“枝(し)” の例文
一枝(し)の竹管(ちくかん)をもって托鉢(たくはつ)する者は、誰でも宿泊できるが、弦之丞は京都寄竹派(きちくは)の本則をうけているので、この寺とはまったくの派違いだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はつねに思う、一枝(し)の花のなかに千種の花を見えぬ者は花を語るに足らぬと。すなわち理想を論ずる者は一の中に千万の数を読むを要する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
或(ある)日の事、自分は昼飯を喫(た)べて後(のち)、あまりの徒然(とぜん)に、慰み半分、今も盛りと庭に咲乱(さきみだ)れている赤い夏菊を二三枝(し)手折(たお)って来て、床の間の花瓶に活(い)けてみた
鬼無菊 (新字新仮名) / 北村四海(著)
(絃歌に先だちて十五章の讀誦あり。壇上に巨燭十五枝(し)を燃やしおきて、一章終るごとに一燭を滅す。)
色白の首筋に紺の腹がけ、さりとは見なれぬ扮粧(いでたち)とおもふに、しごいて締めし帯の水浅黄(みづあさぎ)も、見よや縮緬(ちりめん)の上染(じようぞめ)、襟(ゑり)の印のあがりも際立(きわだち)て、うしろ鉢巻きに山車(だし)の花一枝(し)
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三つの雄蕊(ゆうずい)は幅広き花柱枝(かちゅうし)の下に隠れて、その葯(やく)は黄色を呈(てい)しており、中央の一花柱(かちゅう)は大きな三枝(し)に岐(わ)かれて開き、その末端(まったん)に柱頭(ちゅうとう)があり、虫媒花(ちゅうばいか)であるこの花に来る蝶々(ちょうちょう)が
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
哀悼(あいとう)愁傷、号泣慟哭、一枝(し)の花に涙を灑(そそ)ぎ、一縷(る)の香に魂(こん)を招く、これ必ずしも先人に奉ずるの道にあらざるべし。五尺の男子、空しく児女の啼(てい)を為(な)すとも、父の霊豈(あに)懌(よろこ)び給わんや。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『何うもむづかしいもんだ、読むで理解するといふことも。香川景樹(かがはかげき)の歌集、あの一冊の桂園(けいゑん)一枝(し)、あれだけでも、本当に理解したといふ段になると、一生かゝつて何遍も何遍も身読(しんどく)して見なければ分らぬものだ』
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
と、矢立から筆を出して、自身の扇子へ、さらさらと、一枝(し)の桜花(さくら)と、一首の歌を書いてくれた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
色白(いろじろ)の首筋(くびすぢ)に紺(こん)の腹(はら)がけ、さりとは見(み)なれぬ扮粧(いでだち)とおもふに、しごいて締(し)めし帶(おび)の水淺黄(みづあさぎ)も、見(み)よや縮緬(ちりめん)の上染(じやうぞめ)、襟(えり)の印(しるし)のあがりも際立(きわだち)て、うしろ鉢卷(はちま)きに山車(だし)の花(はな)一枝(し)
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
葉片(ようへん)は心臓状卵形で尖(とが)り、葉縁(ようえん)に針状歯(しんじょうし)があり、花後(かご)にはその葉質(ようしつ)が剛(かた)くなる。かく小葉(しょうよう)が一葉(よう)に九片(へん)あるので、それで中国でこの草を三枝(し)九葉草(ようそう)というのだが、淫羊藿(いんようかく)というのがその本名である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
婢女(はしため)ども気味わるがりて咡(ささや)き合ひしが、門の扉の明(あけ)くれに用心するまでもなく、垣に枝(し)だれし柿の実ひとつ、事もなくして一月あまりも過ぎぬるに、何時(いつ)となく忘れて噂も出ず成(なり)しが
琴の音 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『春ならば、梨花(りか)の一枝(し)』
哀(あは)れ手向(てむけ)の花(はな)一枝(し)に千年(ねん)のちぎり萬年(まんねん)の情(じやう)をつくして、誰(た)れに操(みさを)の身(み)はひとり住(ずみ)、あたら美形(びけい)を月花(つきはな)にそむけて、世(よ)は何時(いつ)ぞとも知(し)らず顏(がほ)に、繰(く)るや珠數(じゆず)の緒(を)の引(ひ)かれては御佛(みほとけ)輪廻(りんゑ)にまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梨花(りか)一枝(し)春帯雨(はるあめをおぶ)
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)