“皆(み)” の例文
その頃柳橋(やなぎばし)に芸者が七人ありまする中で、重立(おもだ)った者が四人、葮町(よしちょう)の方では二人、後(あと)の八人は皆(み)な能(よ)い芸者では無かったと申します。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
参集の時刻は午後一時、来会者は皆(み)な約束を重んじて一人も遅刻せるものなし。妻や娘を伴(ともな)える老人連は多く家庭教育会の会員なり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それらのなかの他の多くのものどもも、一様に嘔吐しながら、「神よ神よ」と叫んでは、それに続いて、また皆(み)んな異様な恰好をする。
不周山 (新字新仮名) / 魯迅(著)
いえ、皆(み)んな本当です。——そして志津子と千束守は、社会からも芸術からも見捨てられましたが、恐らく百姓夫婦のような健康を
それに利巧(りこう)だから外へは出さないけれども、あれでなかなか慢気(まんき)が多いのよ。だからそんなものを皆(み)んな取っちまわなくっちゃ……
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然れども、今日の子弟にして政治・法律の二学に赴(おもむ)き、滔々(とうとう)として所在皆(み)なこれなるは、決して偶然に出るにあらざるなり(喝采、拍手)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
残しては行かない、盗賊は純金製の齅煙草函(ばこ)を盗めば中味の煙草も何も皆(み)んな持って行く。金の鉛筆鞘にしても中の心(しん)も何も皆な持って行く
あなたはそうした意味であらゆる人の、口の端(は)におかかりでした。けれど、皆(み)んな、やっぱりその内心は、今様仙人とおなじ型だったのです。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それを云ってわたくしがお登久にからかいますと、お登久はまじめな顔をして、女っていうものは皆(み)んなそんなもんですって……。はははははは
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もしこれ等が皆(み)な消え失(う)せて山上に樹(た)っている一本松のように、ただ一人、無人島の荒磯(あらいそ)に住んでいたらどうだろう。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
今、勧工場(くわんこうば)のある奥の方にあつた。そこの主人も面白い男だつた。其処には硯友社の同人は皆(み)な出かけて行つた。
紅葉山人訪問記 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
此地(こつち)の與力(よりき)は皆(み)な贅澤(ぜいたく)だと、かね/″\聞(き)いてゐたが、しかしこれほどだとは思(おも)はなかつた。お蔭(かげ)で但馬(たじま)、歌舞伎役者(かぶきやくしや)の座頭(ざがしら)にでもなつたやうな氣(き)がする。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
皆(み)な黙ってしまった。咳一つしても雲へ響き、何か眠っている者の眼を醒(さま)し、荒れ出されてはたまらないような気がする。——森然とした中をただ黙って通って行く。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
例えばあの世に行けば皆(み)んなが神様のお祠(やしろ)みたいな所へ入って、朝から晩までお勤行(つとめ)をしているというような事や、空中を白い着物を着て飛んで行ける事や、大体(だいたい)野原で
私は鞍(くら)を叩(たた)きながら、将士皆(み)な盃と剣を挙げて王に誓いたり、吾こそ王の冠の、失われたる宝石を……と、歌い続けて拳(こぶし)を振り廻したが頑強な驢馬はビクともしなかった。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
(はい、この水は源が滝(たき)でございます、この山を旅するお方は皆(み)な大風のような音をどこかで聞きます。貴僧(あなた)はこちらへいらっしゃる道でお心着きはなさいませんかい。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歯牙(しが)にも掛けずありける九州炭山坑夫の同盟罷工今や将(まさ)に断行せられんことの警報伝はるに及(およん)で政府と軍隊と、実業家と、志士と論客と皆(み)な始めて愕然(がくぜん)として色を失へり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
社員(しやゐん)充満(みちみち)ていづれも豪傑然(がうけつぜん)たり、機会(とき)にあたれば気は引立(ひきたつ)ものなり、元亀(げんき)天正(てんしやう)の頃(ころ)なれば一国一城の主(ぬし)となる手柄(てがら)も難(かた)からぬが、岸(きし)に堤(つゝみ)に真黒(まつくろ)に立続(たちつゞ)けし人も皆(み)な豪傑然(がうけつぜん)たり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
部落一帯の田畑は殆んど耕されていなかった。小作人は、皆(み)な豚飼いに早替りしていた。
豚群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
先(さ)つきの貸金(かしきん)の催促(さいそく)といひ、『御返事(ごへんじ)を待(ま)つて居(を)ります』と云(い)ひ、皆(み)な面白(おもしろ)い話(はなし)だね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
が、皆(み)なが拝むようにして頼むので、伯母もとうとう話す決心をしたのだった——。
寡婦 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
繕(つくろ)うて見ようと思うその物は皆(み)な俗な物ばかり、所謂(いわゆる)美術と云う思想は少しもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それなら一層(そ)の事(こと)、皆(み)んなで歸(かへ)らうとて、發掘(はつくつ)を中止(ちうし)し、天幕(てんと)を疊(たゝ)み、飮餘(のみあま)したる麥酒(ビール)の壜(びん)を携(たづさ)へて、裏(うら)の池邊(ちへん)に行(ゆ)き、其所(そこ)にて又(また)小宴(せうえん)を張(は)り、食物(しよくもつ)の殘(のこ)りを池(いけ)の魚(うを)に投與(とうよ)して、荷(に)を輕(かる)くし
奉天よりずっと以前だと思うが、九連城が落ちたときに、村人皆(み)んなが狂喜した。私達は「陣地取り」で勝つと、屹度(きっと)この「勝った勝った九連城」と怒鳴(どな)って、手を叩いて踊ったものであった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
三人と共に猛烈なる吹雪に遮(さえぎ)られあるいは依頼品を吹飛ばさるる等、僅かに必要の文書類を、倔強(くっきょう)なる二人に依頼して持ち行かしめ、他は皆(み)な八合目の石室(せきしつ)に止まりたりしも如何にも残念なりとて
そうしたものが皆(み)んな、病的な頭脳にとっては異常に陰惨で幻想的な性質を帯びているところへ、湯番をしている肥(ふと)ったウクライナ人(とさかあたま)がまた、ついぞ口を利いた例(ため)しのないむっつり屋と来ているので
「オーイ皆(み)んな来い、大瀑布! 大瀑布がある‼」
大原さんばかりが誠実で外(ほか)の人は皆(み)んな不誠実というような事はありますまい。私にはどうも小山さんのお話がよく解りませんよ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
後ろで大変な抗議を申込(もうしこ)む者があります、皆(み)んなの顔が振り返ると、下男の宇太松が、およそ腑に落ちない顔をして、それを見返すのです。
而(しこう)して異日学生諸君が卒業の後、政党に加入せんと欲せば、一に皆(み)な諸君が本校に得たる真正の学識に依て自(みず)からこれを決すべし(謹聴、大喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
「今のお前達が聞いたら、一口に迷信とか馬鹿々々しいとか蔑(けな)してしまふだらうが、その頃の人間、殊に女などは皆(み)んなさうしたものであつたよ。」
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
細かに切って出せば命がないと途方に暮れ、立合った者も皆(み)な可愛そうだと云っている処へ通りかゝったのが愚老でな
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其夜(そのよ)は征西将軍(せい/\しやうぐん)の宮の大祭で、町は賑(にぎや)かであつた。街頭をぞろぞろと人が通(とほ)つた。花火が勇ましい音を立てゝあがると、人々が皆(み)な足を留めて振返(ふりかへ)つた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
温泉宿(をんせんやど)の欄干(らんかん)に倚(よ)つて外(そと)を眺(なが)めて居(ゐ)る人(ひと)は皆(み)な泣(な)き出(だ)しさうな顏付(かほつき)をして居(ゐ)る、軒先(のきさき)で小供(こども)を負(しよつ)て居(ゐ)る娘(むすめ)は病人(びやうにん)のやうで背(せ)の小供(こども)はめそ/\と泣(な)いて居(ゐ)る。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
配下(はいか)の與力(よりき)同心(どうしん)は慄(ふる)へあがるし、人民(じんみん)は皆(み)な往來(わうらい)を歩(ある)くにも小(ち)ひさくなつて、足音(あしおと)さへ立(た)てぬやうにした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こゝに於(おい)て、はじめは曲巷(ちまた)の其處此處(そここゝ)より、やがては華屋(くわをく)、朱門(しゆもん)に召(め)されて、其(そ)の奧(おく)に入(い)らざる處(ところ)殆(ほとん)ど尠(すくな)く、彼(かれ)を召(め)すもの、皆(み)な其(そ)の不具(ふぐ)にして艷(えん)なるを惜(をし)みて、金銀(きんぎん)衣裳(いしやう)を施(ほどこ)す。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
疵(きず)持つ身と云(い)う訳(わ)けではないが、いずれも洋学臭い連中だから皆(み)な怖がって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一人(にん)志(こゝろざ)しを立(たて)て国家(こくか)の為(ため)に其身(そのみ)をいたせば、満都(まんと)の人(ひと)皆(み)な動かされて梅の花さへ余栄(よえい)を得(え)たり、人は世に響(ひゞ)き渡(わた)るほどの善事(よきこと)を為(な)したきものなり、人は世に効益(かうえき)を与(あた)ふる大人君子(たいじんくんし)に向(むか)ひては
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
それは皆(み)んなが寄ってたかって、今まで糊塗(こと)して来た自分の弱点を、早く自白しろと間接に責めるように思えたからである。こっちの「我(が)」以上に相手が意地の悪い事をするように見えたからである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
結婚問題は今の世の人がともに心を悩ます所、男子も悩み、女子も悩み、父兄親戚(しんせき)に至るまで皆(み)なこの事に心を苦(くるし)めざるなし。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
今は無い、が、持ってる奴は俺の外に二人、皆(み)んな当りが付いているんだ。七枚集らなきゃ読めない判じものなら、二人持寄(もちよ)って、七万両を
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
製作物(せいさくぶつ)を出(だ)した生徒(せいと)は氣(き)が氣(き)でない、皆(み)なそは/\して展覽室(てんらんしつ)を出(で)たり入(はひ)つたりして居(ゐ)る自分(じぶん)も此(この)展覽會(てんらんくわい)に出品(しゆつぴん)する積(つも)りで畫紙(ゑがみ)一枚(まい)に大(おほ)きく馬(うま)の頭(あたま)を書(か)いた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
仕方(しかた)がない……宜(よ)しく此餅(これ)を皆(みんな)皿(さら)に積(つ)んでの……さア何(ど)うか不味(つまら)ない物だが子供衆(こどもしう)に皆(み)な上(あ)げて下(くだ)さい。
今(い)ま党員たるの位地よりしてこれを言えば、本校の学生諸君をして咸(ことごと)く改進の主義に遵(したが)わしめ、皆(み)なその旗下に属せしめんと欲するは、固(もと)よりその所なり(大喝采)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
と、ひどい厭味(いやみ)を言(い)つた時(とき)は、與力(よりき)どもが皆(み)な冷汗(ひやあせ)に仕立(した)ておろしの襦袢(じゆばん)の胴(どう)を濡(ぬ)らした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一(ひと)つ一(ひと)つが皆(み)な然(さ)うでした。——吹雪(ふゞき)の渦(うづ)は湧(わ)いては飛(と)び、湧(わ)いては飛(と)びます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このあひだは三人ながら皆(み)んな威勢の好い人達ばかりだつたのに、今夜は揃ひも揃つて何だかむづかしい顔をして黙つてゐるのは、どういふわけかと思ひながら、わたし達も黙つて見てゐると
赤い杭 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「いいえ。皆(み)んなあたしが悪いんでしょう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それを皆(み)んな混て一旦(いったん)沸立(にた)たせて布巾(ふきん)で漉(こし)てレモン油を小匙に軽く一杯加えて大きなブリキ鉢かあるいはゼリー型へ入て氷で凍(ひや)し固めます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いや、年を取ったのは御同様だよ、私は三十何年前の富士見軒の送別会に来てくれた、旧友達皆(み)んなに逢いたくなったんだ。