“躍(と)” の例文
彼の影が、典馬の背へ、重なるように躍(と)びかかったと見えた時に、黒樫の木剣から、血が噴いて、こうもの凄い悲鳴が聞えた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくて一生懸命に走って今一足で嶺に達するという刹那(せつな)蛙が野猪の頸からポイと躍(と)んで絶頂へ着いたので野猪我は蛙にして遣(や)られたと往生を唱うた
女は躍(と)びかかるような姿勢で、杜の方に、身体をねじ向けた。青白い蝋の塊のような肉づきのいい胸元に、水色の半襟のついた膚襦袢(はだじゅばん)がからみついていた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうして数日すぎたところで、夜半比(よなかごろ)になって玉音が急に苦しみはじめた。一所(いっしょ)に寝ていた名音は驚いて躍(と)び起きた。玉音は両手で虚空(こくう)を掴(つか)み歯を喰いしばって全身を痙攣(けいれん)させた。
法華僧の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
身輕に躍(と)んだ
故郷の花 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
遠州今切の渡し昔は山続きの陸地なりしが百余年ばかり前に山中より螺貝(ほらがい)夥しく抜け出で海へ躍(と)び入り、跡殊(こと)のほか崩れて荒井の浜より一つに海になりたる事
土民集まり土を掘ってかの児を獲たが、穴さえ見れば這入(はい)らんとす、大人を見て憚る色あったが小児を見れば躍(と)び付いて咬もうとした、煮た肉を嫌い生肉と骨を好み犬のごとく手で押えいた