“勝(か)” の例文
尤(もつと)も、負けても實(じつ)はおごつて頂(いたゞ)く方が多(おほ)かつたがどういふのかこの師弟(してい)の勝負(せうふ)はとかくだれ勝(か)ちで、仕舞(しま)ひには兩(れう)方共(とも)憂鬱(ゆううつ)になつて
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
夜(よる)は戸毎(こごと)の瓦斯(がす)と電燈(でんとう)を閑却(かんきやく)して、依然(いぜん)として暗(くら)く大(おほ)きく見(み)えた。宗助(そうすけ)は此(この)世界(せかい)と調和(てうわ)する程(ほど)な黒味(くろみ)の勝(か)つた外套(ぐわいたう)に包(つゝ)まれて歩(ある)いた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんでもこれは人数(にんずう)は少(すく)なくともよりぬきの強(つよ)い武士(ぶし)ばかりで出(で)かけて行って、力(ちから)ずくよりは智恵(ちえ)で勝(か)つ工夫(くふう)をしなければなりません。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
青年(せいねん)は、また勝(か)ちみがあるのでうれしそうな顔(かお)つきをして、いっしょうけんめいに目(め)を輝(かがや)かしながら、相手(あいて)の王(おう)さまを追(お)っていました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、一(いち)自動車(じどうしや)の手負(ておひ)如(ごと)きは、ものの數(かず)でもない、戰(たゝか)へば勝(か)つ驕將(けうしやう)は、此(こ)の張中(ちやうちう)の説(せつ)を容(い)れなかつた。勇(ゆう)なり、また賢(けん)なるかな。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
太古、禹王(うおう)が、「一に能(よ)く予(よ)に勝(か)つ」といったが、後の学者はこの言を評して、「君子この小心なかるべからず」といっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「こんなにかよわくてしかもこんなに勝(か)ちがたいものを、かつて見たことがない。この人はこの手の中にまるで蘆位(あしぐらゐ)の存在だ!」
みんなでじゃんけんをして、勝(か)ったものが一番先(さき)に、ハンケチで目かくしをして、まっすぐに歩きだしました。ほかの者は立って見ています。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
もう一つには理性の勝(か)った、分別のある人たちの間にバーグレーヴ夫人の評判を悪くさせまいための心遣いであったように思われるのである。
外國市場(ぐわいこくしぢやう)に於(おい)て他國品(たこくひん)と競爭(きやうさう)の位置(ゐち)にある場合(ばあひ)に爲替相場(かはせさうば)の下落(げらく)の爲(た)めに日本品(にほんひん)が競爭(きやうさう)に打(う)ち勝(か)つて多(おほ)く賣(う)れることは時々(とき/″\)經驗(けいけん)した處(ところ)である。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
と。既(すで)に馳(は)すること(二九)三輩(はい)し畢(をは)りて、(三〇)田忌(でんき)一(ひと)たび勝(か)たずして再(ふたた)び勝(か)つ。卒(つひ)に王(わう)の千金(きん)を得(え)たり。是(ここ)に於(おい)て忌(き)、孫子(そんし)を威王(ゐわう)に進(すす)む。
其顏(そのかほ)を不審(いぶかし)げに仰(あふ)ぎて、姉樣人形(ねえさまにんぎやう)は下(くだ)さるか、進(あ)げますると僅(わづ)かに諾(うなづ)く令孃(ひめ)、甚之助(じんのすけ)は嬉(うれ)しく立(たち)あがつて、勝(か)つた勝(か)つた。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
されどその状(さま)人々を從ふる如きに非ず、そがこれに勝つはこれ自ら勝(か)たれんと思へばなり、しかして勝れつゝ己が仁慈(いつくしみ)によりて勝つ 九七—九九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
棒押(ばうを)しに於ては村内の人民敢(あへ)て之に勝(か)つものなしと云ふ、一夕小西君と棒押(ばうを)しを試みしも到底(とうてい)其対手(あひて)に非ざるなり、此他の諸君も皆健脚(けんきやく)の人のみ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
グレ (サンプソンに對ひ、小聲にて)勝(か)つわいと言(い)はっせい。(下手を見やりて)あそこへ殿(との)の親族(しんぞく)の一人(ひとり)が來(わ)せた。
やつら、資本家(しほんか)と将軍(しやうぐん)は確(たし)かに勝(か)った!——だがおれたち、どん底(そく)に喘(あへ)ぐ労働者(らうどうしゃ)農民(のうみん)にとつてそれが何(なん)の勝利(しやうり)であらう
一新(いつしん)の始(はじ)め、大久保公遷都(せんと)の議(ぎ)を獻(けん)じて曰ふ、官軍已に勝(か)つと雖、東賊(とうぞく)猶未だ滅(ほろ)びず、宜しく非常(ひじやう)の斷(だん)を以て非常の事を行ふべしと。先見の明智(ち)と謂ふ可し。
すなわち彼等は長州が勝(か)つも徳川が負(ま)くるも毫(ごう)も心に関(かん)せず、心に関するところはただ利益(りえき)の一点にして
が、わたしも多襄丸(たじやうまる)ですから、どうにかかうにか太刀(たち)も拔(ぬ)かずに、とうとう小刀(さすが)を打(う)ち落(おと)しました。いくら氣(き)の勝(か)つた女(をんな)でも、得物(えもの)がなければ仕方(しかた)がありません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
社會(しやくわい)が犯罪人(はんざいにん)や、精神病者(せいしんびやうしや)や、總(すべ)て自分等(じぶんら)に都合(つがふ)の惡(わる)い人間(にんげん)に對(たい)して、自衞(じゑい)を爲(な)すのには、如何(どう)したつて勝(か)つ事(こと)は出來(でき)ません。で、貴方(あなた)の爲(な)すべき所(ところ)は一つです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
根(ね)が幾日(いくにち)もぐつしりと水(みづ)に浸(ひた)つてた大豆(だいづ)は黄色味(きいろみ)の勝(か)つた褐色(ちやいろ)の莢(さや)も幹(から)も泥(どろ)で汚(よご)れた樣(やう)に黒(くろ)ずんで居(ゐ)た。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
遠くからながめる夏の暮方の森林の様な心の色が何にでもおだやかな影を作って「我(が)」の勝(か)った張強(はりづよ)い千世子の心さいその影のかすかな影響をうける事さえあった。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
大男はやってみましたが、木をとびこすことができないで、枝(えだ)のあいだにひっかかってしまいました。こんなわけで、こんどもまた仕立屋(したてや)さんの勝(か)ちになりました。
気性(きしょう)の勝(か)った母(はは)は、口(くち)に出(だ)しては別(べつ)に何(なん)とも申(もう)しませんでしたが、それでも女(おんな)は矢張(やは)り女(おんな)、小蔭(こかげ)へまわってそっと泪(なみだ)を拭(ぬぐ)いて長太息(といき)を漏(も)らしているのでございました。
将士は、こんな話題に、はればれと、勝(か)ち軍(いくさ)のよろこびを沸きたたせていたが、家康を中心とするごく身辺の帷幕(いばく)のうちは、なお、容易に、凱歌(がいか)をあげていなかった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんなひょろひょろした若造(わかぞう)にくらべては何と云(い)ってもおみちにはおれのほうが勝(か)ち目(め)がある。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
乃(そこ)で皆(みン)な息喘(いきせ)きながら其周圍(そのしうゐ)へ集(あつま)つて來(き)て、『だが、誰(だれ)が勝(か)つたの?』と各自(てんで)に訊(き)きました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
黄金仮面の正体は抑々(そもそも)何者であったのか。明智が勝(か)ったからには、彼にはそれは分っている筈だ。一刻も早くそれを聞き度い。と読者諸君がせき立てられるのは無理もない。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いま細君にたいする小言(こごと)のしりを結(むす)ばずにしまったことを、ふとおのれに勝(か)ちえたように思いついて、すいれんのことも忘(わす)れ、庭を損(そん)じたことも忘れて、笑顔(えがお)を細君にむけた。
箸 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一疋(ぴき)の小猿(こざる)が「おれのお父様(とつちあん)はおまへ豪(えらい)んだぜ、兎(うさぎ)と喧嘩(けんくわ)をして勝(か)つたよ」と言(い)ひました。
輪廓(りんくわく)といひ、陰影(いんえい)と云(い)ひ、運筆(うんぴつ)といひ、自分(じぶん)は確(たしか)にこれまで自分(じぶん)の書(か)いたものは勿論(もちろん)、志村(しむら)が書(か)いたものゝ中(うち)でこれに比(くら)ぶべき出來(でき)はないと自信(じしん)して、これならば必(かなら)ず志村(しむら)に勝(か)つ
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
どちらも今日(こんにち)から見(み)ると、少(すこ)しおもしろみが勝(か)ち過(す)ぎました。趣向(しゆこう)を凝(こら)してゐるところが露骨(ろこつ)に見(み)えるが、赤人(あかひと)の方(ほう)は、よく讀(よ)み返(かへ)して見(み)ると、いかにもごた/\してゐるでせう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
武裝(ぶさう)せる幾多(いくた)の海賊(かいぞく)輩(ども)は手(て)に/\劔戟(けんげき)を振翳(ふりかざ)しつゝ、彼方(かなた)の甲板(かんぱん)から此方(こなた)へ乘移(のりうつ)り、互(たがひ)に血汐(ちしほ)を流(なが)して勝敗(しようはい)を爭(あらそ)ふのであるから、海賊(かいぞく)勝(か)てば其後(そのゝち)の悲慘(ひさん)なる光景(くわうけい)は言(い)ふ迄(まで)もないが
いわんや必勝(ひっしょう)を算(さん)して敗(はい)し、必敗(ひっぱい)を期して勝(か)つの事例も少なからざるにおいてをや。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その日(ひ)も、朝(あさ)早(はや)く彼女(かのぢよ)は起(お)き上(あが)らうとしたが、自分(じぶん)にどう鞭(むち)うつて見(み)ても、全身(ぜんしん)のひだるさには勝(か)てなかつた。立(た)ち上(あが)ると激(はげ)しい眩暈(めまひ)がした。周圍(しうゐ)がシーンとして物音(ものおと)がきこえなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
手拭(てぬぐい)一本(ぽん)の裸絵巻(はだかえまき)を展(ひろ)げていたが、こんな場合(ばあい)、誰(だれ)の口(くち)からも同(おな)じように吐(は)かれるのは、何吉(なにきち)がどこの賭場(とば)で勝(か)ったとか、どこそこのお何(なに)が、近頃(ちかごろ)誰(だれ)にのぼせているとか、さもなければ芝居(しばい)の噂(うわさ)
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
議会(ぎかい)があって、政党(せいとう)というものが、おたがいに政治(せいじ)のやりかたや、意見(いけん)のうえであらそい、せんきょによって勝(か)ったほうの政党(せいとう)が国(くに)の政治(せいじ)をやるしくみになっているときかされましたが、諭吉(ゆきち)には
加之(それに)自分の分としては財産(ざいさん)も幾分別になツて、生活の安全も保證(ほしよう)されてあるから、夫人に取ツては、何方が勝(か)ツても敗(ま)けてもカラ平氣だ。そこで要(い)らざるおせツかいをせぬ事として澄(す)まし返ツてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ヨーロッパ諸國(しよこく)はこの點(てん)ではとても勝(か)てないことになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
星の子のあまりによわし袂あげて魔にも鬼にも勝(か)たむと云へな
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
酒屋(さかや)の小僧(こぞう)さんは、勝(か)った喜(よろこ)びもどこへやら、急(きゅう)に顔(かお)の色(いろ)を変(か)えて、倒(たお)れた炭屋(すみや)の小僧(こぞう)さんと、こわれた塀(へい)とを見(み)くらべましたが
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
同(おな)じ時(とき)、賈雍將軍(かようしやうぐん)は蒼梧(さうご)の人(ひと)、豫章(よしやう)の太守(たいしゆ)として國(くに)の境(さかひ)を出(い)で、夷賊(いぞく)の寇(あだ)するを討(たう)じて戰(たゝかひ)に勝(か)たず。遂(つひ)に蠻軍(ばんぐん)のために殺(ころ)され頭(かうべ)を奪(うば)はる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
今は隱退(いんたい)してゐる小菅劍(けん)之助(すけ)老(ろう)八段(だん)が關根(せきね)金次郎名人に向(むか)つて、年(とし)をとると落(らく)手があり勝(か)ちになる。落(らく)手があるやうでは名手とは言へぬ。
こんなふうでは、この戦(いくさ)にはとても勝(か)てる見込(みこ)みはない。まあ、働(はたら)けるだけ働(はたら)いて、あとはいさぎよく討(う)ち死(じ)にをしよう。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
与次郎は真面目(まじめ)である。広田先生はにや/\笑つてゐる。とう/\真面目(まじめ)の方が勝(か)つて、兎も角も見る事に相談が出来て、三四郎が案内をした。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「あの老人(ろうじん)に助(たす)けを求(もと)めたくはない。なあに、命(いのち)がけでおりてみせる。僕(ぼく)が死(し)ぬか、それとも、うち勝(か)つかだ」
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かゝる敵(かたき)が、植物界(しょくぶつかい)にも、人間界(にんげんかい)にも、常(つね)に陣(ぢん)どって相鬪(あひたゝか)ふ……仁心(じんしん)と害心(がいしん)とが……而(しかう)して惡(あ)しい方(かた)が勝(か)つときは、忽(たちま)ち毒蟲(どくむし)に取附(とりつ)かれて、其(その)植物(しょくぶつ)は枯果(かれは)つる。
孫子(そんし)、(二四)其馬足(そのばそく)の甚(はなは)だ相遠(あひとほ)からず馬(うま)に(二五)上中下(じやうちうげ)の輩(はい)有(あ)るを見(み)る。是(ここ)に於(おい)て孫子(そんし)、田忌(でんき)に謂(い)つて曰(いは)く、『君(きみ)第(ただ)重射(ちようせき)せよ。臣(しん)、能(よ)く君(きみ)をして勝(か)たしめん』
是(こ)れは極(ごく)大切(たいせつ)の歌(うた)にて人(ひと)に見(み)すべきでは無(な)けれど、若樣(わかさま)をお勝(か)たせ申(まうし)たく、他(ほか)の人(ひと)に内證(ないしよ)にて姉樣(ねえさま)ばかりに御覽(ごらん)に入(い)れ給(たま)へ、早(はや)く、内證(ないしよ)で、姉樣(ねえさま)にお上(あ)げなされ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
社会(しゃかい)が犯罪人(はんざいにん)や、精神病者(せいしんびょうしゃ)や、総(すべ)て自分等(じぶんら)に都合(つごう)の悪(わる)い人間(にんげん)に対(たい)して、自衛(じえい)を為(な)すのには、どうしたって勝(か)つことは出来(でき)ません。で、貴方(あなた)の為(な)すべき所(ところ)は一つです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)