“やつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヤツ
語句割合
奴41.5%
窶27.0%
漸4.1%
丑刻2.7%
谷2.0%
未刻1.9%
八1.8%
八歳1.2%
憔1.1%
八刻1.1%
俏1.0%
辛0.9%
瘻0.8%
刀0.7%
彼奴0.7%
女0.7%
扮0.6%
憔悴0.6%
二時0.4%
喰0.3%
寠0.3%
男0.3%
痩0.3%
矢継0.3%
遣0.2%
三時0.2%
瘁0.2%
事件0.2%
八個0.2%
化粧0.2%
彼0.2%
扮装0.2%
谷津0.2%
酒0.2%
魚0.2%
清兵0.1%
羸0.1%
軟0.1%
ヶ谷0.1%
娘0.1%
彼女0.1%
魚屋0.1%
が0.1%
丑時0.1%
丑満0.1%
亡者0.1%
人間0.1%
八時0.1%
八津0.1%
八頭0.1%
品物0.1%
喧嘩0.1%
士0.1%
変0.1%
大砲0.1%
女児0.1%
女房0.1%
女郎0.1%
巳刻0.1%
弥津0.1%
息0.1%
悄0.1%
憂0.1%
所作0.1%
時計0.1%
未0.1%
本0.1%
杯0.1%
河豚0.1%
波0.1%
湯女0.1%
漁師0.1%
漢0.1%
為0.1%
焦悴0.1%
爲0.1%
犬0.1%
犯人0.1%
獸0.1%
疲0.1%
病0.1%
痿0.1%
癯0.1%
稍0.1%
罪人0.1%
與0.1%
船0.1%
茶飯0.1%
萎0.1%
葡萄酒0.1%
虎0.1%
術0.1%
衰0.1%
話0.1%
農奴0.1%
連中0.1%
道場0.1%
青木0.1%
青竜王0.1%
馬0.1%
馬力0.1%
麦0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
これからはいよ/\お民(たみ)どの大役(たいやく)なり、前門(ぜんもん)の虎(とら)、後門(こうもん)の狼(おほかみ)、右(みぎ)にも左(ひだり)にも怕(こわ)らしき奴(やつ)の多(おほ)き世(よ)の中(をか)、あたら美玉(びぎよく)に疷(きず)をつけ給(たま)ふは
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もう三十二三にはなっているのだろう、着崩れた着物の下から、何か仇(あだ)めいた匂いがして窶(やつ)れた河合武雄と云ってもみたい女だった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
さうして女房(にようばう)は激烈(げきれつ)な神經痛(しんけいつう)を訴(うつた)へつゝ死(し)んだ。卯平(うへい)は有繋(さすが)に泣(な)いた。葬式(さうしき)は姻戚(みより)と近所(きんじよ)とで營(いとな)んだが、卯平(うへい)も漸(やつ)と杖(つゑ)に縋(すが)つて行(い)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そのお玉どのは、——何を隱さう、あの時刻——丁度子刻(こゝのつ)から丑刻(やつ)前まで、ツイ裏の私の浪宅に來て居たとしたら、どんなものでせう」
また山に沿う丘やら谷(やつ)やら狭道で攻めるに難(かた)い。——のみならず、南は海で、その海面に義貞はなんら攻め手を持っていなかった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを飲んで居ると、ポーンと未刻(やつ)の鐘が響きますから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もう冬と言ってもよいくらいですから欅の紅葉は、ほとんど八(やつ)ヶ岳颪(たけおろし)で吹き払われていました。木の下には黒くなった落葉が堆(うずたか)く落ちていました。
「まだお八歳(やつ)にしかおなりなさいませぬが、ご当家において、ご養育あそばされている、吉里君(よしさとぎみ)ではないかと」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大変に憔(やつ)れて居るわ。私達の独逸語を習いたい事を話したら、笑って、——つまらない事だ、斯んな国の言葉を憶えたって役に立たないでしょう。
母と娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と、やり出したとき、どウウウウん、どうん! お太鼓櫓(たいこやぐら)で打ち出した八刻(やつ)の合図である。長廊下の向うから多勢の気配が曲って来て、老中方お退出(さがり)という声がする。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
叔父は売薬商人に俏(やつ)していったのだが、どの家でも泊めようとしなかったし、ふいに物蔭から、石や棒切れを投げられたりした。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
剰(おまけ)に辛(やつ)と此の川下へ出たら、何うだえ貴方(あんた)、此間(こなひだ)の洪水(みづまし)に流れたと見えて橋が無いといふ騒ぎぢやないか。それからまた半里(はんみち)も斯うして上つて来た。
道 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見ていると白石さんは日に日に瘻(やつ)れて、心の苦悶が顔にあらわれ、極度の神経衰弱に陥ってゆく様子にもう黙ってはいられなくなりました。
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
露助の兵隊なんか大きな刀(やつ)を振り廻してやたらに、ヤポウネツ・ヤポンツァ! って呶鳴(どな)る——。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ところが彼奴(やつ)はひどく喜んでお礼を言っていたかと思うと、急に昏睡状態に陥ってしまったのです
私はかうして死んだ! (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
「うん。女(やつ)が来たら咳払(せきばれ)えして下せえよ。いいけえ、頼んだぜ。」
同じように仲間小者(ちゅうげんこもの)に身を扮(やつ)して、仇家の偵察にも従事すれば、江戸じゅうを走り廻って、諸所に散在している同士の間に聯絡(れんらく)をも取っていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
気がつくと、夏も妻もみんな一週間のまにすっかり憔悴(やつ)れてしまった、それでも妻は気ばかり立っていた。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
二時(やつ)さがりに松葉(まつば)こぼれて、夢(ゆめ)覺(さ)めて蜻蛉(とんぼ)の羽(はね)の輝(かゞや)く時(とき)、心太(ところてん)賣(う)る翁(おきな)の聲(こゑ)は、市(いち)に名劍(めいけん)を鬻(ひさ)ぐに似(に)て、打水(うちみづ)に胡蝶(てふ/\)驚(おどろ)く。行水(ぎやうずゐ)の花(はな)の夕顏(ゆふがほ)、納涼臺(すゞみだい)、縁臺(えんだい)の月見草(つきみさう)。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
身は疳癪(かんしやく)に筋骨つまつてか人よりは一寸法師(ぼし)一寸法師と誹(そし)らるるも口惜(くちを)しきに、吉や手前(てめへ)は親の日に腥(なまぐ)さを喰(やつ)たであらう、ざまを見ろ廻りの廻りの小仏と朋輩の鼻垂れに仕事の上の仇(あだ)を返されて
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五年変り種漁りに憂身を寠(やつ)していたのであったが、バルセローナ州選出の上院議員ルロイ・ソレル男爵の夫人は、すでに一昨年と昨年と続けて二回も入選していた。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
板のやうな掛蒲団を袷(あはせ)の上に被(かぶ)つて禿筆(ちびふで)を噛みつゝ原稿紙に対(むか)ふ日に焼けて銅(あかゞね)色をしたる頬の痩(やつ)れて顴骨(くわんこつ)の高く現れた神経質らしい仝(おな)じ年輩(としごろ)の男を冷やかに見て
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
男達が其処に停ち止まったアイリスの傍まで駈けつけた途端に、振り向いたアイリスは、右の人差指を延ばして矢継(やつ)ぎ早(ば)やにワルトンとジョーンの心臓部を目がけて突いた。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
屹度抜いて上げませうと思つて待つてると、信吾さんに札が無くなつて、貴君(あなた)が「むべ山」と「流れもあへぬ」を信吾さんへ遣(やつ)たでせう? 私厭になつ了(ちま)ひましたよ。ホホヽヽ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
みっちゃんは、お三時(やつ)のとき、二つ目の木の葉パンを半分頬(ほお)ばりながら、母様にいいました。
クリスマスの贈物 (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
藤「伯母様、藤原喜代之助でござる、お萓も一緒に、分りましたか、大層お瘁(やつ)れ……」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
トテツもない事件(やつ)なんですよ……
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
一杯(いつぱい)の日當(ひあたり)で、いきなり土(つち)の上(うへ)へ白木(しらき)の卓子(テエブル)を一脚(きやく)据(す)ゑた、其(その)上(うへ)には大土瓶(おほどびん)が一個(こ)、茶呑茶碗(ちやのみぢやわん)が七個(なゝつ)八個(やつ)。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「お浜さん。いつも化粧(やつ)していやはるな。初日まえで忙がしいやろ」
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日は穀屋の若旦那というこしらえで、すっかり灰汁(あく)が抜けてはいるが紛れもない、女にまかれた彼(やつ)である。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おお此奴(こいつ)は先ほど、廻国の武芸者に扮装(やつ)して入りこんだ矢倉伝内めじゃ!」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
谷津(やつ)、蓮台寺(れんだいじ)、加茂あたりまで出かけて行くことは難かしかつた。
女の温泉 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
「こう、漁師(りょうし)たち。鱸(すずき)でも鯉でもいいや、見事な魚(やつ)を、二、三尾(びき)選(よ)ってよこしねえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっきもおれアうっかり踏ん込(ご)むと、殺しに来たと思いやがったンだね、いきなり桶(おけ)の後ろから抜剣(ぬきみ)の清兵(やつ)が飛び出しやがって、おいらアもうちっとで娑婆(しゃば)にお別れよ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ちょうど兵隊さんが来て清兵(やつ)めすぐくたばっちまやがったが。おいらア肝つぶしちゃったぜ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
蒼(あを)く羸(やつ)れたる直道が顔は可忌(いまはし)くも白き色に変じ、声は甲高(かんだか)に細りて、膝(ひざ)に置ける手頭(てさき)は連(しき)りに震ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
母は語るべき事の日頃蓄へたる数々を措(お)きて、先づ宮が血色の気遣(きづかはし)く衰へたる故を詰(なじ)りぬ。同じ事を夫にさへ問れしを思合せて、彼はさまでに己の羸(やつ)れたるを惧(おそ)れつつも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「篦棒(べらぼう)、さうだ軟(やつ)けえ面(つら)で風(かぜ)吹(ふ)く處(とこ)歩(ある)けるもんぢやねえ」爺(ぢい)さんはむきに成(な)つていつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そんでそれ娵(よめ)つちのが心底(しんてえ)のえゝ女(をんな)だつちんだからわしも欲(ほ)しいのさ本當(ほんたう)の噺(はなし)がねえ、さう云(ゆ)つちや我慾(がよく)の樣(やう)だがおんなじもんなら軟(やつ)けえ言辭(ことば)でも掛(か)けてくれる嫁(よめ)でなくつちやねえ
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私が海岸から扇(おうぎ)ヶ谷(やつ)へ向う道で非常な馬上美人に遇(あ)ったと帰って来て氏に話した。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大正十二年七月中旬の或日、好晴の炎天下に鎌倉雪の下、長谷(はせ)、扇(おうぎ)ヶ谷(やつ)辺を葉子は良人(おっと)と良人の友と一緒に朝から歩き廻(まわ)って居た。七月下旬から八月へかけて一家が避暑する貸家を探す為めであった。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
スッカリ若返りにしておりましたので一寸見(ちょっとみ)はフイ嬢(ちゃん)よりも可愛いくれえで、フイ嬢(ちゃん)とお揃いの前髪を垂らして両方の耳ッ朶(たぼ)に大きな真珠をブラ下げた娘(やつ)が、翡翠(ひすい)色の緞子(どんす)の服の間から
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
台湾館に来る匆々(そうそう)から何(どう)やら物を言いたそうな眼付きをして、あっしの方を見ておったように思いますがね。そいつを一方のチイチイって娘(やつ)が感付いて横槍を入れたものらしいんです。ヘエヘエ。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
丁度あの鳶頭が来た翌日(あくるひ)でした、吉原(なか)の彼女(やつ)と駈落(かけおち)と出懸けやしたがね、一年足らず野州(やしゅう)足利(あしかゞ)で潜んでいるうちに嚊(かゝあ)は梅毒がふき出し、それが原因(もと)で到頭お目出度(めでたく)なっちまったんで
熊「フヽム左様(そう)よ、彼女(やつ)が是(ぜ)ッ非(ぴ)来てくれと吐(ぬ)かしアがッてよ、己(おい)らが面を見せなけりゃア店も引くてえんだ、本ものだぜ、鯱鉾(しゃちほこ)だちしたって手前達(てめえたち)に真似は出来ねえや、ヘン何(ど)んなもんだい」
その落いた魚屋(やつ)の襟印を見て帳面に『一円五十銭……茂兵衛』とか何とか私共一流の走書きに附込んだ魚(やつ)を泄(さら)うように引っ担いで走り出て行きます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と糶(せ)るうちに肩を組んで寄って来た売子の魚屋(やつ)が十尾(コン)一円二十銭で落いたとします。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
悠然(いうぜん)と車上(しやじよう)に搆(かま)へ込(こ)んで四方(しはう)を睥睨(へいげい)しつゝ駆(か)けさせる時は往来(わうらい)の奴(やつ)が邪魔(じやま)でならない右へ避(よ)け左へ避(さ)け、ひよろひよろもので往来(わうらい)を叱咜(しつた)されつゝ歩く時は車上(しやじよう)の奴が(やつ)が癇癪(かんしやく)でならない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
待内に愈々(いよ/\)雨は小止(こやみ)なく早(はや)耳先へ響(ひゞ)くのは市ヶ谷八幡(まん)の丑時(やつ)の鐘(かね)時刻(じこく)はよしと長庵はむつくと起て弟の十兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは水害(すゐがい)のためにもし船(ふね)が転覆(ひつくりか)へると蘇生(よみがへ)る亡者(やつ)が多いので、それでは折角(せつかく)開(ひら)けようといふ地獄(ぢごく)の衰微(すゐび)だといふので、此(こ)の通(とほ)り鉄橋(てつけう)になつちまいました、それ御覧(ごらう)じろ
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
グリゴリイ・ドエズジャイ・ニェドエジョーシ! お前は一体どんな人間(やつ)だったんだい? 運送屋でも営んで、二頭立の蓙掛馬車でも仕立てて、永久に家を見捨て、生れ故郷を見限って
そして、漁師が久兵衛の家に着いたのは八時(やつ)に近い比(ころ)であった。久兵衛と女房は午飯も喫わずに地炉の傍でぽかんとしていた。
雁 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そんななかで大石先生は三人の子の母となっていた。長男の大吉(だいきち)、二男の並木(なみき)、末っ子の八津(やつ)。すっかり世の常の母親になっている証拠(しょうこ)に、ねえさんとよばれた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ところが鳥取県の八頭(やつ)郡などで、神返しというのは十月の二十五日で荒れ日であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「じゃ、亀田が窃盗(せっとう)の冤罪(えんざい)を被(き)せられた、あの高瀬夫人の失(な)くした品物(やつ)か」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なあ、お絃、久しく暴風(しけ)つづきだな。きょうあたり、大きな喧嘩(やつ)を
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
森 うむ、あの晩は大分あちこちで、自暴酒(やけざけ)をやった士(やつ)が多かった。面目ないが、おれと池田も、じつはその組で——。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おお、お侍(さむらい)ふざけちゃいけねえ。ただの鳥刺とは鳥刺が違う。こう見えても侍だ。しかも武田の家臣だわえ! 鳥刺に姿を変(やつ)しているのは尋ねる人があるからさ。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕は、本船のまえは仏蘭西(フランス)船にいたんですが、あれに、こういう大砲(やつ)の一、二門もあったらなア。なにしろね、船に魚雷を喰わせやがって、悠々と現われてくるんです。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
国に居た頃でも、私が外から帰って来る、母や妻(かない)は無愛想でしても、女児(やつ)が阿爺(とうさん)、阿爺と歓迎して、帽子(ぼうし)をしまったり、其(そ)れはよくするのです。私も全(まった)く女児を亡くしてがっかりしてしまいました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
長「直にったって大騒ぎなんで、家内(うち)に少し取込(とりこみ)があるんで、年頃の一人娘のあまっちょが今朝出たっきり帰(けえ)らねえので、内の女房(やつ)も心配(しんぺえ)してえるんでね」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ですが、閻魔樣(あちらさま)の前(まへ)では、氣(き)が怯(ひ)けたものですから。——實(じつ)は此寺(こゝ)の墓地(ぼち)に、洲崎(すさき)の女郎(やつ)が埋(う)まつてるんです。へ、へ、へ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「お早うじゃないぜ、八、先刻(さっき)鳴ったのは上野の巳刻(やつ)じゃないか」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その当時の大阪は摂津大掾(せっつだいじょう)がまだ越路(こしじ)の名で旭日(あさひ)の登るような勢いであり、そのほかに弥津(やつ)太夫、大隅(おおすみ)太夫、呂太夫の錚々(そうそう)たるがあり、女義には東猿(とうえん)、末虎(すえとら)、長広(ながひろ)、照玉(てるぎょく)と堂々と立者(たてもの)が揃(そろ)っていた。
豊竹呂昇 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
山國にしておけよ、俺の家の息(やつ)が、なんでも船乘りになつてゐるさうだ。
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
悄(やつ)れたかの女のまえに、庄吉の呼んできた医者が、すわっていた。
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)
又右衛門は、憂(やつ)れ顔でうなずき
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「いんや、不可(いけ)ない。六十弗で此の毀れた時計(やつ)を買って呉れるか、さもなければ——」
夜汽車 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「昼、未(やつ)、弥太堀……」
返すと見えたのは包装のボール箱だけ……又は用意して来た、ほかの下らない本を詰めたりしてモトの隙間(すきま)へ突込んで、入用な本(やつ)はチャント脇の下に挟みながら……チェッ。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「まあ、それは持っていねえ、おれはこっちの杯(やつ)で飲むから——時に武者修行」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いま、我(わ)が瀧太郎(たきたらう)さんは、目(め)まじろがず、一段(いちだん)と目玉(めだま)を大(おほ)きくして、然(しか)も糠(ぬか)にぶく/\と熟(う)れて甘(あま)い河豚(やつ)を食(く)ふから驚(おどろ)く。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
グーンと沈んで甲板をザアザアザアと洗われながら次の大山脈のドテッ腹へ潜(もぐ)り込む。何(なん)しろ船脚(ふなあし)がギッシリと重いのだから一度、大きな波(やつ)にたたかれると容易に浮き上らない。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おぬしの買った女はなんという湯女(やつ)だっけ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友吉の大好物だった虎鰒(とらふぐ)を、絶壁(がけ)の下から投上げてくれた漁師(やつ)があったからね。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どうも、折角のお招きに、醜態をお目にかけて、おゆるしください。舎弟の張飛は、竹を割ったような気性の漢(やつ)ですが、飲むと元気になり過ぎましてな。……はははは」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親方がのつそり汝(きさま)為(やつ)て見ろよと譲つて呉れゝば好いけれどものうとの馬鹿に虫の好い答へ、ハヽヽ憶ひ出しても、心配相に大真面目くさく云つた其面が可笑くて堪りませぬ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
だが、彼女はあまりに焦悴(やつ)れていた。男達は一眼見ると、逃げるようにさっさと行ってしまった。彼女の顔は、もはや歓楽にふさわしい顔ではなかった。体だってもそうだ。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
夫ぢやア爲(やつ)て下さるか如何(いかに)も吾儕(われ)がことを構(かま)へ爲(し)て見せようが此姿(すがた)では如何(どう)も斯(かう)も詮方(しかた)がねへ付ては身姿(みなり)を拵(こせへ)るだけ金をば五兩貸てくれ。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吾輩はツカツカとその金網に近づいてブルブル震えている犬(やつ)を抱き上げた。犬さえ見付かれや他に用は無い。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ウン、今頃は犯人(やつ)等、千里向うで昼寝してケツカルじゃろ。ハハン。うまくやりおった」
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
不斷(ふだん)は、あまり評判(ひやうばん)のよくない獸(やつ)で、肩車(かたぐるま)で二十疋(にじつぴき)、三十疋(さんじつぴき)、狼立(おほかみだち)に突立(つツた)つて、それが火柱(ひばしら)に成(な)るの、三聲(みこゑ)續(つゞ)けて、きち/\となくと火(ひ)に祟(たゝ)るの、道(みち)を切(き)ると惡(わる)いのと言(い)ふ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
傷(いた)ましきまで疲(やつ)れたれど其美(そのうつ)くしさは神々(かみ/\)しき樣(やう)に成(な)りぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
叔母様(さん)、この肺病という病(やつ)ばかりは恐ろしいもんですね、叔母様(さん)もいくらもご存じでしょう、妻(さい)の病気が夫に伝染して一家総だおれになるはよくある例(ためし)です
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
見るからに陥ち凹みし、頬はかうでもなかりしに、さりとてはお痿(やつ)れと。横顔ながら、身の痩せも、思ひ知らるる悲しさを。
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
しかし締(しまり)はよさそうゆえ、絵草紙屋の前に立っても、パックリ開(あ)くなどという気遣(きづか)いは有るまいが、とにかく顋が尖(とが)って頬骨が露(あらわ)れ、非道(ひど)く癯(やつ)れている故(せい)か顔の造作がとげとげしていて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
積重(つみかさ)ね其上へ稍(やつ)と這上(はひあが)り件(くだん)の紐(ひも)の兩端(りやうはし)を柱の上へ縛付(しばりつけ)首に卷つゝ南無阿彌陀佛の聲(こゑ)諸倶(もろとも)夜着の上より轉(まろ)び落れば其途端(はずみ)に首縊(くゝ)れ終にぞ息は絶(た)えたりける却(かへつ)て説(とく)お菊は田原町にて金の相談せしに金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
非常の時は非常手段でなくっちゃね。その代り素晴らしい代物を連れて来ましたぜ。昨日運転士からお知らせしたように、彼等の中には徒刑場から脱走した罪人(やつ)がいます。
僕(ぼく)は今日(けふ)まで女(をんな)を喜(よろこ)ばすべく半襟(はんえり)を買(か)はなかつたが、若(も)し彼(あ)の娘(むすめ)に此等(これら)の品(しな)を與(やつ)たら如何(どんな)に喜(よろ)こぶだらうと思(おも)ふと、僕(ぼく)もうれしくつて堪(たま)らなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
……まだ他にも二三艘、大きな船(やつ)を沈めているんだそうですが、そんなに大きな船でなくとも、チョット乗った木葉船(こっぱぶね)でも間違いなく沈めるってんで、迚(とて)も凄(すご)がられているんです。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
糞忌々(くそいまいま)しいからそれからグングン仕事に掛って二時過ぎになるとお茶飯(やつ)が出たが、俺は見向(みむき)も仕ないんだ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あなたの萎(やつ)れを気づかっていたつい最前の自分も忘れ、お座なり文句もそこそこに、立ちあがると逃げだしてしまいました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
一杯六スーのまっかな葡萄酒(やつ)がはいってる壜(びん)だよ。スュレーヌの壜だ。ほんとうによ、パリーの本物のスュレーヌだ。ああメティエンヌ爺さんが死んだって。かわいそうなことをした。
「いやそんなはずはございません。この上の高原で罠(わな)にかけ、罠を引っ外(ぱず)して逃げる虎(やつ)を、たしかに一本は狙いたがわず毒矢を射当てていたんですから」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが、ぼると言います。阿漕(あこぎ)な術(やつ)です。はめられたんです。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病気見舞を兼ねて久しぶりで尋ねると、思ったほどに衰(やつ)れてもいなかったので、半日を閑談して夜るの九時頃となった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
兎(と)に角(かく)、睡気(ねむけ)を醒(さ)ます効目(ききめ)のある話——それもなるたけ、あまり誰にも知られていないという話(やつ)を、此の場かぎりという条件で、喋(しゃべ)ることにしちゃ、どうだろうかね
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうです。」とチチコフは答えたが、言葉を柔らげるために、「なに、この世にいない農奴(やつ)をね」と言い足した。
もともと神秘だのと云ふ連中(やつ)は、例の八ツ当りも出来ぬ弱虫ぢやで
星とピエロ (新字旧仮名) / 中原中也(著)
丁度(ちょうど)幸い、この屋敷の間近に、道場を立てるにはもってこいの空地がある。早速そこに、脇田道場に、勝るとも劣らぬ道場(やつ)を、建てて遣わそう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「いまも電話をかけましたが、青竜王(やつ)は所在(しょざい)が不明です。その前は十日間も行方が分らなかった」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そいでおらの方でも、奴にゃあ一桝(ひとます)がとこ余計に麦を呉(く)れてやらあな、だって見上げた馬(やつ)だもの。議員の奴もどうして、感心な馬だ……。
急にスピードを掛けた馬力(やつ)が、イの一番に円棒(シャフト)へコタえたんだね。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
どくむぎ、あたますき、なでしこむぎ、はとまめ、やはずえんどう、たいま、いぬすぎな、そのほかいろんなものがはいってやがるんだ。またばかに石の多い麦(やつ)があるのは言うまでもねえ。