“子(こ)” の例文
「そら、どらねこがきた。」といって、顔(かお)を出(だ)すと水(みず)をかけたり、いたずらっ子(こ)は、そばを通(とお)ると、小石(こいし)を拾(ひろ)って投(な)げたりしました。
ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
北斎(ほくさい)の描いたという珍しい美人画がある。その襟(えり)がたぶん緋鹿(ひが)の子(こ)か何かであろう、恐ろしくぎざぎざした縮れた線で描かれている。
浮世絵の曲線 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
間(ま)もなく、女(おんな)の子(こ)のマリちゃんが、今(いま)ちょうど、台所(だいどころ)で、炉(ろ)の前(まえ)に立(た)って、沸立(にえた)った鍋(なべ)をかき廻(まわ)しているお母(かあ)さんのそばへ来(き)ました。
じいさんがまだブツブツ言っているのを、子(こ)もりうたのように聞きながら、小林君はいつのまにか、グッスリ寝いってしまいました。
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あゝ孤獨(こどく)と落魄(らくばく)!之(これ)が僕の運命(うんめい)だ。僕見たいな者(もの)が家庭を組織(そしき)したら何うだらう。妻(つま)には嘆(なげ)きを懸(か)け子(こ)には悲しみを與(あた)へるばかりだ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
などと、いつも悪体(あくたい)をつくのです。母親(ははおや)さえ、しまいには、ああこんな子(こ)なら生(うま)れない方(ほう)がよっぽど幸(しあわせ)だったと思(おも)う様(よう)になりました。
「とても来手(きて)はねえな。すたり者のねえツていふ女(あま)つ子(こ)だ。誰が物好きにあんな寺に行つてさびしい思ひをするものがあるもんか。」
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
葉は厚く光っており、夏の末に咲く花は五味子(ごみし)のようで、熟した実は赤黒くて、形は蒸菓子(むしがし)の鹿(か)の子(こ)そっくりです。飯事(ままごと)に遣います。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
覺(おぼ)えて居(ゐ)ます。父樣(おとつさん)が私(わたくし)の頭(あたま)を撫(な)でゝ、お前(まへ)は日本人(につぽんじん)の子(こ)といふ事(こと)をばどんな時(とき)にも忘(わす)れてはなりませんよ、と仰(おつ)しやつた事(こと)でせう。
『其(そ)の先生(せんせい)が私(わたし)どもに教(をし)へたから、其(そ)の先生(せんせい)を龜(かめ)ノ子(こ)先生(せんせい)ッて呼(よ)んだのさ』と海龜(うみがめ)は腹立(はらだゝ)しげに云(い)つて、『眞個(ほんとう)にお前(まへ)は鈍物(どん)だね!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
又賞(め)で喜(よろこ)ばるゝと雖(いへ)ども親(おや)の因果(いんぐわ)が子(こ)に報(むく)ふ片輪(かたわ)娘(むすめ)の見世物(みせもの)の如く賞(め)で喜(よろこ)ばるゝの謂(いひ)にあらねば、決して/\心配(しんぱい)すべきにあらす。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
ところで、竹(たけ)の中(なか)から出(で)た子(こ)は、育(そだ)て方(かた)がよかつたと見(み)えて、ずん/\大(おほ)きくなつて、三月(みつき)ばかりたつうちに一人前(いちにんまへ)の人(ひと)になりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
中世武士の従属者に「家(いえ)の子(こ)」「郎党」などというものがある。これも畢竟は同義で、その家に属する人という義であると解する。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
夫(そ)れを種々(さま/″\)に思(おも)ふて見(み)ると父(とゝ)さんだとて私(わたし)だとて孫(まご)なり子(こ)なりの顏(かほ)の見(み)たいは當然(あたりまへ)なれど、餘(あんま)りうるさく出入(でい)りをしてはと控(ひか)へられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人混みを掻き分けて入ると、龜澤町のとある路地に、紅い鹿(か)の子(こ)絞(しぼり)の扱帶(しごき)で首を絞められた若い男が虚空(こくう)を掴んで死んで居るのでした。
あるところに手(て)くせ の惡(わる)い夫婦(ふうふ)がありました。それでも子(こ)どもがないので、一羽(は)の鸚鵡(あふむ)を子(こ)どものやうに可愛(かあい)がつてをりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
諭吉(ゆきち)は、そのお父(とう)さんのすえっ子(こ)として大阪(おおさか)で生(う)まれました。いちばん上(うえ)が兄(にい)さんの三之助(さんのすけ)で、その下(した)に三人(にん)のねえさんがありました。
それは丁度(ちょうど)、幼(おさな)い時(とき)から別(わか)れ別(わか)れになっていた母(はは)と子(こ)が、不図(ふと)どこかでめぐり合(あ)った場合(ばあい)に似通(にかよ)ったところがあるかも知(し)れませぬ。
そしてまったくその振(ふ)り子(こ)の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律(せんりつ)が糸のように流(なが)れて来るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ことに子(こ)どもらしい氣持(きも)ちを歌(うた)に自由(じゆう)に詠(よ)みこんだ人(ひと)で、そんなのになると、つい/\よいわるいを忘(わす)れて、同感(どうかん)せずにゐられません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
窓硝子(ガラス)の紫の鹿(か)の子(こ)を掛けた私の結い綿の頭がぐらぐらしていて、まるでお女郎みたいな姿だった。私はフッと噴き出してしまう。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「厭(いや)だよ。御父(おと)つちやんべい。大(おほ)きい御馬(おむま)買(か)つて呉(く)れなくつちや、彼方(あつち)へ行(い)かないよ」と答(こた)へた。聲(こゑ)は小(ちひ)さい男(をとこ)の子(こ)の聲(こゑ)であつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まるでりすのようなはやさでかけのぼっていったのは、竹(たけ)ノ子(こ)笠(がさ)に道中合羽(どうちゅうがっぱ)をきて旅商人(たびあきんど)にばけた丹羽昌仙の密使、早足(はやあし)の燕作(えんさく)だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「およそ人心(じんしん)の裏(うち)絶(た)えて無(な)きのこと、夢寐(むび)に形(あらわ)れず、昔人(せきじん)謂(い)う、男(おとこ)、子(こ)を生(う)むを夢(ゆめ)みず、女(おんな)、妻(さい)を娶(めと)るを夢(ゆめ)みず、この言(げん)良(まこと)に然(しか)り」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また秋(あき)になつて、まち子(こ)夫婦(ふうふ)は去年(きよねん)とおなじやうに子供(こども)の寢(ね)てる時(とき)の食後(しよくご)などは、しみ/″\と故郷(こきやう)の追憶(つひおく)にふけるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
一休(いっきゅう)さんは、応永元年(おうえいがんねん)一月(がつ)一日(ついたち)、将軍義満(しょうぐんよしみつ)が、その子(こ)義持(よしもち)に職(しょく)をゆずった年(とし)、南朝(なんちょう)の後小松天皇(ごこまつてんのう)を父(ちち)とし、伊予局(いよのつぼね)を母(はは)として生(うま)れました。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
いのきちは、山で生(う)まれた。湖(みずうみ)の上を流(なが)れるきりをおっぱいとしてのみ、谷をわたるカッコウの声を、子(こ)もり歌(うた)にきいて、大きくなった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
それはおぢさんが貧乏(びんぼふ)なために、金持(かねもち)の子(こ)のやうに大切にしてやられなかつたからだ。だがおぢさんにはまだ二人(ふたり)の子供(こども)がある。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ほんとにまあちやんの大(おほ)きくおなんなさいましたこと、今更(いまさら)らしく思(おも)つてみれば、あなたもK子(こ)さんも立派(りつぱ)な母親なんですわね。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
グレ さうよなァ、頸根(くびね)ッ子(こ)は、成(な)ろうなら、頸輪(コラー)(首枷(くびかせ))から引(ひ)ッこ拔(ぬ)いてゐるがよいてや。(罪人にはならぬがよいてや)。
其後(そのご)雲飛(うんぴ)は壮健(さうけん)にして八十九歳に達(たつ)した。我が死期(しき)來(きた)れりと自分で葬儀(さうぎ)の仕度(したく)などを整(とゝの)へ又(ま)た子(こ)に遺言(ゆゐごん)して石を棺(くわん)に收(おさ)むることを命(めい)じた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此(こ)の時(とき)は勘次(かんじ)もお品(しな)も腹(はら)の子(こ)を大切(たいせつ)にした。女(をんな)の子(こ)が十三といふともう役(やく)に立(た)つので、與吉(よきち)を育(そだ)てながら夫婦(ふうふ)は十分(ぶん)に働(はたら)くことが出來(でき)た。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蜂(はち)は汚(きたな)いものでは有(あ)りません。もしお前達(まへたち)が木曾(きそ)でいふ『蜂(はち)の子(こ)』を食(た)べ慣(な)れて、あたゝかい御飯(ごはん)の上(うへ)にのせて食(た)べる時(とき)の味(あぢ)を覺(おぼ)えたら
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「船に乗ってるとこういうものは、とても食べられないね」などといって、彼は「鹿(か)の子(こ)」の小豆(あずき)を歯でかみとったりしていた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
今でも新穀の食物をもって、神を祭り申す習わしだけは跡づけられるが、大体に式の中心は十月の亥(い)の子(こ)の日に引き上げられた形である。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私(わたし)がI子(こ)との事件(じけん)でM、H氏(し)に攻撃(こうげき)されたことを、私(わたし)が悲観(ひかん)してゐるやうなことを、私(わたし)は私(わたし)の最近(さいきん)の作品(さくひん)で書(か)いたりしたので
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
また天皇がその皇后に仰せられるには、「すべて子(こ)の名は母が附けるものであるが、この御子の名前を何としたらよかろうか」
名人(めいじん)とか上手(じょうず)とか評判(ひょうばん)されているだけに、坊主(ぼうず)と呼(よ)ぶ十七八の弟子(でし)の外(ほか)は、猫(ねこ)の子(こ)一匹(ぴき)もいない、たった二人(ふたり)の暮(くら)しであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
瑠璃草(るりさう)、紫羅欄花(あらせいとう)、罌粟(けし)の花、どんなに嫖緻(きりやう)の好(い)い子(こ)よりも、おまへたちの方(はう)が、わたしは好(すき)だ。滅(ほろ)んだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
床几(しやうぎ)の下(した)に俵(たはら)を敷(し)けるに、犬(いぬ)の子(こ)一匹(いつぴき)、其日(そのひ)の朝(あさ)より目(め)の見(み)ゆるものの由(よし)、漸(やつ)と食(しよく)づきましたとて、老年(としより)の餘念(よねん)もなげなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
家(うち)のアニキと来ては、全くそう言われても仕方がない。彼は本の講義をした時、あの口からじかに「子(こ)を易(か)へて而(しか)して食(くら)ふ」
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
太い女だ、ひどい奴(やつ)があるもんだ、どうかしてもう一度江戸(えど)の土(つち)を踏(ふ)み、女房(にようばう)子(こ)に会(あ)つて死にたいものだ、お祖師様(そしさま)の罰(ばち)でも当(あた)つたのかしら。
子大廟(たいびょう)に入りて、事毎に問う。或ひと曰く、孰(たれ)か鄹人(すうひと)の子(こ)礼を知ると謂うか。大廟に入りて事毎に問うと。子之を聞きて曰く、是れ礼なりと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
端(は)ては半燒酎(なほし)を村(むら)の子(こ)に頼(たの)んで買(か)ひに遣(や)つて、それを飮(の)みながら大氣焔(だいきえん)を吐(は)く。留守居(るすゐ)の女中(ぢよちう)は烟(けむ)に卷(まか)れながら、茶(ちや)を入(い)れて出(だ)す。菓子(くわし)を出(だ)す。
あたしは鹿(か)の子(こ)絞(しぼ)りの紐(ひも)を首の後(うしろ)でチョキンと結んで、緋金巾(ひかなきん)の腹がけ(金巾は珍らしかったものと見える)、祖母(おばあ)さんのお古(ふる)の、絽(ろ)の小紋の
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
やつと隧道(トンネル)を出(で)たと思(おも)ふ——その時(とき)その蕭索(せうさく)とした踏切(ふみき)りの柵(さく)の向(むか)うに、私(わたくし)は頬(ほほ)の赤(あか)い三人(にん)の男(をとこ)の子(こ)が、目白押(めじろお)しに竝(なら)んで立(た)つてゐるのを見(み)た。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『マロオニイ、セニョレ。』(栗めせ、君)と呼ぶ声も勇ましき、後につきて入りしは、十二、三と見ゆる女(おみな)の子(こ)なりき。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
無数の小さな流れが重なり、編みあわされ、半ばは流れの法則にしたがい、半ばは植物の法則にしたがった一種の間(あい)の子(こ)の産物の状態を呈する。
それに今は間(あひ)の子(こ)ですから、思ふやうな役も付きませんが行々(ゆく/\)は好くなられて、坂東三津五郎を嗣ぐやうになりませう。
七代目坂東三津五郎 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)
然(しか)るに醫學博士(いがくはかせ)にして、外科(げくわ)專門家(せんもんか)なる彼(かれ)が父(ちゝ)は、斷乎(だんこ)として彼(かれ)が志望(しばう)を拒(こば)み、若(も)し彼(かれ)にして司祭(しさい)となつた曉(あかつき)は、我(わ)が子(こ)とは認(みと)めぬと迄(まで)云張(いひは)つた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)