“畫(ゑ)” の例文
新字:画
そこで衆人(みんな)の心持(こゝろもち)は、せめて畫(ゑ)でなりと志村(しむら)を第(だい)一として、岡本(をかもと)の鼻柱(はなばしら)を挫(くだ)いてやれといふ積(つもり)であつた。自分(じぶん)はよく此(この)消息(せうそく)を解(かい)して居(ゐ)た。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
惡(わる)く言(い)へば傲慢(がうまん)な、下手(へた)が畫(ゑ)に描(か)いた、奧州(あうしう)めぐりの水戸(みと)の黄門(くわうもん)と言(い)つた、鼻(はな)の隆(たか)い、髯(ひげ)の白(しろ)い、早(は)や七十ばかりの老人(らうじん)でした。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
單(たん)に頭(あたま)から割(わ)り出(だ)した、恰(あたか)も畫(ゑ)にかいた餠(もち)の樣(やう)な代物(しろもの)を持(も)つて、義理(ぎり)にも室中(しつちゆう)に入(い)らなければならない自分(じぶん)の空虚(くうきよ)な事(こと)を耻(は)ぢたのである。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女は畫(ゑ)にかゝれながら男にいふ。私はあなたの前にはたゞあの畫の女の人形であつた。けれどもその單なる人形もこのやうにあなたを戀ひてゐる。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
笑顏(ゑがほ)をまづ見(み)する庭男(にはをとこ)に、其(その)まヽ縋(すが)りて箒木(はヽき)の手(て)を動(うご)かせず、吾助(ごすけ)お前(まへ)は畫(ゑ)がかけるかと突然(とつぜん)に問(と)ふ可笑(をか)しさ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私(わたくし)は取(と)り敢(あ)へずこんな事(こと)を言(い)つた。床(とこ)の間(ま)に先頃(さきころ)掛(か)けてあつた畫(ゑ)をおぼえてゐるだらう。唐子(からこ)のやうな人(ひと)が二人(ふたり)で笑(わら)つてゐた。あれが寒山(かんざん)と拾得(じつとく)とをかいたものである。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
種(たね)とか——擧(あ)げ來(きた)れば山程(やまほど)ある——お前(まへ)は其麽(そんな)物(もの)が畫(ゑ)に描(か)かれたのを見(み)たことがあるか?
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
〔ブルジョア〕ポンチ畫(ゑ)になってブルジョア残される一二
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
声なき畫(ゑ)とは何れぞや
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
詠(なが)め居たりしが遙(はるか)向(むかう)に山一ツ見えけるにぞ吉兵衞は水差(みづさし)に向ひ彼(あの)高き山は何國(いづく)の山なりや畫(ゑ)に描(かき)し駿河の富士山(ふじさん)に能(よく)も似たりと問ふ水差(みづさし)答(こた)へて那山(あのやま)こそ名高き四國の新富士(しんふじ)なりと答ふる折(をり)から此(こ)は抑何(そもいか)に此山の絶頂(ぜつちやう)より刷毛(はけ)にて引し如き黒雲(くろくも)の出しに水差は仰天(ぎやうてん)しすはや程なく雨下(あまおろ)しの來るぞや早く用心(ようじん)して帆を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
初(はじ)めは俳畫(はいぐわ)のやうだと思(おも)つて見(み)て居(ゐ)たが、これ實(じつ)に畫(ゑ)でも何(なん)でもない。細雨(さいう)に暮(く)れなんとする山間村落(さんかんそんらく)の生活(せいくわつ)の最(もつと)も靜(しづ)かなる部分(ぶゝん)である。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
緑(みどり)の髮(かみ)、桂(かつら)の眉(まゆ)、皓齒(かうし)恰(あたか)も河貝(かばい)を含(ふく)んで、優美(いうび)端正(たんせい)畫(ゑ)と雖(いへど)も及(およ)ぶべからず。紫(むらさき)の帔(かけ)、繍(ぬひ)ある※(したうづ)、珠(たま)の履(くつ)をはきて坐(ざ)しぬ。香氣(かうき)一脈(いちみやく)、芳霞(はうか)靉靆(たなび)く。いやな奴(やつ)あり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
主人(しゆじん)は客(きやく)が此(この)方面(はうめん)の興味(きようみ)に乏(とぼ)しい樣子(やうす)を見(み)て、再(ふたゝ)び話(はなし)を畫(ゑ)の方(はう)へ戻(もど)した。碌(ろく)なものはないけれども、望(のぞみ)ならば所藏(しよざう)の畫帖(ぐわでふ)や幅物(ふくもの)を見(み)せても可(い)いと親切(しんせつ)に申(まを)し出(だ)した。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御同僚(ごどうりよう)の奧樣(おくさま)がたの樣(やう)にお花(はな)のお茶(ちや)の、歌(うた)の畫(ゑ)のと習(なら)ひ立(た)てた事(こと)もなければ其御話(そのおはな)しの御(お)相手(あいて)は出來(でき)ませぬけれど、出來(でき)ずは人知(ひとし)れず習(なら)はせて下(くだ)さつても濟(す)むべき筈(はづ)
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此派は人に配すれば支體の如く、畫(ゑ)に配すれば文人畫の梅の如く、學問に配すれば常識の如し。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
男は自分の女の價を忘れて、再び畫(ゑ)のマグダーレンを戀ひ求めるのであつた。女にはこれまで自分がこの男に戀されてゐた譯がやう/\解つて來た。男はやつぱり自分を戀したのではなかつた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
押鎭(おししづ)め誰かと思へば大家(おほや)さん大層(たいそう)御機嫌で御座りますねヘイヤ澤山(たんと)もやらねど今其所(そこ)で一寸(ちよつと)一杯やつたばかりさ夫は然(さう)とお光さん今日新版(しんぱん)の本が出來(でき)て未だ封切(ふうきり)もしないのが澤山あるが日が暮(くれ)たら迫(せめ)て畫(ゑ)だけも見にお出而(そし)て今夜は母親(おふくろ)は大師河原の親類へ泊り掛(がけ)にと行て留守内(うち)には吾儕(わたし)一人限(ひとりぎり)ゆゑ必ずお出の色目遣(づか)ひお光は恨(うらみ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京(とうきやう)に出(で)てから、自分(じぶん)は畫(ゑ)を思(おも)ひつゝも畫(ゑ)を自(みづか)ら書(か)かなくなり、たゞ都會(とくわい)の大家(たいか)の名作(めいさく)を見(み)て、僅(わづか)に自分(じぶん)の畫心(ゑごころ)を滿足(まんぞく)さして居(ゐ)たのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
妻(つま)の皓體(かうたい)が氣懸(きがか)りさに、大盡(だいじん)ましぐらに奧(おく)の室(ま)へ駈込(かけこ)むと、漸(やつ)と颯(さつ)と赤(あか)く成(な)つて、扱帶(しごき)を捲(ま)いて居(ゐ)る處(ところ)。物狂(ものくる)はしく取(と)つて返(かへ)せば、畫師(ゑし)も其(そ)の畫(ゑ)も何處(どこ)へやら。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
さあ賜(たま)はれと手(て)を重(かき)ねれば、令孃(ひめ)は微笑(ほヽゑ)みながら、嫌(いや)、嫌(いや)、お約束(やくそく)は畫(ゑ)なるに歌(うた)にては嫌(いや)よ、ごむ人形(にんぎやう)は上(あ)げまじと頭(かしら)をふるに、夫(そ)れでも姉樣(ねえさま)この歌(うた)は極(ごく)大切(たいせつ)のにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何時(いつ)もと違(ちが)つて、乘客(じようきやく)の非常(ひじやう)に少(すく)ない時間(じかん)に乘(の)り合(あ)はせたので、宗助(そうすけ)は周圍(しうゐ)の刺戟(しげき)に氣(き)を使(つか)ふ必要(ひつえう)が殆(ほと)んどなかつた。それで自由(じいう)に頭(あたま)の中(なか)へ現(あら)はれる畫(ゑ)を何枚(なんまい)となく眺(なが)めた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
苾堂は詩を以て梁川星巖(やながはせいがん)、柏木如亭(かしはぎじよてい)及五山と交つた。書は子昂(すがう)を宗(そう)とし江戸の佐野東洲の教を受けたらしい。又畫(ゑ)をも學んで、崋山(くわざん)門下の福田半香、その他勾田臺嶺(まがたたいれい)、高久隆古(たかひさりゆうこ)等と交つた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
男が自分を求めたといふことは、自分を通して暗に畫(ゑ)のマグダーレンを得ようとしたのである。畫の女から、活きた私語と口づけとを得るために、マグダーレンに似た自分を戀したのみである。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
畫(ゑ)を好(す)かぬ小供(こども)は先(ま)づ少(すく)ないとして其中(そのうち)にも自分(じぶん)は小供(こども)の時(とき)、何(なに)よりも畫(ゑ)が好(す)きであつた。(と岡本某(をかもとぼう)が語(かた)りだした)。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わつと云(い)つて、一同(いちどう)逆雪頽(さかなだれ)に飛出(とびだ)したと思(おも)ふと、元(もと)の大廣間(おほひろま)で、其(そ)の畫(ゑ)、儼然(げんぜん)として壁(かべ)に異彩(いさい)を放(はな)つ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
直(す)ぐと仰(おつ)しやれば是非(ぜひ)なけれど、下手(へた)に出來(でき)なば却(かへ)りて姉樣(ねえさま)に笑(わら)はれ、若樣(わかさま)の負(まけ)と言(い)ふ物(もの)なり、斯(か)うなされ、畫(ゑ)はゆるゆると後日(ごにち)の事(こと)になし、吾助(ごすけ)は畫(ゑ)よりも歌(うた)の名人(めいじん)にて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
余は子規(しき)の描(か)いた畫(ゑ)をたつた一枚持つてゐる。亡友の記念(かたみ)だと思つて長い間それを袋の中に入れて仕舞つて置いた。年數(ねんすう)の經(た)つに伴(つ)れて、ある時は丸(まる)で袋の所在を忘れて打ち過ぎる事も多かつた。
子規の画 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何(ど)うだ北八(きたはち)、線路(せんろ)の傍(わき)の彼(あ)の森(もり)が鶯花園(あうくわゑん)だよ、畫(ゑ)に描(か)いた天女(てんによ)は賣藥(ばいやく)の廣告(くわうこく)だ、そんなものに、見愡(みと)れるな。おつと、また其(その)古道具屋(ふるだうぐや)は高(たか)さうだぜ、お辭儀(じぎ)をされると六(むづ)ヶしいぞ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天地間(てんちかん)最早(もはや)小山某(こやまなにがし)といふ畫(ゑ)かきの書生(しよせい)は居(ゐ)なくなる! と僕(ぼく)は思(おも)つた時(とき)、思(おも)はず足(あし)を止(とゞ)めた。頭(あたま)の上(うへ)の眞黒(まつくろ)に繁(しげ)つた枝(えだ)から水(みづ)がぼた/\落(お)ちる、墓穴(はかあな)のやうな溪底(たにそこ)では水(みづ)の激(げき)して流(なが)れる音(おと)が悽(すご)く響(ひゞ)く。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
描(ゑが)かぬ畫(ゑ)もおなじ事(こと)御覽(ごらん)じ知(し)る筈(はず)もあらねば萬一(もし)やの頼(たの)みも無(な)きぞかし笑(わら)はるゝか知(し)らねども思(おも)ひ初(そめ)し最初(はじめ)より此願(このねが)ひ叶(かな)はずは一生(しやう)一人(ひとり)で過(す)ぐす心(こゝろ)憂(う)きに送(おく)る月日(つきひ)のほどに思(おも)ひこがれて死(し)ねばよし命(いのち)が若(も)しも無情(つれな)くて如何(いか)に美(う)るは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其(そ)の辯(べん)ずるのが都會(とくわい)に於(お)ける私(わたし)ども、なかま、なかまと申(まを)して私(わたし)などは、ものの數(かず)でもないのですが、立派(りつぱ)な、畫(ゑ)の畫伯方(せんせいがた)の名(な)を呼(よ)んで、片端(かたつぱし)から、奴(やつ)がと苦(にが)り、彼(あれ)め、と蔑(さげす)み、小僧(こぞう)
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『畫(ゑ)も可(い)いが最早(もう)有(あ)りふれたものばかりだからなあ。』
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
立(た)て一寸(いつすん)の猶豫(ゆうよ)もならぬとそれは/\畫(ゑ)にもかゝれぬ談(だん)じやうお前(まへ)にも料簡(れうけん)あることゝやうやうに言延(いひの)べて歸(かへ)ります迄(まで)と頼(たの)んでは置(お)いたれどマアどうしたら宜(よ)からうか思案(しあん)して見(み)てくだされと小聲(こごゑ)ながらもおろ/\涙(なみだ)お案(あん)じなされますな何(ど)うにかなります今夜(こんや)は大分(だいぶ)更(ふ)けましたから明日(あした)早々(さう/\)出向(でむ)きまして談合(はなしあ)ひを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
溜池(ためいけ)の眞中(まんなか)あたりを、頬冠(ほゝかむり)した、色(いろ)のあせた半被(はつぴ)を着(き)た、脊(せい)の低(ひく)い親仁(おやぢ)が、腰(こし)を曲(ま)げ、足(あし)を突張(つツぱ)つて、長(なが)い棹(さを)を繰(あやつ)つて、畫(ゑ)の如(ごと)く漕(こ)いで來(く)る、筏(いかだ)は恰(あたか)も人(ひと)を乘(の)せて、油(あぶら)の上(うへ)を辷(すべ)るやう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『畫(ゑ)は如何(どう)だらう』と判事(はんじ)が一案(いちあん)を出(だ)した。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「切符(きつぷ)は何處(どこ)で買(か)ひますな、」と、畫(ゑ)の門(もん)を見(み)て浮(うか)れるのがある。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)