“食(し)” の例文
子曰く、賢なるかな回や、一箪(いったん)の食(し)、一瓢(いっぴょう)の飲(いん)、陋巷(ろうこう)にあり。人は其の憂いに堪(た)えざらんも、回は其の楽しみを改めず。賢なるかな回や。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
時に兄の利吒(りた)は托鉢(たくはつ)なして食(し)を得んと城中(まち)に入りしが、生憎(あやにく)布施するものもなかりければ空鉢(くうはつ)をもて還(かえ)らんとしけるが、途(みち)にて弟に行遇(ゆきあ)ひたり。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
中には諺(ことわざ)にも申します、一口茄子(なす)に食(し)てやるは可惜(あったら)もの、勿体ないと、神棚へ上げて燈明(みあかし)の燈心を殖(ふや)しまして、ほほう、茄子ほどな丁子(ちょうじ)が立った
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、権門に媚(こ)びる徒輩の滔々(とうとう)として横行する澆季(ぎょうき)を歎じているが、一箪(いったん)の食(し)一瓢(いっぴょう)の飲に満ち足りる沢庵にとって、公界は或いは苦界と見えたかも知れない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の仲の兄も亦(また)亡せたれば、孤身依(よ)るところなく、遂(つい)に皇覚寺(こうかくじ)に入りて僧と為(な)り、食(し)を得んが為(ため)に合淝(ごうひ)に至り、光(こう)固(こ)汝(じょ)頴(えい)の諸州に托鉢(たくはつ)修行し、三歳の間は草鞋(そうあい)竹笠(ちくりゅう)
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寂照は「あな、とうと」と云いて端然(たんねん)と食(し)を摂(と)り、自他平等利益(りやく)の讃偈(さんげ)を唱えて、しずかに其処を去った。戒波羅密や精進波羅密、寂照は愈々(いよいよ)道に励むのみであった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
施行(せぎょう)の食(し)は彼の我に与うるによって彼の檀波羅密(だんはらみつ)を成(じょう)じ、我の彼に受けて酬(むく)いるに法を与うるを以てするの故に、我の檀波羅密を成じ、速疾得果の妙用を現ずるを観た。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
衣(え)二、食(し)四、住(じゅう)六の法式の中(うち)の、第三、常乞食(じょうこつじき)の法が自然に十二行の中枢たるの観を為すに至っているので、頭陀行をすると云えば乞食をするということのようになっている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
祷(いのり)には効あり、言(ことば)には験(げん)ありければ、民翕然(きゅうぜん)として之に従いけるに、賽児また饑者(きしゃ)には食(し)を与え、凍者には衣を給し、賑済(しんさい)すること多かりしより、終(つい)に追随する者数万に及び、尊(とうと)びて仏母と称し
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
豈(あに)憂へんや 食(し)と衣(い)とを。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)