸(かへり)けるが長八は親分(おやぶん)の長兵衞へ行(ゆき)右の咄を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とつた鼠は交番(かうばん)にもつていつて 買(か)つてもらふだらうな
秋風や捨てば買(か)はうの越後縞(えちごじま) 几董
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
油(あぶら)買(か)つて進(しん)じよ。(肥前)
お月さまいくつ (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「うん、牛蒡(ごぼう)買(か)いにか。」
葉(は)つぱのお金(かね)であげ買(か)うた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
たくさん桃買(か)つて
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
恁(か)うして買(か)つて參(まゐ)ります品物(しなもの)が氣(き)に入(い)らないと、甚(ひど)いんですぜ、そりや、踏(ふ)んだり、蹴(け)つたり、ポカ/\でさ。我又不善擇人參可否(われまたにんじんのかひをえらぶことをよくせず)。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「さあ、こいを買(か)っていってください。もう大(おお)きいのが一ぴきになりました。うんとまけておきますから、買(か)っていってください。」
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さういふ短(みじか)いのは端布片(はしぎれ)で買(か)ふに限(かぎ)るのさ、幾(いく)らにもつかないもんだよ、私(わたし)が近頃(ちかごろ)出(で)る序(ついで)もあるから買(か)つて來(き)て遣(や)つても善(い)いよ」
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金時計(きんどけい)だの金鎖(きんぐさり)が幾(いく)つも並(なら)べてあるが、是(これ)もたゞ美(うつく)しい色(いろ)や恰好(かつかう)として、彼(かれ)の眸(ひとみ)に映(うつ)る丈(だけ)で、買(か)ひたい了簡(れうけん)を誘致(いうち)するには至(いた)らなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まア、空(そら)とぼけるなんて卑怯(ひけふ)だわ。そ、そんな贅澤(ぜいたく)な壁掛(かべかけ)なんかを氣(き)まぐれにお買(か)ひになる餘裕(よゆう)があるんならつて言(い)ふのよ」
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
左様(さやう)でげすな、四品(よしな)で七円(ゑん)位(ぐらゐ)では如何(いかゞ)でげせう。士「ヤ、怪(け)しからぬことを云(い)ふ、釜(かま)ばかりでもお前(まへ)十五両(りやう)で買(か)うたのだぜ。 ...
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何(なん)だ。これはいつか死(し)んだおかあさんにわたしの買(か)ってやった鏡(かがみ)じゃないか。どうしてこんなものをながめているのだ。」
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)