“和(わ)” の例文
たまらなくなって、格二郎は木馬の上で両手を拡(ひろ)げると、万歳(ばんざい)を連呼した。ラッパ抜きの変妙な楽隊が、それに和(わ)して鳴り響いた。
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで『立派(りつぱ)なユーモリスト』なる澁(しぶ)六先生(せんせい)之(これ)に和(わ)して、『世界中(せかいぢう)のひつくりかへる旦(あした)かな』とやつたんだ。どうだ分(わか)つたか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
元来(がんらい)日本の原産ではなけれども、これを西洋リンゴのアップルと区別せんがために和(わ)リンゴといわれている。すなわち日本リンゴの意である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
きゃッきゃッきゃッきゃッ。あはははは。お馬丁(べっとう)は小腰をゆするが、蘆毛(あしげ)よ。(振向く)お厩(うまや)が近うなって、和(わ)どのの足はいよいよ健かに軽いなあ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その物凄い咆哮(ほうこう)に和(わ)するかのように、流れるような雨脚とともに、雷鳴は次第次第に天地の間に勢を募らせていった。
雷 (新字新仮名) / 海野十三(著)
岸田吟香、松浦武四郎、栗田万次郎、富岡鉄斎、林和(わ)一、渡辺洪基(こうき)、そんな連中が、格太郎の塾の学友だった。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東京神田の駿河台に大きな病院を持つてゐる広川和(わ)一氏といふ医学博士がある。芸者の噂でもすると、顔を真蒼(まつさを)にして怒り出すといふ、名代の堅蔵(かたざう)である。
一例を以て言ひますると、國語の「すう」と云ふことは之を「すゑ」と云ふときには和(わ)行の「ゑ」を書く。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「——和(わ)あちゃんになにかお土産(みや)を持ってね、幸坊はもう和あちゃんのことを忘れたでちょ、忘れちゃだめよ、和あちゃんは幸坊のたった一人の乳(ち)兄弟なのよ」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
神代紀に雀を碓女(うすめ)とし、崇神朝に定めし貢(みつぎ)に『男の弓端(ゆはず)の調、女の手末(たなすえ)の調』とあり、万葉集に『稲つけばかゝる吾が手を今宵もか、殿の和(わ)く子がとりてなげかむ』
蓋(けだ)し勝氏(かつし)輩(はい)の所見(しょけん)は内乱の戦争を以て無上の災害(さいがい)無益(むえき)の労費(ろうひ)と認め、味方に勝算(しょうさん)なき限りは速(すみやか)に和(わ)して速に事(こと)を収(おさむ)るに若(し)かずとの数理を信じたるものより外ならず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
私語(ささや)くごとき波音、入江の南の端より白き線(すじ)立(た)て、走りきたり、これに和(わ)したり。潮は満ちそめぬ。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
薩人黒田・大山諸氏長に至り、長人木戸・品川諸氏薩に往(ゆ)き、而て後和(わ)成り、維新(いしん)の鴻業(こうげふ)を致(いた)せり。
大體(だい/\)に於(おい)てその大部分(だいぶぶん)は太古(たいこ)より傳來(でんらい)せる日本固有(にほんこいう)の言語(げんご)及(およ)び漢語(かんご)をそのまゝ取(と)り入(い)れたもの、またはこれを日本化(にほんくわ)したもので、一部(ぶ)は西洋各國(せいやうかくこく)例(たと)へば英(えい)、佛(ふつ)、和(わ)、獨(どく)、西(せい)
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
最も安全に見える彼等の姿勢は、この波とこの汗の辛うじて齎(もた)らす努力の結果である。静かなのは相剋(あいこく)する血と骨の、わずかに平均を得た象徴である。これを互殺(ごさつ)の和(わ)という。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其後(そののち)、田常(でんじやう)が簡公(かんこう)を殺(ころ)すに及(およ)んで、盡(ことごと)く高子(かうし)・國子(こくし)の族(ぞく)を滅(ほろぼ)す。常(じやう)の曾孫(そうそん)和(わ)に至(いた)りて(三三)自立(じりふ)し、因(いん)、齊(せい)の威王(ゐわう)と爲(な)る。兵(へい)を用(もち)ひ威(ゐ)を行(おこな)ふ、大(おほい)に穰苴(じやうしよ)の法(はふ)に(三四)放(なら)へり。
と、高(たか)き調(しらべ)は荒鷲(あらわし)の、風(かぜ)を搏(たゝ)いて飛(と)ぶごとく、低(ひく)き調(しらべ)は溪水(たにみづ)の、岩(いは)に堰(せ)かれて泣(な)く如(ごと)く、檣頭(しやうとう)を走(はし)る印度洋(インドやう)の風(かぜ)、舷(げん)に碎(くだ)くる波(なみ)の音(おと)に和(わ)して、本艦々上(ほんかんかんじやう)、暫時(しばし)は鳴(なり)も止(や)まなかつた。
一方(いつぽう)では下敷(したじき)の下(した)から助(たす)けを乞(こ)ふてわめき、他方(たほう)では消防(しようぼう)の急(きゆう)を告(つ)ぐるさけび、これに和(わ)して絶(た)え間(ま)なき餘震(よしん)の鳴動(めいどう)と大地(だいち)の動搖(どうよう)とは、幸(さいはひ)に身(み)を以(もつ)て免(のが)れたものには手(て)の下(くだ)しようもなかつたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「寛懐(かんかい)俗情に忤(もと)らざるは和(わ)なり、立脚(りっきゃく)俗情に墜(お)ちざるは介(かい)なり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
さてもさても和(わ)ごりょは、誰人(だれびと)の子なれば、定家(ていか)かつらを——
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
第十三条 天皇ハ戦(たたかい)ヲ宣(せん)シ和(わ)ヲ講(こう)シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
と牡鶏(おんどり)が和(わ)した。(大正十四年五月〜十二月、婦人画報)
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と唱(とな)え出した。琴が鳴る。篳篥(ひちりき)が叫ぶ。琵琶が和(わ)する。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
不レ聞綿蛮和 聞かず 綿蛮(めんばん)の和(わ)するを
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
朝鮮人達も手を打って和(わ)した。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
また別のひとりが和(わ)した。
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
一人(にん)榎(えのき)の下(もと)に立(た)ちて、「お月樣(つきさま)幾(いく)つ」と叫(さけ)ぶ時(とき)は、幾多(いくた)の(應(おう))等(ら)同音(どうおん)に「お十三(じふさん)七(なゝ)つ」と和(わ)して、飛禽(ひきん)の翅(つばさ)か、走獸(そうじう)の脚(あし)か、一躍(いちやく)疾走(しつそう)して忽(たちま)ち見(み)えず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
幾度か川中島に両軍から出張って雌雄を決しようとしたり、また幾度か和睦(わぼく)を議しては和(わ)せずに立ちわかれて、宿命的に、越後と睨(にら)み合っている仲なのである。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アップルを学名でいえば Malus pumila var. domestica であって、前の和(わ)リンゴは Malus asiatica である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
和(わ)三郎(らう)から初めて徳三郎になつた折の事、ある日北船場(きたせんば)の物持(ものもち)平野屋の一族が、西桟敷の幾つかを買ひ切つて、見物に来てゐたが、そのなかに別家(べつけ)の一人娘お常といふのがゐて
和(わ)して納(おさ)まるべき特性をどこか相互に分担(ぶんたん)して前へ進めるというつもりなのです。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
久しくみないから幸太郎に和(わ)あちゃんと会わせてやりたいが、和あちゃんはどうしているかと訊(き)き、そして、つまらない物だが途中でみつけたからと云って、買って来た犬張子を差出した。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
〔譯〕寛懷(かんくわい)俗情(ぞくじやう)に忤(さか)はざるは、和(わ)なり。立脚(りつきやく)俗情に墜(お)ちざるは、介(かい)なり。
なおその足を張(はっ)て抵抗の状をなすの常なるに、二百七十年の大政府が二、三強藩の兵力に対して毫(ごう)も敵対(てきたい)の意なく、ただ一向(いっこう)に和(わ)を講(こう)じ哀(あい)を乞(こ)うて止(や)まずとは、古今世界中に未だその例を見ずとて
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
黒山の見物の間からそれに和(わ)して、変だ変だという声が起った。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
吾等(われら)も亦(ま)た幽冥(いうめい)より其(その)聲(こゑ)に和(わ)せん。
みんなが、それに和(わ)した。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この間、かれの馬蹄(ばてい)のめぐり歩いた地は、摂(せつ)、河(か)、泉(せん)、和(わ)の四州にわたっている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或時(あるとき)は日(ひ)の出(い)づる立山(りふざん)の方(かた)より、或時(あるとき)は神通川(じんつうがは)を日沒(につぼつ)の海(うみ)より溯(さかのぼ)り、榎(えのき)の木蔭(こかげ)に會合(くわいがふ)して、お月樣(つきさま)と呼(よ)び、お十三(じふさん)と和(わ)し、パラリと散(ち)つて三々五々(さん/\ごゞ)、彼(かの)杖(つゑ)の響(ひゞ)く處(ところ)妖氛(えうふん)人(ひと)を襲(おそ)ひ、變幻(へんげん)出沒(しゆつぼつ)極(きはま)りなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
と唱(とな)へ出(いだ)す節(ふし)は泣(な)くがごとく、怨(うら)むがごとく、いつも(應(おう))の來(きた)りて市街(しがい)を横行(わうかう)するに從(したが)うて、件(くだん)の童謠(どうえう)東西(とうざい)に湧(わ)き、南北(なんぼく)に和(わ)し、言語(ごんご)に斷(た)えたる不快(ふくわい)嫌惡(けんを)の情(じやう)を喚起(よびおこ)して、市人(いちびと)の耳(みゝ)を掩(おほ)はざるなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
毛利(もうり)も人質(ひとじち)をだして和(わ)をねがう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
麗娟(りけん)宮中(きうちう)に歌(うた)ふ時(とき)は、當代(たうだい)の才人(さいじん)李延年(りえんねん)ありて是(これ)に和(わ)す。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)