“蓄(か)” の例文
韓退之(かんたいし)がいわゆる、牛溲馬勃(ぎゅうそうばぼつ)、ともに収め並びに蓄(か)うで、良医が用うれば馬糞も大功を奏し、不心得な奴が持てば金銭も馬糞同然だ。
「幸七は溜め込んでゐることは確かで、伊勢町に妾を蓄(か)つて置いて、其處を家搜しすると、押入から千兩近い金が出て來たんだから、言ひ遁(のが)れやうはありません」
背戸(せど)に蓄(か)つて御覽(ごらん)なさい、と一向(いつかう)色氣(いろけ)のなささうな、腕白(わんぱく)らしいことを言(い)つて歸(かへ)んなすつた。——翌日(よくじつ)だつけ、御免下(ごめんくだ)さアい、と耄(ぼ)けた聲(こゑ)をして音訪(おとづ)れた人(ひと)がある。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
次に鶏肋(けいろく)として存じて置きたい一話は、蘭軒が猫を愛したと云ふ事で、その蓄(か)つた所の桃花猫(とき)と呼ばれた猫の伝さへ口碑に遺つてゐる。これより伊沢氏桃花猫(たうくわべう)の伝に入る。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
甘(かん)の父親がまだ生きている時、甘の家には一羽の鸚鵡を蓄(か)ってあったが、ひどく慧(りこう)な鳥であった。ある時珏はその鸚鵡に餌(えさ)をやった。それは珏が四つか五つの時であったが、父親に訊いた。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
前文に述べた通り伏蔵ある地窖(あなぐら)や廃墟や沼沢には蛇や蜥蜴類が多く住み、甚だしきは鱷を蓄(か)って宝を守らせた池もある故
そこでその少年は利益を得ようと思って、その値(ね)を高くしたが買う者がなかった。少年は成が虫を捕ったということを聞いて、その虫も負かすつもりで、成の家へいって、成の蓄(か)っている虫を見た。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
古ケルト人もっともこれを信じ、特別の白馬を公費もて神林中に蓄(か)い、大事あるに臨みこれを神車の直(じき)あとに随わしめ、その動作嘶声(しせい)を察して神意を占うた。