“丈(だ)” の例文
ただパインアップル丈(だ)けはよく好まれ、病気になられてからは、枇杷(びわ)だの何だのの缶詰を召上られたが、平生は概して上らなかった。
解説 趣味を通じての先生 (新字新仮名) / 額田六福(著)
際涯(はてし)のない暗闇の中に、私達の細長い車室丈(だ)けが、たった一つの世界の様に、いつまでもいつまでも、ガタンガタンと動いて行った。
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
生田は二人の入来るを見て別に驚く様子も無く立来りて丁寧に「何の御用でお出に成りました」と問う、目科は斯(かゝ)る事に慣れし丈(だ)け
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私の行つてゐる学校ではテニスの道具はありましたけれどそれは先生方の道具で先生丈(だ)けしかそれではあそぶことが出来ませんでした。
「承知しました。今度の日曜に行って出来る丈(だ)け早く切り上げさせましょう。一日でも早ければそれ丈け伯母さんの顔が立つ次第(わけ)です」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分の子があさましかった。が、あさましいのは、自分の子丈(だ)けではなかった。もっと、あさましいのは、自分自身であったのだ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
文句はプツリと切れて居りますが、それ丈(だ)けに凄味は一(ひ)と入(しお)で、千種十次郎も何んとなく背筋に冷たいものの走るのを感じます。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ペテルブルグに行(い)つてからもドクトルは猶且(やはり)同樣(どうやう)、宿(やど)にのみ引籠(ひきこも)つて外(そと)へは出(で)ず、一日(にち)長椅子(ながいす)の上(うへ)に横(よこ)になり、麥酒(ビール)を呑(の)む時(とき)に丈(だ)け起(おき)る。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
土地に縁のある丈(だ)けリユウバンスとヷン・ダイクの作を多く蔵(をさ)めて居るが、巴里(パリイ)や倫敦(ロンドン)で見受ける様な二家(か)の傑作は見当らない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
又或時は「だが、此事はほんの俺の幻想に過ぎないんじゃないか、ただそんな風な気がすると云う丈(だ)けのことじゃないか、でなけりゃ……」
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
その中に、タツタ一人、年老た、淋しい一人の人丈(だ)けが、黙々としてその墓碑の前に立ちました、それはホイツトマンでした。
ポーの片影 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みんなむしらうと思ったのだがあんまり可哀さうでな。教育料はわしから出さう。一ヶ月八百円に負けて呉(く)れ。今月分丈(だ)けはやって置かう。
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
マダ自分へ課せられた使命は果されていないからこれから足腰の達者な間はこの闊い天然の研究場で馳駆し出来る丈(だ)け学問へ貢献するのダ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
見ることは止(や)めにして、サア写すのだ。併(しか)し千頁もある大部の書を皆写すことは迚(とて)も出来(でき)られないから、末段のエレキトルの処丈(だ)け写そう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今日ではこのアーチの下をば無用の空地(くうち)にして置く丈(だ)けの余裕がなくなって戸々勝手にこれを改造もしくは破壊して了(しま)った。
銀座界隈 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何人も満足せしめ得る程に明らかに自分は考えて居ないかも知れない、けれ共自分を満足せしむる丈(だ)けには、相当の考えを持って居る意(つもり)である。
「あの詰らない花を貴方、買つて下さいましたのですつてね。お蔭様でこれ丈(だ)けでも飾りが出来ましたんですのよ。」
勿論(もちろん)、電光艇(でんくわうてい)には試運轉式(しうんてんしき)の時(とき)に積入(つみい)れた發動藥液(はつどうやくえき)が、今(いま)も多少(たせう)は殘(のこ)つて居(を)るが、艇(てい)に殘(のこ)つて居(を)る丈(だ)けでは、一千海里(かいり)以上(いじやう)を進航(しんこう)するに足(た)らぬ程(ほど)で
くどい様ですけど此度の事の責任は全部私に任せて下さいね。そして貴方はお仕事の方丈(だ)けを専心遣つて下さいね。
獄中の女より男に (新字旧仮名) / 原田皐月(著)
泣く丈(だ)け泣いたごぼうは、鏡の前に行つて、カミソリで、毛をすりおとさうとしましたが、かたくてとれません。
ゴボウ君と大根君 (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
食(しよく)の本義(ほんぎ)に就(つい)て、生理衞生(せいりえいせい)の學理(がくり)を講釋(かうしやく)した處(ところ)で、夫(そ)れ丈(だ)けでは決(けつ)して要領(えうれう)は得(え)られない、何(なん)となれば、食(しよく)の使命(しめい)は人身(じんしん)の營養(えいやう)にあることは勿論(もちろん)であるが
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
突き当つて一軒それから左へ百坪程の空地だ。ダリアが処々にニヨキ/\生へてる外(ほか)少し洗濯ものが乾してある丈(だ)け、こゝに先生の旧仮宅があつたと云ふ。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
これを解禁後(かいきんご)の推定相場(すゐていさうば)四十九弗(ドル)八分(ぶん)の三と比較(ひかく)すると其(そ)の差(さ)は僅(わづ)かに一弗(ドル)足(た)らずとなつて一割(わり)一分(ぶ)下(さが)つて居(を)つた爲替相場(かはせさうば)は九分(ぶ)丈(だ)け回復(くわいふく)した譯(わけ)であつて
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
饒舌(しゃべ)る丈(だ)け喋(しゃべ)って終ったらしく、表の男はなおも見舞いの言葉を繰り返しながら、そそくさと出て行った。と、急に気が付いたように、助五郎も立ち上った。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
山田源之助は、中気で、而(しか)も右腕に怪我をしていた筈(はず)だ。その源之助が、あれ丈(だ)け鮮(あざやか)に喜三郎の心臓を突き刺す事が出来ると思うかい? 一寸(ちょっと)六ヶ敷(し)い話だ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
魯西亜(ロシア)国と日本の条約中、第五ヶ条に、函館並びに下田丈(だ)ケは、既に魯西亜(ロシア)人緩優交易の発端御取り用ひ相成り候間、和蘭(オランダ)、亜米利加(アメリカ)、貌利太尼西(ブリタニア)国民の儀も
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
私は『白い光り』と『上野(うえの)の鐘』の二題に就(つ)いて、ざっと荒筋丈(だ)けをお話しようと思う、真に凄い怖いというようなところは、人々の想像に一任するより外(ほか)は無い。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
自画像と云つては恐らく此十六歳の時の丈(だ)けより無いだらうが、鏡を見ては描き見ては描きした事を思ひ出す。洗ひ髪のと笑つたのと此三枚が一ヶ処に描かれてゐる。
写生帖の思ひ出 (新字旧仮名) / 上村松園(著)
何しろ彼は、商売仲間では隼(はやぶさ)英吉と云う名で通って居る丈(だ)けに、年は若いが腕にかけては確乎(しっかり)したものである。尾行(つけ)られて居るのも知らない程茫然(ぼんやり)して居よう筈(はず)はない。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
多「でもマア斯うやって請取(うけとり)になって居りやんすから、そんなら二俵丈(だ)け戴いて置きましょう」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お母様も家(いへ)が貧乏な丈(だ)けにこれを聞くにつけてもお玉の美しいのがいぢらしくてなりませぬ。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
ラオチャンドの室——この室一つ丈(だ)けが病室から孤立していた、それも道理で、一時は其処が布団部屋にあてられていた事もあったのだが——を見舞ってやろうと決心した。
ラ氏の笛 (新字新仮名) / 松永延造(著)
ところが小田原(をだはら)から熱海(あたみ)までの人車鐵道(じんしやてつだう)に此(この)喇叭がある。不愉快(ふゆくわい)千萬な此(この)交通機關(かうつうきくわん)に此(この)鳴物(なりもの)が附(つ)いてる丈(だ)けで如何(どう)か興(きよう)を助(たす)けて居(ゐ)るとは兼(かね)て自分(じぶん)の思(おも)つて居(ゐ)たところである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それからのことは書く必要はあるまい。要するにすっかり陶酔する丈(だ)けのことなんだから。
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そしてそれを方々に担ぎ込むで、自分の代りに喋舌(しやべ)らしたものだ。この方が汽車賃も要らねば、旅宿(はたご)賃もかゝらないのだから、地方人に取つて、どれ丈(だ)け便利か判らなかつた。
力三のまる/\肥えた顔のなくなつた丈(だ)けでも、この店に取つては致命的な損失だつた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
松本は若い丈(だ)けに夜警団廃止の急先鋒、軍備縮小論者と云うのであるから、耐(たま)らない。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
それならば食事を賄(まかな)うより外に人を通わせぬよう致しますか、然(しか)し余り牢住居(ろうずまい)の様(よう)ではないか、ムヽ勝手とならば仕方がない、新聞丈(だ)けは節々(せつせつ)上(あげ)ましょう、ハテ要(い)らぬとは悪い合点(がてん)
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其(そ)の所有(しよいう)であり得(う)るのは作物(さくもつ)が根(ね)を以(もつ)て田(た)や畑(はた)の土(つち)に立(た)つて居(ゐ)る間(あひだ)のみである。小作料(こさくれう)を拂(はら)つて畢(しま)へば既(すで)に手(て)をつけられた短(みじか)い冬季(とうき)を凌(しの)ぐ丈(だ)けのことがともすれば漸(やうや)くのことである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
当時一般世人から軽蔑されたスピリチュアリズムが、漸(ようや)く堅実なる地歩を、天下に占(し)むるに至ったことにつきてはモーゼスの功労が、どれ丈(だ)け与(よ)って力あるか測り知れないものがある。
讀(よ)んでゐると、その冴(さ)えた力に驚(おどろ)き、亦引摺(ひきず)られても行きますが、さて頁を伏せて見て、ひよいと今作者(さくしや)に依つて描(ゑが)かれた人物の心理(しんり)を考へて見ると、人物の心理の線(せん)や筋(すぢ)丈(だ)けは極(きは)めて鮮(あざや)かに
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
愈江戸風の浮氣(うはき)には相當(あたり)不レ申候に付、夫丈(だ)けは御安心可レ被レ下候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
彼も亦相当の資産を擁(よう)し、諸方の会社の株主となって、その配当丈(だ)けで、充分贅沢(ぜいたく)な暮しを立てている、謂わば一種の遊民(ゆうみん)であった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其休むる時間丈(だ)け全く其事を忘れ尽して他の事を打楽しむ癖を生じたる如くなるも余には仲々其真似出来ず「然(さ)らば」とて夫婦に分れを
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
皆様にも出来得る丈(だ)け御勉強をおすゝめ致します。各自の内部の充実と云ふ事が すべての場合に於て最も望ましい事なのです。
印(いん)丈(だ)けは首にかけて持っていたから、こゝへ何うぞと言ったら、『こゝか?』と見当をつけて、スポンと掛け声をして捺(お)した。皆笑ったぜ
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「御飯の後、あの騷ぎのある迄、私とお直さんは一緒でした。どんな事があつても、お直さん丈(だ)けは下手人ぢや御座いません」
静子は、夫が免れた危険を想像する丈(だ)けで、可なり激しい感動に襲はれたと見え、目を刮(みは)つたまゝ暫らくは物も云はなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
富んで居る国民の設計丈(だ)けあつて、ブリユツセルの博物館も此処(ここ)のも立派な建築である。殊(こと)に此処(ここ)のは四方の庭園が広いので見栄(みばえ)がして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
今日までの成跡(せいせき)を以て見れば未(いま)だ失望の箇条もなく、先ず費(ついや)したる財と労とに報(むくい)る丈(だ)けの功をば奏(そう)したるものというべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)