“括(く)” の例文
別に生の赤茄子の中位な処、即ち一斤に五つ位なのを買って熱湯をかけて皮を剥(む)いて真中(まんなか)を括(く)り抜きます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
私の後ろにはいつでも黒い影が括(く)ッ付(つ)いていました。私は妻(さい)のために、命を引きずって世の中を歩いていたようなものです。あなたが卒業して国へ帰る時も同じ事でした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして指の節々(ふし/″\)が女のそれのやうにふつくりして括(く)りがはいつてゐたさうだ。
三両で括(く)けて、括けめ括けめに七総(ななふさ)さげて
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
薄く切ってバターを塗りながら鉄網(かなあみ)で焼いてもよし、中を括(く)り抜(ぬ)いて肉類や魚類の細かくしたものを野菜の細かく切ったものと混ぜて中へ詰めてまたよく煮てもよし
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「まだあるのよ。一寸(ちょいと)」と針を離れぬ糸子の眼は、左の手につんと撮(つま)んだ合せ目を、見る間(ま)に括(く)けて来て、いざと云う指先を白くふっくらと放した時、ようやく兄の顔を見る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)