“世(せ)” の例文
と、そのとたんに、蛾次郎は、一世(せ)一代(だい)の泣き声をあげてお時のひざにそのきたない顔を、むちゃくちゃにコスリつけていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いい得べくんば一世(せ)の山師! それにさ風采(ふうさい)がまことによろしい。だまって坐っておられると、十万石のお大名でござんす」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よいか一旦仇を討ったる後(あと)は三世(せ)も変らぬ主従と心得てくれ、敵同士でありながら汝の奉公に参りし時から、どう云う事か其の方(ほう)が我が子のように可愛くてなア
頭腦(あたま)の中(なか)を此樣(こん)な事(こと)にこしらへて一軒(けん)ごとの格子(かうし)に烟草(たばこ)の無理(むり)どり鼻紙(はながみ)の無心(むしん)、打(う)ちつ打(う)たれつ是(こ)れを一世(せ)の譽(ほまれ)と心得(こゝろゑ)れば、堅氣(かたぎ)の家(いゑ)の相續息子(そうぞくむすこ)地廻(ぢまわ)りと改名(かいめい)して
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
後で詳(くわ)しく聞いた話ですけれど、二人の怪人の戦慄(せんりつ)すべき暴行について、小田原署の署長さんは一世(せ)一代(だい)の智慧をふりしぼって、あの非常手段をやっつけたのでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そりや面白うごわすな、一つ演(や)つてみようぢやごわりませんか。」安物の武士道の鼓吹者は血を啜(すゝ)るやうな気持で、ぐつと熱燗(あつかん)の酒を呷飲(あふ)つた。「お互に一世(せ)一代の積りでな。」
この直槙の形が家(や)の内へ顕(あら)われると、棟、柱、梁(はり)に祟(たた)られた同然に、洞斎兄は影を消すように引越して、あとをくらまかいた、二十何年もたって、臨終にも、目を瞑(つむ)らず、二世(せ)三世までも苦しんだ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今はただひと株の臘梅のみぞ十六世(せ)の孫には伝はりたりける。
臘梅 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「ウム、野郎(やろう)め。まだあいつの足では御岳(みたけ)の試合場(しあいじょう)までは行きつきはしめえ。……なんの見ていやがれ、早足(はやあし)の燕作(えんさく)が一世(せ)一代(だい)にすッ飛んでくれるから」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三世(せ)も変らぬ主従(しゅうじゅう)と心得、飯島の家(いえ)を再興してくれろ、急いで行(ゆ)けと急(せ)き立てられ、養家先なる水道端の相川新五兵衞の宅へ参り、舅と共に書置を開いて見れば
頭脳(あたま)の中をこんな事にこしらへて、一軒ごとの格子に烟草(たばこ)の無理どり鼻紙の無心、打ちつ打たれつこれを一世(せ)の誉(ほまれ)と心得れば、堅気の家の相続息子地廻(じまわ)りと改名して
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
甲「頭には二十一世(せ)脚には二十二世でわたしの身は二十二世です」(二十二字目は通の字に当る)
それを思ふと、情死(しんぢゆう)する場合の他は、相手に二世(せ)の約束だけはしない方がよい。
鞍馬(くらま)そだちの竹童も、こよいは一世(せ)一代(だい)のはなれわざだ。果心居士(かしんこじ)うつしの浮体(ふたい)の法で、ピタリと、クロの翼(つばさ)の根へへばりつき、両端(りょうはし)へ火をつけた松明(たいまつ)をバラバラおとす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何しろ口惜(くやし)くて祟(たゝ)る幽霊ではなく、只(たゞ)恋しい/\と思う幽霊で、三世(せ)も四世も前から、ある女がお前を思うて生きかわり死にかわり、容(かたち)は種々(いろ/\)に変えて附纒(つきまと)うて居(い)るゆえ、遁(のが)れ難(がた)い悪因縁があり