“火(か)” の例文
是(これ)は偉(えら)い!……畫伯(ぐわはく)の自若(じじやく)たるにも我折(がを)つた。が、御當人(ごたうにん)の、すまして、これから又(また)澁谷(しぶや)まで火(か)を潛(くゞ)つて歸(かへ)ると言(い)ふには舌(した)を卷(ま)いた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
奥のほうから、ムーッと温(ぬる)い火(か)ッ気(き)が流れてきて、うろたえ廻る裾(すそ)や袂(たもと)に、渦になった黒煙が真綿(まわた)のようにまつわりだす。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「蝎(さそり)ぼしが向うを這(は)っていますね。あの赤い大きなやつを昔(むかし)は支那(しな)では火(か)と云ったんですよ。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それゆえこの四つに帰る道があるので、土(ど)に帰るのは地(ち)それから水(すい)、火(か)として鳥に食わすのがすなわち風(ふう)に帰るのであるという説明なんです。大抵まあ僧侶は皆鳥に食わせる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
五行とは木(もく)、火(か)、土(ど)、金(きん)、水(すい)の五種にて、その名目は『書経』の中に出てあるけれど、これを一般に吉凶禍福の判断に用うるようになりたるは、秦漢の時代より後ならんと思う。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この棟(むね)の低い支那家(しないえ)の中には、勿論今日も坎(かん)の火(か)っ気(き)が、快(こころよ)い温(あたたか)みを漂わせていた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だいみょうも こじきも おなじ 月(つき)は月(つき)、水(すい)、火(か)、風(ふう)の うつけもの奴(め)らッ!
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
と万吉は、その時こそ、まったく、煙を吸う苦しさも火(か)ッ気(き)も、身に感じなくなっていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どんどは 火(か)そう 二十日(はつか) ほねあげ
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
火の気もなく、ただ一火(か)の松あかりを灯皿(ひざら)にくべて、客の来意を、聴(き)いたのであった。
まるで鉄を熔(と)かしている炉の窓のようであり、それとともに唇(くち)は、下腹からしている呼吸を、極めて平調に通わせているかのように見せていても、実は韛(ふいご)のような熱臭(くさ)い火(か)ッ気(き)をもっていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)