“折(を)” の例文
川口(かはぐち)の、葦(あし)のたくさん生(は)えてゐる、その葦(あし)の先(さき)の葉(は)が、みんなとれてゐる。これは、誰(たれ)が折(を)つたのかと申(まを)しますと、それは、私(わたし)です。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
長吉(ちやうきち)は仕方(しかた)なしに唯(た)だ左へ左へと、いゝかげんに折(を)れて行(ゆ)くと蔵造(くらづく)りの問屋らしい商家(しやうか)のつゞいた同じやうな堀割(ほりわり)の岸に二度も出た。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
元(もと)は直立(ちよくりつ)してゐたもので、高(たか)さは七八十尺(しちはちじつしやく)もあつたものですが、二百年程前(にひやくねんほどまへ)に雷(かみなり)が落(お)ちたゝめに折(を)れたのだといふことでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それでも思切(おもひき)ツて其の作を放擲ツて了うことが出來ぬから、何時(いつ)までも根氣(こんき)好(よ)く無駄骨(むだほね)を折(を)ツてゐる、そして結局情(なさけ)なくなるばかりだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
更(ふ)け行(ゆ)く閨(ねや)に聲(こゑ)もなく、凉(すゞ)しい目(め)ばかりぱち/\させて、鐘(かね)の音(ね)も聞(きこ)えぬのを、徒(いたづら)に指(ゆび)を折(を)る、寂々(しん/\)とした板戸(いたど)の外(そと)に、ばさりと物音(ものおと)。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
懐中(ふところ)から塵紙(ちりがみ)を出(だ)して四つに折(を)つて揚子箸(やうじばし)で手探(てさぐ)りで、漸(や)うく餅(もち)を挟(はさ)んで塵紙(ちりがみ)の上(うへ)へ載(の)せて忰(せがれ)幸之助(かうのすけ)へ渡して自分も一つ取つて、乞
我(が)を折(を)つて、それ切(き)り余(よ)は引揚(ひきあ)げたが、如何(どう)も氣(き)に成(な)つて耐(た)えられぬので、再(ふたゝ)び談判(だんぱん)に行(ゆ)かうと思(おも)つて居(ゐ)ると、友人(いうじん)の眉山子(びさんし)が例(れい)の自殺(じさつ)。
其處(そこ)にはもうそつけなくなつた女郎花(をみなへし)の莖(くき)がけろりと立(た)つて、枝(えだ)まで折(を)られた栗(くり)が低(ひく)いながらに梢(こずゑ)の方(はう)にだけは僅(わづか)に笑(ゑ)んで居(ゐ)る。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
所(ところ)が杉原(すぎはら)の方(はう)では、妙(めう)な引掛(ひつかゝ)りから、宗助(そうすけ)の此所(こゝ)に燻(くす)ぶつてゐる事(こと)を聞(き)き出(だ)して、強(し)いて面會(めんくわい)を希望(きばう)するので、宗助(そうすけ)も已(やむ)を得(え)ず我(が)を折(を)つた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其壁(そのかべ)を越(こ)して、桑樹(くはのき)の老木(らうぼく)が繁(しげ)り、壁(かべ)の折(を)り曲(まが)つた角(かど)には幾百年(いくひやくねん)經(た)つか、鬱(うつ)として日影(ひかげ)を遮(さへぎ)つて居(ゐ)る樫樹(かしのき)が盤居(わだかま)つて居(ゐ)ます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この木(き)はもと根株(ねかぶ)から七(なゝ)つの幹(みき)に分(わか)れてゐましたが、内(うち)五本(ごほん)は先年(せんねん)の暴風(ぼうふう)で折(を)れて今(いま)は二本(にほん)の幹(みき)だけとなつてしまひました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
實際(じつさい)思(おも)つたよりも早(はや)く、それを半分(はんぶん)飮(の)まない中(うち)に愛(あい)ちやんは頭(あたま)が天井(てんじやう)につかへたのを知(し)り、首(くび)の折(を)れない用心(ようじん)に屈(かゞ)んで、急(いそ)いで壜(びん)を下(した)に置(お)き
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
二人(ふたり)は、子供(こども)を抱(だ)いて明(あか)るい通(とほ)りから折(を)れて、暗(くら)い道(みち)を歩(ある)いた。暗(くらい)い所(ところ)に來(き)ても、銀座(ぎんざ)の明(あか)るみを歩(ある)く人(ひと)の足音(あしおと)は聞(きこ)えた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
二に曰く人骨の外面(ぐわいめん)殊(こと)に筋肉の付着點に刄物(はもの)の疵(きづ)有り。三に曰く人骨は他動物の遺骨(ゐこつ)と同樣に人工を以て折(を)り碎(くだ)かれたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
馬(うま)も荷物(にもつ)をつけて行(ゆ)く時(とき)はなか/\骨(ほね)が折(を)れますが、一日(にち)の仕事(しごと)をすまして山道(やまみち)を歸(かへ)つて來(く)るのは樂(たのし)みなものですよ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
骨(ほね)が折(を)れるからとて夫(そ)れ丈(だけ)の運(うん)のある身(み)ならば堪(た)へられぬ事(こと)は無(な)い筈(はづ)、女(をんな)などゝ言(い)ふ者(もの)は何(ど)うも愚痴(ぐち)で、お袋(ふくろ)などが詰(つま)らぬ事(こと)を言(い)ひ出(だ)すから困(こま)り切(き)る
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
町(まち)には、病院(びやうゐん)の新院長(しんゐんちやう)に就(つ)いての種々(いろ/\)な噂(うはさ)が立(た)てられてゐた。下女(げぢよ)と云(い)ふ醜婦(しうふ)が會計(くわいけい)と喧嘩(けんくわ)をしたとか、會計(くわいけい)は其女(そのをんな)の前(まへ)に膝(ひざ)を折(を)つて謝罪(しやざい)したとか、と。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
大正十一年(たいしようじゆういちねん)四月二十六日(しがつにじゆうろくにち)の浦賀海峽地震(うらがかいきようぢしん)に傷(いた)められた丸(まる)の内(うち)びるぢんぐ、大正十二年(たいしようじゆうにねん)の關東大地震(かんとうだいぢしん)によつて腰(こし)を折(を)られた東京會館(とうきようかいかん)などがその適例(てきれい)であらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
したが、やがて夜(よる)になると、お前(まへ)も骨(ほね)が折(を)れうぞや。さ、予(わし)は食事(しょくじ)をせう。貴孃(こなた)は庵室(あんじつ)へ速(はや)うゆかしゃれ。
『もう廢(よ)せ/\、足(あし)が折(を)れるぞ/\。』と虎髯大尉(こぜんたいゐ)は二人(ふたり)の周圍(めぐり)をぐる/\廻(まは)つて、結局(とう/\)引分(ひきわけ)になつた。
私の手(て)はいつの間(ま)にか腋(わき)の下(した)に潛(くゞ)つてゐました。私は東明館前(とうめいくわんまへ)から右(みぎ)に折(を)れて、譯(わけ)もなく明(あか)るく賑(にぎや)かな街(まち)の片側(かたがは)を、店々(みせ/\)に添(そ)うて神保町(じんぼうちやう)の方(はう)へと歩いて行きました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そして、——寢(ね)てはならん‥‥と、一所懸命(しよけんめい)に考(かんが)へてはゐながら、何時(いつ)の間(ま)にかトロリと瞼(まぶた)が落(お)ちて、首(くび)がガクリとなる。足(あし)がくたくたと折(を)れ曲(まが)るやうな氣(き)がする。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いにしへにありけむ人(ひと)も吾(わ)が如(ごと)か三輪(みわ)の檜原(ひはら)に揷頭(かざし)折(を)りけむ 〔巻七・一一一八〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
秋の七種(ななくさ)の歌は著名なもので、『万葉集』巻八に出て山上憶良(やまのうえのおくら)が咏んだもので、その歌は誰もがよく知っている通り、「秋の野(ぬ)に咲(さ)きたる花を指(およ)び折(を)り、かき数ふれば七種の花」
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
取捨(とりすて)は御随意(ごずいい)に候(そろ)骨(ほね)の折(を)れる事には随分(ずいぶん)骨を折り候(そろ)男と我(われ)ながらあとにて感服仕候(かんぷくつかまつりそろ)。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
何(なん)ぼ何(なん)でも石(いし)は喰(く)はれませんよ。晩餉(ごはん)はまだなんですか。そんならおしへて上(あ)げませう。此處(こゝ)を左(ひだり)へ曲(まが)つて、それから右(みぎ)に折(を)れて、すこし、あんたと昨日(きなふ)あつた路(みち)のあの交叉點(よつかど)です。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
咲(さ)かざれば桜(さくら)を人(ひと)の折(を)らまじを桜(さくら)の仇(あだ)はさくらなりけり
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あの病(びやう)人たちは 地球(きう)の病人なんで骨(ほね)が折(を)れますね
動(どう)し、坤軸(こんぢく)も折(を)るゝかと想(おも)ふばかりなり
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ただひとり爽(さわや)かに折(を)りかへす新聞紙(しんぶんし)の
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野(の)の老狐(たうめ)踏(ふ)みは折(を)るとも
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
冬(ふゆ)は折(を)れ伏(ふ)す蘆毛(あしげ)積(つも)る雪毛(ゆきげ)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
膝(ひざ)のうへにて鶴(つる)を折(を)る。
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
折(を)りゆきしことな忘れそ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其の物音に自分は沈思の中(うち)から振向いて眺めやると、机の上のランプの光が斜めに流れて、折(を)り屈(かゞ)んで働いて居る小間使花の横顏を照す。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
この中(なか)を、折(を)れて飛(と)んだ青(あを)い銀杏(いてふ)の一枝(ひとえだ)が、ざぶり/\と雨(あめ)を灌(そゝ)いで、波状(はじやう)に宙(ちう)を舞(ま)ふ形(かたち)は、流言(りうげん)の鬼(おに)の憑(つき)ものがしたやうに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
それが出來(でき)ないんだつて。何(ど)う見積(みつも)つても兩方(りやうはう)寄(よ)せると、十圓(ゑん)にはなる。十圓(ゑん)と云(い)ふ纏(まとま)つた御金(おかね)を、今(いま)の所(ところ)月々(つき/″\)出(だ)すのは骨(ほね)が折(を)れるつて云(い)ふのよ
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ついでですが、みなさんは木(き)ばかりでなく、そこいらの町(まち)の中(なか)にある樹木(じゆもく)も大切(たいせつ)にして枝(えだ)を折(を)つたりしないようにして下(くだ)さらなければいけません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ナニ、青(あを)いんでもかまひませんが、なるなら黄色(きいろ)い方(はう)がいゝ。麥(むぎ)は熟(じゆく)するほど丈夫(ぢやうぶ)ですからね。この細(ほそ)い麥藁(むぎわら)の穗先(ほさき)の方(はう)を輕(かる)く折(を)つてお置(お)きなさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
傭人(やとひにん)もすつかり眠(ねむ)りに落(お)ちたと思(おも)ふ頃(ころ)内儀(かみ)さんとおつぎとの黒(くろ)い姿(すがた)が竊(ひそか)に裏(うら)の竹藪(たけやぶ)に動(うご)いた。落(お)ちて居(ゐ)る竹(たけ)の枝(えだ)が足(あし)の下(した)にぽち/\と折(を)れて鳴(な)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私(わたし)の夫(をつと)なるあなたの、私(わたし)を見(み)つけてあひずに振(ふ)つていらつしやるお袖(そで)を、よく見(み)ようと考(かんが)へて、私(わたし)が折(を)つたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
お前(まへ)新網(しんあみ)へ歸(かへ)るが厭(いや)なら此家(こゝ)を死場(しにば)と極(き)めて骨(ほね)を折(を)らなきやならないよ、しつかり遣(や)つてお呉(く)れと言(い)ひ含(ふく)められて、吉(きち)や/\と夫(そ)れよりの丹精(たんせい)今(いま)油(あぶら)ひきに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼(かれ)は頭(かしら)を上(あ)げては水車(みづぐるま)を見(み)、又(また)畫板(ゑばん)に向(むか)ふ、そして折(を)り/\左(さ)も愉快(ゆくわい)らしい微笑(びせう)を頬(ほゝ)に浮(うか)べて居(ゐ)た彼(かれ)が微笑(びせう)する毎(ごと)に、自分(じぶん)も我知(われし)らず微笑(びせう)せざるを得(え)なかつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
私(わたくし)は屹度(きつと)此度(こんど)は瑞典(スウエーデン)の北極星(ほくきよくせい)の勳章(くんしやう)を貰(もら)はうと思(おも)つて居(を)るです、其勳章(そのくんしやう)こそは骨(ほね)を折(を)る甲斐(かひ)のあるものです。白(しろ)い十字架(じか)に、黒(くろ)リボンの附(つ)いた、其(そ)れは立派(りつぱ)です。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それに余(よ)は蠻勇(ばんゆう)を以(もつ)て任(にん)じて居(ゐ)るので、一度(ど)採集(さいしふ)した物(もの)は、いくら途中(とちう)で持重(もちおも)りがしても、それを捨(す)てるといふ事(こと)を爲(せ)ぬ。肩(かた)の骨(ほね)が折(を)れても、持(も)つて歸(かへ)らねば承知(しようち)せぬ。
その結果(けつか)、從來(じゆうらい)たゞ食物(しよくもつ)の材料(ざいりよう)を集(あつ)めるために、一日中(いちにちじゆう)骨(ほね)を折(を)つて働(はたら)いてゐた人間(にんげん)が、集(あつ)めた食料(しよくりよう)の貯藏(ちよぞう)が出來(でき)るようになり、食料(しよくりよう)が豐(ゆたか)になつたので働(はたら)く力(ちから)に餘裕(よゆう)が出來(でき)
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
雪(ゆき)の上(うへ)に照(て)れる月夜(つくよ)に梅(うめ)の花(はな)折(を)りて贈(おく)らむ愛(は)しき児(こ)もがも 〔巻十八・四一三四〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼(かれ)は私(わたくし)よりは四つ五つの年長者(としかさ)で、從(したがつ)て級(くみ)も異(ちが)つて居(を)つたので、始終(しじう)交(まぢは)るでもなかつたが、其頃(そのころ)校内(かうない)で運動(うんどう)の妙手(じやうず)なのと無暗(むやみ)に冐險的旅行(ぼうけんてきりよかう)の嗜好(すき)なのとで、彼(かれ)と私(わたくし)とは指(ゆび)を折(を)られ
おゝ/\乱暴狼藉(らんばうらうぜき)で、飛石(とびいし)なぞは狗(いぬ)の糞(くそ)だらけにして、青苔(あをごけ)を散々(さん/″\)に踏暴(ふみあら)し、折角(せつかく)宜(よ)い塩梅(あんばい)に苔(こけ)むした石燈籠(いしどうろう)を倒(たふ)し、松(まつ)ヶ枝(え)を折(を)つちまひ、乱暴(らんばう)だね……何方(どちら)からお入来(いで)なすつた。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
此(この)哀(あは)れな小(ちひ)さな物(もの)は、愛(あい)ちやんが捕(つかま)へた時(とき)に蒸氣(じやうき)機關(きくわん)のやうな恐(おそ)ろしい鼻息(はないき)をしました、それからわれと我(わ)が體(からだ)を二つに折(を)り重(かさ)ねたり、又(また)眞直(まつすぐ)に伸(の)ばしたりなどしたものですから
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)