“上(あ)” の例文
青(あお)い、美(うつく)しい空(そら)の下(した)に、黒(くろ)い煙(けむり)の上(あ)がる、煙突(えんとつ)の幾本(いくほん)か立(た)った工場(こうじょう)がありました。その工場(こうじょう)の中(なか)では、飴(あめ)チョコを製造(せいぞう)していました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はて、何(なん)の菜(な)だ、と思(おも)ひながら、聲(こゑ)を掛(か)けようとして、一(ひと)つ咳(しはぶき)をすると、此(これ)は始(はじ)めて心着(こゝろづ)いたらしく、菜(な)を洗(あら)ふ其(そ)の婦(をんな)が顏(かほ)を上(あ)げた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
といいながら、鉢(はち)をつかんで引(ひ)き上(あ)げますと、下(した)から人間(にんげん)の姿(すがた)が現(あらわ)れたので、びっくりして、手(て)を放(はな)して逃(に)げていってしまいました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
公爵夫人(こうしやくふじん)は其(その)第(だい)二節(せつ)を唱(うた)ふ間(ま)も、絶(た)えず赤子(あかご)を甚(ひど)く搖(ゆす)り上(あ)げたり搖(ゆす)り下(おろ)したりしたものですから、可哀相(かあいさう)に小(ちひ)さなのが泣(な)き叫(さけ)ぶので
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
油で汚(よご)れた所へ二三度櫛(くし)を通して、癖がついて自由にならないのを、無理に廂(ひさし)に束(つか)ね上(あ)げた。それが済んでから始めて下女を起した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
が、折角(せっかく)の依(たの)みとあって見(み)れば何(なん)とか便宜(べんぎ)を図(はか)って上(あ)げずばなるまい。兎(と)も角(かく)も母人(ははびと)を瀑壺(たきつぼ)のところへ連(つ)れてまいるがよかろう……。
サ買つて来(き)たよ。源「アヽ、有難(ありがた)う。金「サ、お湯(ゆ)を汲(く)んで上(あ)げるからお喫(た)べ、夫(それ)だけはお見舞(みまひ)かた/″\私(わつし)が御馳走(ごちそう)して上(あ)げるから。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
すぐ夫(をつと)は傍(そば)から松葉(まつば)を拾(ひろ)ひ上(あ)げて穴(あな)の中(なか)をつつ突(つ)いた。と、蜂(はち)はあわてて穴(あな)から出(で)て來(き)たが、忽(たちま)ち松葉(まつば)に向(むか)つて威嚇的(ゐかくてき)な素振(そぶり)を見(み)せた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
と拗(す)ねて、どうすかしても、叱(しか)つても逢(あ)はうとしませんので、女官(じよかん)は面目(めんぼく)なさそうに宮中(きゆうちゆう)に立(た)ち歸(かへ)つてそのことを申(まを)し上(あ)げました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
それでびっくりして顔(かお)を上(あ)げ、もう一度(ど)そのおかしな常談(じょうだん)をいってやろうとした。すると、ゴットフリートの顔(かお)が目の前にあった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
私(わたし)はお前(まえ)さんのためを思(おも)ってそう言(い)って上(あ)げるんだがね。とにかく、まあ出来(でき)るだけ速(はや)く卵(たまご)を生(う)む事(こと)や、喉(のど)を鳴(なら)す事(こと)を覚(おぼ)える様(よう)におし。
が、階子段の下まで行くと、胸は迫って、涙はハラハラととめどなく堰(せ)き上(あ)ぐるので、顔を抑(おさ)えて火鉢の前へ引っ返したのである。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「さうかい、能(よ)く行(や)つて來(き)たね、まあ上(あが)りな」内儀(かみ)さんはランプを自分(じぶん)の頭(あたま)の上(うへ)に上(あ)げて凝然(ぢつ)と首(くび)を低(ひく)くしておつぎの容子(ようす)を見(み)た。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
同室の四五人の婦人客は皆ペピユブリツクで降りた。この停留場(ぢやう)は余程(よほど)地の上へ遠いのでエレベエタアで客を上(あ)げ下(おろ)しもするのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
上(あ)げ若し長庵殿言事(いふこと)にも程が有る近所(きんじよ)には居らるれどもお前とは染々(しみ/″\)物(もの)言換(いひかは)した事も無いに私しと密通(みつつう)を仕て居るなどと根も葉も無事(なきこと)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ウィンチを捲(ま)く音が烈しく聞えて、鎖を下げた起重機は菜葉服(なっぱふく)の平吉を、蜘蛛(くも)の糸にぶら下った蜘蛛のように空中に吊(つ)り上(あ)げた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
「なんのなんの。もう諸所では合戦の最中だ。槍、刀、馬の鞍など、白河ノ関からこっちでさえ、去年の三倍にも値が刎(は)ね上(あ)がッている」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども、時代(じだい)が先(さき)に申(まを)したようですから、そのお作(さく)も、自然(しぜん)おもしろさが片(かた)よつてゐて、完全(かんぜん)なものとは申(まを)し上(あ)げることが出來(でき)ません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
先(ま)づ検疫船(けんえきせん)が来(き)て検疫医(けんえきい)が乗(の)り込(こ)む。一等(とう)船客(せんかく)一同(どう)大食堂(だいしよくだう)に呼(よ)び集(あつ)められて、事務長(じむちやう)が変(へん)な所(ところ)にアクセントをつけて船客(せんかく)の名(な)を読(よ)み上(あ)げる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
二疊敷より五十疊敷位の大さにて深(ふか)きは人の丈位(たけぐらひ)なるが、周壁の上端は地面よりも高く盛(も)り上(あ)がりて堤(つつみ)の形を成し居るもの故
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
乳母 もしえ、この指輪(ゆびわ)は姫(ひい)さまから、わしに貴下(こなた)へ上(あ)げませいと言(い)うて。さ、速(はや)う、急(いそ)がしゃれ、甚(いか)う夜(よ)が深(ふ)けたによって。
恥(はず)かしがるにゃァ当(あた)らねえ。何(なに)もこっちから、血道(ちみち)を上(あ)げてるという訳(わけ)じゃなし、おめえに惚(ほ)れてるな、向(むこ)う様(さま)の勝手次第(かってしだい)だ。——おせん。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
今(いま)珈琲(カツヒー)を運(はこ)んで來(き)た小間使(こまづかひ)の顏(かほ)にも其(その)忙(いそ)がしさが見(み)へるので、若(も)しや、今日(けふ)は不時(ふじ)の混雜中(こんざつちう)ではあるまいかと氣付(きづ)いたから、私(わたくし)は急(きふ)に顏(かほ)を上(あ)げ
此山では「お炊(た)き上(あ)げ」と称して毎月十九日に一斗五升の小豆飯を炊いて、それをお犬さまに供えるのが例だ。勿論山の中の一定の場所である。
奥秩父 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
そこも雨は漏(も)り、畳(たたみ)は腐(くさ)り、天井(てんじょう)には穴(あな)があき、そこら中がかびくさかった。勘太郎は土間の上(あ)がり框(かまち)のところにある囲炉裏(いろり)の所へ行ってみた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
其(その)支度(したく)は朝湯(あさゆ)にみがき上(あ)げてと霜(しも)氷(こほ)る曉(あかつき)、あたゝかき寢床(ねどこ)の中(うち)より御新造(ごしんぞ)灰吹(はいふ)きをたゝきて、これ/\と、此詞(これ)が目覺(めざま)しの時計(とけい)より胸(むね)にひゞきて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「しかし、此処の器量よしめの。かほどの器量までにおのれを迫(せり)上(あ)げて居おるのも、おのれの私を成そうより始まったろう。エーッ、忌々しい。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
中には階上から川底へ針金(はりがね)の架線(かせん)を渡し、それへバケツを通して、綱(つな)でスルスルと水を汲(く)み上(あ)げるようにしたのもある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それには遠方(えんぽう)より土(つち)を次第(しだい)につんで傾斜(けいしや)した坂道(さかみち)を築(きづ)き上(あ)げ、それへ石(いし)を押(お)し上(あ)げてこれを縱(たて)に落(おと)し立(た)て、それからその上(うへ)に横石(よこいし)を載(の)せたもので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
足(あし)をばた/\やつて大聲(おほごゑ)を上(あ)げて泣(な)いて、それで飽(あ)き足(た)らず起上(おきあが)つて其處(そこ)らの石(いし)を拾(ひろ)ひ、四方八方に投(な)げ付(つ)けて居(ゐ)た。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ハワイ土人(どじん)はこれをパホエホエ式(しき)と呼(よ)んゐでゐる。こーくす状(じよう)の鎔岩(ようがん)は中央火口丘(ちゆうおうかこうきゆう)から噴出(ふんしゆつ)せられて、それ自身(じしん)の形體(けいたい)を積(つ)み上(あ)げて行(ゆ)くことが多(おほ)い。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
今わたくしの作る火は大空高くカムムスビの命の富み榮える新しい宮居の煤(すす)の長く垂(た)れ下(さが)るように燒(た)き上(あ)げ、地の下は底の巖に堅く燒き固まらして
拾(ひろ)はれて參(まゐ)つてから三年(ねん)程(ほど)立(た)ちました時(とき)、食堂(しよくだう)で上座(じやうざ)の像(ざう)に香(かう)を上(あ)げたり、燈明(とうみやう)を上(あ)げたり、其(その)外(ほか)供(そな)へものをさせたりいたしましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
その後(ご)の事(こと)は申(まを)し上(あ)げるだけ、無用(むよう)の口數(くちかず)に過(す)ぎますまい。唯(ただ)、都(みやこ)へはいる前(まへ)に、太刀(たち)だけはもう手放(てばな)してゐました。——わたしの白状(はくじやう)はこれだけです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ドクトルがまるで乞食(こじき)にも等(ひと)しき境遇(きょうぐう)と、思(おも)わず涙(なみだ)を落(おと)して、ドクトルを抱(いだ)き締(し)め、声(こえ)を上(あ)げて泣(な)くのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主人はなつかしげに無造作(むぞうさ)にこういって玄関(げんかん)の上(あ)がりはなに立った。近眼(きんがん)の、すこぶる度の強そうな眼鏡で格子(こうし)の外をのぞくように、君、はいらんかという。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と言(い)ふやうにお花(はな)を上(あ)げました。祖母(おばあ)さんがお墓(はか)の竹箒(たけぼほぎ)を立(た)てかけて置(お)くところは大(おほ)きな杉(すぎ)の木(き)の根(ね)キでしたが、その杉(すぎ)の木(き)の間(あひだ)から馬籠(まごめ)の村(むら)が見(み)えました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
中央あたりに荷物上(あ)げ下(さ)げ用のエレヴェーターがあって、その周囲は厳重な囲(かこ)いが仕切られて居り、その背面には、青いペンキを塗った大きな木の箱があって
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから彼女(かのぢよ)は毎晩(まいばん)、惡夢(あくむ)を見(み)た。片山(かたやま)が後手(うしろで)に縛(しば)り上(あ)げられて上(うへ)から吊(つ)るされてゐる、拷問(がうもん)の夢(ゆめ)である。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
しようもないことが、お氣(き)に召(め)したとは存(ぞん)じて居(を)りましたが、しかし殿樣(とのさま)にあの時(とき)のことをすツかり愚老(ぐらう)の口(くち)から申(まを)し上(あ)げますのは、今日(けふ)が初(はじ)めでござります。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
今(いま)濱田(ハマダ)宮本(ミヤモト)兩先生(りようせんせい)の御話(おはなし)に就(つい)て、私(わたくし)が已徃(きおう)に於(おい)て感(かん)じましたる事(こと)を一寸(ちよつと)貴方所(あなたがた)に申(まう)し上(あ)げましたのです。
捲(ま)き上(あ)げようとして這入り込みながら散々手を焼いて駅亭から追い立てられているような事もいった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そのままタタタ! と二足三あし上(あ)げ橋の板を鳴らしてお城のなかへ踏みこもうとした人影がひとつ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ソログーブが四つのときに父(ちち)が死(し)んで以来(いらい)、母(はは)はよその家(いえ)の女中奉公(じょちゅうぼうこう)をして一人子(ひとりご)を育(そだ)て上(あ)げた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
又(また)諸所(しよしよ)の修道院(しうだうゐん)を訪(ともら)つて、もはや此世(このよ)に居(ゐ)ない会友(くわいいう)の為(ため)に祈(いのり)を上(あ)げ、其名(そのな)を巻物(まきもの)に書(か)きとめて、寺(てら)から寺(てら)へと其過去帳(そのくわこちやう)を持回(もちまは)つたなら、皆(みんな)も嘸(さぞ)悦(よろこ)ぶ事(こと)であらうが、第(だい)一
その中に六十銭が七十銭になり、七十銭が八十銭となり、瞼を上(あ)げ下(おろ)しするだけの無言の応酬の中に、到頭一円に迄相場がせり上げられて了った。値段ばかりではない。
南島譚:03 雞 (新字新仮名) / 中島敦(著)
バタバタと梯子段をかけ下り、上(あ)がり框(かまち)まで来るとヌッと土間に、突っ立っている武士があった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
舟(ふね)より船(ふね)と飛(と)び渡(わた)りて、其祝意(そのしゆくい)をうけらるゝは、当時(そのかみ)の源廷尉(げんていゐ)宛然(えんぜん)なり、予(よ)も肉(にく)動(うご)きて横川氏(よこかわし)と共(とも)に千島(ちしま)に行(ゆ)かばやとまで狂(くるひ)たり、舟(ふね)は大尉(たいゐ)萬歳(ばんざい)の歓呼(くわんこ)のうちに錨(いかり)を上(あ)げて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
でも子どもが情けなさそうな顔つきになると、おかあさんはその子をひざに抱(だ)き上(あ)げました。
豚の肉を細く糸切にしてグラグラ沸騰(ふっとう)している塩湯へ少しずつ落してザット湯だったら網杓子(あみじゃくし)で笊(ざる)へ掬(すく)い上(あ)げてよく水気を切って今度は外(ほか)の鍋で油の中へ入れて炒(い)り付(つ)ける。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)