“勝(が)” の例文
と、なんという奇観(きかん)、人造人間は、吾(わ)れ勝(が)ちに、身体を曲げて車輪になるのがあるかと思うと、四五人横に寝て、鋼鈑(こうばん)となるものもある。
御(ご)大葬の済む迄は御(ご)遠慮したいと思ふので芝居へも行(ゆ)かない。独逸(ドイツ)から和蘭(ヲランダ)へかけて旅行しようと思ふが雨天の為に其れも延び勝(が)ちである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
この時ぎらぎらと眼が眩(くら)むように鏡が光った。曲玉がじゃらじゃらと鳴る。男は口の中に籠り勝(が)ちな、力の入った声で
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「一寸(ちよつと)伺(うかゞ)ひますが、アノ、アノ、田村(たむら)と云(い)ふ女(をんな)のお墓(はか)で御在(ござい)ますが、アノ、それはこちらのお寺(てら)で御在(ござい)ませうか。」と道子(みちこ)は滞(とゞこほ)り勝(が)ちにきいて見(み)た。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
人間(にんげん)と申(もう)すものは兎角(とかく)自分(じぶん)の力(ちから)一つで何(なん)でもできるように考(かんが)え勝(が)ちでございますが、実(じつ)は大(だい)なり、小(しょう)なり、皆(みな)蔭(かげ)から神々(かみがみ)の御力添(おちからぞ)えがあるのでございます。
この容態(ようだい)で氏は、家庭に於(おい)て家人(かじん)の些末(さまつ)な感情などから超然(ちょうぜん)として、自分の室(へや)にたてこもり勝(が)ちであります。
新(あた)らしく世帶(しよたい)を有(も)つて、新(あた)らしい仕事(しごと)を始(はじ)める人(ひと)に、あり勝(が)ちな急忙(せは)しなさと、自分達(じぶんたち)を包(つゝ)む大都(たいと)の空氣(くうき)の、日夜(にちや)劇(はげ)しく震盪(しんたう)する刺戟(しげき)とに驅(か)られて、何事(なにごと)をも凝(じつ)と考(かんが)へる閑(ひま)もなく
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きらきらと光って見える、俯向(うつむ)き勝(が)ちに歩むその姿は、また哀れが深くあった、私は懇(ねんご)ろに娘を室(へや)に招じて、来訪の用向(ようむき)を訊ねると、娘は両手を畳につきながらに、物静かにいうには
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
始終(しじふ)支拂(しはら)ひに足(た)らず勝(が)ちな月末(つきずゑ)までにもう十日(か)とない或(あ)る秋(あき)の日(ひ)の夕方(ゆふがた)だつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
またも木の間をヒラヒラと、べに色勝(が)った友禅の、振り袖姿がひらめき飛ぶ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我(われ)勝(が)ち、鳥(とり)が飛(と)ぶやうに、ばら/\散(ち)ると、さすがは救世主(キリスト)のお乳母(うば)さん、のさつと太陽(ひ)の下(した)に一人(ひとり)堆(うづたか)く黒(くろ)い服(ふく)で突立(つゝた)つて、其(そ)の狂人(きちがひ)と向合(むきあ)つて屈(かゞ)みましたつけが、叶(かな)はなく成(な)つたと見(み)えて
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
眼口(めくち)を明けていられないどころか、地に積む沙が膝を埋めるほどに深くなって来たので、みな恐れて我れ勝(が)ちに逃げ出しましたが、逃げおくれた一人は又もや沙のなかへ生け埋めにされました。
「この頃大変心配なことが起りまして、夜も寝覚(ねざ)め勝(が)ちでございます」
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大火災(だいかさい)のときは、地震(ぢしん)とは無關係(むかんけい)に、旋風(せんぷう)が起(おこ)り勝(が)ちである。火先(ひさき)が凹(なかくぼ)の正面(しようめん)を以(もつ)て前進(ぜんしん)するとき、其(その)曲(まが)り角(かど)には塵旋風(ちりせんぷう)と名(な)づくべきものが起(おこ)る。又(また)川筋(かはすぢ)に接(せつ)した廣場(ひろば)は移動旋風(いどうせんぷう)によつて襲(おそ)はれ易(やす)い。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
老(おい)の目(め)は苦勞(くらう)に覺(さ)め勝(が)ち、苦勞(くらう)の宿(やど)る處(ところ)には兎角(とかく)睡眠(すゐみん)の宿(やど)らぬものぢゃが、心(こゝろ)に創(きず)が無(な)く腦(なう)に蟠(わだかま)りのない若(わか)い者(もの)は、手足(てあし)を横(よこ)にするや否(いな)や、好(よ)い心持(こゝろもち)に眠(ねむ)らるゝ筈(はず)ぢゃに、かう早(はや)う起(お)きさしゃったは
みんなはわれ勝(が)ちに中をのぞきこんだ。顔をしかめる者、ぺっぺっと唾(つば)を吐く者。中には仔猫の死骸(しがい)が入っていた。それと赤い紐が一本……。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
走り過るトラツクの灯に、眞直な國道の行手までが遙に照し出されるたび/\、荷車や人の往來(ゆきゝ)も一歩々々途絶え勝(が)ちになることが能く見定められる。
或夜 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
さあ、そんなことは考(かんが)えつかないが、人間(にんげん)は、道徳(どうとく)などというものをまったく忘(わす)れて、強(つよ)いもの勝(が)ちとなり、国(くに)と国(くに)の約束(やくそく)などというものはなくなってしまうだろう……。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
お爺(じい)さんは眉(まゆ)一(ひと)つ動(うご)かされず、済(す)まし切(き)って先(さ)きに立(た)たれますので、私(わたくし)も黙(だま)ってその後(あと)について出掛(でか)けましたが、しかし私(わたくし)の胸(むね)の裡(うち)は千々(ちぢ)に砕(くだ)けて、足(あし)の運(はこ)びが自然(しぜん)遅(おく)れ勝(が)ちでございました。
その辺は郊外のことで、住宅といっては、庭の広い一軒家がまばらに建っているばかりで、昼間でも往来は途絶(とだ)え勝(が)ちなのだ。殆ど思考力を失った庄太郎は、その田舎(いなか)道をフラフラと歩いて行った。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
走り過るトラックの灯に、真直(まっすぐ)な国道の行手までが遥に照し出されるたびたび、荷車や人の往来(ゆきき)も一歩一歩途絶え勝(が)ちになることが能く見定められる。
或夜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一座の学者たちは、それまでの態度をすてて、われ勝(が)ちに席をたって、長良川博士に握手をもとめるのであった。それを見て、ドリー老助教授の喜ぶ顔ったらなかった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『今日(きょう)は良(よ)うこそ私(わたくし)をお召(よ)びくださいました。』と守護霊(しゅごれい)さんはいつもの控(ひか)え勝(が)ちな態度(たいど)の中(うち)にも心(こころ)からのうれしさを湛(たた)え、『私(わたくし)がこちらの世界(せかい)へ引移(ひきう)つてから、かれこれ四百年(ねん)にもなりますが、 ...
何が幸(さいわい)になるか判らないもので、「赤外線男」に抱きつかれたダンサーというので、いままでアブれ勝(が)ちだったのが急に流行(はやり)っ児(こ)になって、シートがぐんぐん上へ昇っていった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
吾(わ)れ勝(が)ちに向こうへ逃げてゆく有様が、おかしいほどはっきりとうつっていた。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)