“醉(よ)” の例文
新字:酔
ふり𢌞(まは)す鍬(くは)の柄(え)をよけながら、いや、お婆(ばあ)さんばかりぢやありません、皆(みな)が知(し)つてるよ、と言(い)つても醉(よ)つてるから承知(しようち)をしない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
落(ち)り過(す)ぎたる紅葉(もみぢ)に庭(には)は淋(さび)しけれど、垣(かき)の山茶花(さゞんか)折(をり)しり顏(かほ)に匂(にほ)ひて、松(まつ)の緑(みどり)のこまやかに、醉(よ)ひすゝまぬ人(ひと)なき日(ひ)なりける。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二本目(ほんめ)は無理(むり)に呑(の)んだ。三本目(ぼんめ)にも醉(よ)へなかつた。宗助(そうすけ)は脊(せ)を壁(かべ)に持(も)たして、醉(よ)つて相手(あひて)のない人(ひと)の樣(やう)な眼(め)をして、ぼんやり何處(どこ)かを見詰(みつ)めてゐた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
新吉は酒に醉(よ)って好い気もちになって帰って来た。彼は己(じぶん)の開けて入った雨戸を元のとおりに締めて、玄関口からすぐあがるようになっている二階の梯子段(はしごだん)をあがった。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
若い時私の親に世話になつたんださうで、醉(よ)ふといつも、そんな事を申して居りました
みんなは下弦(かげん)の月(つき)が東(ひがし)の空(そら)に出(で)て來(き)たのも氣(き)が附(つ)かずに醉(よ)ひどれのやうに歩(ある)いてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それらの人(ひと)について調査(ちょうさ)の結果(けっか)は、ついに発表(はっぴょう)されなかつたが、事件解決後(じけんかいけつご)、青流亭女将(せいりゅうていおかみ)進藤富子(しんどうとみこ)は、醉(よ)つて腹(はら)を立(た)てた口調(くちょう)になつて、やはり、ある料亭(りょうてい)の女将(おかみ)である女友達(おんなともだち)に向(むか)い
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
唯(たゞ)二ヶ月(げつ)に一度(ど)丈(だ)け、理髮師(とこや)のセミヨン、ラザリチ計(ばか)り此(こゝ)へ來(く)る、其男(そのをとこ)は毎(いつ)も醉(よ)つてニコ/\しながら遣(や)つて來(き)て、ニキタに手傳(てつだ)はせて髮(かみ)を刈(か)る、彼(かれ)が見(み)えると患者等(くわんじやら)は囂々(がや/\)と云(い)つて騷(さわ)ぎ出(だ)す。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
醉(よ)はざなるまい術(すべ)なさか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
醉(よ)うた女房達(にようばうたち)が柝を叩く
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
で其(そ)の望(のぞみ)を煽(あふ)るために、最(も)う福井(ふくゐ)あたりから酒(さけ)さへ飮(の)んだのでありますが、醉(よ)ひもしなければ、心(こゝろ)も定(きま)らないのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼(かれ)はたゞ饗宴(きやうえん)に招(まね)かれない局外者(きよくぐわいしや)として、醉(よ)ふ事(こと)を禁(きん)じられた如(ごと)くに、又(また)醉(よ)ふ事(こと)を免(まぬ)かれた人(ひと)であつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まるで酒場(さかば)の醉(よ)ひどれのやうな兵士(へいし)の集團(しふだん)は濕(しめ)つた路上(ろじやう)に重(おも)い靴(くつ)を引(ひ)き摺(ず)りながら、革具(かはぐ)をぎゆつぎゆつ軋(きし)らせながら劍鞘(けんざや)を互(たがひ)にかち合(あは)せながら、折折(をりをり)寢言(ねごと)のやうな唸(うな)り聲(ごゑ)を立(た)てながら
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
戻つたのは亥刻(よつ)過ぎだ、お前でも居れば、直ぐ相生町まで飛んで貰ふところだが、こんな手紙には惡戯(いたづら)が多いから、醉(よ)つた勢で寢てしまひ、今朝になつて、妙に氣になり出したといふわけさ
火(ひ)を見(み)るな、火(ひ)を見(み)るな、で、私(わたし)たちは、すぐ其(そ)の傍(わき)の四角(よつかど)に彳(たゝず)んで、突通(つきとほ)しに天(てん)を浸(ひた)す炎(ほのほ)の波(なみ)に、人心地(ひとごこち)もなく醉(よ)つて居(ゐ)た。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
それが秋(あき)の日(ひ)に醉(よ)つて重(おも)く下(した)を向(む)いて、寂(ひつ)そりと重(かさ)なつた葉(は)が一枚(まい)も動(うご)かない。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
酒に醉(よ)つてゐる主人は、相手のそんな素振りをとがめる氣もなかつたんだらう
醉(よ)ふ奴(やつ)があるものかと、皆(みな)が笑(わら)ふと、「醉(よ)ひますさ。」とぶつ/\言(い)ふ。對手(あひて)にしないと「僕(ぼく)は醉(よ)ふと信(しん)ずるさ。」と頬(ほゝ)を凹(へこ)まして腹(はら)を立(た)てた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「親分、止しませうよ、そいつは何杯呑んだつて醉(よ)ひはしませんぜ」
時(とき)に蕎麥(そば)と言(い)へば——丁(てい)と——梨(なし)。——何(なん)だか三題噺(さんだいばなし)のやうだが、姑忘聽之(しばらくわすれてきけ)。丁(てい)と云(い)ふのは、嘗(かつ)て(今(いま)も然(さ)うだらう。)梨(なし)を食(た)べると醉(よ)ふと言(い)ふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
踊(をど)れ、踊(をど)れ、と踊(をど)り囘(まは)つて、水戸(みと)の大洗節(おほあらひぶし)で荒(あ)れるのが、殘(のこ)らず、銀座(ぎんざ)のバーから來(き)た、大女(おほをんな)の一人藝(ひとりげい)で。……醉(よ)つた、食(く)つた、うたつた、踊(をど)つた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
酒(さけ)も呼(よ)んだが醉(よ)ひません。むかしの事(こと)を考(かんが)へると、病苦(びやうく)を救(すく)はれたお米(よね)さんに對(たい)して、生意氣(なまいき)らしく恥(はづ)かしい。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「此處(こゝ)では醉(よ)へないぞ。」と心(こゝろ)で叫(さけ)んだ、此(こ)の高(たか)いのに、別(べつ)に階子壇(はしごだん)と云(い)ふほどのものも無(な)し、廊下(らうか)を一𢌞(ひとまは)りして、向(むか)うへ下(お)りるあたりが、可(か)なりな勾配(こうばい)。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
投(なげ)る方(はう)も、投(なげ)られる方(はう)も、へと/\になつてすわつたが、醉(よ)つた上(うへ)の騷劇(さうげき)で、目(め)がくらんで、もう別嬪(べつぴん)の顏(かほ)も見(み)えない。財産家(ざいさんか)の角力(すまふ)は引(ひき)つけで取(と)るものだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
嘸(さぞ)うちたての蕎麥(そば)を罵(のゝし)つて、梨(なし)に醉(よ)つてる事(こと)だらう。まだ其(それ)は勝手(かつて)だが、斯(かく)の如(ごと)き量見(りやうけん)で、紅葉先生(こうえふせんせい)の人格(じんかく)を品評(ひんぺう)し、意圖(いと)を忖度(そんたく)して憚(はゞか)らないのは僭越(せんゑつ)である。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
何事(なにごと)も、しかし、其(そ)の的(まと)に打撞(ぶつか)るまでには、弓(ゆみ)と云(い)へども道中(だうちう)がある。醉(よ)つて言(い)ふのではないけれども、ひよろ/\矢(や)の夜汽車(よぎしや)の状(さま)から、御一覽(ごいちらん)を願(ねが)ふとしよう。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
醉(よ)つ拂(ぱら)つたか、寢込(ねこ)んだか、馬方(うまかた)め、馬鹿(ばか)にしやがると、異説(いせつ)、紛々(ふん/\)たる所(ところ)へ、提灯(ちやうちん)片手(かたて)に息(いき)せいて
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其(そ)の無禮講(ぶれいかう)と申(まを)す事(こと)で、從前(じうぜん)にも向後(これから)も、他(ほか)なりません此(こ)のお邸(やしき)、決(けつ)して、然(さ)やうな事(こと)はござりますまいが、羽目(はめ)をはづして醉(よ)ひますると、得(え)て間違(まちがひ)の起(おこ)りやすいものでござります。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其(そ)の無禮講(ぶれいかう)と申(まを)す事(こと)で、從前(じうぜん)にも向後(かうご)にも他(ほか)ありません此(こ)のお邸(やしき)、決(けつ)して然(さ)やうな事(こと)はござりますまいが、羽目(はめ)をはづしてたべ醉(よ)ひますると、得(え)て間違(まちがひ)の起(おこ)りやすいものでござります
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
貴方(あなた)はな、とそれ、赫(かつ)と成(な)る。あの瞼(まぶた)の紅(くれなゐ)と云(い)ふものが、恰(あたかも)是(これ)、醉(よ)へる芙蓉(ふよう)の如(ごと)しさ。自慢(じまん)ぢやないが、外國(ぐわいこく)にも類(たぐ)ひあるまい。新婚當時(しんこんたうじ)の含羞(はにか)んだ色合(いろあひ)を新(あたら)しく拜見(はいけん)などもお安(やす)くない奴(やつ)。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
宴席(えんせき)どなりの空部屋(あきべや)へ轉(ころ)げ込(こ)むと、ぐたりと寢(ね)たが、したゝか反吐(へど)をついて、お冷水(ひや)を五杯(ごはい)飮(の)んだとやらで、ウイーと受持(うけもち)の、一番(いちばん)さんへ床(とこ)を取(と)りに來(き)て、おや、旦那(だんな)は醉(よ)つて轉(ころ)げてるね
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
其(そ)のまゝ、六疊(でふ)の眞中(まんなか)の卓子臺(ちやぶだい)の前(まへ)に、摚(どう)と坐(すわ)ると、早(は)や目前(めさき)にちらつく、濃(こ)き薄(うす)き、染色(そめいろ)の葉(は)に醉(よ)へるが如(ごと)く、額(ひたひ)を壓(おさ)へて、ぐつたりと成(な)つて、二度目(どめ)に火鉢(ひばち)を持(も)つて來(き)たのを、誰(たれ)とも知(し)らず
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
たゞしその六尺(ろくしやく)の屏風(びやうぶ)も、飛(と)ばばなどか飛(と)ばざらんだが、屏風(びやうぶ)を飛(と)んでも、駈出(かけだ)せさうな空地(くうち)と言(い)つては何處(どこ)を向(む)いても無(な)かつたのであるから。……其(そ)の癖(くせ)、醉(よ)つた。醉(よ)ふといゝ心持(こゝろもち)に陶然(たうぜん)とした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
相對(あひたい)して、その時(とき)は、雛(ひな)の瞬(またゝ)くか、と顏(かほ)を見(み)て醉(よ)つた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)