“断(ぎ)” の例文
旧字:斷
目で見る現在の景色と断(き)れ断(ぎ)れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に向って縮むにつれ、由子の心の中で統一した。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「あの……みんな私が悪いんでございます……」範宴の足もとへ、泣きくずれて、梢(こずえ)は次のようなことを、断(き)れ断(ぎ)れに訴えた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれは君、一緒になった方がかえっていいかも知れないね。」友人は息をついでから断(き)れ断(ぎ)れに話し出した。
黴 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
酔って断(き)れ断(ぎ)れになった意識の中で、私は必死になって荒涼たる何物かを追っかけていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
と思うと眼が霞(かす)んで何にも見えなくなって、今までにお鶴がささやいた断(き)れ断(ぎ)れの言葉や
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
そのうちに断(き)れ断(ぎ)れの雲間から、薄日がさし出した。三人は、神奈川の茶店で、朝食を食べて、着物を乾すことにした。鰊、蒟蒻(こんにゃく)、味噌汁、焼豆腐で、一人前十八文ずつであった。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
鋭い、断(き)れ断(ぎ)れな百舌鳥(もず)の声が背戸口で喧(かしま)しい。しみじみと秋の気がする。ああ可憐なる君よ、(可憐という字を許せ)淋しき思索の路を二人肩を並べて勇ましく辿(たど)ろうではないか。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
……ヒュッ、ヒュッと断(き)れ断(ぎ)れに彼の呼吸が喉(のど)で鳴るのである。唇は黒く渇(かわ)いてしまって、そこから言葉を吐くのはもう不可能な業(わざ)であった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
特に西空はたっぷり夕陽の名残が輝いて、ひらいた地平線の彼方に乾草小屋のような一つの家屋の屋根と、断(き)れ断(ぎ)れな重い雲の縁とを照し出していた。
白い翼 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
細君は断(き)れ断(ぎ)れに言った。
爛 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鉄砲隊は、各〻火径を二尺五寸断(ぎ)りとし、束(たば)ねて二つ折に腰にさげ、革の弾筥(たまばこ)二つ宛(ずつ)、これも左右の腰帯にくくる。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伸子はそのたびに悲しげな、断(き)れ断(ぎ)れな叫びを上げた。彼女は何かにしっかり捉まりこの苦しい疲れる衝動を制したかった。しかし何処にも手応えがない。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
など、断(き)れ断(ぎ)れに喋った。
沈丁花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)