“窃(と)” の例文
旧字:竊
「よし、よし、解った、確かにそれは仙妃じゃ、仙妃にもらったものじゃ、窃(と)ったものじゃない」
賈后と小吏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
自分はこの時始めて、何を窃(と)られたかを明瞭(めいりょう)に知った。失(な)くなったものは十点、ことごとく帯である。昨夜(ゆうべ)這入ったのは帯泥棒であった。御正月を眼前に控(ひか)えた妻は異(い)な顔をしている。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
引き返して、妻の所へ来て、泥棒は逃げた、安心しろ、何も窃(と)られやしない、と云った。妻はこの時ようやく起き上っていた。何も云わずに洋灯を持って暗い部屋まで出て来て、箪笥(たんす)の前に翳(かざ)した。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「民谷氏、小平めをつかまえましたぞ、窃(と)って逃げた薬は、これに」
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)