“二(に)” の例文
三月(さんぐわつ)のはじめ、御近所(ごきんじよ)のお醫師(いしや)に參(まゐ)つて、つゝましく、しをらしく、但(たゞ)し餘(あま)り見榮(みばえ)のせぬ男(をとこ)の二(に)の腕(うで)をあらはにして、神妙(しんめう)に種痘(しゆとう)を濟(す)ませ
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
即(すなは)ち月(つき)や太陽(たいよう)の引力(いんりよく)によつてわが地球(ちきゆう)が受(う)けるひづみの分量(ぶんりよう)は、地球全體(ちきゆうぜんたい)が鋼鐵(こうてつ)で出來(でき)てゐると假定(かてい)した場合(ばあひ)の三分(さんぶん)の二(に)しかないのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それも何(ど)うあらうかと母(はゝ)などは頻(しきり)にいやがるので私(わし)も二(に)の足(あし)を踏(ふ)んで居(ゐ)る、無論(むろん)病院(びやうゐん)へ行(ゆ)けば自宅(じたく)と違(ちが)つて窮屈(きゆうくつ)ではあらうが
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
例の太刀(たち)のごとくそっくりかえった「朝日」を厚い唇(くちびる)の間に啣(くわ)えながら、あの角張(かどば)った顔を三(さん)が二(に)ほど自分の方へ向けて
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どういうことについて語っているのか、末の者にはよく分らないのであるが、頻りと、信長の哄笑するのが、二(に)の間(ま)三(さん)の間(ま)までも、時々聞えて来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じ年の五月に、わたしがその年から数えて七年ほど前に書いた『三柏葉樹頭夜嵐(みつかしわこずえのよあらし)』という拙劣なる脚本が、偶然帝国劇場女優劇の二(に)の替(かわり)に演ぜられた。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その翌日の二月朔日はことに名が多く、並(なら)べ正月、重ね正月、二(に)正月ともヒシテ正月とも、またひと日正月ともいう処があって、この一日だけが多くは休みであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
若しその中に少しでも賑やかな通りを求めるとすれば、それは僅(わづか)に両国(りやうごく)から亀沢町(かめざわちやう)に至る元町(もとまち)通りか、或は二(に)の橋(はし)から亀沢町に至る二(ふた)つ目(め)通り位なものだつたであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、聟(むこ)殿(どの)があれを二(に)の無いものに大事にして居らるるは予(かね)て知ってもおるが、……多寡が一管の古物(こぶつ)じゃまで。ハハハ、何でこのわし程のものの娘の生命(いのち)にかかろう。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大台ヶ原山に源(みなもと)を発する吉野川の流れに沿うて下り、それがもう一本の渓流と合する二(に)の股(また)と云う辺へ来て二つに分れ、一つは真っすぐに入の波へ、一つは右へ折れて
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それに、お姉さんを、心では二(に)っちも三(さ)っちもないほど、好きんなっていながら、いつまでも穏便主義でやろうなんて、ムリだわ。ムリというよりも、意気地がないわ。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あとのほうはひとり言(ごと)のようにつぶやきながら、びっくりして二(に)の句もつげないでいる先生をのこして、ぷりぷりしながら引きかえすと、となりの川本大工(かわもとだいく)のおかみさんに
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
私は気味が悪かったが、眼を閉(ふさ)いで口の中で一(いち)ッ、二(に)ッとかけ声を出して、自(みず)から勇気をはげまして駆け出した。私の下駄の力の入った踏み音のみが、四境(あたり)の寂しさを破って響いた。
黄色い晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……わたしは二(に)、三遍(さんべん)そこをのぞきに行ったが、油じみた上(うわ)っ張(ぱ)りを着て、頬(ほお)のこけた顔をした、もじゃもじゃ髪(がみ)の痩(や)せた男の子が十人ほど、四角な印刷台木(いんさつだいぎ)を締(し)めつける木の梃子(てこ)へ
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
今日は二(に)の酉(とり)でしかも晴天であるから、昨年来雨に降られた償いを今日一日に取りかえそうという大景気で、その景気づけに高く吊(つ)ってある提灯だと分るとその赤い色が非常に愉快に見えて来た。
熊手と提灯 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「さあ、こっちから押すんだぞ。一(い)チ、二(に)イ、三(さ)ン。そら、よいしょ」
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一行が土手町に下宿した後二(に)、三月(さんげつ)にして暴風雨があった。弘前の人は暴風雨を岩木山の神が祟(たたり)を作(な)すのだと信じている。神は他郷の人が来て土着するのを悪(にく)んで、暴風雨を起すというのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
服装神妙。しかし上衣にもスカートにも目立たない好尚が感知される。いかにも柄にぴったりした感じだ。年歯はそう、廿一(にじゅういち)、二(に)というところか。笑うと美の壊れる人があるが、この人は愛嬌を増す。
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
泊まったのは、二(に)の俣(また)の小舎(こや)である。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
とあれば、二(に)の大門(おほど)からりと鳴(な)りつ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
「静かに坐れエ! 一(いち)ツ、二(に)ツ!」
仔猫の裁判 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
二(に)の宮(みや)田圃(たんぼ)へ灯(ひ)とぼしに
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
家路(いへぢ)をおもふ二(に)の聲に
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「二(に)ィ」
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
翌日(よくじつ)は晩(ばん)とも言(い)はず、午(ひる)からの御馳走(ごちそう)。杉野氏(すぎのし)の方(はう)も、通勤(つうきん)があるから留主(るす)で、同夫人(どうふじん)と、夫人同士(ふじんどうし)の御招待(ごせうだい)で、即(すなは)ち(二(に)の膳(ぜん)出(い)づ。)である。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
又(また)此時(このとき)の死人(しにん)は首府(しゆふ)總人口(そうじんこう)の三分(さんぶん)の二(に)を占(し)めたことも記(しる)されてあるから、地震(ぢしん)が餘程(よほど)激烈(げきれつ)であつたことも想像(そう/″\)される。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其(その)うち年(とし)が段々(だん/\)片寄(かたよ)つて、夜(よる)が世界(せかい)の三分(さんぶん)の二(に)を領(りやう)する樣(やう)に押(お)し詰(つま)つて來(き)た。風(かぜ)が毎日(まいにち)吹(ふ)いた。其音(そのおと)を聞(き)いてゐる丈(だけ)でも、生活(ライフ)に陰氣(いんき)な響(ひゞき)を與(あた)へた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何と思う余裕(よゆう)もござりませぬ。わたくしは傘を斬られると同時に、思わず右へ飛びすさりました。足駄(あしだ)ももうその時には脱(ぬ)いで居ったようでございまする。と、二(に)の太刀(たち)が参りました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
太祖濂(れん)を廷(てい)に誉(ほ)めて曰く、宋景濂朕(ちん)に事(つか)うること十九年、未(いま)だ嘗(かつ)て一言(げん)の偽(いつわり)あらず、一人(いちにん)の短(たん)を誚(そし)らず、始終二(に)無し、たゞに君子のみならず、抑(そもそも)賢と謂(い)う可しと。太祖の濂を視(み)ること是(かく)の如し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
汝(われ)が二(に)の足(あし)をふむのは分っておるが、きょうの使いは、茶わん屋の旧蔵だった水挿(みずさし)を、無事に戻して遣(つか)わすので行くのだ。で、汝(われ)を付けてやれば、汝(われ)の顔(かお)もよかろうと思っていいつけるのじゃ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年(とし)は十六(じふろく)なれども不圖(ふと)見(み)る處(ところ)は一(いち)か二(に)か、肩幅(かたはゞ)せばく顏(かほ)少(ちひ)さく、目鼻(めはな)だちはきり/\と利口(りこう)らしけれどいかにも脊(せい)の矮(ひく)ければ人(ひと)嘲(あざけ)りて仇名(あだな)はつけゝる、御免(ごめん)なさい、と火鉢(ひばち)の傍(そば)へづか/\と行(ゆ)けば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしはお茶の前に庭へ出てみたが、例の垣根(かきね)へはあまり近寄らず、誰(だれ)の姿も見かけなかった。お茶が済むと、わたしは二(に)、三遍(さんべん)、別荘(べっそう)の前の通りを行ったり来たりして——遠目に窓をのぞいてみた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
三月二日に、死刑を免じて国元へ指返(さしかえ)すと云う達しがあった。三日に土佐藩の隊長が兵卒を連れて、細川、浅野両藩にいる九人のものを受取りに廻った。両藩共七菜(しちさい)二(に)の膳附の饗応(きょうおう)をして別を惜んだ。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二人は、一(い)チ二(に)イ三(さ)ンで、左右へ別れて、山を下りはじめた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おォくば(奥歯)二(に)ィまいべェにかねつゥけて
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今(いま)はた、二(に)のうするかに。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)
「二(に)ィ」
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
其(それ)も、此(こ)の婦(をんな)のために氣(き)が狂(くる)つたものだと聞(き)く。……薔薇(ばら)は、百合(ゆり)は、ちら/\と、一(いち)の橋(はし)を——二(に)の橋(はし)を——三(さん)の橋(はし)を。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
暑中休暇を利用して海水浴に行った友達からぜひ来いという端書(はがき)を受け取ったので、私は多少の金を工面(くめん)して、出掛ける事にした。私は金の工面に二(に)、三日(さんち)を費やした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遂(つひ)に全町(ぜんちよう)二千百戸(にせんひやつこ)の中(うち)、其(その)三分(さんぶん)の二(に)を全燒(ぜんしよう)せしめる程(ほど)の大火災(だいかさい)となつたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
親心に二(に)無き体(てい)相見え、多少とも哀れには存じ候へども、私情を以て、公道を廃す可(べか)らざるの道理に候へば、如何様(いかやう)申し候うても、ころび候上ならでは、検脈叶(かなひ)難き旨、申し張り候所、篠
尾形了斎覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
庶民の生業(なりわい)、武家のありかた、朝廷のお考え——までをふくんだ歴史の行きづまりというものが、どうしてもいちど火を噴(ふ)いて、社会(よのなか)の容(かたち)をあらためなければ、二(に)ッ進(ち)もさっちも動きがとれない
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人(ひと)にも見(み)せず落(おと)さぬ樣(やう)に御覽(ごらん)に入(い)れろと吾助(ごすけ)の言(い)ひしは、畫(ゑ)よりも良(よ)きに相違(さうゐ)はなし、是非(ぜひ)人形(にんぎやう)を賜(たま)はれとて手渡(てわた)しするに、何心(なにごヽろ)なく開(ひ)らきて一(いち)二(に)行(ぎやう)よむとせしが、物言(ものい)はず疊(たヽ)みて手文庫(てぶんこ)に納(をさ)めれば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
われは明けぬる二(に)の國の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
が、此(この)電車(でんしや)が、あの……車庫(しやこ)の處(ところ)で、一寸(ちよつと)手間(てま)が取(と)れて、やがて發車(はつしや)して間(ま)もなく、二(に)の橋(はし)へ、横搖(よこゆ)れに飛(と)んで進行中(しんかうちう)。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「いや、ありゃ、たった二(に)、三日(さんち)まえじゃないか。そうはやく活版になってたまるものか。あれは来月出る。これは、ずっと前に書いたものだ。何を書いたものか標題でわかるだろう」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二(に)に別れたる初めより
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
吹通(ふきとほ)しの風(かぜ)砂(すな)を捲(ま)きて、雪駄(せつた)ちやら/\と人(ひと)の通(とほ)る、此方(こなた)は裾端折(すそはしをり)の然(しか)も穿物(はきもの)の泥(どろ)、二(に)の字(じ)ならぬ奧山住(おくやまずみ)の足痕(あしあと)を、白晝(はくちう)に印(いん)するが極(きまり)惡(わる)しなど歎(かこ)つ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は夢中で医者の家へ馳(か)け込んだ。私は医者から父がもう二(に)、三日(さんち)保(も)つだろうか、そこのところを判然(はっきり)聞こうとした。注射でも何でもして、保たしてくれと頼もうとした。医者は生憎(あいにく)留守であった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花(はな)は咲(さ)きそろ、二(に)の花(はな)。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫、薄田淳介(著)