“鈷(こ)” の例文
五二壇場(だんぢやう)の御前なる三鈷(こ)の松こそ此の物の落ちとどまりし地(ところ)なりと聞く。すべて此の山の草木泉石(せんせき)霊(れい)ならざるはあらずとなん。
といふ掛声(かけごゑ)とゝもに、制吒迦(せいたか)の如(ごと)く顕(あら)はれて、写真機(しやしんき)と附属品(ふぞくひん)を、三鈷(こ)と金剛杵(こんがうしよ)の如(ごと)く片手(かたて)にしながら、片手(かたて)で、帯(おび)を掴(つか)んで、短躯小身(たんくせうしん)の見物(けんぶつ)を宙(ちう)に釣(つ)つて泳(およ)がして引上(ひきあ)げた英雄(えいゆう)である。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ただし『今昔物語』十一や『弘法大師行化記(ぎょうけき)』に、大師初めて南山に向った時、二黒犬を随えた猟人から唐で擲(な)げた三鈷(こ)の行き先を教えられたとあり、この黒犬が大師を嚮導(きょうどう)したらしいから
遠く四八唐土(もろこし)にわたり給ひ、あの国にて四九感(め)でさせ給ふ事おはして、此の五〇三鈷(こ)のとどまる所、我が道を揚(あ)ぐる霊地(れいち)なりとて、杳冥(そら)にむかひて抛(な)げさせ給ふが、五一はた此の山にとどまりぬる。