“遏(や)” の例文
扨、其続きだが、小便の音もぢきに遏(や)んでしまつた。と思ふ内、沙漠先生、何と思つたか俺を捕へた。と、それから後は君と同じ。
俺の記 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
灯影の疎(まば)らなその町へ来ると、急に話を遏(や)めて、女から少し離れて溝際(どぶぎわ)をあるいていた浅井の足がふと一軒の出窓の前で止った。
爛 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
貫一は吾を忘れて嗤笑(あざわら)ひぬ。彼はその如何(いか)に賤(いやし)むべきか、謂はんやうもあらぬを念(おも)ひて、更に嗤笑(あざわら)ひ猶嗤笑ひ、遏(や)めんとして又嗤笑ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
こたびはアヌンチヤタ又ひとり出でて短き謝辭を陳(の)べたり。此時我詩は花束と共に歌女が足の下に飛べり。呼ぶ聲は未だ遏(や)まねど、幕は復た開かず。
荒い歔欷(すすりなき)が、いつまで経っても遏(や)まなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)