“震(ふ)” の例文
中腰になったままで、ぼんのくぼへ、ずッぷり鍼をおろして、二三度強く震(ふ)りこんだ。……度胸がいいようだが、やったとなると、あとはもう逃げ出したい一心。
顎十郎捕物帳:06 三人目 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
山路になりてよりは、二頭の馬喘(あえ)ぎ喘ぎ引くに、軌幅(きふく)極めて狭き車の震(ふ)ること甚しく、雨さえ降りて例の帳閉じたれば息(いき)籠(こ)もりて汗の臭(か)車に満ち、頭痛み堪えがたし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
春の雷(いかずち)に震(ふ)り落された花のように、お濠端(ほりばた)を、諸藩の家臣が駈けてゆく。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの日は津田君の「出雲崎(いずもざき)の女」が問題になっていて、喫茶室で同君からそのゆきさつの物語を聞いているうちに震(ふ)り出したのであった。その津田君は今年はもう二科には居なくなったのである。
二科展院展急行瞥見 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)