“成(な)” の例文
白刃(しらは)を提(さ)げ、素槍(すやり)を構(かま)へて行(ゆ)くのである。こんなのは、やがて大叱(おほしか)られに叱(しか)られて、束(たば)にしてお取上(とりあ)げに成(な)つたが……然(さ)うであらう。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
鍬(くは)を擔(かつ)いで遺跡(ゐせき)さぐりに歩(ある)き、貝塚(かひづか)を泥(どろ)だらけに成(な)つて掘(ほ)り、其(その)掘出(ほりだ)したる土器(どき)の破片(はへん)を背負(せお)ひ、然(さ)うして家(いへ)に歸(かへ)つて井戸端(ゐどばた)で洗(あら)ふ。
出(で)て來(こ)られる都合(つがふ)ならば又(また)今(いま)までのやうにお世話(せわ)に成(な)りに來(き)まする、成(な)るべくは鳥渡(ちよつと)たち歸(かへ)りに直(す)ぐも出京(しゆつけう)したきものと輕(かる)くいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
波は岩を、岩は波を噛んで、ここに囂々(ごうごう)、淙々(そうそう)の音を成(な)しつつ、再び変圧し、転廻し、捲騰(けんとう)し、擾乱(じょうらん)する豪快無比の壮観を現出する。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
彼(かれ)が薦(こも)つくこを擔(かつ)いで歸(かへ)つて來(き)た時(とき)は日向(ひなた)の霜(しも)が少(すこ)し解(と)けて粘(ねば)ついて居(ゐ)た。お品(しな)は勘次(かんじ)が一寸(ちよつと)の間(ま)居(ゐ)なく成(な)つたので酷(ひど)く寂(さび)しかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で、高等(かうとう)に成(な)れば隨(したがつ)てより強(つよ)き勢力(せいりよく)を以(もつ)て、實際(じつさい)に反應(はんおう)するのです。貴方(あなた)は醫者(いしや)でおゐでて、如何(どう)して那麼譯(こんなわけ)がお解(わか)りにならんです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
不知庵主人(フチアンシユジン)の譯(やく)に成(な)りし罪(つみ)と罰(ばつ)に對(たい)する批評(ひゝやう)仲々(なか/\)に盛(さかん)なりとは聞(きゝ)けるが、病氣(びやうき)其他(そのた)の事(こと)ありて余(よ)が今日(こんにち)までに見(み)たるは僅(わづか)に四五種(しごしゆ)のみ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
尤も朝飯は成(な)る可(べ)く早く済まして、支度は成る可く緩(ゆっく)りするという手はありました。先達は紐の付いた木製の椀を腰に下げていました。
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
何となく気がつまりましたから、裏口から這入ってお内儀(かみ)さんにお目通りを致しましたが、坊ちゃんは大層大きくお成(な)んなさいましたな
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此(これ)を以(もつ)て相持(あひぢ)する、此(こ)れ説(ぜい)の成(な)る也(なり)。伊尹(いゐん)は(九七)庖(はう)と爲(な)り、百里奚(りけい)は(九八)虜(りよ)と爲(な)る、(九九)皆(みな)由(よ)つて其上(そのかみ)に干(もと)めし所(ところ)也(なり)。
〔譯〕漸(ぜん)は必ず事を成(な)し、惠(けい)は必ず人を懷(な)づく。歴代(れきだい)姦雄(かんゆう)の如き、其祕(ひ)を竊(ぬす)む者有り、一時亦能く志を遂(と)ぐ。畏る可きの至りなり。
そこで父(とう)さんはお墓參(はかまゐ)りに行(ゆ)く道(みち)の方(はう)から、成(な)るべく知(し)つた人(ひと)に逢(あ)はない田圃(たんぼ)の側(わき)を通(とほ)りまして、こつそりと出掛(でか)けて行(ゆ)きました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
女王樣(ぢよわうさま)の論據(ろんきよ)は斯(か)うでした、若(も)し何事(なにごと)にせよ、全(まつた)く時間(じかん)を要(えう)せずして成(な)し了(を)うせられなかつたなら、所有(あらゆる)周圍(しうゐ)の誰(たれ)でもを死刑(しけい)に處(しよ)する。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
毎々(つねづね)申され候事に、神道を明白に人々の腹へ入る如く書を著し、 天朝より開板して天下へ御頒示(はんじ)成(な)されたしと頻(しきり)に祈念(きねん)仕り居られ候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
グレ さうよなァ、頸根(くびね)ッ子(こ)は、成(な)ろうなら、頸輪(コラー)(首枷(くびかせ))から引(ひ)ッこ拔(ぬ)いてゐるがよいてや。(罪人にはならぬがよいてや)。
不思議なもので一度、良心の力を失なうと今度は反対に積極的に、不正なこと、思いがけぬ大罪(たいざい)を成(な)るべく為し遂(とげ)んと務めるものらしい。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
螢草(ほたるぐさ)、鴨跖草(おうせきそう)なぞ云って、草姿(そうし)は見るに足らず、唯二弁より成(な)る花は、全き花と云うよりも、いたずら子に挘(むし)られたあまりの花の断片か
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
「あの友人の細君があなたの娘さんのチーちゃんに合(あ)いたい、成(な)るたけ早く来て呉れと言って居りましたよ」と言ったんです。
それを石橋(いしばし)と私(わたし)とで頻(しきり)に掘出(ほりだ)しに掛(かゝ)つた、すると群雄(ぐんいう)四方(しはう)より起(おこ)つて、響(ひゞき)の声に応(おう)ずるが如(ごと)しです、是(これ)が硯友社(けんいうしや)創立(さうりつ)の導火線(だうくわせん)と成(な)つたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あたらずとも六分利付(りつき)で損(そん)なしといふやうな事(こと)が、可成(な)り空頼(たの)めな事(こと)ながら、一面(めん)空想(さう)家(か)の青木さんの氕持(きもち)を強(つよ)く刺(し)げきした。
夢 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そう言(い)いながら、私(わたくし)は成(な)るべく先方(むこう)を驚(おどろ)かさないように、徐(しず)かに徐(しず)かに腰(こし)を降(おろ)して、この可愛(かわい)い少女(しょうじょ)とさし向(むか)いになりました。
皇祖天皇が始めて中(なか)つ国(くに)に御遷(おうつ)りなされた時には、すでにそれ以前からの来住者の、邑里(ゆうり)を成(な)し各々首長を戴いている者が少なくなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この時期は成(な)る丈(た)け早く通過すべきである。日本探偵小説の如何に長くこの時期にウロツイていることか。笑う可(べ)きである。
思ったままを! (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二寸も突込(つきこも)うと云うには非常の力を入れて握るから二ツの脚が一ツに成(な)るのサ(大)一ツに成(なっ)ても穴は横に扁(ひら)たく開く筈だ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
光陰(くわういん)は矢よりも早く流るゝ水に宛(さも)似(に)たり正徳元年辛卯年(かのとうどし)と成(な)れり玉之助も今年七歳になり嘉傳次が病死の後は感應院方へ引取(ひきとら)れ弟子となり名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なにも、学校(がっこう)へいったら、みんなが偉(えら)くなるというのでない。りっぱな商人(しょうにん)には、小僧(こぞう)から成(な)り上(あ)がるものが多(おお)いのだよ。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
熱烈な恋愛から成(な)った様に噂(うわさ)される氏の結婚の内容なども、実は、氏の妻が女性としてよりは、寧(むし)ろ「人」として氏のその時代の観賞(かんしょう)にかない
徳川家が将軍に成(な)った末で余り勢いは強くなかったけれども、とにかく将軍というものが政権を持っておってその上に天子様(てんしさま)がおられるという。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうして見(み)ると、唐書(たうしよ)の列傳(れつでん)に出(で)てゐる筈(はず)だと云(い)ふのである。しかし閭(りよ)がゐなくては話(はなし)が成(な)り立(た)たぬから、兎(と)も角(かく)もゐたことにして置(お)くのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
成(な)ればその栄誉(えいよ)を専(もっぱ)らにし敗すればその苦難(くなん)に当るとの主義を明(あきらか)にするは、士流社会の風教上(ふうきょうじょう)に大切(たいせつ)なることなるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「左様(さう)さナ」と主人は頬撫(な)でつゝ「先(ま)づ不敬罪あたりへ持つて行くのだ、吹つ掛けは成(な)るべく大きくないと不可(いかん)からナ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これを一読するに惜(おし)むべし論者は幕末(ばくまつ)外交の真相(しんそう)を詳(つまびらか)にせざるがために、折角(せつかく)の評論も全く事実に適(てき)せずして徒(いたずら)に一篇の空文字(くうもんじ)を成(な)したるに過ぎず。
凡(およ)そ眞(しん)の化物(ばけもの)といふものは、何處(どこ)の部分(ぶぶん)を切(き)り離(はな)しても、一種(しゆ)異樣(いやう)な形相(げうさう)で、全體(ぜんたい)としては渾然(こんぜん)一種(しゆ)の纏(まと)まつた形(かたち)を成(な)したものでなければならない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
左樣(さやう)でござります。愚老(ぐらう)の頭(あたま)を草紙(さうし)にして、御城代樣(ごじやうだいさま)のお月代(さかやき)をする稽古(けいこ)をなさいますので、成(な)るたけ頭(あたま)を動(うご)かしてくれといふことでござりまして。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此処(ここ)で木曜日には特別に舞踏の巧(うま)い連中(れんぢゆう)許(ばかり)が踊る。其れで平生の入場料は三フラン(一円二十銭)だが、其(その)晩に限つて六フラン取る事に成(な)つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
すると、先(ま)づ裁縫(さいほう)の本(ほん)とか、料理(れうり)の本(ほん)とか、或(あるひ)は又(また)育兒(いくじ)に關(くわん)する本(ほん)とかいふものがある。成(な)る程(ほど)これは、大抵(たいてい)の場合(ばあひ)、婦人(ふじん)のみに用(よう)のある書物(しよもつ)である。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
或(あ)る一學生(がくせい)は横濱(よこはま)まで行(ゆ)きましたが、晩(ばん)に成(な)つても歸(かへ)りませんから、心配(しんぱい)して電報(でんぱう)もて其(そ)の消息(せうそく)を問(と)ひ合(あは)せました。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
そう云われて見ると、己は成(な)る程(ほど)尤(もっと)もだと云うような気にもなった。そうして己が考えて居た「藝術」と云うものは、いよ/\間違って居るのだった。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
綱吉の“柳沢(やなぎさわ)お成(な)り”といって、町でも評判な柳沢吉保(よしやす)のやしきへ出かけた回数も、五十数回という頻繁(ひんぱん)さだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お蔭(かげ)で繪は一日々々に繪になツて來る、繪に成(な)るに從ツて其れが平凡となる、時には殆んど調子さへ出て居(を)らぬ劣惡(れつあく)な作のやうに思はれることもあツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
きまりの悪そうなのも道理、この屋台店の主婦というのが、本郷の山岡屋の内儀(ないぎ)のお滝が成(な)れの果(はて)でありました。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その万人(まんにん)が万人(まんにん)、好(す)きで好(す)きでたまらねえ女(おんな)の、これが本当(ほんとう)の匂(におい)だろうじゃねえか。成(な)る程(ほど)、肌(はだ)の匂(におい)もある。髪(かみ)の匂(におい)もある。乳(ちち)の匂(におい)もあるにァ違(ちげ)えねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「成(な)る程(ほど)、これは私が悪う御座いました。こんな物は今まで御覧になった事がないと見えます。それではもっと直ぐにお役に立つものを差し上げましょう」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
初学の士は最初成(な)るべく学識経験の積んだ指導者に就(つ)きて、這間の消息に通ずべく心懸けるのが安全であろう。
ンヤ好(エ)デヤなア、雪(ユギ)ア解(と)ゲデセエ、鯡(ニシ)ゴト日當(ひあダ)りの屋根(ヤネ)サ干すエネ成(な)れば田(タコ)ア忙(エそ)がしグ成(な)テ、夫(オド)と晝間(シルマ)まで田(タコ)掻廻(カマ)して、それガラ田畔(タノクロ)サあがテせ、飯(ママ)も喰(ク)ば
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
右、鱗茎(りんけい)は白色、あるいは黄色の鱗片(りんぺん)が相重(あいかさ)なって成(な)っているが、この鱗片(りんぺん)は実は葉の変形したものである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
円(まる)いなだらかな小山のような所を下(おり)ると、幾万とも数知れぬ蓮華草(れんげそう)が紅(あこ)う燃えて咲揃(さきそろ)う、これにまた目覚めながら畷(なわて)を拾うと、そこは稍(やや)広い街道に成(な)っていた。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
日月(じつげつ)は地におち、須彌山(すみせん)はくづるとも、彼(かの)女人(によにん)、佛(ほとけ)に成(な)らせ給(たまは)ん事疑なし。あらたのもしや、たのもしや
ついと横からそれを千之介ならで林田門七が奪い乍らさえ切ると、すべてのその秘密を知りつくしているがためにか、君前を執(と)り成(な)そうとするかのように言った。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
而(しか)も其時期(そのじき)は成(な)るべく速(すみやか)に之(これ)を決行(けつかう)せざるを得(え)ぬと決心(けつしん)したのは右(みぎ)の事情(じじやう)によるからであつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)