“箇(こ)” の例文
もちろんアルファ線をつくる粒子の中で原子核へとび込むものはごく僅かなので、百万箇(こ)のうちで幾つと云(い)うほどに少ないのです。
ロード・ラザフォード (新字新仮名) / 石原純(著)
やがて他(ほか)の連中も、そんな私の後から一塊(ひとかたま)りになって、一箇(こ)の懐中電気を頼(たよ)りにしながら、きゃっきゃっと言って降りて来た。……
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
という幕(まく)かげの答え。主命(しゅめい)によって、いまそこへ、控(ひか)えたばかりの福島市松(ふくしまいちまつ)、一箇(こ)の鎧櫃(よろいびつ)をもって、秀吉と伊那丸(いなまる)の中央にすえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
望蜀生(ぼうしよくせい)と余(よ)とは、夢中(むちう)に成(な)つて、それを採集(さいしふ)した。其數(そのすう)實(じつ)に二百(ひやく)七十六本(ほん)。それを四箇(こ)の大布呂敷(おほふろしき)に包(つゝ)み、二箇(こ)宛(づゝ)を分(わ)けて持(も)つ事(こと)にした。
いま私のいる部屋(へや)には、一箇(こ)の円(まる)い時計がかかっています。この時計の表面は、ただ長い針と短い針とが、動いているだけです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
階段のかげにうずくまっている一箇(こ)の人影——こっちへ顔を出したところをみればそれは例の汐(しお)ふきそっくりの怪塔王の顔でありました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
又一箇(こ)の異人(いじん)というべし。魔王の如(ごと)く、道人(どうじん)の如く、策士の如く、詩客(しかく)の如く、実に袁珙(えんこう)の所謂(いわゆる)異僧なり。其(そ)の詠ずるところの雑詩の一に曰(いわ)く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
奸譎(かんけつ)な老人は、占卜者(せんぼくしゃ)を牛角杯二箇(こ)でもって買収し、不吉なシャクの存在と、最近の頻繁(ひんぱん)な雷鳴とを結び付けることに成功した。人々は次のように決めた。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「これはここだけのお話ですから、どうぞそのつもりで。私一箇(こ)の批判ですから、書いちゃいけないんです。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
極度の緊張に脳貧血を起していったん意識を喪(うしな)い、再び恢復して来たときの復一の心身は、ただ一箇(こ)の透明(とうめい)な観照体となって、何も思い出さず、何も考えず
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
南(みなみ)の女房(にようばう)は食鹽(しよくえん)の一箇(こ)を手(て)にして見(み)ながら羨(うらや)ましげにいつた。おつぎも珍(めづ)らし相(さう)にして南(みなみ)の女房(にようばう)の手(て)を覗(のぞ)いた。勘次(かんじ)も白(しろ)い食鹽(しよくえん)を爪(つめ)の先(さき)で少(すこ)しとつて口(くち)へ入(いれ)た。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
若し文章に活殺の権があるとするなら、一斎の此文は箇(こ)の好題目を殺了したと云はざることを得ない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つまりナオミは私に取って、最早や貴い宝でもなく、有難い偶像でもなくなった代り、一箇(こ)の娼婦(しょうふ)となった訳です。そこには恋人としての清さも、夫婦としての情愛もない。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
与平は顔なじみと見えて、部屋から玉子の籠(かご)を出して来ると、玉子を陽(ひ)に透かしては三十箇(こ)ばかり相手の籠に入れてやった。男は釣銭はいらないと云って、百円札を置いて行った。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
旨(うま)いも拙(まず)いも、昔感じたやうに大きな差別を見ずに、又は好悪を感ぜずに、あるがまゝにあるといふ風に感じて来る心理、この心理は差別をのみ気にし、又は箇(こ)をのみ気にした心理と
自からを信ぜよ (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
事(こと)なく高砂(たかさご)をうたひ納(おさ)むれば、即(すなは)ち新(あた)らしき一對(つい)の夫婦(めをと)出來(でき)あがりて、やがては父(ちゝ)とも言(い)はるべき身(み)なり、諸縁(しよゑん)これより引(ひ)かれて斷(た)ちがたき絆(ほだし)次第(しだい)にふゆれば、一人(にん)一箇(こ)の野澤桂次(のざわけいじ)ならず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けふの萬朝報(よろづてうはう)に悪銭(あくせん)に詰まるとあるのは、悪の性質を収得(しうとく)と見ず、消費と見たので記者は悪銭(あくせん)身に附(つ)かずといふのと、悪所(あくしよ)の金には詰まるが習ひといふのと、此(この)二箇(こ)の俗諺(ぞくげん)を混同したものだらう。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
一万枚の金貨を十箇(こ)のさいふに分けて入れて持って来いと命じました。
懸(かけ)銀拵(ぎんごしら)への茶辨當(ちやべんたう)合羽籠(かつぱかご)兩掛(りやうがけ)三箇(こ)跡(あと)より徒士(かち)四人朱網代(しゆあじろ)の駕籠侍(かござふら)ひ四人打物(うちもの)を持せ常樂院天忠和尚(てんちうをしやう)引續(ひきつゞ)いて同(おな)じ供立(ともたて)にて黒叩(くろたゝ)き十文字の鎗(やり)を持せしは山内伊賀亮(やまのうちいがのすけ)なり其次にも同じ供立に鳥毛(とりげ)の鎗(やり)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
短い草が斑(まばら)に生えて虫が鳴いていた。瓶は十五六箇(こ)もあった。
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お前(まへ)は思想(しさう)を持(も)たぬたゞ一箇(こ)の生(い)ける銃架(じうか)だ
「我、汝が為めに箇(こ)の直綴(じきとつ)を做得了(つくりおわ)れり」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっとも、蛾次郎(がじろう)の身にとってみれば、甲府(こうふ)一城(じょう)の安危(あんき)よりは、この独楽一箇(こ)が大事かも知れない。だれか、かれを悪童(あくどう)とよぶものぞ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
這(こ)んなのが有(あ)りましたと出(だ)して見(み)せるのは、彌生式土器(やよひしきどき)の上部(じやうぶ)(第五圖參照)と破片(はへん)澤山(たくさん)及(およ)び木(こ)の葉(は)底(ぞこ)である。別(べつ)に貝塚土器(かひづかどき)の網代底(あじろぞこ)一箇(こ)。
あとには留守部隊がのこっていたが、これには臨時に、三箇(こ)中隊の高射砲隊が配属されていた。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、このとき今まで彫刻的(ちょうこくてき)に見えた小初の肉体から妖艶(ようえん)な雰囲気(ふんいき)が月暈(つきがさ)のようにほのめき出て、四囲の自然の風端の中に一箇(こ)不自然な人工的の生々しい魅惑(みわく)を掻(か)き開かせた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
最初に記したように、今では九十二箇(こ)の元素のあることが知られているのですが、メンデレーエフの研究していた頃には大体六十三箇(こ)の元素だけしか知られていなかったのでした。
メンデレーエフ (新字新仮名) / 石原純(著)
大(おほ)いに疲勞(ひらう)して來(き)たので、引揚(ひきあ)げやうかと考(かんが)へて居(ゐ)る間(うち)、幻花子(げんくわし)は、口部(こうぶ)だけ缺(か)けて、他(た)は完全(くわんぜん)なる土瓶(どびん)を一箇(こ)、掘出(ほりだ)した。
と宮内がそれをおさえて、じぶんの両手に一箇(こ)ずつ持ち、さて、ふたりの者へ、たのむようにいうには
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大空には、飛行軍団を六箇(こ)、海上には、一千三百隻の艦艇を、更に水中には、キンギン国とっておきの快速潜水艦隊を配置し、一挙にアカグマ国をぶっ壊す作戦であった。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
物質の元素には、たくさんの異なった種類がありますが、今ではその原子量の最も小さい水素から、それの最も大きいウランに至るまでの間に、全体で九十二箇(こ)の元素のあることが知られています。
メンデレーエフ (新字新仮名) / 石原純(著)
發掘(はつくつ)の結果(けつくわ)、依然(いぜん)として多量(たりやう)の彌生式土器破片(やよひしきどきはへん)、及(およ)び同(どう)徳利形(とくりがた)の上半部(じやうはんぶ)を(水谷氏(みづたにし)、二箇(こ)。望蜀生(ばうしよくせい)、三箇(こ))掘出(ほりだ)した。
戦争は集団の行動だが、試合は箇(こ)と箇の対立である。必ず勝たなければ、必ず死ぬか片輪になるのだ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余(よ)は死(し)せるにあらぬかといふ、夢幻(むげん)の境(きやう)にさまよひ、茫然(ばうぜん)として動(うご)かずに居(ゐ)る後(うしろ)から、突然(とつぜん)、一箇(こ)の黒影(くろかげ)が出現(しゆつげん)した。
そして当然、かれも持つ本能の相(すがた)のまま、なやみ、もがき、猛り泣いて、かかる人間宿命を、一箇(こ)の剣(けん)に具象(ぐしょう)し、その修羅道(しゅらどう)から救われるべき「道」をさがし求めた生命の記録が彼であったのだ。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如何(いか)に不有望(ふいうばう)の貝塚(かひづか)だとて、これだけの大部分(だいぶぶん)を發掘(はつくつ)して、小破片(せうはへん)一箇(こ)出(で)ぬといふ、そんなのは未(いま)だ曾(かつ)て無(な)い。
其後(そののち)望生(ぼうせい)が、土偶變形(どぐうへんけい)とも見(み)るべき一箇(こ)の把手(とつて)を有(ゆう)する土器(どき)(第三圖ロ參照)其他(そのた)二箇(こ)の土器(どき)を出(だ)し。余(よ)も亦(また)土器(どき)を三箇(こ)ばかり出(だ)した。幻翁(げんおう)も大分(だいぶ)出(だ)した。
余(よ)の陳列所(ちんれつじよ)の雨垂(あまだ)れ落(おち)に積重(つみかさ)ねてある打製石斧(だせいせきふ)は、數(かぞ)へては見(み)ぬが、先(ま)づ謙遜(けんそん)して六七千箇(こ)は有(あ)ると云(い)はう。精密(せいみつ)に計算(けいさん)したら、或(あるひ)は一萬(まん)に近(ちか)いかも知(し)れぬ。
西面北部(せいめんほくぶ)の横穴(よこあな)は、乞食(こじき)が曾(かつ)て住(す)んで居(ゐ)た事(こと)があり、西面南部(せいめんなんぶ)の二箇(こ)には、子供(こども)が入(はい)つて遊(あそ)んだ事(こと)もある。
余(よ)は大把手(おほとつて)の破片(はへん)と、ボロ/\に破壞(こは)れかゝつた土器(どき)一箇(ひとつ)と、小磨石斧(せうませきふ)一箇(こ)(第四圖ハ參照)とを得(え)た。
然(さ)うして二箇(こ)は内部(ないぶ)で連絡(れんらく)して居(ゐ)るといふ事(こと)が分(わか)つたので、何(な)んだか張合(はりあひ)は拔(ぬ)けて來(く)る。小雨(こさめ)は降(ふ)り出(だ)す。新聞記者連(しんぶんきしやれん)はそろ/\惡口(わるくち)を始(はじ)める。地主連(ぢぬしれん)はまご/\して居(ゐ)る。
晩(ばん)まで掛(かゝ)つて漸(やうや)く土器(どき)の端(ふち)でも磨(す)つたらしい石(いし)と、把手(とつて)の平凡(へいぼん)なのを二三箇(こ)得(え)たばかり。
此日(このひ)は全(まつた)く大勝利(だいしやうり)であつた。土瓶(どびん)の他(ほか)に完全土器(くわんぜんどき)が一箇(こ)。
幻翁(げんおう)は土器(どき)を二三箇(こ)出(だ)した。