“輻(や)” の例文
其(その)車(くるま)の輻(や)は手長蜘蛛(てながぐも)の脛(すね)、天蓋(てんがい)は蝗蟲(いなご)の翼(はね)、※(むながい)は姫蜘蛛(ひめぐも)の絲(いと)、頸輪(くびわ)は水(みづ)のやうな月(つき)の光線(ひかり)、鞭(むち)は蟋蟀(こほろぎ)の骨(ほね)、其(その)革紐(かはひも)は豆(まめ)の薄膜(うすかは)
俥(くるま)は幌(ほろ)を深(ふか)くしたが、雨(あめ)を灌(そゝ)いで、鬱陶(うつたう)しくはない。兩側(りやうがは)が高(たか)い屋並(やなみ)に成(な)つたと思(おも)ふと、立迎(たちむか)ふる山(やま)の影(かげ)が濃(こ)い緑(みどり)を籠(こ)めて、輻(や)とともに動(うご)いて行(ゆ)く。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夕映えは彼らの行先の西空をひろく染めて、金色にふちどられた雲の峯の下から、残照のまっすぐな光が車の輻(や)のように放射状に幾条も空へのぼっていた。
その一年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
佐八が自分で造ったのだろう、天床(てんじょう)もない板壁の、掘立て小屋のようなもので、車の輻(や)を作る材料や道具類が、一枚敷いた薄縁のまわりにちらばっていた。
「今日中はだめです。二本の輻(や)と轂(こしき)とを直さなきゃあなりません。明日までは出かけられませんぜ。」
粉碾車(こひきぐるま)をめぐらさんとて樋(ひ)をゆく水の、輻(や)にいと近き時といへどもそのはやきこと 四六—四八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その車輪には輻(や)に代へて単に三つの厚い板を片仮名の「キ」の字形に交叉したに過ぎない。それを挽く馬は貨物の重量と路次の遠近に由つて四五頭から十頭までを附けてゐる。
下なる輻(や)は上なる輻となれば、足を低き輻に踏みかけて、旋(めぐ)るに任せて登るときは、忽ち車の上にあるべし。(アルバノの農車はいと高ければ、農夫等かくして登るといふ。)
車の輻(や)は消えて、まるで一枚の円板のようになってしまう、道がぐらぐらっと震動し、徒歩の人がおっ魂消て、アッと叫び声をあげたかと思うと——もう三頭馬車(トロイカ)は矢のように
二人がその白い道を、肩(かた)をならべて行きますと、二人の影は、ちょうど四方に窓のある室(へや)の中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪の輻(や)のように幾本(いくほん)も幾本も四方へ出るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
車の輻(や)のような茜色(あかねいろ)の後光を大空いっぱいに美しく反射している。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
馬子は車輪に肩をあてて両手で輻(や)を押しながら
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
輻(や)の數八の黄銅の輪を車體にぞ据え付くる
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
炎の搦(から)んだように腰の布が紅(くれない)に裂けて、素裸(すはだ)であろう、黒髪ばかり蓑(みの)のごとく乱れた、躯(むくろ)をのせた、輻(や)が軋(きし)り、轍(わだち)が轟(とどろ)き、磽确(こうかく)たる石径を舞上って
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
郵便馬車との衝突のために、車輪の輻(や)が二本折れ、轂(こしき)がゆがんで螺旋(ねじ)がきいていなかった。
二人(ふたり)がその白い道を、肩(かた)をならべて行きますと、二人(ふたり)の影(かげ)は、ちょうど四方に窓(まど)のある室(へや)の中の、二本の柱(はしら)の影(かげ)のように、また二つの車輪(しゃりん)の輻(や)のように幾本(いくほん)も幾本(いくほん)も四方へ出るのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
親方の家に住込みで、やはり車の輻(や)を作る職人だったが、早く亡くなった両親は、奥州のどこやらの出だと聞いただけで、彼は十五の年にみなし児になり、親方夫婦を親ともみよりとも頼んで育った。
忽(たちま)ち見(み)る、車(くるま)の輻(や)は銀(ぎん)に、轍(わだち)は緑晶(ろくしやう)を捲(ま)いて、水(みづ)が散(ち)つた。奥入瀬川(おいらせがは)の瀬(せ)に入(い)つたのである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ロココ・ゼジュイット式の祭壇の前に数時間じっと想を凝らし、そしてそこで、大理石像の群の間に、金箔(きんぱく)をかぶせた木材の大きな円光の輻(や)の中に、自分の心を翔(か)けらせるのであった。
八人(にん)では第(だい)一乗溢(のりこぼ)れる。飛(と)ぶ輻(や)の、あの勢(いきほ)ひで溢(こぼ)れた日(ひ)には、魔夫人(まふじん)の扇(あふぎ)を以(もつ)て煽(あふ)がれた如(ごと)く、漂々蕩々(へう/\とう/\)として、虚空(こくう)に漂(たゞよ)はねばなるまい。それに各(おの/\)荷(に)が随分(ずゐぶん)ある。恁(か)くいふ私(わたし)にもある。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「繩(なわ)で輻(や)を縛ったら?」