“富(と)” の例文
すなわち花は誠(まこと)に美麗(びれい)で、且(か)つ趣味に富(と)んだ生殖器であって、動物の醜(みにく)い生殖器とは雲泥(うんでい)の差があり、とても比(くら)べものにはならない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
しかし本來(ほんらい)耐震性(たいしんせい)に富(と)む木造建築(もくざうけんちく)に、特別(とくべつ)に周到(しうたう)精巧(せいかう)なる工作(こうさく)を施(ほどこ)したのであるから、自然(しぜん)耐震的能率(たいしんてきのうりつ)を増(ま)すのは當然(たうぜん)である。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
一體皆(きれ)の長い、パツチリした眼で、表情(へうじやう)にも富(と)むでゐた。雖然智識(ちしき)のある者と智識のない者とは眼で區別することが出來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
福なる諸〻の靈あり、かれらは天に來らざりしさき、いかなるムーザをも富(と)ますばかり世に名聲(きこえ)高かりき 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
前(まへ)にも述(の)べた通(とほ)り、深海底(しんかいてい)から拔(ぬ)け出(で)た火山(かざん)の産(さん)する鎔岩(ようがん)は流動性(りゆうどうせい)に富(と)んでゐるが、大陸(たいりく)又(また)はその近(ちか)くにある火山(かざん)から産(さん)するものは、流動性(りゆうどうせい)に乏(とも)しく
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一個の人格者としてのモーゼスも、又間然(かんぜん)する所がなかった。公平で、正直で、謙遜で、判断力に富んでいると同時に、又絶大の同情心にも富(と)んでいた。
町(まち)から遠(とお)く離(はな)れた田舎(いなか)のことであります。その村(むら)には、あまり富(と)んだものがありませんでした。村(むら)じゅうで、時計(とけい)が、たった二つぎりしかなかったのです。
時計のない村 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おゝ、限(かぎ)りない美(うつく)しさには富(と)みながら、其(その)美(うつく)しさは只(たゞ)一代限(だいかぎ)り、死(し)ねば種(たね)までも盡(つ)くるとは、貧乏(しがな)い/\運命(うんめい)!
日本(にっぽん)と申(もう)す国(くに)は古来(こらい)尚武(しょうぶ)の気性(きしょう)に富(と)んだお国柄(くにがら)である為(た)め、武芸(ぶげい)、偵察(ていさつ)、戦争(いくさ)の駈引等(かけひきとう)にすぐれた、つまり男性的(だんせいてき)の天狗(てんぐ)さんは殆(ほと)んど全部(ぜんぶ)この国(くに)に集(あつま)って了(しま)い
其頃(そのころ)大佐(たいさ)は年輩(としごろ)三十二三、威風(ゐふう)凛々(りん/\)たる快男子(くわいだんし)で、其(その)眼光(がんくわう)の烱々(けい/\)たると、其(その)音聲(おんせい)の朗々(ろう/\)たるとは、如何(いか)にも有爲(いうゐ)の氣象(きしやう)と果斷(くわだん)の性質(せいしつ)に富(と)んで居(を)るかを想(おも)はしめた。
(一三)區區(くく)の齊(せい)を以(もつ)て、(一四)海濱(かいひん)に在(あ)り、(一五)貨(くわ)を通(つう)じ財(ざい)を積(つ)み、國(くに)を富(と)まし兵(へい)を彊(つよ)うし、(一六)俗(ぞく)と好惡(かうを)を同(おな)じうす故(ゆゑ)に(一七)其稱(そのしよう)に曰(いは)く、(一八)
次(つ)ぎに草原(くさはら)の濕地(しつち)は『腐植土(ふしよくど)』といつて、植物(しよくぶつ)が枯(か)れて、根(ね)や枝(えだ)や葉(は)が腐(くさ)つた肥料(こやし)になつてゐるような土(つち)に富(と)み、水分(すいぶん)も多(おほ)いので、植物(しよくぶつ)の生育(せいいく)には大變(たいへん)都合(つごう)がよいため
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
其晩(そのばん)坂井(さかゐ)はそんな話(はなし)を約(やく)二時間(じかん)もして歸(かへ)つて行(い)つたが、相手(あひて)になつた宗助(そうすけ)も、茶(ちや)の間(ま)で聞(き)いてゐた御米(およね)も、大變(たいへん)談話(だんわ)の材料(ざいれう)に富(と)んだ人(ひと)だと思(おも)はぬ譯(わけ)に行(ゆ)かなかつた。後(あと)で
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
破壊以前(はかいいぜん)が人なみよりもあたたかい歓楽(かんらく)に富(と)んでおっただけ、破壊後(はかいご)の悲惨(ひさん)が深刻(しんこく)であった。
箸 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ミハイル、アウエリヤヌヰチは元(もと)は富(と)んでゐた大地主(おほぢぬし)、騎兵隊(きへいたい)に屬(ぞく)してゐた者(もの)、然(しか)るに漸々(だん/\)身代(しんだい)を耗(す)つて了(しま)つて、貧乏(びんばふ)し、老年(らうねん)に成(な)つてから、遂(つひ)に此(こ)の郵便局(いうびんきよく)に入(はひ)つたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
読者諸君(どくしゃしょくん)! この、機知に富(と)み、故郷を熱愛する青年医師はそもそもだれでありましょう。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
この有名なる富(と)める友人のお蔭で、その邸(やしき)に出入しては、自分の財布に相談してはいつになっても得られないような御馳走にありついたり、遇(たま)には独り身の鬱血(うっけつ)を払うために
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おのれ善をなして、おのれその報(むく)ひの来るを待つは直(なほ)きこころにもあらずかし。又悪業(あくごふ)慳貪(けんどん)の人の富(と)み昌(さか)ふるのみかは、寿(いのち)めでたくその終(をはり)をよくするは、一〇四我に異(こと)なることわりあり。
而(しこう)してその利益はすなわち木村軍艦奉行(ぐんかんぶぎょう)知遇(ちぐう)の賜(たまもの)にして、終(つい)に忘(わす)るべからざるところのものなり。芥舟先生は少小より文思(ぶんし)に富(と)み、また経世(けいせい)の識(しき)あり。常に筆硯(ひっけん)を友として老(おい)の到るを知らず。
児(こ)どもが親たちの家富(と)みたるも好(よ)き衣(きぬ)着たるはあらず、大抵(たいてい)跣足(はだし)なり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
マラッカの街上(がいじやう)にしてわれも見つ富(と)める女(をみな)の面(おも)の愛(は)しきを
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
貧(ひん)すれば、その間に罪悪(ざいあく)が生じて世が乱れるが、富(と)めば、余裕(よゆう)を生じて人間同士の礼節(れいせつ)も敦(あつ)くなり、風俗も良くなり、国民の幸福を招致(しょうち)することになる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
是(ここ)に於(おい)て韓非(かんぴ)、((韓王ノ))國(くに)を治(をさ)むるに、其(その)法制(はふせい)を修明(しうめい)し・(四七)勢(いきほひ)を執(と)つて以(もつ)て其(その)臣下(しんか)を御(ぎよ)し・國(くに)を富(と)まし兵(へい)を彊(つよ)うして・以(もつ)て人(ひと)を求(もと)め賢(けん)に任(にん)ずるを務(つと)めず
春枝夫人(はるえふじん)は世(よ)にすぐれて慈愛(じひ)に富(と)める人(ひと)、日出雄少年(ひでをせうねん)は彼等(かれら)の間(あひだ)に此上(こよ)なく愛(めで)重(おもん)せられて居(を)つたので、誰(たれ)とて袂別(わかれ)を惜(をし)まぬものはない、然(しか)し主人(しゆじん)の濱島(はまじま)は東洋(とうやう)の豪傑(がうけつ)風(ふう)で
北国(ほっこく)のさびしい村(むら)は、こうしていつしか名高(なだか)い薬(くすり)の産地(さんち)と知(し)れ、富(と)んだ町(まち)となりました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ミハイル、アウエリヤヌイチは元(もと)は富(と)んでいた大地主(おおじぬし)、騎兵隊(きへいたい)に属(ぞく)していた者(もの)、しかるに漸々(だんだん)身代(しんだい)を耗(す)ってしまって、貧乏(びんぼう)し、老年(ろうねん)に成(な)ってから、遂(つい)にこの郵便局(ゆうびんきょく)に入(はい)ったので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わが國(くに)も活火山(かつかざん)には可(か)なり富(と)んでゐるけれども、ジャワには及(およ)ぶべくもない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それには、日本の脚本が、あまりに突飛な筋(すぢ)に富(と)んでゐるので、楽(らく)に見物が出来ないと書(か)いてあつた。代助は其時(そのとき)、役者の立場(たちば)から考へて、何(なに)もそんな人(ひと)に見て貰ふ必要はあるまいと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
又(また)変化(へんか)にも富(と)んで居(い)るものでございました。
彼は大胆にして細心(さいしん)、経綸(けいりん)に富(と)むと
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だれか一人(ひとり)、若(わか)いものの中(なか)にいなければならなかったのは、ちょうど、人間(にんげん)の社会(しゃかい)ばかりでなく、他(た)の獣物(けもの)の集(あつ)まりの中(なか)でも、経験(けいけん)に富(と)んだ、年寄(としよ)りがいて、野原(のはら)から、野原(のはら)へ、山(やま)から
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどおじいさんは、べつに富(と)んではいませんでした。食(た)べることに困(こま)らなかったというまでであります。そうして、乞食(こじき)や、旅人(たびびと)の困(こま)るものには、なんでも余(あま)ったものは分(わ)けてやりました。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三人(にん)の娘(むすめ)らは、いずれもあまり富(と)んでいる家(うち)の子供(こども)でなかったのです。
夕焼け物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、北(きた)の国(くに)にばかりあって、南(みなみ)の方(ほう)の国(くに)にはなかったのであります。南(みなみ)の方(ほう)の暖(あたた)かな国(くに)は富(と)んでいましたから、この珍(めずら)しい宝石(ほうせき)を持(も)って売(う)りにゆけば、たいそう金(かね)がもうかったのでありました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
砂漠(さばく)の中(なか)の赤(あか)い町(まち)は、不思議(ふしぎ)に富(と)んでいました。それは、人間(にんげん)の生(い)き血(ち)を吸(す)うからだといわれていました。また、その町(まち)は、魔女(まじょ)の住(す)む町(まち)だといわれていました。美(うつく)しい女(おんな)が、たくさんいるからです。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)