“荒(し)” の例文
「やっぱり吹いてるな……プルルル」とサモイレンコが言った、「これじゃ外海は荒(し)けとるぞ、やれやれ。悪いときに発つもんだな、コーリャ。」
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
眠るは春の凪日和(なぎびより)、沖の凩(こがらし)吹っ立って、鞺鞳(どうどう)の浪凄(すさ)まじき此処は堺の港まち、荒(し)けの空とぶ綿雲の切間を、覗(のぞ)く冬月の、影物凄き真夜中ごろ、廓(くるわ)に近き裏町を黒羽二重(くろはぶたえ)に朱色の下着
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのおり、海は湧き立ち泡立って、その人たちにあらんかぎりの威嚇(いかく)を浴(あび)せた。荒(し)けあとの高い蜒(うね)りが、岬の鼻に打衝(ぶつ)かると、そこの稜角で真っ二つに截(た)ち切られ、ヒュッと喚声をあげる。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)