“來(き)” の例文
新字:来
すると其時(そのとき)夕刊(ゆふかん)の紙面(しめん)に落(お)ちてゐた外光(ぐわいくわう)が、突然(とつぜん)電燈(でんとう)の光(ひかり)に變(かは)つて、刷(すり)の惡(わる)い何欄(なにらん)かの活字(くわつじ)が意外(いぐわい)な位(くらゐ)鮮(あざやか)に私(わたくし)の眼(め)の前(まへ)へ浮(うか)んで來(き)た。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
例(たと)へば、淡路(あはぢ)と和泉(いづみ)の間(あひだ)の海(うみ)は、古來(こらい)茅渟(ちぬ)の海(うみ)と稱(せう)し來(き)たつたのを、今日(こんにち)はこの名稱(めいせう)を呼(よ)ばないで和泉洋(いづみなだ)または大阪灣(おほさかわん)と稱(せう)してゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
馬鹿野郎(ばかやらう)、何(なに)をして居(ゐ)る。まるで文句(もんく)が分(わか)らないから、巖谷(いはや)が俥(くるま)で駈(か)けつけて、もう内(うち)へ來(き)てゐるんだ。うつそりめ、何(なに)をして居(ゐ)る。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
出(で)て來(こ)られる都合(つがふ)ならば又(また)今(いま)までのやうにお世話(せわ)に成(な)りに來(き)まする、成(な)るべくは鳥渡(ちよつと)たち歸(かへ)りに直(す)ぐも出京(しゆつけう)したきものと輕(かる)くいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼(かれ)は捕(とら)へられて家(いへ)に引返(ひきかへ)されたが、女主人(をんなあるじ)は醫師(いしや)を招(よ)びに遣(や)られ、ドクトル、アンドレイ、エヒミチは來(き)て彼(かれ)を診察(しんさつ)したのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼(かれ)が薦(こも)つくこを擔(かつ)いで歸(かへ)つて來(き)た時(とき)は日向(ひなた)の霜(しも)が少(すこ)し解(と)けて粘(ねば)ついて居(ゐ)た。お品(しな)は勘次(かんじ)が一寸(ちよつと)の間(ま)居(ゐ)なく成(な)つたので酷(ひど)く寂(さび)しかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それをこれほど寫生的(しやせいてき)に描(か)くには、實物(じつぶつ)によつて寫生(しやせい)したのでなければならぬといふことなどが、だん/\わかつて來(き)たのみでなく
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
砧村(きぬたむら)の途中(とちう)で磨石斧(ませきふ)を拾(ひろ)ひ、それから小山(こやま)の上(あが)り口(くち)で、破片(はへん)を拾(ひろ)つたが、既(も)う此所(こゝ)までに五里(り)近(ちか)く歩(ある)いたので、余(よ)は少(すこ)しく參(まゐ)つて來(き)た。
臼(うす)もころがして來(き)ました。お餅(もち)にするお米(こめ)は裏口(うらぐち)の竈(かまど)で蒸(む)しましたから、そこへも手傳(てつだ)ひのお婆(ばあ)さんが來(き)て樂(たの)しい火(ひ)を焚(た)きました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さうして此後(このご)も大凡(おほよ)そこんな状勢(じやうせい)で進(すゝ)むからして從(したがつ)て少(すくな)くも是迄(これまで)彌(いや)が上(うへ)に殖(ふ)えて來(き)た國債(こくさい)の總額(そうがく)を殖(ふや)さずに濟(す)まし得(う)る次第(しだい)である。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
「龍(たつ)は雷(かみなり)のようなものと見(み)えた。あれを殺(ころ)しでもしたら、この方(ほう)の命(いのち)はあるまい。お前(まへ)たちはよく龍(たつ)を捕(と)らずに來(き)た。うい奴(やつ)どもぢや」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
それで他國(たこく)の立派(りつぱ)な堂々(だう/\)たる小學校(せうがくかう)に居(ゐ)て急(きふ)に其樣(そんな)見(み)すぼらしい學校(がくかう)に來(き)た僕(ぼく)は子供心(こどもごころ)にも決(けつ)して愉快(ゆくわい)な心地(こゝち)は爲(し)なかつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
すぐ夫(をつと)は傍(そば)から松葉(まつば)を拾(ひろ)ひ上(あ)げて穴(あな)の中(なか)をつつ突(つ)いた。と、蜂(はち)はあわてて穴(あな)から出(で)て來(き)たが、忽(たちま)ち松葉(まつば)に向(むか)つて威嚇的(ゐかくてき)な素振(そぶり)を見(み)せた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
天(てん)にでもいゝ、地(ち)にでもいゝ、縋(すが)らうとする心(こゝろ)、祈(いの)らうとする希(ねが)ひが、不純(ふじゆん)な沙(すな)を透(とほ)して清(きよ)くとろ/\と彼女(かのぢよ)の胸(むね)に流(なが)れ出(で)て來(き)た。
悔 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
すると遠(とほ)くの方(はう)でパタ/\と小(ちひ)さな跫音(あしおと)のするのが聞(きこ)えました、愛(あい)ちやんは急(いそ)いで眼(め)を拭(ふ)いて何(なに)か來(き)たのだらうかと見(み)てゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
宗助(そうすけ)は五六日前(にちまへ)伊藤公(いとうこう)暗殺(あんさつ)の號外(がうぐわい)を見(み)たとき、御米(およね)の働(はたら)いてゐる臺所(だいどころ)へ出(で)て來(き)て、「おい大變(たいへん)だ、伊藤(いとう)さんが殺(ころ)された」と云(い)つて
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ほんとうにげんげを摘(つ)みに來(き)て、野(の)に寢(ね)る人(ひと)がありませうか。狐(きつね)にでもつまゝれなければ、さういふことをするはずがありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかし室(しつ)は比較的(ひかくてき)に廣(ひろ)く作(つく)られるのが通常(つうじよう)であるから、右(みぎ)のようなものゝ落(お)ちて來(き)さうな場所(ばしよ)から遠(とほ)ざかることも出來(でき)るであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
日本(につぽん)アルプスの上高地(かみこうち)の梓川(あづさがは)には、もといはなで、足(あし)が滑(すべ)るといはれたほど澤山(たくさん)ゐたものですが、近頃(ちかごろ)はだんだん減(へ)つて來(き)たようです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
したが、こゝな浮氣者(うはきもの)、ま、予(わし)と一しょに來(き)やれ、仔細(しさい)あって助力(ぢょりき)せう、……此(この)縁組(えんぐみ)が原(もと)で兩家(りゃうけ)の確執(かくしつ)を和睦(わぼく)に變(か)へまいものでもない。
閭(りよ)は小女(こをんな)を呼(よ)んで、汲立(くみたて)の水(みづ)を鉢(はち)に入(い)れて來(こ)いと命(めい)じた。水(みづ)が來(き)た。僧(そう)はそれを受(う)け取(と)つて、胸(むね)に捧(さゝ)げて、ぢつと閭(りよ)を見詰(みつ)めた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『いや、いや、如何(どう)考(かんが)へても今時分(いまじぶん)あんな船(ふね)に此(この)航路(かうろ)で追越(おひこ)される筈(はづ)はないのだ。』と見(み)る/\内(うち)に不安(ふあん)の顏色(いろ)が現(あら)はれて來(き)た。
隱(かく)さんと云るを聞(きゝ)共に涙に暮(くれ)居(ゐ)たりしが軈(やが)てお文は父母(ふたおや)の前に來(き)たり兩手を突(つき)只(たゞ)今お兩方樣(ふたかたさま)のお咄(はな)しを承まはり候に父樣は何方(いづかた)へかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
驚(おどろ)いて眼(め)が覺(さ)めたが、たしかに猫(ねこ)の聲(こゑ)がする、夢(ゆめ)か怪(かい)か、はね起(お)きて見(み)たら枕(まくら)もとには例(れい)の兒猫(こねこ)が座(すは)つてゐた、どこから忍(しの)んで來(き)たのやら。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
『何遍(なんべん)いたしましても、同(おな)じことでござります。』と、玄竹(げんちく)はこの潔癖(けつぺき)な殿樣(とのさま)の相手(あひて)をしてゐるのが、少(すこ)し迷惑(めいわく)になつて來(き)た。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
友(とも)と二人(ふたり)でブラリと家(いへ)を出(で)た。固(もと)より何處(どこ)へ行(ゆ)かうといふ、的(あて)もないのだが、話(はなし)にも厭(あ)きが來(き)たので、所在なさに散歩(さんぽ)と出掛(でか)けたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
すると翌日(よくじつ)歸(かへ)つて來(き)て大層(たいそう)謝罪(しやざい)をされるから何故(なにゆゑ)返事(へんじ)をしなかつたと尋(たづ)ねると返事(へんじ)は端書(はがき)で出(だ)して置(お)きましたといふのです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
其後(そのご)、男(をとこ)から何(なん)と云(い)つてやつても、女(をんな)からは依然(いぜん)として毎月(まいげつ)一日(じつ)に『御返事(ごへんじ)を待(ま)つて居(を)ります』の葉書(はがき)が來(き)た。とう/\それが一年間(ねんかん)續(つゞ)いた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
お母(かあ)さんになつた小鳥(ことり)が木(き)の上(うへ)の巣(す)の中(なか)で卵(たまご)をあたためてをりました。するとまた今日(けふ)も牝牛(めうし)がその下(した)へやつて來(き)ました。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
二人(ふたり)は、子供(こども)を抱(だ)いて明(あか)るい通(とほ)りから折(を)れて、暗(くら)い道(みち)を歩(ある)いた。暗(くらい)い所(ところ)に來(き)ても、銀座(ぎんざ)の明(あか)るみを歩(ある)く人(ひと)の足音(あしおと)は聞(きこ)えた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
身を滑(なめらか)ならしむる獸のごとくしば/\頭を背にめぐらして舐(ねぶ)りつゝ草と花とを分けてかの禍ひの紐(ひも)は來(き)ぬ 一〇〇—一〇二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いまぢあ、すこし慣(な)れやしたがね、此處(こゝ)へはじめて南洋(なんやう)から來(き)たときあ、まだ殘暑(ざんしよ)の頃(ころ)だつたがそれでも、毎日々々(まいにち/\/\)、ぶるぶる震(ふる)えてゐましただよ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
私は、大型のマンホールを横つ腹にひかへてゐる二階で、階下(した)の室(へや)まで、自動車が飛込んで來(き)さうなのを、病人のために、地震よりもびくびくした。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
然(しか)し、夫人(ふじん)は氣(き)を鎭(しづ)めて、近(ちか)くにゐる同志(どうし)の婦人達(ふじんたち)を招(よ)び集(あつ)めた。近所(きんじよ)から醫師(いし)も來(き)て、兎(と)も角(かく)應急手當(おふきふてあて)が施(ほどこ)された。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
所(ところ)が困(こま)つた事(こと)にア身躰(からだ)が惡(わる)く、肺病(はいびよう)と來(き)てゐるから僕(ぼく)も殆(ほと)んど當惑(とうわく)する僕(ぼく)だつて心配(しんぱい)でならんから其(その)心配(しんぱい)を忘(わす)れやうと思(おも)つて、つい飮(の)む、飮(の)めば飮(の)むほど心配(しんぱい)する。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
でも、僕(ぼく)の方(はう)からはさう手輕(てが)るには——君(きみ)がやつたやうに思(おも)ひ切(き)つては君(きみ)のところへ出(で)かけられない。だから君(きみ)から一度(ど)來(き)てもらひ度(た)いと思(おも)ふ——夢(ゆめ)にでも現(うつつ)にでも。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
筆跡もまことに見事で『こんや來(き)ておくれよ、後生だから』とよく羅生門河岸のあの妓が書いてよこすのとは變り、方式通り天地紅の結び文、開くとプーンと白檀(びやくだん)が匂つて
それと共に、かうした場合の男の心持、と云ふよりは男の目的の何であるかも、今は容易(たやす)く推察することが出來るやうな氣がして來(き)た。二人はもとより知らない人同士である。
或夜 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
吐く羊膓(やうちやう)たる阪路(さかみち)進むが如くまた退(もど)るが如し馬をしばしと止めて元來(き)し方を顧みれば淺間の山はすでに下に見られて其身は白雲の上にあり昨日(きのふ)此山を見て一睨みして置きしが今日は昨日宿りし處を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
大君の御腦(ごなう)のニユースきこえ來(き)ぬ絶えて音なき霜夜しづもり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すぐに牛羊むらがり來(き)、二人の牧者これにつぎ、 525
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
哀れなる哉、イカルスが幾人(いくたり)も來(き)ておつこちる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
法子兒(ほうしご)鶲(ひたき)、——人(ひと)の世(よ)の往(ゆ)くさ來(き)るさに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
來(き)入り參ゐ來れ。 (歌謠番號六四)
よろ/\出(で)て來(き)てスツクと立(た)つて
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
もと來(き)た路(みち)へと逃(に)げ出(だ)した。
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
池(いけ)のほとりを來(き)て見(み)れば
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
尼君はここに來(き)ましき。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
行(い)つたり來(き)たり
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
頬邊(ほつぺた)は、可(い)い鹽梅(あんばい)に掠(かす)つたばかりなんですけれども、ぴしり/\酷(ひど)いのが來(き)ましたよ。又(また)うまいんだ、貴女(あなた)、其(そ)の石(いし)を投(な)げる手際(てぎは)が。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)