“鯉(り)” の例文
私も子供の鯉(り)が死んだ時には、せめて外棺ぐらい作ってやりたい気がしないでもなかった。しかしついに内棺だけですますことにしたのだ。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ある晩さんざつないで下りてきた鯉(り)かんさんがいった。事実「両国八景」を目一杯にやって、そのあと声(こわ)いろまでやって下りてきたこの人だった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
何様(どう)いう仔細あって聖人が子まであった夫人を去られたか、それはそれがし不学で未だ見及ばず聞及ばぬが、孔子は年十九にして宋(そう)の幵官氏(けんかんし)を娶(めと)られ、其翌年に鯉(り)字(あざな)は伯魚を生ませたもうたのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
初代三好の卑しくも美しき高座、万橘(まんきつ)の、あの狐憑きの気ちがい花のように狂喜哄笑(こうしょう)するところ。「八笑人」のなかのひとりがぬけだしたかと思われる鯉(り)かんが鶯茶の羽織。——
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
陳亢(ちんこう)、伯魚(はくぎょ)に問いて曰く、子も亦異聞あるかと。対えて曰く、未だし。嘗て独り立てり。鯉(り)趨(はし)りて庭を過ぐ。曰く、詩を学びたるかと。対えて曰く、未だしと。詩を学ばずんば、以て言うことなしと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
歌六だの圓太郎だの鯉(り)かんだの、その鯉かんはよく鶯茶の羽織をぞろりと着て
随筆 寄席風俗 (新字新仮名) / 正岡容(著)
米洗いとか竹スとか砧(きぬた)とか錣(しころ)とかの寄席囃子を聴き、当時はいまだいまだ正統派な軽妙江戸前のが多々といた万橘三好、鯉(り)かん、勝次郎、枝太郎、歌六などの音曲師のうたう市井の俗歌を耳にすると
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)