“会(あ)” の例文
旧字:會
このごろはめっきり年(とし)をとって、こんどまた会(あ)おうといっても、それまで生(い)きていられるかおぼつかない。ああ、ざんねんなことだ。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
旅(たび)の途中(とちゅう)で、煙草畑(たばこばたけ)に葉をつんでいる少女に会(あ)った。少女はついこのあいだ、緋(ひ)おどし谷(だに)から里(さと)へ帰ってきた胡蝶陣(こちょうじん)のなかのひとり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとジョバンニはいきなりさっきカムパネルラといっしょだったマルソに会(あ)いました。マルソがジョバンニに走り寄(よ)って言(い)いました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「用(よう)じゃァねえが、おかみさんもああいうンだから、晩(ばん)にしたらどうだ。どうせいま行(い)ったって、会(あ)えるもんでもねえンだから。——」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
最後(さいご)に会(あ)ったのはたしか四五月頃(しごがつごろ)でしたか、新橋演舞場(しんばしえんぶじょう)の廊下(ろうか)で誰(たれ)か後(うしろ)から僕(ぼく)の名(な)を呼(よ)ぶのでふり返(かえ)って見(み)ても暫(しばら)く誰(たれ)だか分(わか)らなかった。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ただの町獣医(まちじゅうい)の妻(つま)では親類(しんるい)に会(あ)わせる顔もないと思うから、どう考えてもあきらめられない。それであけても暮(く)れても欝(うつ)うつたのしまない。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「まあ、ガチョウのせなかに乗って、スウェーデンじゅうを旅行(りょこう)してまわった子どもに会(あ)うなんて、あたしはなんて運(うん)がいいんでしょう!」
太い女だ、ひどい奴(やつ)があるもんだ、どうかしてもう一度江戸(えど)の土(つち)を踏(ふ)み、女房(にようばう)子(こ)に会(あ)つて死にたいものだ、お祖師様(そしさま)の罰(ばち)でも当(あた)つたのかしら。
やがて、ふる狐の死んだことが知れわたると、おくさま狐をおよめさんにほしいという者が、いくたりも会(あ)いにきました。
その間(あいだ)には随分(ずいぶん)泣(な)くことも、又(また)笑(わら)うこともありましたが、ただ有難(ありがた)いことに、以前(いぜん)良人(おっと)と会(あ)った時(とき)のような、あの現世(げんせ)らしい、変(へん)な気持(きもち)だけは
「きっと、用事(ようじ)があってこられなくなったんでしょう。また来年(らいねん)会(あ)われますよ。」と、お母(かあ)さんは、おっしゃいました。
海へ帰るおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「鬼(おに)だ。あの寺には鬼が住んどる。口が耳まで裂(さ)けている青鬼赤鬼が何匹(なんびき)もいて、おれをこんな目に会(あ)わしたのだ。」
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
私(わたし)は老人(ろうじん)には、その時(とき)に会(あ)つたきりですけど、どうも気(き)になつてなりません。それで、帰宅後(きたくご)三十分(ぷん)ほどしてから、老人(ろうじん)の家(うち)へ行(い)つて見(み)たのですが、……
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
明日(あす)午前会(あ)ひたし、と薄墨(うすずみ)の走(はし)り書(がき)の簡単極るもので、表に裏神保町の宿屋(やどや)の名(な)と平岡常(ひらをかつね)次郎といふ差出人の姓名が、表と同じ乱暴さ加減で書いてある。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
而(さう)して会(あ)つた処(ところ)は始終(しゞふ)外(そと)で、偶(たま)に其下宿(そのげしゆく)へ行(い)つたこともあつたけれど、自分(じぶん)は其様(そん)な初々(うひ/\)しい恋(こひ)に、肌(はだ)を汚(けが)すほど、其時分(そのじぶん)は大胆(だいたん)でなかつたと云(い)ふことを確(たしか)めた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「いや、もう溺死(できし)しそうになってから、君は恐怖のために、しばらく気がへんになっていたんじゃないか、だから会(あ)いもしない怪囚人に会ったように思っているのじゃないか」
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いそのかみ布留(ふる)の神杉(かむすぎ)神(かむ)さびて恋をも我は更にするかも」(巻十一・二四一七)、「現(うつつ)にも夢(いめ)にも吾は思(も)はざりき旧(ふ)りたる君に此処に会(あ)はむとは」(同・二六〇一)等があり
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「いいや、かれはふつうの人間(にんげん)だよ。あいつはぼくを恐(おそ)れてびくびくしていたくせに、ぼくをうらぎろうとしたんだ。あいつめ、こんど会(あ)ったらぶち殺(ころ)してやる。ちくしょうめ!」
いくらかずつ落付(おちつ)きを取返(とりかえ)して、やがて、平静な心持で話し会(あ)うようになると、何より先に、お鳥の豊満な裸体、月の光にさらされて、ほんのり霞(かす)むような美しい身体(からだ)が気になります。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とそつ気(け)はないが、日焼(ひや)けのした毛(け)だらけの胸(むね)へ、ドンと打撞(ぶつか)りさうに受(う)け容(い)れらるる、保勝会(ほしようくわい)の小笠原氏(をがさはらし)の——八月(ぐわつ)四日(か)午後(ごご)三時(じ)、古間木(こまき)で会(あ)うてより、自動車(じどうしや)に揺(ゆ)られ、舟(ふね)に揉(も)まれ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
それは、さっきの鳥(とり)の名(な)も知(し)らなければ、どこへ飛(と)んで行(い)ったのかも知(し)りませんでしたけれど、生(うま)れてから今(いま)までに会(あ)ったどの鳥(とり)に対(たい)しても感(かん)じた事(こと)のない気持(きもち)を感(かん)じさせられたのでした。
ついこの間もしばらく会(あ)わなかった友人が来訪(らいほう)し、こういうことをいった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
明日(あした)からみんな会(あ)えるわ。でも、こんどの先生は泣かんよ。わたし、ちゃんといっといたもの。本校の生徒と行きし戻(もど)りに出あうけど、もしもいたずらしたら、猿(さる)が遊んでると思っときなさい。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
余等が帝劇のハムレットに喜憂(きゆう)を注(そそ)いで居る間に、北多摩(きたたま)では地が真白になる程雹が降った。余が畑の小麦(こむぎ)も大分こぼれた。隣字(となりあざ)では、麦は種(たね)がなくなり、桑(くわ)も蔬菜(そさい)も青い物全滅(ぜんめつ)の惨状(さんじょう)に会(あ)うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
孰方(どっち)からも「会(あ)お」いい出したことあれしませんし、光子さんも二人を仲好うさすことはあきらめてしもたらしいのんですが、なんでも三人で松竹い行(い)た、——あれから半月ぐらい後でしたやろか
卍 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何(なん)の、わたしがいなかったばかりに、とんだかわいそうなことをしました。でもこうしてまた会(あ)われたので、ほんとうにうれしいよ。」
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「でもまた、縁があれば、どこかで会う日があるかも知れません——城太郎さんも旅が家、わたしも尋ねるお人に巡(めぐ)り会(あ)うまでは旅が住居(すまい)」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お気(き)の毒(どく)だが、またあらためて、会(あ)ってやっておもらい申(もう)すより、仕方(しかた)がないじゃなかろうかと、実(じつ)は心配(しんぱい)している訳(わけ)だが。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「どうしてこんなよなかに出かけてきたの? グリンミンゲ城(じょう)はどんなぐあい? アッカおばさんに会(あ)いたいのかい?」
それどころじゃない、あの男はただでさえ随分会(あ)い悪(にく)い方(ほう)なんだから、そんな事をむやみに喋(しゃ)べろうものなら、直(すぐ)帰ってくれぐらい云い兼ねないですよ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
滝田君(くん)に初(はじ)めて会(あ)ったのは夏目先生のお宅(たく)だったであろう。が、生憎(あいにく)その時のことは何も記憶(きおく)に残(のこ)っていない。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『まァお久(ひさ)しいことでございました。とうとうあなたと、こちらでお会(あ)いすることになりましたか……。』
安藤は話(はなし)の口があくと、まず自分が一年まえに会(あ)ったときと、きょう会った花前はよほど変(か)わっている。
箸 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
老人(ろうじん)が殺(ころ)されたのは、その五日(か)の夜(よる)だつたから、朝(あさ)と夜(よる)との違(ちが)いはあつても、同(おな)じ日(ひ)に金魚屋(きんぎょや)が行(い)つて老人(ろうじん)に会(あ)つたという点(てん)が、なんとなく意味(いみ)あり気(げ)に感(かん)じられる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
こう考(かんが)えると、もうその時計(とけい)を取(と)りかえす気(き)にはなれませんでした。それから、二人(ふたり)はいろいろと話(はなし)をして、またたがいに会(あ)う日(ひ)を心(こころ)に期(き)しながら、別(わか)れたのであります。
般若の面 (新字新仮名) / 小川未明(著)
香具山(かぐやま)と耳梨山(みみなしやま)と会(あ)ひしとき立(た)ちて見(み)に来(こ)し印南国原(いなみくにはら) 〔巻一・一四〕 天智天皇
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「あっしは、透明人間のようにおそろしいやつに、いままで会(あ)った……」
で全体(ぜんたい)を綜合(そうがふ)した処(ところ)で、私(わたし)の頭(あたま)に残(のこ)つた印象(いんしやう)と云(い)ふのは——初(はじ)めての出会(であひ)は小川町(をがはちやう)あたりの人込(ひとごみ)のなかであつたらしく、女(をんな)の袖(そで)へ名刺(めいし)でも投込(なげこ)んだのが抑(そもそ)もの発端(はじまり)で、二度目(どめ)に同(おな)じ通(とほり)で会(あ)つたとき
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
日本人の彼等よりも却てヨリ好き日本語をつかうF女史に会(あ)った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
「それはあいにくでございました。主人(しゅじん)はものいみでございまして、今晩(こんばん)一晩(ひとばん)立(た)つまでは、どなたにもお会(あ)いになりません。」
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いや、世間(せけん)には十年ぶり、二十年ぶりなどで、母子(おやこ)がめぐり会(あ)ったなどということもめずらしくはない。一心にさがせばきっとわかるだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「怖(こわ)がるこたァねえから、後(あと)ずさりをしねえで、落着(おちつ)いていてくんねえ。おいらァ何(なに)も、久(ひさ)し振(ぶ)りに会(あ)った妹(いもうと)を、取(と)って食(く)おうたァいやァしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
滝田君(くん)に最後(さいご)に会(あ)ったのは今年の初夏(しょか)、丁度(ちょうど)ドラマ・リイグの見物日(けんぶつび)に新橋(しんばし)演舞場(えんぶじょう)へ行った時である。小康(しょうこう)を得(え)た滝田君(くん)は三人のお嬢(じょう)さんたちと見物(けんぶつ)に来ていた。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
代助は又(また)父(ちゝ)から呼(よ)ばれた。代助には其用事が大抵分(わか)つてゐた。代助は不断(ふだん)から成るべく父(ちゝ)を避(さ)けて会(あ)はない様にしてゐた。此頃(このごろ)になつては猶更奥(おく)へ寄(よ)り付(つ)かなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
土曜日日曜日をうかがって、遊(あそ)びにくるものがあってもたいていは避(さ)けて会(あ)わないようにした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その時(とき)以来(いらい)、老人(ろうじん)には会(あ)わなかつたということもいつたはずです。ところが金魚(きんぎょ)があの土(つち)にいけた鉢(はち)の中(なか)へ入(い)れられたのは五月(がつ)五日(か)、お節句(せっく)の朝(あさ)だということがわかつたんでしよう。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
母が日傘(ひがさ)を横にして会釈(えしゃく)し、最早(もう)熊本に帰っても宜しゅうございましょうかと云うた。宜(よ)いとも/\、皆(みんな)ひどい目に会(あ)った喃(なあ)。と士官が馬上から挨拶(あいさつ)した。其処(そこ)に土俵(どひょう)で築(きず)いた台場(だいば)——堡塁(ほるい)があった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
猶太紀元(ユダヤきげん)五千六百八〇年その新年(しんねん)のけふに会(あ)へりき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
狐(きつね)のかあさんでも、化(ば)け物(もの)のかあさんでもかまわない、どうしてもかあさんに会(あ)いたいといって、子供(こども)はききませんでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
朝となく夜となく、どれほど空を気にしていたか知れやしない……だがよかったなア、いいところでめぐり会(あ)ったなア。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)