“現(で)” の例文
自分に内緒で妻が株券などを貢いだのはどんな男だろうと思っていると、暫時して豊陽館から現(で)てきたのは、思掛けない浅田自身の弟であった。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
とはいえ、それは象(かたち)で現(で)ているものではない。うかと放言して、味方に徒(いたず)らな緊張を起させ、誤っては、父の失態、また敵に乗ぜられる虚を作る。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、議論じゃ一向始末におえない奴が、浅墓じゃあるが、具体的に一寸眼前に現(で)て来ている。——私の心というものは、その女に惹き付けられた。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
襞(ひだ)や線や指紋の一つも欠けないではっきりと現(で)たではありませんか
私(わたくし)が呼(よ)べばすぐ現(で)て来(く)るだけでございます。
「怖(おそ)らく、静山のような人物は、百年に一人か二人しか現(で)ない天才というものだろう」
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)