“翳”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かざ55.7%
かげ30.6%
さ5.8%
かす1.7%
くもり1.0%
かげり0.6%
かざし0.6%
か0.6%
くも0.6%
つく0.4%
カゲ0.4%
サ0.4%
あた0.2%
えい0.2%
かく0.2%
かさ0.2%
かすみ0.2%
くら0.2%
さしは0.2%
ざし0.2%
カザ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
女房 水に目のお馴(な)れなさいません、貴女には道しるべ、また土産にもと存じまして、これが、(手に翳(かざ)す)その燈籠でございます。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町人ながら諸大名の御用達を勤め、苗字(みょうじ)帯刀(たいとう)まで許されている玉屋金兵衛は、五十がらみの分別顔を心持翳(かげ)らせてこう切出しました。
お鶴どんが其の傘を後から翳(さ)しかけて去(い)なはつたのを、わたへは山から戻りに見ましたけど、それや上品で、思はず頭が下がりました。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
が、不自由しなかったという条、折には眼が翳(かす)んだり曇ったりして不安に脅かされていたのは『八犬伝』巻後の『回外剰筆(かいがいじょうひつ)』を見ても明らかである。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
方棟は不思議な車もあったものだと思いながら家へ帰ってきたが、どうも目のぐあいが悪いので、人に瞼をあけて見てもらうと、睛(ひとみ)の上に小さな翳(くもり)が出来ていた。
瞳人語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ただいささか、ご当惑に見えたのは、帝のおたねをやどして早や三月か四月にあることを、彼女が咡(ささや)いたそれを聞かれたときのおん眉の翳(かげり)だけだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○さて又おんべといふ物を作りてこの左義長に翳(かざし)て火をうつらせ焼(やく)を祝事(しゆくじ)とす、おんべは御ン幣(へい)の訛言(くわげん)なり。
頭上に高く翳(か)ざしていた久田の姥の右の手が、この時にわかに脇へ垂れた。一髪の間に突き出した槍! したたか鳩尾(みぞおち)を貫いた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
黙つて此様を見て居た忠志君の顔には、胸にある不愉快な思が、自づと現れて来るのか、何様渋い翳(くも)が漲ツて、眉間(みけん)の肉が時々ピリ/\と動いた。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
三村屋安右衞門の顏には、絶望の色が濃い蔭を翳(つく)ります。
ほか/\した日よりなのに、其(ソレ)を見てゐると、どこか、薄ら寒く感じるほどである。時々に過ぎる雲の翳(カゲ)りもなく、晴れきつた空だ。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さすれば、此南島にある民間伝承の影が、一度は、我々の祖先の生活の上にも、翳(サ)してゐた事も考へられなくはない。
信太妻の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ぱちぱちと言(い)ふ音(おと)いさましく、青(あほ)き火(ひ)ひら/\と燃(も)へて火鉢(ひばち)の縁(ふち)のやゝ熱(あつ)うなれば、奧(おく)さまは何(ど)のやうな働(はたら)きをでも遊(あそば)したかのやうに、千葉(ちば)もお翳(あた)りと少(すこ)し押(おし)やりて、今宵(こよひ)は分(わ)けて寒(さむ)い物(もの)をと
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
若僧二人大なる孔雀(くじやく)の羽もて作りたる長柄の翳(えい)を取りて後に隨ひ、香爐搖り動かす童子は前に列びてぞゆく。輿に引き添ひて歩めるは
すなわちその法を以て具さに四人に授く。四人法に依りて此の薬を和合し、自ずからその身を翳(かく)し、游行自在なり。すなわち共に相将(ひき)いて、王の後宮に入る。
さも以(に)たり。近(ちか)づく儘(まゝ)に。馨(にほ)ふ香(か)は。そも時(かう)款貨舖(ぐや)の。娘(むすめ)かも。指(ゆび)に挾(はさ)める。香盆(かうばこ)の。何爲(なにこと)なりや。時々(とき/\)に。鼻(はな)に翳(かさ)して。嚊(か)くめるは。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
倦怠(アンニュイ)とはまるで正反対のあの幸福な気分、——心の視力を蔽うていた翳(かすみ)—— άχλυς ἤ πρἱν έπῆεν4 がとれ、知力は電気をかけられたように
群集の人 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
短檠(たんけい)の灯が翳(くら)くなる……
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「赤駒を打ちてさ緒(を)引き心引きいかなる兄(せな)か吾許(わがり)来むと言ふ」(巻十四・三五三六)、「渋渓(しぶたに)の二上山に鷲(わし)ぞ子産(こむ)とふ翳(さしは)にも君が御為に鷲ぞ子生(こむ)とふ」(巻十六・三八八二)があるのみである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
車は通らず、雨傘も威勢よくポンと轆轤(ろくろ)を開いたのでは、羽目へ当って幅ったいので、湯の帰りにも半開(はんびらき)、春雨捌(さば)きの玉川翳(ざし)。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
単に演劇的の要素を入れると言ふだけならば、必しも刀を振り翳(カザ)すものと、此を受けるものとの対立だけにしなくともよい筈である。