“偖(さ)” の例文
その時までには、諸君も、私に敗けないだけに研究して置いて、その首を取戻して行かんといけないね。偖(さ)て、それではこれから……
偖(さ)て、然(さ)うなると、この教育(けういく)のある娘(むすめ)が、何(なに)しろ恰好(かつかう)が惡(わる)い、第一(だいいち)又(また)持(も)ちやうが惡(わる)い、前(まへ)へ𢌞(まは)して膝(ひざ)へ取(と)つて持(も)ち直(なほ)せといふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
この両著書に於て二大家相邇近(じきん)したりとは前に述べたる所なるが、偖(さ)て両著書の相邇近したる中心点は何処(いづこ)に存するや。
御老人、貴所(あなた)の様に、長い目で御覧になりましたならば、世の変遷(うつりかはり)が能(よ)く御見えになりませうが、偖(さ)て自分一身を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
偖(さ)てお妾さんが別荘へ著いて見ると其の屋敷の並木道には花が一ぱい蒔散らしてあつて、部屋部屋の飾り付けは、目を驚かすばかりなのに、かてて加へて
偖(さ)て申し続きました深見新吉は、お賤を連れて足かけ五年間の旅中(たびちゅう)の悪行(あくぎょう)でございまする、不図(ふと)下総の塚前村と申しまする処の、観音堂の庵室に足を留(とめ)る事に成りました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私も挨拶して偖(さ)て其翌朝、龍馬が己等三人は今から薩摩屋敷(伏見)へ入るが、三吉丈は連れて行けぬからお前が預つて匿して置けと云ひますから、何故連れて行けぬと聞くと
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂、楢崎竜、川田雪山(著)
第二義から第一義に行って霊も肉も無い……文学が高尚でも何でも無くなる境涯に入れば偖(さ)てどうなるかと云うに、それは私だけにゃ大概の見当は付いているようにも思われるが、ま、ま
私は懐疑派だ (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
偖(さ)ては盗人油断ばしすな
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
偖(さ)て誠信の以て厭世に勝つところなく、経験の以て厭世を破るところなき純一なる理想を有(も)てる少壮者流の眼中には、実世界の現象悉(こと/″\)く仮偽なるが如くに見ゆ可きか、曰く否
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
やがて翁は椅子を離れて一同の前に例の丁重な辞儀をされた。其時の翁は相変らず黒木綿の単衣(ひとえ)に毛繻子の袴。羽織は無かつた。偖(さ)て顔を上げて口を切らふとすると、言葉が出ない。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
偖(さ)て、店(みせ)をする、料理人(れうりにん)も入(はひ)つて、お客(きやく)も一寸々々(ちよい/\)ある事(こと)になる。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)