“貸(か)” の例文
「わたしは新羅(しらぎ)の国(くに)からはるばる渡(わた)って来(き)た天日矛命(あまのひぼこのみこと)というものです。どうぞこの国(くに)の中で、わたしの住(す)む土地(とち)を貸(か)して頂(いただ)きたい。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
私(わたくし)の顔を見ると、「ちょっと手をお貸(か)し」といったまま、自分は席に着いた。私は兄に代って、油紙(あぶらがみ)を父の尻(しり)の下に宛(あ)てがったりした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いいよ、僕(ぼく)が、負(ま)ければ、もう貸(か)してくれといわない。そして、今度(こんど)きたときに借(か)りたのは返(かえ)すからね。」と、少年(しょうねん)は、答(こた)えたのです。
友だちどうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
序(ついで)だと思(おも)つて見(み)て來(き)たが、此處(こゝ)からぢやあつちの方(はう)のそれ知(し)つてべえ仕切(しき)つて貸(か)すつちんだから、俺(お)ら其處(そこ)さ入(え)れてえと思(おも)つて
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「ルミのほうが身が軽い。あの子に長ぐつを貸(か)しておやり。あの子なら、行って水を取って来られるだろう」とかれは言った。
マアセルは今日夕方の番(シフト)だったので、いま「モナコの岸」から、近処に貸(か)りてる自分の部屋へ帰って来たところである。
しまつた、借(か)りものだ、と冷(ひや)りとすると、ざつ、ざぶり、ばしやツ。弱(よわ)つた。が、落着(おちつ)いた。緑蝶夫人(ろくてふふじん)の貸(か)し振(ぶり)を思(おも)へ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
額(がく)は取りのけてもらって、自分の好きな人の写真をかけよう。床の掛け物もこれはよしてもらって、大木さんから子規(しき)先生の物を貸(か)りてきてかけよう。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
自分(じぶん)の收入以上(しうにふいじやう)の暮(くら)しをして、已(や)むを得(え)ぬから借金(しやくきん)を續(つゞ)けて居(ゐ)ると云(い)ふ事態(じたい)であるからして、左樣(さやう)な状態(じやうたい)の國(くに)には金(かね)は貸(か)さぬと云(い)ふのが英米(えいべい)の立前(たてまへ)である。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
「智恵(ちえ)を貸(か)せとな。はッはッは。これは面白(おもしろ)い。智恵(ちえ)はわたしよりお前(まえ)の方(ほう)が多分(たぶん)に持合(もちあわ)せているはずだがの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
小僧(こぞう)や。小「へえ。旦「お隣(となり)へ往(いつ)てノ蚊帳(かや)の釣手(つりて)を打つんだから鉄槌(かなづち)を貸(か)して下さいと然(さ)う云(い)つて借(か)りて来(こ)い。小「へえ……往(いつ)て参(まゐ)りました。旦「貸(か)して呉(く)れたか。 ...
吝嗇家 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「三郎(さぶろう)、この時間うな木ペン使(つか)ってがら、おれさ貸(か)せな。」キッコがとなりの三郎に云いました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
鶫(つぐみ)といふ鳥(とり)や鶸(ひわ)といふ鳥(とり)は、何(なん)百羽(ぱ)飛(と)んで參(まゐ)りましても、みんな網(あみ)や黐(もち)に掛(かゝ)つてしまひますが、私共(わたしども)にかぎつて軒先(のきさき)を貸(か)して下(くだ)すつたり巣(す)をかけさせたりして下(くだ)さいます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
自由には取扱(とりあつか)ひ難く殊に只今(たゞいま)手元(てもと)には一兩の金も是無しと云と雖も三五郎は遙々(はる/″\)是迄(これまで)來りしゆゑ何卒貸(か)し呉(くれ)よと申に段右衞門我等(われら)今(いま)は別(べつ)に金儲(かねまう)けも無れば是非もなしと斷(ことわ)るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また君(きみ)たちの作(つく)つた歌(うた)もぜひおくつて見(み)せてほしい。も一つ。この本(ほん)は自分(じぶん)ひとりでは讀(よ)まないで、なるべくお友(とも)だちみんなに見(み)せ、讀(よ)ませ、貸(か)してやるやうにしてもらひたい。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「こりゃ大(たい)したものだ。目貫の獅子(しし)は本金(ほんきん)で、鍔(つば)は後藤祐乗(ごとうゆうじょう)の作らしい。ウーム……どうだい竹童さん、ものはひとつそうだんだが、その刀をおれに四、五日貸(か)してくれないか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
而(さう)して彼(かれ)は昔(むかし)の生活(せいくわつ)が健全(けんぜん)で、愉快(ゆくわい)で、興味(きようみ)の有(あ)つたこと、其頃(そのころ)の上流社會(じやうりうしやくわい)には知識(ちしき)が有(あ)つたとか、又(また)其社會(そのしやくわい)では廉直(れんちよく)、友誼(いうぎ)を非常(ひじやう)に重(おも)んじてゐたとか、證文(しようもん)なしで錢(ぜに)を貸(か)したとか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
齒(はツ)かけの、嫌(い)やな奴(やつ)め、這入(はい)つて來(き)たら散々(さん/″\)と窘(いぢ)めてやる物(もの)を、歸(かへ)つたは惜(お)しい事(こと)をした、どれ下駄(げた)をお貸(か)し、一寸(ちよつと)見(み)てやる、とて正太(しようた)に代(かわ)つて顏(かほ)を出(だ)せば軒(のき)の雨(あま)だれ前髮(まへがみ)に落(お)ちて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私の貸(か)した本を腕(うで)一杯に抱えて、はじけそうな、銀杏返(いちょうがえ)しを見せて振り向きもしないで、町風(まちふう)に内輪(うちわ)ながら早足(はやあし)に歩いて行く後姿なんかを思いながらフイと番地を聞いて置かなかった
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今度は内容証明ではなかつたけれども、中をあけてみると、やはりあなたに貸(か)した百円を返して下さいと書いてあつた。のみならず、わたしも病身ではあり女のことだからと書いてあつた。
偽者二題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
衣(きぬ)貸(か)さむ踊れと言ひし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「この国(くに)はわたしの治(おさ)めている土地(とち)で、あなたに貸(か)して上(あ)げる場所(ばしょ)といって、ほかにありません。では海(うみ)の中を貸(か)しましょう。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おばあさん、すみませんが、そのざるをお貸(か)しください。」と、いって、自分(じぶん)の土産(みやげ)を入(い)れてきたざるを借(か)りて帰(かえ)りました。
海のおばあさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
然(しか)し他(た)に方法(はうはふ)もないので彼(かれ)は地主(ぢぬし)へ哀訴(あいそ)して小作米(こさくまい)の半分(はんぶん)を次(つぎ)の秋(あき)まで貸(か)して貰(もら)つた。地主(ぢぬし)は東隣(ひがしどなり)の舊主人(きうしゆじん)であつたのでそれも承諾(しようだく)された。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「わたしは目が見えなくなったかしらん」と親方は低(ひく)い声で言って、両手を目に当てた。「森についてまっすぐにおいで。手を貸(か)しておくれ」
……これはそのまゝ、いま頂戴(ちやうだい)に成(な)つて居(ゐ)る。……ふろ敷包(しきづつみ)を御持參(ごぢさん)で、「机(つくゑ)を貸(か)しな。」とお見(み)えに成(な)つた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
貸(か)して呉れと切り込(こ)んで頼(たの)んだ時は、あゝ手痛(てきびし)く跳ね付けて置(お)きながら、いざ断念して帰る段になると、却つて断わつた方から、掛念(けねん)がつて駄目(だめ)を押(お)して出(で)た。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それ程(ほど)までにいうんなら、仕方(しかた)がない、預(あず)かろう。その換(かわ)り、太夫(たゆう)が借(か)りに来(き)たにしても、もう二度(ど)と再(ふたた)び貸(か)すことじゃないから、それだけは確(しか)と念(ねん)を押(お)しとくぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
(喰(た)べたくないよおっかさん。)童子が申されました。(おいしいのだよ。どれ、箸(はし)をお貸(か)し。)
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
六畳(でふ)の座敷(ざしき)を借切(かりき)つてゐると、火鉢(ひばち)はここへ置(お)くよ、烟草盆(たばこぼん)も置(お)くよ、土瓶(どびん)も貸(か)してやる、水指(みづさし)もこゝに有(あ)るは、手水場(てうづば)へは此処(こゝ)から往(い)くんだ、こゝへ布巾(ふきん)も掛(か)けて置(お)くよ
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして彼(かれ)は昔(むかし)の生活(せいかつ)が健全(けんぜん)で、愉快(ゆかい)で、興味(きょうみ)のあったこと、その頃(ころ)の上流社会(じょうりゅうしゃかい)には知識(ちしき)があったとか、またその社会(しゃかい)では廉直(れんちょく)、友誼(ゆうぎ)を非常(ひじょう)に重(おも)んじていたとか、証文(しょうもん)なしで銭(ぜに)を貸(か)したとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おゝ夫(それ)よりは彼(か)の人(ひと)の事(こと)彼(あ)の人(ひと)の事(こと)、藤本(ふぢもと)のならば宜(よ)き智惠(ちゑ)も貸(か)してくれんと、十八日(にち)の暮(くれ)れちかく、物(もの)いへば眼口(めくち)にうるさき蚊(か)を拂(はら)ひて竹村(たけむら)しげき龍華寺(りうげじ)の庭先(にはさき)から信如(しんによ)が部屋(へや)へのそりのそりと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
整理(せいり)の出來(でき)て居(ゐ)ない國(くに)には金(かね)を貸(か)さぬのは已(や)むを得(え)ないことである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
と、異口同音(いくどうおん)にさけんだが、いかにかれの危難(きなん)を知っても、それへ力を貸(か)してやることもならず、鷲(わし)はまた、バッと山かげに突きあたって飛翼(ひよく)をかえし、広い琵琶湖(びわこ)の上を高くひくく舞いはじめた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで六部(ろくぶ)は、これこれこういうわけだから、どうか人助(ひとだす)けだと思(おも)って、二三日(にち)この犬(いぬ)を貸(か)してもらえまいかとたのみますと、りょうしは
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はたして、隣(となり)の先生(せんせい)がやってきました。そして、大事(だいじ)に扱(あつか)うから、ちょっとあほう鳥(どり)を学校(がっこう)へ貸(か)してくれないかと頼(たの)みました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その宿屋(やどや)の亭主(ていしゅ)は、あいつには一週間の宿料(しゅくりょう)の貸(か)しがあるから、あの悪党(あくとう)、どうかしてつかまえてやりたいと言っていた。
それだつて、小原女(をはらめ)が賣(う)りに來(く)るのを待(ま)つて居(ゐ)られもしますまい。可(よ)うがす、肩(かた)をお貸(か)し申(まを)しませう。これへ乘(の)つて、廂(ひさし)へかゝつて、大屋根(おほやね)へお上(のぼ)んなさい。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「だから、本郷からわざ/\遣(や)つて来(き)たんだ。なに、金(かね)は借(か)りなくても好(い)い。——貸(か)せば猶好(い)いが——夫(それ)より少し分(わか)らない所があるから、相談しやうと思(おも)つて」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いい智恵(ちえ)をお貸(か)し申(もう)しやすから、小僧(こぞう)さんのしくじりなんざさっぱり水(みず)に流(なが)しておやんなさいまし
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この戸棚(とだな)に夜具(やぐ)蒲団(ふとん)もあるよと何(なに)から何(なに)まで残(のこ)らず貸(か)して下(すだ)すつてよ、往(い)つた当座(たうざ)だから療治(れうぢ)はないや、退屈(たいくつ)だらうと思つて岩田屋(いはたや)の御夫婦(ごふうふ)が来(き)て、四方山(よもやま)の話をして居(を)ると
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ここの水少し干(ほ)したほういいな、鉄梃を貸(か)しませんか。」と云(い)うものもありました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
米(こめ)大變(たいへん)だから俺(お)れが風呂敷(ふろしき)ぢやちつと小(ち)つちえんだが大(え)かえの有(あ)れば貸(か)してくんねえか
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『然(さ)うだ名譽(めいよ)が大切(たいせつ)だ。全體(ぜんたい)這麼町(こんなまち)に足(あし)を踏込(ふみこ)んだのが間違(まちが)ひだつた。』と、彼(かれ)は更(さら)にドクトルに向(むか)つて云(い)ふた。『實(じつ)は私(わたし)は負(ま)けたのです。で、奈何(どう)でせう、錢(ぜに)を五百圓(ゑん)貸(か)しては下(くだ)さらんか?』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あいつにこまごまと積もって、十両ばかりの貸(か)しがあるンだが」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんだずるい。自分(じぶん)ばかりさして、おれにも貸(か)してくんなせい。」といって、他(た)の一人(ひとり)の娘(むすめ)は、その後(あと)を追(お)いかけました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
秋(あき)になって刈(か)り入(い)れをするころになると、人に貸(か)した方(ほう)の田(た)はあたり前(まえ)の出来(でき)でしたが、自分(じぶん)の分(ぶん)に作(つく)った方(ほう)の田(た)は大(たい)そうよくみのりました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小判(こばん)處(どころ)か、一分(いちぶ)一(ひと)ツ貸(か)してくれる相談(さうだん)がない處(ところ)から、むツとふくれた頬邊(ほゝべた)が、くしや/\と潰(つぶ)れると、納戸(なんど)へ入(はひ)つてドタリと成(な)る。所謂(いはゆる)フテ寢(ね)と云(い)ふのである。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「おまえにはきのう一スー貸(か)してある。それをきょう持って来るやくそくだったが、いくら持って来たな」
三四郎はあまり嘘(うそ)を吐(つ)いた事のない男だから、請求の理由に至つて困却した。仕方がないからたゞ友達が金(かね)を失(な)くして弱つてゐたから、つい気の毒になつて貸(か)してやつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)