“木(き)” の例文
しかし、その木(き)のいただきまで上(のぼ)れるものは、重(じゅう)ちゃんくらいのもので、ほかの子(こ)には、目(め)がまわるほど、あまりに高(たか)かったのです。
高い木とからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが前(まへ)に言(い)つたように人間(にんげん)が多(おほ)くなるにつれて木材(もくざい)がいよ/\多(おほ)く必要(ひつよう)となり、どんどん伐(き)るため、村落(そんらく)に近(ちか)い山(やま)の木(き)はもとより
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
雨に濡れた俊助(しゅんすけ)が『鉢(はち)の木(き)』の二階へ来て見ると、野村(のむら)はもう珈琲茶碗(コオヒイじゃわん)を前に置いて、窓の外の往来へ退屈そうな視線を落していた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そればかりではありません、山(やま)にある木(き)の葉(は)、田圃(たんぼ)にある草(くさ)の中(なか)にも『食(た)べられるからおあがり。』と言(い)つてくれるのもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其(そ)の日(ひ)は栗(くり)の木(き)に懸(か)けた大根(だいこ)の動(うご)かぬ程(ほど)穩(おだや)かな日(ひ)であつた。お品(しな)は此(こ)の分(ぶん)で行(ゆ)けば一枚紙(いちまいがみ)を剥(は)がすやうに快(こゝろ)よくなることゝ確信(かくしん)した。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
愛(あい)ちやんは心配(しんぱい)さうに木々(きゞ)の間(あひだ)を覗(のぞ)き廻(まは)つてゐましたが、軈(やが)て其頭(そのあたま)の眞上(まうへ)にあつた小(ちひ)さな尖(とが)つた木(き)の皮(かは)に、ひよいと眼(め)が着(つ)きました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
張箍(はりわ)の女袴(をんなばかま)を穿(は)いた官女(くわんぢよ)よ、橡(とち)の木(き)よ、三葉形(みつばがた)の縫(ぬひ)を置いて、鳥の羽根(はね)の飾をした上衣(うはぎ)を曳(ひき)ずる官女(くわんぢよ)よ、大柄(おほがら)で權高(けんだか)で、無益(むやく)の美形(びけい)。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
橋(はし)のあつたのは、市(まち)を少(すこ)し離(はな)れた処(ところ)で、堤防(どて)に松(まつ)の木(き)が並(なら)むで植(う)はつて居(ゐ)て、橋(はし)の袂(たもと)に榎(え)の樹(き)が一本(いつぽん)、時雨榎(しぐれえのき)とかいふのであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、おいらもそう思って、北国街道(ほっこくかいどう)から、雪のふる橡(とち)ノ木(き)峠(とうげ)をこえて、この京都へきたけれど……まだ鷲の影(かげ)さえも見あたらない」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謡曲の中(うち)でも比較的芝居がかりに出来ている鉢(はち)の木(き)、安宅(あたか)等ですら、処々(しょしょ)三四行乃至(ないし)十四行宛(ずつ)要領の得悪(えにく)い文句が挿まっていて
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
林をではずれるとすぐ水で、そこまで木(き)のえだがのびているみぎわちかく、帆(ほ)をかけたまま、大きなふねをこぎよせることもできました。
いわゆる根(ね)ッ木(き)の問題には限らず、我々がお互いに話し合ってみないために、覚るべきことを覚らずにいる場合ははなはだ多い。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿(しか)はおどろいて一度(いちど)に竿(さを)のやうに立(た)ちあがり、それからはやてに吹(ふ)かれた木(き)の葉(は)のやうに、からだを斜(なゝ)めにして逃(に)げ出(だ)しました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
それが年月(としつき)を經(へ)るに從(したが)つて石(いし)が崩(くづ)れたり、その中(なか)に木(き)の種(たね)が落(お)ちて芽(め)を出(だ)したりして、塚(つか)の上(うへ)に樹木(じゆもく)が茂(しげ)つて來(き)たのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
四月(つき)すると、木々(きぎ)の梢(こずえ)が青葉(あおば)に包(つつ)まれ、枝(えだ)と枝(えだ)が重(かさ)なり合(あ)って、小鳥(ことり)は森(もり)に谺(こだま)を起(お)こして、木(き)の上(うえ)の花(はな)を散(ち)らすくらいに、歌(うた)い出(だ)しました。
そして、木(き)の葉のすきまから、じっと、のぞいていますと、ふたりの悪者は、いけがきのやぶれめから、外に、出てきました。
妖人ゴング (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
向こうの並(な)み木(き)は朝日に照らされてその影をぞくぞくと畑道の上に映(うつ)していると、そこにはにわとりやすずめなどが嬉しそうに飛びまわる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
へえ、これは、その、或(あ)る家(いえ)の前(まえ)を通(とお)りますと、槙(まき)の木(き)の生(い)け垣(がき)にこれがかけて干(ほ)してありました。見(み)るとこの、尻(しり)に穴(あな)があいていたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
次に平群(へぐり)の都久(つく)の宿禰は、平群の臣、佐和良の臣、馬の御樴(みくひ)の連等が祖なり。次に木(き)の角(つの)の宿禰は、木の臣、都奴の臣、坂本の臣等が祖なり。
又(また)お履物(はきもの)は黒塗(くろぬり)りの靴(くつ)見(みた)いなものですが、それは木(き)の皮(かわ)か何(なん)ぞで編(あ)んだものらしく、そう重(おも)そうには見(み)えませんでした……。
木(き)の根(ね)草(くさ)の根(ね)が邪魔(じやま)をして、却々(なか/\)掘(ほ)り難(にく)い。それに日(ひ)は當(あた)らぬ。寒(さむ)くて耐(たま)らぬ。蠻勇(ばんゆう)を振(ふる)つて漸(やうや)く汗(あせ)を覺(おぼ)えた頃(ころ)に、玄子(げんし)は石劒(せきけん)の柄部(へいぶ)を出(だ)した。
近頃(このごろ)新築したといふ立派な医院で、まだ木(き)の香(か)がぷんとしみた。細君は四十五六の善良さうな人で、たしか二度目だつた。
念仏の家 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
茱萸(ぐみ)の木(き)林(ばやし)に、今井四郎兼平のひきいる六千余騎は、鷲(わし)の瀬(せ)を渡って日宮(ひのみや)林に陣を構え、大将義仲は、一万余騎を引き連れ、埴生(はにゅう)に陣を敷いた。
五色(ごしき)ばかりではなく木(き)の葉の黄ばんだのも面白く、又染(しみ)だらけになったのも面白い、これは唯其の人の好みによって色々になるのでございます。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大きな木(き)の雁首(がんくび)を指(ゆび)で抑(おさ)へて、二吹許(ふたふきばか)り濃い烟(けむり)を髭(ひげ)の中(なか)から出(だ)したが、やがて又丸い脊中(せなか)を向けて画(ゑ)に近付(ちかづ)いた。勝手な所を自由に塗つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二人(ふたり)の少年(せうねん)が泊(とま)つた家(いへ)は、隣村(りんそん)にも名(な)だたる豪家(がうか)であつた。門(もん)のわきには大(おほ)きな柊(ひいらぎ)の木(き)が、青(あを)い空(そら)にそヽりたつてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ジャガ芋の湯煮たのを裏漉しにして交ぜて外に人参(にんじん)や牛蒡(ごぼう)や木(き)くらげのようなものがあれば下煮をして一緒に加えます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
庭の桐(きり)の木(き)の葉崩(はくず)れから、カサコソと捲きおこる秋風が呉子さんの襟脚(えりあし)にナヨナヨと生え並ぶ生毛(うぶげ)を吹き倒しても
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怠惰屋(なまけや)なぞになられて堪(たま)るものか、學校(がくかう)へ行(ゆ)くのが慊(いや)なら櫻(さくら)の木(き)の皮(かは)を剥(むか)すが可(よ)いか、サア如何(どう)だ此(この)大(おほ)たわけめ!
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
老人は愕然(がくぜん)として、その道筋の左右を見廻すと、お竹蔵の塀について、榛(はん)の木(き)馬場の方へふらふらと歩いて行く一個の人影を認めないわけにはゆきません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その墓地はMという細い街(まち)に面しておりますが、そこには別に門というものがなく、槙(まき)の木(き)がまばらに植えてあるだけで、自由自在に人の出入りができます。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それでも母樣(かあさま)私(わたし)は何處(どこ)へか行(ゆ)くので御座(ござ)りましやう、あれ彼處(あすこ)に迎(むか)ひの車(くるま)が來(き)て居(ゐ)まする、とて指(ゆび)さすを見(み)れば軒端(のきば)のもちの木(き)に大(おほ)いなる蛛(くも)の巣(す)のかゝりて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月(つき)の照(て)つてゐる所(ところ)に咲(さ)いてゐる、町(まち)のとほりに植(う)ゑてある木(き)に、當(あた)るところの風(かぜ)の音(おと)の高(たか)さに、なるほどひどい風(かぜ)だと思(おも)つて空(そら)を見(み)ると、吹(ふ)き上(あ)げられた塵(ちり)も
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
帰りに御室の仁和寺(にんなじ)の前を通ったので、まだ厚咲きの桜には間があることが分っていたけれども、せめて枝の下にでも休息して木(き)の芽田楽(めでんがく)をたべるだけでもと
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彦山村から槻(つき)の木(き)へ抜ける薬師峠の山路に沿うて、古ぼけた一軒茶屋が立つてゐます。その店さきに腰を下ろして休んでゐるのは、松井佐渡守の仲間(ちゆうげん)喜平でした。
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「私の考えを申しますが、「牙(げ)」を表わすことになると「木(き)」をも表わしてもらいたいと私は思います」
日本紀の一書には、やはり山の神・野の神・土の神などと並んで、木(き)の神(かみ)等(たち)を句句廼馳(くくのち)と号すともある。
楢(なら)の木(き)はオークの代用に輸出され、エゾ松トヾ松は紙にされ、胡桃(くるみ)は銃床に、ドロはマッチの軸木(じくぎ)になり、樹木の豊富を誇る北海道の山も今に裸になりはせぬかと
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
豊雄是を見て、只一八三あきれにあきれゐたる。武士らかけ廻(めぐ)りて、一八四ちかきとなりを召しあつむ。一八五木(き)伐(き)る老(をぢ)、一八六米(よね)かつ男ら、恐れ惑(まど)ひて一八七跪(うずすま)る。
げたのはなおもすげれば、たたみばりを買(か)ってきて、たたみのおもてがえまでやりました。ですから、ひまさえあれば、木(き)のきれをけずって、なにかをつくっていました。
水(みづ)に影(うつ)る月(つき)を奪(うば)はんとする山猿(やまざる)よ、無芸(むげい)無能(むのう)食(しよく)もたれ総身(そうみ)に智恵(ちゑ)の廻(まは)りかぬる男(をとこ)よ、木(き)に縁(よつ)て魚(うを)を求(もと)め草(くさ)を打(うつ)て蛇(へび)に驚(をどろ)く狼狽(うろたへ)者(もの)よ、白粉(おしろい)に咽(む)せて成仏(じやうぶつ)せん事(こと)を願(ねが)ふ艶治郎(ゑんぢらう)よ
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
常(つね)にしたひむつべる友(とも)にしあればことにうれしくてなほつがの木(き)のいやつぎ/\にたゆみなく千枝(ちえ)に八千枝(やちえ)にしげりて木高(こたか)きかげとなりたまはん事(こと)をかつは祝(しゆく)してたゝ一言(ひとこと)を
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
五月山(さつきやま)の木(き)が一本(ぽん)々々(/\)數(かぞ)へられるやうになると、池田(いけだ)の町(まち)は直(す)ぐ長(なが)い坂(さか)の下(した)に見(み)おろされた。此處(ここ)からはもう多田院(ただのゐん)へ一里(り)、開帳(かいちやう)の賑(にぎは)ひは、この小都會(せうとくわい)をもざわつかしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おじいさんはもうすましたもので、一生懸命(いっしょうけんめい)、のびたり、ちぢんだり、縦(たて)になり、横(よこ)になり、左(ひだり)へ行き、右(みぎ)へ行き、くるりくるりと木(き)ねずみのように、元気(げんき)よくはね回(まわ)りながら
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
或(あ)る日(ひ)、夫婦(ふうふ)して仲睦(なかむつま)じくお茶(ちや)をのんでゐると、そこへ雉(きじ)の子(こ)が木(き)の葉(は)を一つ葉(ぱ)、啣(くわ)えてきて、おいて行(ゆ)きました。それは裏山(うらやま)の神樣(かみさま)からでした。何(なに)か書(か)いてありました。みると
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
吾妹子(わぎもこ)が見(み)し鞆(とも)の浦(うら)の室(むろ)の木(き)は常世(とこよ)にあれど見(み)し人(ひと)ぞ亡(な)き 〔巻三・四四六〕 大伴旅人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
夢(ゆめ)かな‥‥と思(おも)ふと、木(き)の空洞(うつろ)を叩(たた)くやうな兵士達(へいしたち)の鈍(にぶ)い靴音(くつおと)が耳(みみ)に著(つ)いた。——歩(ある)いてるんだな‥‥と思(おも)ふと、何時(いつ)の間(ま)にか知(し)らない女(をんな)の笑(わら)ひ顏(がほ)が眼(め)の前(まへ)にはつきり見(み)えたりした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
斜(なな)めにうねった道角(みちかど)に、二抱(ふたかか)えもある大松(おおまつ)の、その木(き)の下(した)をただ一人(ひとり)、次第(しだい)に冴(さ)えた夕月(ゆうづき)の光(ひかり)を浴(あ)びながら、野中(のなか)に咲(さ)いた一本(ぽん)の白菊(しらぎく)のように、静(しず)かに歩(あゆ)みを運(はこ)んで来(く)るほのかな姿(すがた)。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まだ木(き)の香(か)目出度いまゝ、扉(と)を締めきつて、グルリと柵(さく)を繞(めぐ)らしてゐるのでした。
その伊手市(いでいち)どんの彫った墓が、旦那(だんな)様がお逢(あ)いになったというあの笹目沢と赤名山との間の、栃(とち)の木(き)の下の分れ道になってるところを、何でも十二、三町ばかり下(さが)っていった原っぱに
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)