“名(な)” の例文
佐吉(さきち)は、そのそばに駈(か)け寄(よ)ってみますと、かごの中(なか)には、名(な)も知(し)らないような小鳥(ことり)がはいっていて、それがいい声(ごえ)でないていました。
酔っぱらい星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『荘子(そうじ)』に「名は実(じつ)の賓(ひん)なり」とあるごとく、実(じつ)は主(しゅ)にして名(な)は客(かく)である。言葉も同じく考えの賓(ひん)、思想の客(かく)なりといいうると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
父親(ちちおや)は相当(そうとう)高(たか)い地位(ちい)の大宮人(おおみやびと)で、名(な)は狭間信之(はざまのぶゆき)、母親(ははおや)の名(な)はたしか光代(みつよ)、そして雛子(ひなこ)は夫婦(ふうふ)の仲(なか)の一粒種(ひとつぶだね)のいとし児(こ)だったのでした。
會(くわい)の名(な)は——會費(くわいひ)が九圓九十九錢(きうゑんきうじふきうせん)なるに起因(きいん)する。震災後(しんさいご)、多年(たねん)中絶(ちうぜつ)して居(ゐ)たのが、頃日(このごろ)區劃整理(くくわくせいり)に及(およ)ばず、工事(こうじ)なしに復興(ふくこう)した。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
坊ちゃん政——それは私にいつの間にか付けられた通(とお)り名(な)だった。もちろんかねて顔馴染(かおなじみ)の二刑事が覚えているのも詮(せん)ないことだろう。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(七九)閭巷(りよかう)の人(ひと)、行(おこなひ)を砥(と)ぎ名(な)を立(た)てんと欲(ほつ)する者(もの)は、(八〇)青雲(せいうん)の士(し)に附(つ)くに非(あら)ずんば、惡(いづく)んぞ能(よ)く(名ヲ)後世(こうせい)に施(し)かん哉(や)。
「何(なん)といういくじのないやつだ。じゃあためしにおれの名(な)を当(あ)ててみろ。うまく言(い)い当(あ)てたら、かんべんしてやらないものでもない。」
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おまえは、目(め)がみえぬのか。これをみなさい。なんとかいてある。奥平大膳大夫(おくだいらだいぜんのだいぶ)と、とのさまのお名(な)まえがかいてあるではないか。」
柳橋(やなぎばし)に柳なきは既に柳北(りゅうほく)先生『柳橋新誌(りゅうきょうしんし)』に「橋以レ柳為レ名而不レ植二一株之柳一〔橋(はし)は柳(やなぎ)を以(もっ)て名(な)と為(な)すに、一株(いっしゅ)の柳(やなぎ)も植(う)えず〕」
今更(いまさら)ながら長吉(ちようきち)の亂暴(らんぼう)に驚(おどろ)けども濟(す)みたる事(こと)なれば咎(とが)めだてするも詮(せん)なく、我(わ)が名(な)を借(か)りられしばかりつく/″\迷惑(めいわく)に思(おも)はれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『痴人(ばか)め!』女王樣(ぢよわうさま)は焦心(ぢれ)ッたさうに御自身(ごじしん)の頭(あたま)を突(つ)き出(だ)して申(まを)されました、それから愛(あい)ちやんに振向(ふりむ)いて、『何(なん)と申(まを)す名(な)ぢや?子供(こども)』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
他日(たじつ)我(わ)が海底戰鬪艇(かいていせんとうてい)が、帝國軍艦旗(ていこくぐんかんき)を飜(ひるがへ)して、千艇※艦(せんていばんかん)の間(あひだ)に立(た)つの時(とき)、願(ねがは)くば其(その)名(な)の如(ごと)く、神速(しんそく)に、且(か)つ猛烈(まうれつ)ならん事(こと)を望(のぞ)むのです。
尊王攘夷の大趣意において豈(あ)に間然(かんぜん)する所あらんや。その表面よりすれば言正しく名(な)順(したが)い、その裏面よりすれば、禍(わざわい)未測に陥らんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
つづいて欧鵬(おうほう)、つづいて陶宗旺(とうそうおう)と、各〻が口を揃えて名(な)のりつらねた。そして最後に——ややおくれて飛んで来た二挺(ちょう)斧(おの)を持った男も
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最後(さいご)に会(あ)ったのはたしか四五月頃(しごがつごろ)でしたか、新橋演舞場(しんばしえんぶじょう)の廊下(ろうか)で誰(たれ)か後(うしろ)から僕(ぼく)の名(な)を呼(よ)ぶのでふり返(かえ)って見(み)ても暫(しばら)く誰(たれ)だか分(わか)らなかった。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
鐘(かね)のどこかに、その鐘師(かねし)の名(な)が彫(ほ)りつけてあるそうな、と婆(ばあ)さんはいった。これは木之助(きのすけ)爺(じい)さんの話(はなし)よりよほどほんとうらしい。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
われ/\は最初(さいしよ)の弱(よわ)い部分(ぶぶん)を初期微動(しよきびどう)と名(な)づけ、中頃(なかごろ)の強(つよ)い部分(ぶぶん)を主要動(しゆようどう)或(あるひ)は主要部(しゆようぶ)、終(をは)りの弱(よわ)い部分(ぶぶん)を終期部(しゆうきぶ)と名(な)づけてゐる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
馬(うま)に乘(の)るか、籠(かご)に乘(の)るか、さもなければ歩(ある)いて旅(たび)をした以前(いぜん)の木曾街道(きそかいだう)の時分(じぶん)には、父(とう)さんの生(うま)れた神坂村(みさかむら)も驛(えき)の名(な)を馬籠(まごめ)と言(い)ひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
仙人(せんにん)張三丰(ちょうさんぼう)を索(もと)めんとすというを其(その)名(な)とすと雖(いえど)も、山谷(さんこく)に仙を索(もと)めしむるが如き、永楽帝の聰明(そうめい)勇決にして豈(あに)真に其(その)事(こと)あらんや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
先(ま)づ検疫船(けんえきせん)が来(き)て検疫医(けんえきい)が乗(の)り込(こ)む。一等(とう)船客(せんかく)一同(どう)大食堂(だいしよくだう)に呼(よ)び集(あつ)められて、事務長(じむちやう)が変(へん)な所(ところ)にアクセントをつけて船客(せんかく)の名(な)を読(よ)み上(あ)げる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
又(また)なんじら我(わ)が名(な)のために凡(すべ)ての人(ひと)に憎(にく)まれん。されど終(おわり)まで耐(た)え忍(しの)ぶものは救(すく)わるべし。この町(まち)にて、責(せ)めらるる時(とき)は、かの町(まち)に逃(のが)れよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ロミオ や、俺(おれ)の名(な)を呼(よ)ぶは戀人(こひゞと)ぢゃ。あゝ、戀人(こひゞと)の夜(よる)の聲音(こわね)は、白銀(しろがね)の鈴(すゞ)のやうにやさしうて、聞(き)けば聞(き)くほどなつかしい!
校長として令名(れいめい)を馳(は)せ、一音楽家にして上院の終身議員となり、功成り名(な)遂(と)げて一九〇四年五月一日六十三歳をもって没した。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
ラランのやつに欺(だま)されたと気(き)づいても、可哀(かあい)さうなペンペはその抉(えぐ)られた両方(りやうほう)の眼(め)から血(ち)を滴(したた)らすばかりだつた。もうラランの名(な)も呼(よ)ばない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
勿論(もちろん)、個個(ここ)に遊(あそ)び樂(たの)しんでゐた人達(ひとたち)は外(ほか)にもあつたらうが、少(すくな)くとも麻雀戲(マアジヤンぎ)の名(な)を世間的(せけんてき)に知(し)らせたのはどうもあすこだつたやうに思(おも)はれる。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
この、おの/\の位置(いち)によつて生(は)える樹木(じゆもく)の種類(しゆるい)と森林(しんりん)の形(かたち)とが異(ことな)つてゐるあり樣(さま)を名(な)づけて、『森林帶(しんりんたい)』または『森林植物帶(しんりんしよくぶつたい)』と言(い)ひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
地占者(ゼオマンテイ)等が、夜の明けざるさきに、その大吉と名(な)づくるものの、ほどなく白む道を傳ひて、東に登るを見るころほひ 四—六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「私(わたし)夫(それ)でも何時(いつ)も御祖母(おばゞ)さまなのよ。御祖母(おばゞ)さまの西洋(せいやう)の名(な)がなくつちや不可(いけ)ないわねえ。御祖母(おばゞ)さまは何(なん)て云(い)ふの」と聞(き)いたものもあつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私共(わたしども)は、その塚(つか)を金冠塚(きんかんづか)と名(な)づけましたが、そのわけは、この塚(つか)の中(なか)から、それは/\立派(りつぱ)な金(きん)の冠(かんむり)が出(で)たからであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「だれも人がいなかったから、とうとうあれを伴(つ)れてきましたが、ほんとにばかですよ。とうとう幼(おさ)な名(な)をあなたに聞かしてしまいましたわ。」
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
老人(らうじん)の名(な)は大島仁藏(おほしまじんざう)、若者(わかもの)の名(な)は池上權藏(いけがみごんざう)であるといふことを言(い)へば、諸君(しよくん)は、既(すで)に大概(たいがい)の想像(さうざう)はつくだらうと思(おも)ひます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
今日(こんにち)ですら日本全土(にほんぜんど)の七十パーセントは樹木(じゆもく)を以(もつ)て蔽(おほ)はれてをり、約(やく)四十五パーセントは森林(しんりん)と名(な)づくべきものである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
二人(ふたり)の少年(せうねん)が泊(とま)つた家(いへ)は、隣村(りんそん)にも名(な)だたる豪家(がうか)であつた。門(もん)のわきには大(おほ)きな柊(ひいらぎ)の木(き)が、青(あを)い空(そら)にそヽりたつてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
お鍋(なべ)とはよく名(な)をつけたと、おいらァつくづくあいつの、親父(おやじ)の智恵(ちえ)に感心(かんしん)してるんだが、それと違(ちが)っておせんさんは、弁天様(べんてんさま)も跣足(はだし)の女(おんな)ッぷり。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それまで そうじゅん と いっていた 一休(いっきゅう)さんは それから 名(な)を 一休(いっきゅう) と あらため、それを いっしょう かえなかったと いわれます。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
うつさばやの心(こゝろ)あつく去年(こぞ)より武藏野(むさしの)に名(な)はあれどにげ水(みづ)のそこはかとなくかくろひてさのみしる人(ひと)もなかりしを
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
「おこるにはおこるだろうが、じぶんは、なんといってもあれの名(な)づけ子(ご)のことだから、死神も目をつぶってくれるだろ。おもいきって、やってみろ」
君(きみ)の嫌(きらひ)だつた犬(いぬ)は寢室(しんしつ)には入(い)れないで置(お)くから。犬(いぬ)と言(い)へば君(きみ)は、犬好(いぬず)きの坊(ぼつ)ちやんの名前(なまへ)に僕(ぼく)の名(な)を使(つか)つたね。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
『君勇(きみゆう)』とか『秀香(ひでか)』とか、都(みやこ)の歌妓(うたひめ)の名(な)を染(そ)めた茶色(ちやいろ)の短(みじか)い暖簾(のれん)が、軒(のき)に懸(か)け渡(わた)されて、緋毛氈(ひまうせん)の床几(しようぎ)を背後(うしろ)に、赤前垂(あかまへだれ)の女(をんな)が、甲高(かんだか)い聲(こゑ)を絞(しぼ)つてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
けれども大昔(おほむかし)には、うたと名(な)づくべきものが多(おほ)かつたので、そのうち、一番(いちばん)後(あと)に出來(でき)て、一番(いちばん)完全(かんぜん)になつたものが、うたといふ名(な)を專(もつぱ)らにしたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
事(こと)に依(よ)つたら、主(しゆ)の君(きみ)も、それをお知(し)りにならうとなさらないのだらう。時(とき)に、あの子供(こども)たちも名(な)が無(な)いやうだ。主(しゆ)の君(きみ)は却(かへ)つて其方(そのはう)が好(い)いと仰有(おつしや)るだらう。
それが一枚(まい)あれば何處(どこ)の神社(じんじや)へ行(い)つても役(やく)に立(た)てゝ居(ゐ)るものと見(み)えて短(みじか)い文中(ぶんちう)に讀上(よみあ)ぐべき神社(じんじや)の名(な)は書(か)いてなくて何郡(なにごほり)何村(なにむら)何神社(なにじんじや)といふ文字(もじ)で埋(うづ)めてある。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
申自身番にて新藤市之丞などと云(いふ)六ヶ敷(むづかしき)名(な)の人は紙屑買(かみくづかひ)にはあるべからず夫(そ)は大方(おほかた)浪人者(らうにんもの)の間違(まちが)ひなる可(べし)と云ゆゑ文右衞門は當惑(たうわく)なせしかど是非共(ぜひとも)尋ねて金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私(わたくし)の考(かんがへ)では是(これ)が抑(そも/\)生活(せいくわつ)と名(な)づくべきものだらうと。又(また)有機體(いうきたい)が下等(かとう)に成(な)れば成(な)る丈(だ)け、より少(すくな)く物(もの)を感(かん)ずるので有(あ)らうと、其故(それゆゑ)により弱(よわ)く刺戟(しげき)に答(こた)へるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ほんとうの名(な)は讃岐(さぬき)の造麻呂(みやつこまろ)といふのでしたが、毎日(まいにち)のように野山(のやま)の竹藪(たけやぶ)にはひつて、竹(たけ)を切(き)り取(と)つて、いろ/\の物(もの)を造(つく)り、それを商(あきな)ふことにしてゐましたので
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
トルストイ、ツルゲネーフ等(とう)の名(な)は吾人(ごじん)久(ひさ)しく之(これ)を聞(き)けども、ドストイヱフスキーの名(な)と著書(ちよしよ)に至(いた)りては吾文界(わがぶんかい)に之(これ)を紹介(せうかい)するの功(こう)不知庵(フチアン)に多(おほ)しと言(い)はざる可(べ)からず。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
古(ふる)い名(な)を持(も)つ草津(くさつ)に隱(かく)れて、冬籠(ふゆごも)る身(み)にも、遙々(はる/″\)と高原(かうげん)の雪(ゆき)を分(わ)けて、うらゝかな日(ひ)は照(て)つてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
或(ある)ときも無聊(ぶれう)に苦(くる)しんでゐた折(おり)、誰(たれ)かを訪問(ほうもん)しようかと言(い)ひ合(あ)つてゐるときS、H氏(し)の名(な)が出(で)た。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
続(つづ)いて同(おな)じく長篇(ちょうへん)の『小悪魔(しょうあくま)』を発表(はっぴょう)して、一流(りゅう)の作家(さっか)として名(な)をうたわれるようになった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ポケットへはいるほど小さいというので、ポケット小僧というあだ名(な)をつけられていました。
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)