“此(こ)” の例文
国家統治ノ大権ハ朕カ之(これ)を祖宗ニ承(う)ケテ之ヲ子孫伝フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ将来此(こ)ノ憲法ノ条章(じょうしょう)ニ循(したが)ヒ之ヲ行フコトヲ愆(あやま)ラサルヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
雪(ゆき)の中(なか)を此(こ)の紅鯛(べにだひ)綺麗(きれい)なり。此(こ)のお買初(かひぞ)めの、雪(ゆき)の眞夜中(まよなか)、うつくしき灯(ひ)に、新版(しんぱん)の繪草紙(ゑざうし)を母(はゝ)に買(か)つてもらひし嬉(うれ)しさ、忘(わす)れ難(がた)し。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
〔譯〕象山(しようざん)の、宇宙(うちう)内(ない)の事は皆己(おの)れ分内(ぶんない)の事は、此(こ)れ男子擔當(たんたう)の志此(かく)の如きを謂ふなり。陳澔(ちんかう)此を引いて射義(しやぎ)を註(ちゆう)す、極(きは)めて是(ぜ)なり。
愛(あい)ちやんは直(たゞ)ちに此(こ)れが扇子(せんす)を持(も)つて居(ゐ)た所爲(せい)だと云(い)ふ事(こと)を知(し)つて急(いそ)いで其扇子(そのせんす)を捨(す)てました、恰(あだか)も縮(ちゞ)むのを全(まつた)く恐(おそ)れるものゝ如(ごと)く。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其(そ)の日(ひ)は栗(くり)の木(き)に懸(か)けた大根(だいこ)の動(うご)かぬ程(ほど)穩(おだや)かな日(ひ)であつた。お品(しな)は此(こ)の分(ぶん)で行(ゆ)けば一枚紙(いちまいがみ)を剥(は)がすやうに快(こゝろ)よくなることゝ確信(かくしん)した。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此(こ)の冬ルツェルンに遊んでいた時、リギから東に遠く遠く見えたる立派な山塊は、グラールスの谷奥に屹えるこの山岳であったのだ。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
此(こ)の茶店へ入って来た時、摺れ違いに出て行った女の、右半面を見せた美しさが、若い旅人には焼き付くような記憶になった様子です。
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
之(これ)は政府(せいふ)の指導(しだう)又(また)は消費節約(せうひせつやく)の奬勵(しやうれい)の行(ゆ)き渡(わた)つたと云(い)ふよりも、寧(むし)ろ國民自體(こくみんじたい)が此(こ)の事柄(ことがら)の必要(ひつえう)を感(かん)じて居(を)つたからだと思(おも)ふのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
此(これ)を以(もつ)て相持(あひぢ)する、此(こ)れ説(ぜい)の成(な)る也(なり)。伊尹(いゐん)は(九七)庖(はう)と爲(な)り、百里奚(りけい)は(九八)虜(りよ)と爲(な)る、(九九)皆(みな)由(よ)つて其上(そのかみ)に干(もと)めし所(ところ)也(なり)。
測定者・木戸——とサインされてある此(こ)の貴重な三つの曲線の意味は、漸(ようや)く助手の丘数夫の頭脳に朧気(おぼろげ)ながら理解されるに至った。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
予は既に此(こ)の為に五回、空しく氏の家を訪れたのである。氏は予に斯(こ)う云った。「あんな物を持ち廻ったところで、売れやしないぜ。」
「今ちょうど、一回の終りで魔術が済んだところです。此(こ)れから写真になりますから、まだ魔術には二時間ぐらい暇がありましょう。」
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
面附(つらつき)こそは誰(た)れよりも見(み)よけれ、脛附(すねつき)が十人並(にんなみ)以上(いじゃう)ぢゃ、それから手(て)や足(あし)や胴(どう)やは彼(か)れ此(こ)れ言(い)ふが程(ほど)も無(な)いが、外(ほか)には、ま、類(るゐ)が無(な)い。
迂濶(うかつ)に手を放せば、彼は底知れぬ暗黒(くらやみ)に転げ墜(お)ちて、お杉と同じ運命を追わねばならぬ。さりとて此(こ)のままの暗黒(くらやみ)では仕方が無い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
荘田に言伝(ことづて)をしておいて呉れたまえ、いゝか。俺(わし)の云うことをよく覚えて、言伝をして、おいて呉れ給(たま)え。此(こ)の唐沢は貧乏はしている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
越前守殿聞だまれ憑司汝は何を申すぞ早は此(こ)の方(はう)で吟味(ぎんみ)なすに爰な出過者(ですぎもの)め今早が口より梅が體に疵(きず)などは御ざらぬと申立たるに汝(なんぢ)夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
草木の美しさを羨(うらや)むなんて、余程自分の生活に、自分の心持ちに不自然な醜さがあるのだと、此(こ)の朝つく/″\と身に沁(し)みて考へられた。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
此(こ)の尖端(せんたん)を上(うへ)に向(む)けてゐる釘(くぎ)と、塀(へい)、さては又(また)此(こ)の別室(べつしつ)、こは露西亞(ロシア)に於(おい)て、たゞ病院(びやうゐん)と、監獄(かんごく)とにのみ見(み)る、儚(はかな)き、哀(あはれ)な、寂(さび)しい建物(たてもの)。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私は未(ま)だいちども、此(こ)の年少の友人たちに対して、面会を拒絶した事が無い。どんなに仕事のいそがしい時でも、あがりたまえ、と言う。
新郎 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そのあげくが和作はやはり此(こ)の寄宿学校で独逸(ドイツ)語の授業のほかに、少年寮の図書係といふ呑気(のんき)な役目を世話して貰(もら)ふ事になつたのである。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
私は内心やや此(こ)の結果に驚きながらも、まだ心を許す余裕はなく、夢中で目をつぶったまま相手の胸ぐらを小突きまわしていた。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
此(こ)の富豪は我が町に緑樹の海を置いて居(い)る。富豪自身は期せずして良民の呼吸の為めにふんだんな酸素を分配して居るのである。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
父も家庭に対する苦(くるし)み、妻子に対する苦(くるし)み、社会に対する苦(くる)しみ——所謂(いはゆる)中年の苦痛(くるしみ)を抱(いだ)いて、其(その)時此(こ)の狭い汚い町を通(とほ)つたに相違(さうゐ)ない。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
此(こ)ん中(なか)に人が居(ゐ)るだらう。と怪(け)しからん奴(やつ)で、指の先へ唾(つば)を附(つ)け、ぷつりと障子(しやうじ)へ穴を開(あ)け覗(のぞ)き見て、弥「いやア何(なに)か喰(く)つて居(ゐ)やアがる。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こんなに年老(としよ)るまで、自分(じぶん)は此(こ)の梢(こづゑ)で、どんなにお前のために雨(あめ)や風(かぜ)をふせぎ、それと戰(たゝか)つたか知(し)れない。そしてお前(まへ)は成長(せいちやう)したんだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
吉(きち)さんと云(い)ふのは地方町(ぢかたまち)の小学校時代の友達で、理髪師(とこや)をしてゐる山谷通(さんやどほ)りの親爺(おやぢ)の店で、此(こ)れまで長吉(ちやうきち)の髪をかつてくれた若衆(わかいしゆ)である。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此の辺(あたり)にかうよろしき人の住むらんを今まで聞えぬ事はあらじを、此(こ)は都人の三七三つ山詣(まうで)せし次(ついで)に、海愛(めづら)しくここに遊ぶらん。
左樣(さやう)、私(わたくし)は君(きみ)を確信(くわくしん)します、若(も)し君(きみ)は我等(われら)の同志(どうし)の士(し)として、永久(えいきゆう)に此(こ)の秘密(ひみつ)を守(まも)る事(こと)を約束(やくそく)し玉(たま)はゞ、請(こ)ふ誠心(せいしん)より三度(みたび)天(てん)に誓(ちか)はれよ。
春になると、北上の河谷(かこく)のあちこちから、沢山の馬が連れて来られて、此(こ)の部落の人たちに預けられます。そして、上の野原に放されます。
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
抑(そもそ)もバアトンが此(こ)の翻訳を思ひ立つたのは、アデン在留の医師ジヨン・スタインホイザアと一緒(いつしよ)に、メヂヤ、メツカを旅行した時のことで
玄関番(げんくわんばん)の書生(しよせい)に不作法(ぶさはふ)な取扱(とりあつかひ)を受(う)けると、其処(そこ)の主人迄(しゆじんまで)がいやになる。著米(ちやくべい)早々(さう/\)の此(こ)の始末(しまつ)は、少(すくな)からず僕等(ぼくら)に不快(ふくわい)を与(あた)へた。(四月三日)
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
その名一世に鳴り響いた人々も、武勇の誉(ほま)れ天下に高い人々も、また此(こ)の間の戦争で死んで、ふたたび甦(よみがえ)って来た兵士もいた。
而して燕王の豪傑の心を攬(と)る所以(ゆえん)のもの、実に王の此(こ)の勇往邁進(まいしん)、艱危(かんき)を冒して肯(あえ)て避けざるの雄風(ゆうふう)にあらずんばあらざる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
汝知るべし、我は伯爵(コンテ)ウゴリーノ此(こ)は僧正ルツジェーリといへる者なり、いざ我汝に何によりてか上る隣人(となりびと)となれるやを告げん 一三—一五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
此(こ)の友達は既にそのやうな偉い職工の一人になつてゐると思ふと私はいつまでも自分はぐづ/\してゐる時でないと考へた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
“第一線から、こんな所へ左遷されて、守備隊長(おやじ)は何だっていい気になっているんだろう。此(こ)の頃の馬鹿な御機嫌はどうだ”
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
実際此(こ)の失恋でもない、況(いは)んや得恋でもない、謂(い)はゞ無恋の心もちが、一番悲惨な心持なんだ。此の落寞(らくばく)たる心持が、俺には堪(たま)らなかつたんだ。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
が、此(こ)の手紙(てがみ)を後生大事(ごしやうだいじ)と収(しま)つておく処(ところ)から見(み)ると、其後(そのご)何(なに)かの事情(じゞやう)で、互(たがひ)に隔(へだ)たつてはゐても、心(こゝろ)は今(いま)に隔(へだ)てぬ中(なか)だと云(い)ふことは明(あきら)かである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おばあさんは、もう此(こ)の上目鏡を買ふこともなくなつたので、広いお部屋で、呑気(のんき)に、新聞がよめることになりました。
おもちや の めがね (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
牛や馬以上に従順であっても此(こ)の通り、モシ、従順でなかったら、傲慢(ごうまん)な百姓達は恐らく此(こ)の「あまり者」を打ち殺して了(しま)うだろうと私は思った。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
此(こ)の一文を草(そう)するに当っても、何一つとして先人の手に成った権威ある文献を渉猟(しょうりょう)してはいないため、一般の定説や
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
おもへば四年(よとせ)の昔なりけり、南翠氏(なんすゐし)と共(とも)に学海先生(がくかいせんせい)の此(こ)の別荘(べつさう)をおとづれ、朝より夕(ゆふ)まで何(なに)くれと語(かた)らひたる事(こと)ありけり、其時(そのとき)先生(せんせい)左(さ)の詩(し)を示(しめ)さる。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
𢌞廊のあなたに、蘭燈(らんとう)尚ほ微(かすか)なるは誰(た)が部屋(へや)ならん、主は此(こ)の夜(よ)深(ふか)きにまだ寢もやらで、獨り黒塗の小机に打ちもたれ、首(かうべ)を俯して物思はしげなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
一體(たい)コスモポリタンといふ言葉(ことば)の正確(せいかく)な意義(いぎ)はどういふのだらう。私(わたし)には先(ま)づ此(こ)の疑問(ぎもん)が起(おこ)つた。そこで『井上(ゐのうへ)英和辭典(えいわじてん)』を引(ひ)いて見(み)ると、斯(か)うある。
資本主(しほんぬし)と機械(きかい)と勞働(らうどう)とに壓迫(あつぱく)されながらも、社會(しやくわい)の泥土(でいど)と暗黒(あんこく)との底(そこ)の底に、僅(わづか)に其の儚(はかな)い生存(せいぞん)を保(たも)ツてゐるといふ表象(シンボル)でゞもあるやうな此(こ)の唄(うた)には
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
女は腰をかがめて一つ一つを覗(のぞ)いてまはる。此(こ)の室(へや)の空気には生物学の標本室の匂(におい)がする。初生児は皮膚で呼吸する動物のやうにまるで音を立てない。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
すなわちこの様に解釈してこそこの歌、すなわち、「妹(いも)が為(た)め菅(すが)の実(み)採(と)りに行(ゆ)きし吾(あ)れ山路(やまぢ)に惑(ま)どひ此(こ)の日(ひ)暮(くら)しつ」
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
彼(か)れ此(こ)れと悶着(もんちゃく)して居る間に夜(よ)が明けて仕舞(しま)い、私は何にも知らずにその朝船に乗(のっ)て海上無事神戸に着きました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
然し、当夜此(こ)の惨事に立会ったものは、店内関係者としては装飾部主任とその部下、宿直主任とその部下、警備係員若干、すべてで二十人はいるのだがね。
さて、さう言はれてみますと、此(こ)の村中に、其の掛軸の絵を、はつきり覚えてゐる人は一人だつてありません。
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)