“那(な)” の例文
「だ、だん那(な)。なにをとんでもねえこと仰っしゃって。あっしゃあ、ごらんの通り、この夏の暑気(しょき)あたりで、うんうん、高い熱で唸って寝ている始末じゃござんせんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青木 まず最初、卵が水面に触れたせつ那(な)を考えましょう。水面の世界では、これが一つの点としか見えません、何しろ、水面より高いところも低い所も見えないのですから。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのせつ那(な)に、奧(おく)さんのまぶたに一杯(ぱい)にじんでゐた涙(なみだ)にひよいと氕(き)がつくと、今まで何氕(なにげ)なさを装(よそほ)つてゐた青木さんの心は思(おも)はずよろめいた。青木さんはあわててイスから立(た)ち上つた。
夢 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
人この裏(うち)に立ちて寥々冥々(りようりようめいめい)たる四望の間に、争(いかで)か那(な)の世間あり、社会あり、都あり、町あることを想得べき、九重(きゆうちよう)の天、八際(はつさい)の地、始めて混沌(こんとん)の境(さかひ)を出(い)でたりといへども、万物未(いま)だ尽(ことごと)く化生(かせい)せず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)