“慰(い)” の例文
且亡父母の素願(そがん)あるを貫き、霊位を慰(い)するの慈善的なる学事の基礎を創立せん事を予(あらかじ)め希望する事あるを以て、明治三十五年徳島を退く事とせり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
余はいささかこれをもってなんじの老境を慰(い)し、なんじの笑顔を開くの着歩なりと信ず。ゆえに余は謹んでこの冊子を余が愛しかつ敬する双親(そうしん)の膝下(しっか)に献ず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
此に於て竹葉上に点々(てん/\)滴(したた)れる所の露(つゐ)を甞(な)め、以て漸く渇(かつ)を慰(い)す、吉田署長病再発(さいはつ)し歩(あゆ)むに堪(た)へず、遂(つゐ)に他の三名と共に帰途(きと)に就(つ)かる、行者参(まゐ)り三人も亦心(こころ)淋(さび)しくやなりけん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
些細な不行届(ふゆきとどき)にすら請人を呼び付けてキュウキュウ談じつけなければ腹の虫が慰(い)なかったのだから、肝癖(かんぺき)の殿様の御機嫌を取るツモリでいるものでなければ誰とでも衝突した。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そして「——おゆるしがあるなら、お仲間のうちへ加えていただきましょう。しかし、心にかかるのは、都に残してある老母や妻子です。この悩みを慰(い)すべき道がありません」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君兪は名家に生れて、気位(きぐらい)も高く、かつ豪華で交際を好む人であったので、九如は大金を齎(もた)らして君兪のために寿(じゅ)を為し、是非ともどうか名高い定鼎を拝見して、生平(せいへい)の渇望を慰(い)したいと申出(もうしだ)した。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
亦長凡一里の伏流(ふくりう)を発見(はつけん)したり、其(その)奇(き)なる一は一行の疲労(ひらう)を慰(い)するに足(た)り、一は大に学術上の助(たすけ)を与(あた)へたり、遂(つゐ)に六千呎の高きに至(いた)りて水全(まつた)く尽き、点々一掬(きく)の水となれり、此辺の嶮峻(けんしゆん)其極度に達(たつ)し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)